それでもやめられないものはやめられない 『タバコをやめるための25の方法』

 『タバコをやめるための25の方法』
 ビル・プリンプトンですから、当然ギャグなんですが、一般的な禁煙法を誇張したものも多く、まんざら真実が含まれていないこともない、のではないでしょうか。



 1.HIRE SOMEONE TO WATCH OVER YOU(監視のために誰かを雇う)
 2.REMOVE THE ORIFICE OF ENTRY(開口部を取り去る)
 3.USE HEAT-SEEKING MISSILES(熱源感知ミサイルを使う)
 4.MAKE IT HARD TO LIGHT UP(火をつけにくくする)
 5.MAKE IT HARD TO LIGHT UP Ⅱ(火をつけにくくする その2)
 6.LEARN HOW TO KEEP DANGEROUS SMOKES FROM ENTERING YOUR LUNGS(危険な煙が肺に入らないようにすることを学ぶ)
 7.SEEK DIVEINE INTERVENTION(神頼みする)
 8.SEEK MORE DIVEINE INTERVENTION(もっと神頼みする)
 9.USE AVERSION THERAPY(嫌悪療法を試みる)
 10.LOCK YOUR CIGARETTES IN A CAR ON A HOT DAY(暑い日に車の中にタバコを入れてロックする)
 11.EMPATHIZE WITH THE CIGARETTE(タバコの感情移入する)
 12.CLOSE OFF THE ENTRENCE(入り口を閉じる)
 13.TRY DIFFERENT LIGHTS(違った火のつけ方を試みる)
 14.NOTICE HOW SMOKING AGES YOU(喫煙すると老化することを自覚する)
 15.USE A SMOKE ALARM(煙探知機を利用する)
 16.HIDE YOUR CIGARETTE(タバコを隠す)
 17.CLOSE OFF THE AIR PASSAGE WAY(空気の通り道を塞ぐ)
 18.OVERINDULGE(過剰摂取)
 19.USE SAFER ORIFICES(より安全な開口部を使う)
 20.TRY TO BREATHE FREE(思いっきり息を吸ってみる)
 21.JOIN AN AFRICAN TRIBE(アフリカの部族に入る)
 22.KEEP A PET TOBACCO BEETLE(タバコ好きの虫を飼う)
 23.USE SELF-DISCIPLINE(自制する)
 24.IMAGINE YOUR LIFE IF YOU LOST YOUR MOUTH TO CANCER(癌で口が無くなってしまった人生を想像してみる)
 25.TAKE A GOOD LOOK AT YOUR LUNGS(自分の肺の中を覗いてみる)

 CONGRATULATIONS YOU’VE QUIT! NOW YOU CAN WALK IN THE FRESH AIR AND BREATH FREE!(おめでとう。あなたはタバコをやめることができました。新鮮な空気の中を散歩して思いっきり空気を吸うことができます!)

画像

 ちょっとビル・プリントンの偏見らしきものが感じられるパートもなきにしもあらず(笑)ですが、まあ、それはそれとして、喫煙すると××になっちゃうよとか、禁煙を破ると××ということになるとかいうようなことはギャグにしても、禁煙自体をギャグにすることは一切していない、ということはちょっと注目に値することではないでしょうか。普通だったらそっちの方向で笑いを取りにいきそうなものですが、禁煙しようと頑張ってる人を笑いの対象にはしないんですね。ここらへんは、喫煙に対してより厳格なアメリカ社会を反映しているのかもしれません。

 ビル・プリンプトン自身は喫煙者かどうかということもちょっと気になりますが、作品を見る限りでは、「やめたくてもやめられないでいる。そしてやめられないことを半ばあきらめて、そういう自分を受け入れてしまっている」か、もしくは「以前は吸っていたが、今はやめていて、禁煙の苦労はよく知っている」かのどちらかでしょうか。こんなギャグ・アニメではありますが、禁煙したいという思いに対して確かに感情移入が感じられますから。

 アニメーションとしては、お得意の顔をいじりまくるネタと、爆発したり、血まみれになったりというマゾヒスティクなネタが多いですね。
 ビル・プリンプトンのアニメーションがスマートに感じられるのは、1つには、他人を見下して笑うのではなく、自分を素材にして笑いを取っているようなところがあるからですが、そのことについては、また別の機会にまとめてみたいと思います。

