『おやすみ、クマちゃん』 「ロリポップ」の巻

 8月4日から9月14日まで、東京・恵比寿の東京都写真美術館ホールで上映される「おやすみ、クマちゃん」は1975年から1987年までの間にポーランドの国営放送TVPと国営人形アニメーション・スタジオ「セ・マ・フォル」が制作した人形アニメーションです。

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 子どもがちょうど眠る時間(これを観たらベッドに行ってお休みなさいという時間)に放映された各話約7分のアニメーションで、毎回、冒頭はパジャマ姿のクマちゃんの映像から始まります。
 全部で104話あって、このうちの10話が今回日本で上映される作品です(下記リストで邦題を書き添えた作品)。

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 チェスワフ・ヤンチャルスキ(文)、ズビグニエフ・ルイフリツキ(絵)というコンビによって1957年に書かれた絵本“Miś Uszatek”が原作で、『ミーシャのぼうけん』『かえってきたミーシャ』という邦題で日本語版も出版されていたようです(今回の上映に当たって新訳版も刊行されるようです)。

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 公式サイトによれば、ポーランドは知られざる人形アニメーション大国であり、「おやすみ、クマちゃん」はその一例であるということのようです。

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 次の動画は、1977年の“Lizak”で、日本語に訳すると「ロリポップ」。
 全編ポーランド語ですが、台詞の意味はわからなくても、大体の物語を理解することはできますし、このシリーズの雰囲気をつかむことはできると思います。
 監督は、マリアン・キェルバチャク。今回の特集上映でも2作品が上映される監督です。

 

 【物語】
 パジャマ姿のクマくんが登場して、今日はロリポップに関するお話だよとかなんとか前口上を口にする。
 クマくんが寝ていると、外からウサギくんが声をかけてくる。今日はピクニックの予定で、クマくんはウサギくんに起こしてくれるように頼んでいたのだ。
 なかなか目が覚めないクマくん。
 なんとか荷物をまとめてリュックを背負って外へ。
 2人は姉妹の家に行って、ピクニックにでかけようと声をかける。
 姉妹はお化粧に忙しくて、ロリポップを渡して、先に行っていて欲しいと言う。
 2人は、ブタくんの家に向かう。ブタくんは、大きなケーキを持っていこうとてんてこまい。
 そして、全員が駅に集合して、電車に乗り込む。
 その時、クマくんは、イヌの駅員さんがホームに入ってくる電車に指示を出す指示棒の「頭」の部分をなくしてしまって困っているのを見て、「これを使ってよ」とロリポップを差し出す。イヌの駅員さんは、ありがたくそれを受け取る。
 電車の中。
 ブタくんは、ケーキについていた説明書きに「お早めにお召し上がりください」とあるのを見て、電車の中でケーキを食べてしまうことにする。みんなで仲良くケーキを分けて食べる。
 目的地についたので降りる。車掌さんは、帰りの電車に遅れないようにと注意してくれる。
 そして――レコードをかけてダンスしたりした後、楽しいピクニックも終わって、電車で帰ることになる。
 駅に戻ると、イヌの駅員さんが「クマくんがロリポップをくれたおけげでとても助かった。指示棒はちゃんと元通りになったよ」と言って、お礼にみんなにロリポップを1本ずつプレゼントしてくれる。

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 *ポーランド語は私も全くわからないのですが、大体こんな内容でしょうか。

 ◆作品データ
 1977年/ポーランド/7分44秒
 ポーランド語台詞あり/日本語字幕なし
 人形アニメーション

 
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 ◆「おやすみ、クマちゃん」に関する私見

 主な登場人物は、主人公のクマちゃんのほか、ウサギ、ウサギの兄弟、ブタ、イヌ、人間の姉妹、ニワトリ、アヒルの親子、カラス、ということになるでしょうか。

 You Tubeなどの動画サイトで、“Miś Uszatek”で検索すると、多数の作品がヒットしますが、オリジナルのポーランド語版にロシア語(?)をかぶせる形で、翻訳しているものもあるようです。

 そうした中から、私がいくつか観てみた限りでは――、
 失敗や行き過ぎた行ないを戒めるようなちょっと教育的なエピソードもあるようですが、あまり押し付けがましくはなく、ほのぼのとしたお話が多いようです。

 クマちゃんのキャラクター:優等生的だけれど、たまに失敗したりもする。小さな子の面倒をよく見る。

 ウサギ:ちょっと臆病?

 ブタ:自己本位的でちょっとだらしないところもある?

