いかにもクラピッシュらしい… 『金魚』 セドリック・クラピッシュ

 もし、街中で、金魚の入った金魚鉢を落として割ってしまったら……。




 【物語】
 扉を開けて、たくさんの荷物と金魚鉢を抱えた女性(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)が通りに出てくる。どうやら同棲相手とケンカして、荷物をまとめて出てきたらしく、ずっとブツブツブツブツ彼に対する不平不満をつぶやいている。
 ところが、車道を横切ろうとして、手に抱えていた金魚鉢を落として割ってしまう。
 割れたガラスの破片の間でアップアップしている金魚を急いで掬い上げた彼女は、まわりを見渡して、薬局に飛び込む。
 薬局ではお客さんが列を作っていたが、かまわずに割り込んで、切羽詰ったように「コンドームをちょうだい!」。
 客も店員も何事かととまどうが、彼女に気圧されてしまう。出してもらったコンドームに、手の中に包んできた金魚を入れ、水を注いでもらう。
 金魚が助かったことで、みんな自分のことのように喜ぶ。
 「コンドーム代は僕が払おう」と申し出てくれるお客さんもいたが、店員も「いいんだ」と言ってタダにくれる。
 金魚の入ったコンドームを持って、彼女は通りを歩いていく。
 「コンドームは生命を守ります」というメッセージが出る。

 アゲインスト・エイズのキャンペーンのために作られたらしい作品なんですが、まさにショートショートらしい作りになっていて、オチも利いています。
 たった3分ですが、おかしい中にもやさしさがあり、人間くさくって、いかにもクラピッシュらしい作品に仕上がっています。
 ちょっとエキセントリックなところもあり、ユニークな発想をする主人公に、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキはぴったりですね。

画像

 ◆作品データ
 1994年/仏/3分5秒
 仏語台詞あり/英字幕あり
 実写作品

 *この作品は、1998年の東京国際レズビアン&ゲイ フィルム・フェスティバル(http://www.tokyo-lgff.org/2004/database-filmlist.html) で上映されました(英字幕での上映)。

 *フランス版DVD『スパニッシュ・アパートメント』には、特典としてこの作品が収録されていましたが、日本版には収録されなかったようです。

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 ◆監督について
 セドリック・クラピッシュ

 1961年 フランス生まれ。
 パリ第3大学卒業。修士号はウディ・アレンがテーマ。
 IDHECは2浪。ニューヨーク大学映画学科(film school at New York University(NYU))に進む。
 1983-85年は、米国で、映画の、カメラのオペレーターや監督として過ごす。
 1985-88年は、数多くの産業映画やフランスのテレビ局のためのドキュメンタリーを手がける。
 長編劇映画は、1992年の『百貨店大百科』が最初。
 短編“Ce qui me meut”がセザール賞の短編部門にノミネートされて以来、セザール賞にノミネートされることは頻繁で、『百貨店大百科』が第一回作品賞ノミネート、『家族の気分』が作品賞・監督賞ノミネート&脚本賞受賞、『スパニッシュ・アパートメント』でも作品賞・監督賞・脚本賞ノミネート。そのほか、『猫が行方不明』はベルリン国際映画祭パノラマ部門で国際批評家連盟賞受賞、『家族の気分』はモントリオール国際映画祭でPublic Prizeと審査員特別賞を受賞。
 日本では、1996年に『猫が行方不明』が初紹介で、それをきっかけに旧作の長編2作が劇場公開され、以降、新作が待たれる人気監督になった。
 セドリック・クラピッシュの作品は、人に対してやさしい視線が感じられるのと、ちょっととぼけた味わいがあるのが魅力。
 好きな監督としては、ジョン・カサヴェテス、マーティン・スコセッシ、イングマール・ベルイマン、ウディ・アレン、モーリス・ピアラを挙げている。
 実は、ほとんど監督作品に出演もしている。

 ・1986年 『トランジット』“In Transit ”[短編]
 ・1989年 『躍動』 “Ce qui me meut” [短編]
 ・1992年 『百貨店大百科』“Riens du tout(Little Nothings)”
 ・1994年 『金魚』“Poisson rouge ”[短編]
 ・1994年 『青春シンドローム』“Le Péril jeune(Les Années lycée: péril jeune – 1975/ Good Old Daze)”
 ・1994年 “3000 scénarios contre un virus”[オムニバス映画]
 *エイズ撲滅と正しい理解を求めることを目的に作られたオムニバス映画のようで、直接・間接にエイズやエイズ予防に関することを題材に、30人の監督が短編を手がけています。主な監督は、ジェーン・バーキン、カロリーヌ・シャンプティエ、ブノワ・ジャコ、ジェラール・ジュニョ、フィリップ・リオレ、トニ・マーシャル、レティシア・マッソン、ヴィルジニ・テヴネら。クラピッシュ作品は『金魚』“Poisson rouge ”と“La Chambre”が入れられています。
 ・1995年 “Lumière et compagnie(Lumière and Company) ”[オムニバス映画]
 *世界初の映画撮影用カメラ“シネマトグラフ”を使って製作された、40名の映画監督によるオムニバス映画。参加監督は、ヴィム・ヴェンダース、ジャック・リヴェット、スパイク・リー、ジェームズ・アイヴォリー、ピーター・グリーナウェイ、アッバス・キアロスタミ、アーサー・ペン、テオ・アンゲロプロス、アンドレイ・コンチャロフスキー、デイヴィッド・リンチ、吉田喜重ら。総監督がサラ・ムーン。
 ・1996年 『猫が行方不明』“Chacun cherche son chat(When the Cat's Away)”
 ・1996年 『家族の気分』“Un air de famille(Family Resemblances)”
 ・1998年 “Le Ramoneur des lilas”[短編]
 ・1999年 『パリの確率』“Peut-être(Maybe/ Perhaps) ”
 ・2002年 『スパニッシュ・アパートメント』“L'Auberge espagnole(The Spanish Apartment)”
 ・2003年 『スナッチ・アウェイ』“Ni pour, ni contre (bien au contraire)( Not for or Against) ”
 ・2005年 『ロシアン・ドールズ』“Les Poupées russes(The Russian Dolls)”
 ・2008年 “Paris”

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