『ルマーク:エスキモーの伝説』 コ・ホードマン

 エスキモーに伝わる伝説をアニメーション化した作品。
 「雪盲になった少年を母親は虐げていて、彼は母親の悪い行ないに対して復讐をする」という英語での説明のあと、物語が始まりますが、使われる台詞はすべてエスキモー(Povungnitukエスキモー)の言葉。英語圏でもこの作品を英語に吹き替えたり、英語の字幕をつけたりということはしていないようなので、制作サイドは台詞に頼らずにこの作品が伝えようとしていることを感じ取って欲しいと考えたのだと思われます。



 【物語】
 エスキモーの母親が娘に話をしている。それは、自分の若い頃は、イルカの背中に乗って遊んだものだ、というような内容。
 そこに、クマの咆哮が聞こえてくる。
 少年は怖くなって、母親に擦り寄るが、母親は少年に弓矢を渡してクマを退治しろと命じる。
 少年は、雪盲で目が見えないが、聴覚は鋭くて、見事に一発でクマを仕留める。
 まだ犬が騒いでいたので、母親はアレも退治しろというが、少年は「あれは犬が吠えているだけだから」と言って、少年は矢を射ることはしない。
 母と娘がクマを見に行くと、クマは息絶えている。2人はそれをイグルーに運んで、皮を剥ぎ、肉をさばく。
 母は、その肉を娘には与えるが、息子にはやろうとしない。娘は母からもらった肉をこっそり兄にあげる。
 少年が眠っていると、2羽のloon(アビ)の精霊がやってきて、彼を水辺に誘う。
 loonは彼を水の中に放り込むが、その一度目で彼は少し目が見えるようになり、二度目ですっかり視力を取り戻す。
 少年は、まだ目が見えないフリをして、イグルーに帰る。
 「お母さん、何か食べるものはないの?」
 妹は肉の残りを分けようとするが、母はそれを制する。「何もないよ」
 少年は、「じゃあ、ボクが何か獲ってくるよ」と言って、持ってきた棒を研いで、鏃を作る。
 少年は、母と一緒に水辺に来ると、イルカに目がけて、銛を飛ばす。
 銛は見事にイルカに命中。銛の付け根には縄がついていて、その先は母の胴体に括りつけられていたので、母は銛の刺さったイルカに海に引きずりこまれてしまう。それは、前に母が娘に語っていた話にも似た皮肉な情景であった……。

画像

 【コメント】
 エスキモー出身の監督による初めてのエスキモー映画『氷海の伝説』やアニメーション『白くまになりたかった子ども』もそうでしたが、エスキモーを主人公とした物語や伝説には、独特の世界観があって面白いですね。

 たまに、我々が普段慣れ親しんでいるものとは、全く違った文化的背景や語り口を持つ物語に出会って、新鮮な感動を覚えることがありますが、これもそうした物語の1つと言っていいかもしれません。

 台詞もわからないし、ちょっとぶっきらぼうなところもあるので、一度観ただけではこの物語が頭の中にすっと入ってこないかもしれませんが、二度三度と観ると、だんだんそのユニークな作品世界が見えてきます。コ・ホードマンが、この物語をアニメーション化してみたいと思ったのも、この独特の世界観に魅せられたから、なのでしょう。

 ◆作品データ
 1975年/カナダ/7分41秒
 台詞あり/字幕なし
 切り絵アニメーション

 ◆監督について
 コ・ホードマン(ヤコブス・ヴィレム(コ)・ホードマン)
 1940年オランダのアムステルダム生れ。
 15歳で学校を辞め、印刷会社で写真技師として働くが、映画の仕事がしたいと思うようになり、最初はハーレムにあるMultifilmに、次にヒルベルスムにあるCinecentrumに移る。
最初は光学処理や特殊効果の仕事を任されていたが、撮影やラボ、録音の仕事も手伝うようになる。同時に、アムステルダムの美術学校やハーグの写真学校に夜学で通うようにもなる。仕事の方は、次第に複雑なものを任されるようになり、最終的に、デザイン、セット、編集、監督までこなすようになる。
1965年、カナダに移住し、カナダ国立映画製作庁(the National Film Board of Canada / NFB)の教育映画部門で製作アシスタントとして働き始める。1967年~68年には教育映画“Continental Drift”に参加。NFBにフレンチ・アニメーションスタジオが設けられると、そこのメンバーとなる(NFBでも数少ない正社員のアニメーション作家となる)。
1977年の『砂の城』はNFBに初のアカデミー賞をもたらした。
1999年に、スロバキアのブラチスラバで、Klingsor 賞を受賞。
2000年に国際交流基金の招きで来日し、1ヶ月半にわたり、精力的に講演会やワークショップなどで、若いアニメーション作家や研究者、ファンらと交流する場を持った。