 ニワトリ:いつも怒ってるイメージ。

 カラス:ちょっといじわるなイメージ。

 動物もののアニメーションでは、どういう世界観になっているのかということが気になったりしますが、「おやすみ、クマちゃん」では、メイン・キャラクターは人間と同格のようで、2足歩行で、人間の姉妹と一緒に遊んだりもします(というか、様々な動物のキャラクターがいる中で、人間も一キャラクターとして存在しています)。

 そういう中で、ペットや家畜に類した動物もいるようで、そうした動物は4つ足で歩き、言葉も話しません。
 微妙なのはイヌで、2足歩行して言葉を話す者もあれば、4つ足のものもあります。

 人間格のキャラクターは、普通に着衣を身に着けていますが、森に住んでいるキャラクターは2足歩行でも言葉を話しても、着衣はなし、ということになっているようです。
 着衣に関しては、ウサギが微妙で、着衣をつけていたりいなかったり、襟巻きだけだったりするようです。

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 ◆「おやすみ、クマちゃん」全104話 リスト

 1975年

 ・CHOINKA (D. Zawilski)
 ・CHYTRA WRONA (D. Zawilski) いじわるなカラスと冬の神様(ダリウシュ・ザヴィルスキ)
 ・PODWIECZOREK (E. Ignaciuk)
 ・BAŁWANEK (E. Ignaciuk) 雪だるまさんと春の訪れ(エウゲニウシュ・イグナチュク)

 1976年

 ・NAUCZKA (J. Kudrzycka)
 ・WYCIECZKA (J. Kudrzycka)
 ・KĄPIEL (D. Zawilski) アヒルの親子とはじめての水泳(ダリウシュ・ザヴィルスキ)
 ・KOŁYSANKA (D. Zawilski) 素敵な森のコンサート(ダリウシュ・ザヴィルスキ)
 ・PRZEPRASZAM (M. Kiełbaszczak)
 ・DESZCZYK (L. Dembiński) 雨の日のおさんぽ(ルツィアン・デンビンスキ) *このエピソードのみ、劇場ではなく、配給会社エデンの公式サイト(http://eden-entertainment.jp/)でプレミア配信されています。
 ・PRZEPROWADZKA (J. Kudrzycka)
 ・LOKATORZY NA ZIMĘ (J. Kudrzycka)
 ・GNIAZDKO (L. Dembiński) 赤いふうせんと小鳥の巣(ルツィアン・デンビンスキ)
 ・JA CZY NIE JA (L. Dembiński)
 ・PROSTY SPOSÓB (L. Dembiński)
 ・JEDEN TAKI, DRUGI TAKI (D. Zawilski)
 ・ZŁOTY DZWONECZEK (D. Zawilski)
 ・SANECZKI (E. Ignaciuk)
 ・ŚLIZGAWKA (E. Ignaciuk)
 ・LATAWIEC (M. Kiełbaszczak)
 ・APETYT NA WISIENKI (M. Kiełbaszczak)
 ・MOTOREK (J. Kudrzycka)
 ・BABULEŃKA (J. Kudrzycka)

 1977年

 ・EEE, CO TAM (J. Galewicz)
 ・HUŚTAWKA (J. Galewicz)
 ・ZGUBA (M. Kiełbaszczak)
 ・SZELEST W NOCY (M. Kiełbaszczak)
 ・ZAKUPY (J. Hartwig)
 ・DYM (J. Hartwig)
 ・PŁOTEK ZE STOKROTEK (D. Zawilski)
 ・NIEZWYKŁE BUCIKI (D. Zawilski)
 ・NIEZAPOMINAJKI (E. Ignaciuk) 忘れな草をさがして(エウゲニウシュ・イグナチュク)
 ・DZIWNA DYNIA (E. Ignaciuk)
 ・WRONIE GNIAZDO (J. Kudrzycka)
 ・KRAN (J. Kudrzycka) お洗濯で水びたし(ヤドヴィカ・クドゥジツカ)
 ・LIZAK (M. Kiełbaszczak) *ロリポップ[上の動画]
 ・FARBY (M. Kiełbaszczak) ゆかいなお絵かき(マリアン・キェルバチャク)
 ・SKARBONKA (J. Hartwig)
 ・ZAPASY NA ZIMĘ (J. Hartwig)
 ・PRZYMIARKA (J. Galewicz)
 ・RÓŻOWE LANDRYNKI (J. Galewicz)
 ・DZIWNE OKULARY (D. Zawilski)
 ・NA GRZYBY (D. Zawilski) キノコ狩りはたのしいな(ダリウシュ・ザヴィルスキ)
 ・GITARA (E. Ignaciuk)
 ・JAK SÓJKA ZA MORZE (E. Ignaciuk)
 ・ŚWIATŁA MÓWIĄ (J. Kudrzycka)
 ・GŁUCHY TELEFON (J. Kudrzycka)

