殴られたら、殴り返せ!? ビル・プリンプトン “push comes to shove”

 公式サイトによると、本作は、ローレル&ハーディから発想した作品で、この2人のキャラクターはCMやゲーム、そしてTシャツにもなっているそうです。



 【物語】
 2人の中年男が並んでいて、順番に相手の顔を“攻撃”する。

 ・(左→右)殴る。

 ・(右→左)殴る。

 ・(左→右)相手の両耳を結んでひっぱり、その間に岩をはさんで、パチンコの要領で顔にぶつける。

 ・(右→左)相手の口に棒を突っ込んで、口の中で回転させた後、外側から上下からたたいて、棒を粉々にする。

 ・(左→右)相手鼻の穴に大砲を突っ込んで、爆弾を発射させる。

 ・(右→左)相手頭をはずして首に火のついたダイナマイトを突っ込んだ後、頭を戻して爆発させる。

 ・(左→右)相手コップの中に舌を入れて感電させる。

 ・(右→左)相手舌を引っ張って頭にぐるぐる巻きにし、独楽をまわす要領で引っ張る。

 ・(左→右)相手顔にボールの縫い目を描いて、バットで打つ。

 ・(右→左)相手鼻を引っ張って、ねじった後、首から頭をハサミで切って、ねじれを元に戻させる。

 ・(左→右)相手の頭の上に器具を乗せて、それを使って後頭部に衝撃を加え、目玉を飛び出させる。

 ・(右→左)相手の顔に芝を生えさせて、芝刈り機で刈る。

 ・(左→右)相手の顔にコンペイトウのような突起を出させた後、顔の皮を剥がして絞る。

 ・(右→左)相手の目を引っ張り出して、靴ひもを通すように顔の開口部を通す。

 ・(左→右)相手の口の中に犬とネコを入れてケンカさせ、さらにその後でネズミを入れてケンカを激化させる。

 ・(右→左)相手の顔に“しっぺ”をする。すると相手が泣いてしまったので慰める。

画像

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 タイトルの“push comes to shove”というのは、「いざという時には」という意味の言い回しですが、押せば(push)押し返される(shove)といったような意味で使われているのでしょうか。

 本作で使われている、目玉を飛び出させる時に使う器具、顔にコンペイトウのような突起を出現させる粉(?)は、何なのか、本当は何に使われるものなのか私は知らないのですが、アメリカではわりとメジャーなものなのでしょうか。

 ビル・プリンプトン作品には、ヤン・シュヴァンクマイエル作品をイメージさせる作品がわりと多い(しかし、その逆はない)のですが、本作もそうで、相手を暴力的に破壊しまくって互いに平気な顔をしているという点で、本作はシュヴァンクマイエルの『男のゲーム』等の作品を連想させます。
 ただし、本作がドリフターズのようなスラップスティックなギャグでしかない(スラップスティックなギャグに徹底している)のに対して、『男のゲーム』は人が人と争うことへの強迫観念や、人がサッカーというゲームに熱狂することへの懐疑から作られた作品であるということに大きな違いを見て取ることができます。

 ◆作品データ
 1991年/米/5分59秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

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 ◆監督について
 ピル・プリンプトン
 1946年 オレゴン州ポートランド生まれ。3男3女の6人兄弟の1人。父は銀行員。
 14歳の時にディズニーに自分の描いたマンガとアニメーターになりたいという手紙を送ったが、まだ早すぎると断りの返事をもらう。
 1964年 オレゴン市立高校を卒業し、ポートランド州立大学に入学。
 大学では、映画同好会に入り、年鑑の編纂委員も務めた。彼が最初に作ったアニメーションは、年鑑のためのプロモーション作品だという。
 1967-72年 ベトナム戦争への徴兵を逃れるために、国家警備隊に入隊。
 1968年 ニューヨークのビジュアル・アートの学校に入学。専攻はグラフィック・デザイン。
 ニューヨークでは長らくイラストレーターや漫画家として活躍し、“Cineaste”や “Filmmakers Newsletter”、“Film Society Review”といった雑誌のデザインを担当し、「ニューヨーク・タイムズ」や「ヴィレッジ・ヴォイス」「ローリング・ストーン」「ヴォーグ」「ヴァニティ・フェア」にもイラストを提供した。
 1975年に“The Soho Weekly News”紙で、“Plympton”という政治マンガを始め、1981年にはユニバーサル・プレスの配信により12紙以上の新聞に掲載されるようになった。
 アニメーションを作るようになったのは1983年になってからで、Jules Feifferの曲 “Boomtown”のための作品で、プロデューサーからの依頼で制作に取りかかった。
 以後、取り憑かれるようにしてアニメーション作品を制作し、現在にいたるまで世界中の映画祭を席捲している。
 数多くの短編アニメーション作品のほか、中編アニメーションを1本、長編アニメーションを4本、実写作品を3本(うち2本はドキュメンタリー)を制作している。
 1987年の『君の顔』、2004年の『ガード・ドッグ』でアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート、1997年の『スーパー変態ハネムーン 花婿はヘンな人(新郎は変な人)』と2001年の『ミュータント・エイリアン』ではアヌシー国際映画祭グランプリを受賞。2007年にはアニー賞でウィンザー・マッケイ賞(生涯貢献賞)を受賞。そのほか受賞した賞は数知れない。

