知られざるルーマニア映画Ⅲ(2006-2007)

 ・“Azucena - ĂŽngerul de abanos”(2006/ルーマニア) 監督:Mircea Muresan

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 ・“Cum mi-am petrecut sfarsitul lumii(The Way I Spent the End of the World)”(2006/ルーマニア・仏) 監督:Catalin Mitulescu
 チャウシェスク独裁時代の最後の年、6歳の少年が圧政から人々を救おうとする。
 2006年カンヌ国際映画祭 ある視点部門最優秀女優賞受賞(Doroteea Petre)。

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 ・“A fost sau n-a fost?( 12:08 East of Bucharest)”(2006/ルーマニア) 監督:Corneliu Porumboiu コーネリウ・ポランボユ
 革命から16年経った12月。小さな町で暮らす人々がそれぞれのクリスマスを迎えようとしていた。そのうちの何人かは革命で、この町はどこか変わっただろうかと考えるのだった。
 2006年トランシルバニア映画祭グランプリ&最優秀ルーマニア映画受賞作品。2006年カンヌ国際映画祭カメラドール&Label Europa Cinemas受賞。

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 ・“Hîrtia va fi albastrã(The Paper Will Be Blue)”(2006/ルーマニア) 監督:Radu Muntean
 1989年12月22日~23日にかけての、チャウシェスク政権が倒されてから数時間のブカレストの混乱状況をドキュドラマとして描き出した作品。
 ロカルノ国際映画祭正式出品、Namur International Festival of French-Speaking Filmで審査員特別賞受賞、Cottbus Film Festival of Young East European Cinemaで監督に特別賞受賞。

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 ・“Offset”(2006/独) 監督:Didi Danquart
 ブカレストを舞台にしたファミリー・ドラマ。脚本家としてCristi Puiu、アソシエイト・プロデューサーとしてCristian Mungiuが参加している。

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 “Pacala se ĂŽntoarce”(2006/ルーマニア) 監督:Geo Saizescu

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 ・『カリフォルニア・ドリーミン』“California Dreamin’(Nesfarsit) ”(2007/ルーマニア) 監督:クリスティアン・ネメスク Cristian Nemescu
 1999年のコソボ紛争の最中、鉄道主任がNATOの軍用列車の運行を妨害する。
 2007年 カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリ。

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 ・『4ヶ月、3週と2日』 “4 luni, 3 saptamini si 2 zile(4 Months, 3 Weeks and 2 Days)”(2007/ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ Cristian Mungiu
 堕胎と中絶が禁止されていたチャウシェスク政権時代に、望まぬ妊娠してしまった女性が、大学の寮のルームメイトと一緒に非合法の堕胎医に会いに行く。
 *コムストックグループ配給で劇場公開予定。

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 ・“Legiunea straina”(2007/ルーマニア) 監督:Mircea Daneliuc

 ・“Restul e tacere”(2007) 監督:ナエ・カランフィル

 (※) タイトル表記は、基本的には、IMDbに則って、原語表記で代表させ、( )内に英題もしくは仏題を添える形式を取っています。
 製作年・製作国等のデータは資料により異なる場合があります。
 人名で日本語での読み方が不明のものは原語のままにしてあります。
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 ◆ルーマニア関連の作品

 ・『愛の奴隷』“Slaves of Love”(1923/独) 監督:カール・ハインツ・ベーゼ
 ルーマニアのジプシー親子の哀話。

 ・『25時』“The 25th Hour La Vingt-Cinquieme Heure”(1967/伊) 監督:アンリ・ヴェルヌイユ
 ルーマニア生れの小説家C・ビルジル・ゲオルギュのべストセラー小説の映画化。

 ・『風もひとりぼっち』“Mamaia”(1967/仏) 監督:ジョゼ・バレラ
 舞台はブカレスト。結婚を翌日に控えた2人。しかし花嫁ナナはまだ気持ちの整理がきちんとできていない。そんな時、フィアンセにはない魅力を持った青年と出会い、これまで感じたことのない情熱が自分の中に湧き起こるのを感じるのだった。クロード・ルルーシュが自らのプロダクションで最初にプロデュースした作品。