 1978年

 ・SPÓŹNIONE ŚNIADANIE (J. Hartwig)
 ・KLUCZ (D. Zawilski)
 ・SŁOWA-SŁÓWKA (D. Zawilski)
 ・KULIG (M. Kiełbaszczak) みんなで行こう、スキー旅行(マリアン・キェルバチャク)
 ・WAKACYJNI GOŚCIE (M. Kiełbaszczak)
 ・PARASOL (J. Kudrzycka)
 ・OBRZYDLIWKI (J. Kudrzycka)
 ・ŁAKOMCZUCH (D. Zawilski)
 ・NOWY KOLEGA (D. Zawilski)
 ・NAKRĘTKA (E. Ignaciuk)
 ・JESIENNY SPACER (E. Ignaciuk)
 ・KTO POTRAFI? (J. Hartwig)

 1979年

 ・PILNA WIADOMOŚĆ (D. Zawilski)
 ・WYZEJ, NIŻEJ (D. Zawilski)
 ・GDZIE LEPIEJ (M. Kiełbaszczak)
 ・PLACEK Z KRUSZONKĄ (M. Kiełbaszczak)
 ・ISKIERKA (E. Ignaciuk)
 ・GORĄCZKA (E. Ignaciuk)
 ・PIESEK (E. Strus)
 ・CIEKAWSCY (E. Strus)
 ・ROBOTA NA DRUTACH (D. Zawilski)
 ・PÓŹNIEJ (D. Zawilski)
 ・KTO ZAWINIŁ ? (M. Kiełbaszczak)
 ・WESOŁE MIASTECZKO (M. Kiełbaszczak)
 ・RATOWNICY (J. Hartwig)
 ・WROTKI (E. Ignaciuk)
 ・PECHOWE LODY (E. Ignaciuk)

 1980年

 ・CHWALIPIĘTY (E. Ignaciuk)
 ・SOBEK (M. Kiełbaszczak)
 ・IMIENINY (M. Kiełbaszczak)
 ・TO TYLKO GAŁĄŹ (E. Strus)
 ・KISZONE OGÓRKI (E. Strus)
 ・SPORT TO ZDROWIE (D. Zawilski)
 ・KOLOROWE DRAŻETKI (D. Zawilski)
 
 1984年

 ・ZIELONO W GŁOWIE (J. Kudrzycka)
 ・PIASEK SAHARY (J. Kudrzycka)
 ・OKRYCIE NA ZIMĘ (T. Puchowska-Sturlis)
 ・ZATRZASK (T. Puchowska-Sturlis)
 ・WYSPA (D. Zawilski)
 ・CZAJKA (D. Zawilski)

 1985年

 ・SKRÓT (K. Kulczycka)
 ・NIEZWYKŁY LIST (K. Kulczycka)
 ・TANDEM (J. Galewicz)
 ・LALUŚ (J. Galewicz)
 ・PODRÓŻ USZATKA (T. Puchowska-Sturlis)

 1986年

 ・PRZYSŁUGA (T. Puchowska-Sturlis)
 ・KRÓLOWA KLEOPATRA (D. Zawilski)
 ・WYCISK (D. Zawilski)
 ・TAJEMNICA (T. Puchowska-Sturlis)
 ・STARY ZEGAR (T. Puchowska-Sturlis)
 ・WIELKA WYGRANA (D. Zawilski)
 ・SKRZYNIA (D. Zawilski)

 1987年

 ・LETNI DOMEK (K. Kulczycka)
 ・KREM BEZ GOTOWANIA (K. Kulczycka)
 ・ZNALAZŁEM (J. Galewicz)
 ・SUCHY PROWIANT (T. Puchowska-Sturlis)
 ・STRACH MA WIELKIE OCZY (T. Puchowska-Sturlis)

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 ◆年度ごとの制作本数
 1975年 4本
 1976年 19本
 1977年 24本
 1978年 12本
 1979年 15本
 1980年 7本
 1984年 6本
 1985年 5本
 1986年 7本
 1987年 5本

 本数からはどのような形で放映されたのか判断することができません。ひょっとすると、子ども向けアニメーションの枠があって、その中の1つにこの「おやすみ、クマちゃん」があったということなのかもしれません。