作品制作はすべて1人で行ない、撮影監督も自分で務める。

子ども向けの作品が多いが、大人も楽しめる作品を作り出すアニメーション作家として人気が高い。

『岸辺のふたり』を日本に紹介したのは、クレスト・インターナショナルという配給会社でしたが、クレスト配給のアニメーション作品第2弾は、コ・ホードマンの『テディ・ベアのルドヴィック』で、この作品の日本語字幕はタレントのはなさんが手がけています。

 ・1969年 『へんてこなボール(不思議なボール)』 “Oddball”(Maboule)
 ・1970年 『マトリオスカ』“Matrioska”
 ・1970年 “Continental Drift”(La Dérive des continents)
 ・1971年 『ふくろうとねずみ』 “The Owl and the Lemming: An Eskimo Legend” (Le Hibou et le lemming)
 ・1972年 『シュッシュ』 “Tchou-tchou”
 ・1973年 “The Owl and the Raven: An Eskimo Legend”(Le Hibou et le corbeau)
 ・1975年 『ルマーク:エスキモーの伝説』 “Lumaaq: An Eskimo Legend”
 ・1975年 “Lumaaq”
 ・1975年 “L'Homme et le géant”(The Man and the Giant: An Eskimo Legend)
 ・1977年 『砂の城』 “Le Château de sable”(The Sand Castle)
 ・1980年 『海底の宝物』 “The Treasure of the Grotoceans”(Le Trésor des Grotocéans)
 ・1984年 『仮面舞踏会』 “Mascarade”(Masquerade)
 ・1987年 『チャールズとフランソワ』 “Charles et François ”(Charles and François)
 ・1989年 『箱』 “La Boîte”(The Box)
 ・1992年 『スニッフィングベア(悲しみの白クマ)』“L'Ours renifleur”(The Sniffing Bear)
 ・1995年 “Coucou l'ourson!”
 ・1997年 『エコの庭』 “Le Jardin d'Écos” (The Garden of Ecos)
 ・1998年 『テディ・ベアのルドヴィック 雪の贈り物』 “Ludovic: The Snow Gift”(Ludovic: Une poupée dans la neige)
 ・1999年 『テディ・ベアのルドヴィック ワニのいる庭』“Ludovic II: un crocodile dans mon jardin”( Ludovic: A Crocodile in My Garden)
 ・2001年 『テディ・ベアのルドヴィック おじいちゃんの家』“Ludovic: Visiting Grandpa”(Ludovic: Des vacances chez grand-papa)
 ・2002年 『テディ・ベアのルドヴィック 空に浮かぶ魔法』“Ludovic - Un vent de magie ”
 ・2003年 『冬の日』のうち「牛の跡とぶらふ草の夕暮に箕に鮗の魚をいただき」(杜国)のパートを担当。
 ・2004年 “Le Théâtre de Marianne”

 *DVD
 ・『テディ・ベアのルドヴィック』

 ・『NFB・コ・ホードマン作品集』
『へんてこなボール』『マトリオスカ』『Owl and The Lemming』『シュッ・シュッ』『Owl and The Raven』『Lumaaq』『砂の城』『海底の宝物』『仮装舞踏会』『チャールズとフランソワ』『箱』『スニッフィング・ベアー』の12作品を収録。

 *参考サイト
 NFB:http://www.nfb.ca/portraits/fiche.php?id=283&v=h&lg=en

 以下のサイトにはコ・ホードマンへのインタビューの映像(英語&仏語)があって、ホードマン作品の映像の一部を観ることができます。
 ・http://video.google.com/videoplay?docid=4218571847473059152(8分39秒)
 ・http://www.youtube.com/watch?v=2EOTiTZhIIk(2分37秒)

 *参考書籍
 ・『ユーロ・アニメーション』(フィルムアート社) p62~65

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