 ネット上で観られる短編は基本的にはギャグ・コメディーですが、ギャグにはしても、対象を見下すことで笑いを取っているわけではないので、嫌な感じはしません。

 プリンプトンが作り出す笑いには2通りあって、人間の欲望や強迫観念、うかつさ、妄想などを笑うもの(人間観察による)と、連想や誇張、エスカレートなどによって笑わせるもの(自由な発想による)とがあるようです。

 1988年の“Self Portrait”は、川本喜八郎、手塚治虫、ヤン・シュヴァンクマイエルら世界中のアニメ作家が自分(自画像)を題材にして作った競作短編ですが、プリンプトンは、元々、顔(の変容)を題材にした作品の多いアニメ作家のようです。

 テックス・エイヴリーが好きらしく、本人もその影響を認めているらしいのですが、シュヴァンクマイエル作品に通じるものを感じる作品も多々あります。

 ・1985年 “Drawing Lesson #2”
 ・1985年 “Boomtown”
 ・1987年 『君の顔』“Your Face”  *1988年アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 ・1987年 “Love in the Fast Lane”
 ・1988年 “Self Portrait”
 ・1988年 “One of Those Days”
 ・1989年 “How to Kiss”
 ・1989年 『タバコをやめるための25の方法』“25 Ways to Quit Smoking”
 ・1990年 “Tango Schmango”
 ・1990年 “Dig My Do”
 ・1991年 “Push Comes to Shove”
 ・1991年 “The Wiseman”
 ・1991年 『プリンプトゥーンズ』“Plymptoons”
 ・1992年 “The Tune”[中編]
 ・1993年 “Draw”
 ・1994年 “Nose Hair”
 ・1994年 “J. Lyle”[長編][実写]
 ・1994年 “Faded Roads”
 ・1995年 『女の攻略法』“How to Make Love to a Woman”
 ・1995年 “Guns on the Clackamas: A Documentary” [長編] [実写]
 ・1996年 “Smell the Flowers”
 ・1996年 “Boney D”
 ・1997年 “Walt Curtis: The Peckerneck Poet”[中編] [実写]
 ・1997年 “Spike and Mike's Festival of Animation Sick & Twisted Volume 4”(V)
 ・1997年 “Sex and Violence”
 ・1997年 “Mondo Plympton” [長編]
 ・1997年 『スーパー変態ハネムーン 花婿はヘンな人(新郎は変な人)』“I Married a Strange Person!” [長編] *1998年 アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞、アニー賞長編アニメーション部門ノミネート 日本版DVDリリースあり
 ・1998年 “More Sex and Violence”
 ・1998年 “General Chaos: Uncensored Animation”
 ・1999年 『サプライズ・シネマ』“Surprise Cinema”
 ・1999年  『ある木のエキサイティングな一生』“The Exciting Life of a Tree”
 ・2000年 “Can't Drag Race with Jesus”
 ・2001年 “Eat”
 ・2001年 “12 Tiny Christmas Tales”(V)
 ・2001年 『ミュータント・エイリアン』“Mutant Aliens” [長編] *2002年 アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞
 ・2003年 『駐車場』“Parking”
 ・2004年 『ヘア・ハイ』“Hair High”[長編]
 ・2004年 『ガード・ドッグ』“Guard Dog” *2005年アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート DVD『広島国際アニメーション傑作選 vol.1』に収録
 ・2005年 『花と扇風機』“The Fan and the Flower”
 ・2006年 “Guide Dog”
 ・2006年 “Don't Download This Song”(“Straight Outta Lynwood )(V)
 ・2006年 “Don't Download This Song”(“Al TV”) (V)

 *参考サイト

 ・ビル・プリンプトンの公式サイト Bill Plympton On-Line!:http://www.awn.com/plympton/

 ・Acme Fimworks:http://www.acmefilmworks.com/dir_folders/dirPlympton/plympton.html#

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