 ・『kino』(1999) 監督:佐藤雅彦
 オール・ルーマニア・ロケ作品。ロケ地は、ブカレストとブラショフ。
 キャストもすべてルーマニア人で、「オセロ」「ホテル・ドミニクの謎」に出演しているNicolae ursは“Asphalt Tango”『巴里に天使が舞いおりる』(1993)等のルーマニア映画に出演していて、「おばあさんの天気予報」でおばあさん役を演じているJana Goreaは“The Oak(Balanta/Le Chene)”(1992)、“Examen”(2003)等の作品に出演している。
 Line Productionの1つであるルーマニアのドミノ・フィルムズは、“Asphalt Tango”『巴里に天使が舞いおりる』(1993)、“Filantropica”(2002)、“Restul e tacere”(2007)等の作品を制作しているプロダクション。

 ・『吸血鬼』“The Fearless Vampire Killers”(1967/) 監督:ロマン・ポランスキー
 ヴァンパイア退治のために主人公が向かうのがルーマニア。

 ・『雨のパスポート』“Catch Me a Spy”(1971/英・仏) 監督:リチャード・クレメント
 新婚旅行でカップルがブカレストにやってくるが、スパイ容疑で夫が逮捕されてしまう。

 ・『ユリシーズの瞳』“To Vlemma Tou Odyssea”(1997/仏・伊) 監督:テオ・アンゲロプロス
 バルカン半島最初の映画作家マナキス兄弟についての映画を作るために故国ギリシャに帰国した主人公(ハーヴェイ・カイテル)が、立ち寄る国の1つとしてルーマニアがある。ルーマニアを代表する女優マヤ・モルゲンステルンが出演。

 ・『炎のジプシーブラス 地図にない村から』“Brass on Fire”(2002/独) 監督:ラルフ・マルシャレック
 ルーマニアのブラスバンド“ファンファーレ・チォカリーア”を追った音楽ドキュメンタリー。クライマックスは日本(渋谷)!

 ・『歓楽通り』“Rue des plaisirs”(2002/仏) 監督:パトリス・ルコント
 主人公たちをつけまわす闇の組織の男たちがルーマニア人。

 ・『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006/米) 監督:ラリー・チャールズ
 主人公ボラットの故郷 カザフスタンのクーセク村という設定になっているロケ地は、ルーマニアのシンティロマの村。

 ・『トランシルヴァニア』(2006/仏) 監督:トニー・ガトリフ
 突然姿を消した恋人を探して、主人公は彼の故郷であるトランシルバニアへ向かう。
 2007年8月、シアター・イメージフォーラムにて公開。主演はアーシア・アルジェント。

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 数多くのルーマニア映画からピック・アップしたラフなルーマニア映画リストですが、このリストからすると、ミニシアター系の作品をまめに観ている人でも、知らないうちに観ていたというルーマニア(の資本の入っている)映画は、ほんのわずかで、『ガッジョ・ディーロ』と『コード・アンノウン』くらいしかありません。やっぱり、ルーマニア映画って、日本ではほとんどなじみがないんですね。

 ルーマニア映画は、ルーマニア革命によってチャウシェスク政権が倒れ、民主化された1989年12月を境に、転機を迎えたようで、それ以前は、共産主義的なイデオロギーを含むような作品が多く、それ以後は共産主義時代を検証したり、現代(のルーマニア)社会の抱える問題をとらえたような作品が多いように感じられます。

 映画の題材としては、①近代以前、②第二次世界大戦前夜から共産主義化した1947年前後の時代、③チャウシェスク政権時代からルーマニア革命の起こった1989年前後の時代、そして④1990年以降の現代、という4つの時代が選ばれることが多いようです。

 ジャンル的には、戦争もの、歴史もの、ミステリものが多く、ファンタジー作品も少々ありますが、全体的にはノン・ジャンルのドラマが多く、小説や戯曲の映画化作品も多いようです。

 ルーマニア映画は、2007年のカンヌ国際映画祭で急に国際的な舞台に登場してきたような印象を受けましたが、実際には、2006年もカンヌでカメラドールとある視点部門最優秀女優賞を受賞し、2005年もある視点部門グランプリを受賞、その他の国際映画祭でも近年目覚しい成果を上げていて、2007年の受賞が単なるフロックなどではないことがわかります。
 今、確かに、ルーマニア映画にはニュー・ウェーブが起こっている、と考えてよさそうです。

 こうしたニュー・ウェーブが起こるためには、社会的な要因と制度的なバックアップが不可欠ですが、社会的要因としては、1990年以降の民主化の動きの中で、それまで共産主義政権下で押さえつけられていたものが一気に解放されたこと、それ以前の共産主義体制化の社会を客観的に見られるようになったこと、が考えられます。