 *1981年~1983年の間は1本も制作されていませんが、おそらくポーランドの民主化とその弾圧という政治的状況と無関係ではなく、1981年の「連帯」の非合法化と1983年の戒厳令の解除という民主化への弾圧が強まった時代に「おやすみ、クマちゃん」も制作がストップしたのだと考えられます。
 1984年に、民主化の動きが強まる中で制作が再開された「おやすみ、クマちゃん」は、同じ動き、つまり社会主義政権の解体という流れの中で終焉を迎えるというのも皮肉なものです(国営アニメーション・スタジオ「セ・マ・フォル」は1999年に活動停止。ただし、その後、民営スタジオとして同年11月に活動再開)。――と、書いてはみたものの、ポーランドの社会情勢とつき合わせて推察してみただけであって、本当のところはどこにも書いてないのでわからないのですが。

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 ◆監督
 「おやすみ、クマちゃん」を手がけた監督は全部で10人です。
 ・ダリウシュ・ザヴィルスキ 26本
 ・エウゲニウシュ・イグナチュク 15本
 ・ヤドヴィカ・クドゥジツカ 14本
 ・マリアン・キェルバチャク 15本
 ・ルツィアン・デンビンスキ 4本
 ・J. Galewicz 7本
 ・J. Hartwig 7本
 ・E. Strus 4本
 ・T. Puchowska-Sturlis 8本
 ・K. Kulczycka 4本

 最初の2年のうちにこのシリーズに関わったダリウシュ・ザヴィルスキ、エウゲニウシュ・イグナチュク、ヤドヴィカ・クドゥジツカ、マリアン・キェルバチャクの4人がこのシリーズの中心になり、この4人でシリーズ全体の4分の3を手がけていることになります。

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 ◆リンク集

 ・公式サイト(日本):http://oyasumi-kumachan.com/index2.html

 ・配給会社エデンの公式サイト:http://eden-entertainment.jp/
 劇場では上映されないエピソード「雨の日のおさんぽ」をプレミア配信しています。

 ・カエルちゃんオフィス:http://www.kaeruchan.net/office/index.html
 「おやすみ、クマちゃん」日本語吹替を担当するケロポンズが所属するカエルちゃんオフィスのサイト。

 ・Wikipedia:http://pl.wikipedia.org/wiki/Mi%C5%9B_Uszatek
 ポーランド語版しかありませんが、詳しい解説があります。上のリストもここからのコピーです。「おやすみ、クマちゃん」に関してはさすがのIMDbにも情報が全くありません。

 ・Muzeum Dobranocek Sala Misia Uszatka:http://www.muzeumdobranocek.pl/uszatek.htm
 「クマちゃん」関係の絵本、かるた、関連商品のご紹介。

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 ・Strona o Misiu Uszatku i jego twórcach:http://www.misuszatek.pl/
 絵本風に「おやすみ、クマちゃん」を紹介してあるサイト。ポーランド語のサイトですが、ビジュアル中心なのでポーランド語がわからなくても楽しめます。
 「wejscie」が「入り口」になっていて、ここをクリックすると、サイト内に入ることができます。
 続いて、本の表紙が現れるのでここをクリック。
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 開いたページの左ページ “o autorze”が「原作者について」
 “galeria”が「ギャラリー」で、そこをクリックすると、“Misiowa moda”(ミーシャのファッション)と“Szkice”(スケッチ)が現れます。
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 右ページの“historia”は「おやすみ、クマちゃん」に関する歴史(ポーランド語)、“Skelp internetowy”は関連のインターネットサイトで、www.kolor-plusz.pl (http://www.kolor-plusz.pl/index.php)というサイトに飛ぶことができます。www.kolor-plusz.plは、子ども向けのキャラクター紹介サイトのようです。
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 ・ポーランド語のWeb辞書 ポーランド語から直接日本語に翻訳するサイトはなくて、ポーランド語→英語、英語→ポーランド語の辞書しかありません。
 DICT English Polish Dictionary:http://www.dict.pl/plen?lang=EN
 Poltran.com:http://www.poltran.com/
 どちらも万能というのはほど遠いものなのですが、「おやすみ、クマちゃん」の各回のタイトルの意味を調べるくらいのことには使えます。

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 *東京都写真美術館ホールでのアニメーションの上映は、
 2000年11月のロシア・アニメーション映画祭2000
 2004年12月のイタリアアニメーション映画祭
 2005年11月の<ロッテ・ライニガーの世界>
 に続いて、4度目でしょうか。

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