 ◆作品データ
 1989年/米/4分48秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

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 ◆監督について
 ピル・プリンプトン
 1946年 オレゴン州ポートランド生まれ。3男3女の6人兄弟の1人。父は銀行員。
 14歳の時にディズニーに自分の描いたマンガとアニメーターになりたいという手紙を送ったが、まだ早すぎると断りの返事をもらう。
 1964年 オレゴン市立高校を卒業し、ポートランド州立大学に入学。
 大学では、映画同好会に入り、年鑑の編纂委員も務めた。彼が最初に作ったアニメーションは、年鑑のためのプロモーション作品だという。
 1967-72年 ベトナム戦争への徴兵を逃れるために、国家警備隊に入隊。
 1968年 ニューヨークのビジュアル・アートの学校に入学。専攻はグラフィック・デザイン。
 ニューヨークでは長らくイラストレーターや漫画家として活躍し、“Cineaste”や “Filmmakers Newsletter”、“Film Society Review”といった雑誌のデザインを担当し、「ニューヨーク・タイムズ」や「ヴィレッジ・ヴォイス」「ローリング・ストーン」「ヴォーグ」「ヴァニティ・フェア」にもイラストを提供した。
 1975年に“The Soho Weekly News”紙で、“Plympton”という政治マンガを始め、1981年にはユニバーサル・プレスの配信により12紙以上の新聞に掲載されるようになった。
 アニメーションを作るようになったのは1983年になってからで、Jules Feifferの曲 “Boomtown”のための作品で、プロデューサーからの依頼で制作に取りかかった。
 以後、取り憑かれるようにしてアニメーション作品を制作し、現在にいたるまで世界中の映画祭を席捲している。
 数多くの短編アニメーション作品のほか、中編アニメーションを1本、長編アニメーションを4本、実写作品を3本(うち2本はドキュメンタリー)を制作している。
 1987年の『君の顔』、2004年の『ガード・ドッグ』でアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート、1997年の『スーパー変態ハネムーン 花婿はヘンな人(新郎は変な人)』と2001年の『ミュータント・エイリアン』ではアヌシー国際映画祭グランプリを受賞。2007年にはアニー賞でウィンザー・マッケイ賞(生涯貢献賞)を受賞。そのほか受賞した賞は数知れない。

 ネット上で観られる短編は基本的にはギャグ・コメディーですが、ギャグにはしても、対象を見下すことで笑いを取っているわけではないので、嫌な感じはしません。

 プリンプトンが作り出す笑いには2通りあって、人間の欲望や強迫観念、うかつさ、妄想などを笑うもの(人間観察による)と、連想や誇張、エスカレートなどによって笑わせるもの(自由な発想による)とがあるようです。

 1988年の“Self Portrait”は、川本喜八郎、手塚治虫、ヤン・シュヴァンクマイエルら世界中のアニメ作家が自分(自画像)を題材にして作った競作短編ですが、プリンプトンは、元々、顔(の変容)を題材にした作品の多いアニメ作家のようです。

 テックス・エイヴリーが好きらしく、本人もその影響を認めているらしいのですが、シュヴァンクマイエル作品に通じるものを感じる作品も多々あります。

 ・1985年 “Drawing Lesson #2”
 ・1985年 “Boomtown”
 ・1987年 『君の顔』“Your Face”  *1988年アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 ・1987年 “Love in the Fast Lane”
 ・1988年 “Self Portrait”
 ・1988年 “One of Those Days”
 ・1989年 “How to Kiss”
 ・1989年 “25 Ways to Quit Smoking”
 ・1990年 “Tango Schmango”
 ・1990年 “Dig My Do”
 ・1991年 “Push Comes to Shove”
 ・1991年 “The Wiseman”
 ・1991年 “Plymptoons”
 ・1992年 “The Tune”[中編]
 ・1993年 “Draw”
 ・1994年 “Nose Hair”
 ・1994年 “J. Lyle”[長編][実写]
 ・1994年 “Faded Roads”
 ・1995年 『女の攻略法』“How to Make Love to a Woman”
 ・1995年 “Guns on the Clackamas: A Documentary” [長編] [実写]
 ・1996年 “Smell the Flowers”
 ・1996年 “Boney D”
 ・1997年 “Walt Curtis: The Peckerneck Poet”[中編] [実写]
 ・1997年 “Spike and Mike's Festival of Animation Sick & Twisted Volume 4”(V)
 ・1997年 “Sex and Violence”
 ・1997年 “Mondo Plympton” [長編]
 ・1997年 『スーパー変態ハネムーン 花婿はヘンな人(新郎は変な人)』“I Married a Strange Person!” [長編] *1998年 アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞、アニー賞長編アニメーション部門ノミネート 日本版DVDリリースあり
 ・1998年 “More Sex and Violence”
 ・1998年 “General Chaos: Uncensored Animation”
 ・1999年 “Surprise Cinema”
 ・1999年 “The Exciting Life of a Tree”
 ・2000年 “Can't Drag Race with Jesus”
 ・2001年 “Eat”
 ・2001年 “12 Tiny Christmas Tales”(V)
 ・2001年 『ミュータント・エイリアン』“Mutant Aliens” [長編] *2002年 アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞
 ・2003年 “Parking”
 ・2004年 『ヘア・ハイ』“Hair High”[長編]
 ・2004年 『ガード・ドッグ』“Guard Dog” *2005年アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート DVD『広島国際アニメーション傑作選 vol.1』に収録
 ・2005年 『花と扇風機』“The Fan and the Flower”
 ・2006年 “Guide Dog”
 ・2006年 “Don't Download This Song”(“Straight Outta Lynwood )(V)
 ・2006年 “Don't Download This Song”(“Al TV”) (V)

 *参考サイト

 ・ビル・プリンプトンの公式サイト Bill Plympton On-Line!:http://www.awn.com/plympton/

 ・Acme Fimworks:http://www.acmefilmworks.com/dir_folders/dirPlympton/plympton.html#

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