 制度的なバックアップとしては、近年、ルーマニア映画界を挙げてルーマニア映画を盛り上げていこうというムーブメントが起こってきているらしいことで、その1つの例として、2002年から開催されるようになったトランシルバニア国際映画祭が挙げられます。
 トランシルバニア国際映画祭(http://www.tiff.ro/)は、2004年まではグランプリ作品を1本選出するだけだったのですが、2005年以降は、賞の部門も増え、最優秀ルーマニア映画という賞も設けられて、国内外問わず、年々注目度を増してきています。カンヌ国際映画祭をはじめとする国際映画祭への出品、そして受賞はこうした動きの1つの成果、なんですね。

 ルーマニア映画が国際的に注目を浴び出したのは、1990年代初めからで、それにはそれ以前から活躍していた監督ルチアン・ピンティリエやナエ・カランフィルらが多いに貢献しているのですが、2000年以降は、30代の若い監督の第一長編や第二長編が大きな注目を集めていて、彼らが“ルーマニア・ニュー・ウェーブ”の中心になっています。

 “ルーマニア・ニュー・ウェーブ”の旗手としては、Radu Muntean(1971- )、Catalin Mitulescu(1972- )、Nicolas Masson(1973- )、Corneliu Porumboiu(1975- )、Ruxandra Zenide(1975- )、Cristian Nemescu(1979-2006)、Cristi Puiu(1967- )、Cristian Mungiu(1968- )らがいます。カンヌでパルムドールを受賞したCristian Mungiuは、この中では長兄に当たるようです。
 彼らの特徴は、初期短編から既に注目を浴び、短編から長編へと着実に移行していることで、この事実からも、現在のルーマニアでは若き映画監督にきちんと発表の場を与え、段階を追って映画制作が行なえるように、映画制作の環境や制度も整えつつあることが伺われます。

 また、2000年以降、外国(特にフランス)との共同製作も盛んで、これはおそらく1990年代のルーマニア映画の新しい動きが導いた結果なのですが、これがルーマニア映画をさらに注目させる結果にもなったのだと考えられます。外国との共同製作は、若い監督の作品ばかりなので、これもまた“ルーマニア・ニュー・ウェーブ”を作り出す要因となっています。

 今回のこのリスト作成には、かなりの手間暇がかかりましたが、それもこれも、調べ出すと、ルーマニア映画がとても面白かったのと(実物には全く触れることはできませんでしたが)、今年もしくは来年辺りに日本でも開催されるに違いないルーマニア映画祭のたたき台にしたかったからですね。
 国際交流フォーラムやフィルムセンター、ユーロスペース等での映画祭開催、もしくは東京国際映画祭か東京フィルメックスの協賛企画としての特集上映があってもいいと思うのですが、どうでしょうか。

 参考サイト
 ・Wikipedia List of Romanian Films:http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Romanian_films

 ・Romania Film Promotion:http://www.romfilmpromotion.ro/index.php

 ・1-World Festival of Foreign Films:http://www.1worldfilms.com/ROMANIA.htm

 ・Open Society Archives:http://www.osa.ceu.hu/filmlibrary/browse/country?val=58

 ・ルーマニアの参照コンテンツ集:http://hiki.trpg.net/BlueRose/?Romania-CountryInfoRef

 ・ルーマニア映画のポスター集(全49枚!):http://www.echange-roumanie.com/Affiches_cine_ro.htm

 ・制作会社 MediaPro Pictures:http://www.mediapropictures.com/film.php

  *当ブログ関連記事
 ・ルーマニアが生んだ映画人 40人!

 ・知られざるルーマニア映画Ⅰ(1943-2000)

 ・知られざるルーマニア映画Ⅱ(2001-2005)

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この記事へのコメント

2007年08月19日 22:21
こんばんは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
ルーマニアのマラムレシュ地方の人たちもとりあげています。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
umikarahajimaru
2007年08月20日 21:13
kemukemuさま
コメントありがとうございました。
ルーマニアもしくは『トランシルヴァニア』で検索されて、ここにたどりつかれたのでしょうか。
kemukemuさん自身はお忘れかもしれませんが、『ヨコハマメリー』の時にもkemukemuさんにコメントをいただいたのを覚えています。ルーマニアにいらして写真を撮ったりもしていらっしゃるんですね。
kemukemu
2007年08月20日 21:28
TBありがとうございました。「トランシルヴァニア」で検索しました。「ルーマニアの未公開映画、よく調べられましたね。日本で公開されるといいですね。「トランシルヴァニア」、観たのですが、いまひとつ、強く心に働きかけて来ないので、感想はブログには書かないかもしれません。印象がまとまらないというか。

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