日本で紹介された時には亡くなっていました…… パヴェル・コウツキー 『決闘』

 <チェコアニメ映画祭2006>で初めて紹介されたチェコのアニメ作家パヴェル・コウツキー。
 <チェコアニメ映画祭2006>では、8作品が上映され、その8作品がDVD化されましたが、『決闘』は日本未公開作品です。



 【物語】 (冒頭に短い解説がついていますが、テレビで放映されたものを投稿した動画らしく、この部分は無視してかまいません)
 幼児がベルトコンベアーに乗せられて、移動していく。上からは、漏斗を使って、頭の中にどんどん知識が詰め込まれていく。ぬり絵から始まって、成長にともない、アルファベット、数字、童話、教科書……、とどんどん高度な内容になっていく。
 対象となった子どもは、自由にぬり絵したり、アルファベットや数字で遊んだり、本に落書きしたり、ヌードに関心を示したり、小説に興味を持ったりするが、そうした“逸脱行為”は許されず、どんどん先に進まされる。
 そうして、子どもたちは成人となり、完成品としてベルトコンベアーの端から社会へと送り出されるが、やがて、自分たちの運命を悟った子どもたちの抵抗が始まる。漏斗を投げつけ、本で応戦する。
 子どもたちはついに勝利し、読みたい本を読み、聴きたい音楽を聴けるようになる。
 しかし、やっつけられた側のハサミが敗れた仲間たちの間から姿を現し、まだやられてないぞと復讐の機会を窺う……。

 ベルトコンベアー式&画一化教育に対する子どもたちの抵抗を描いた作品で、邦題は『決闘』となっていますが、これは内容を確認せずに、原題から直訳しただけのもののようで、内容に合わせて翻訳すれば『闘争』になります。

 『メディア』で、「ニュースをピックアップする」というのを、「地球儀の中から肉片を取り出して加工する」という形で見せたコウツキーは、『決闘』では、「子どもたちが当局に対抗する」というのを「当局からのハサミや釘による攻撃を本でたたきつぶす」という形で表現しています。これらは、シュヴァンクマイエルが好きだと公言しているコウツキーによる、シュヴァンクマイエルへのオマージュとして見て取れる部分ですね。
 「当局からの攻撃を本でたたきつぶす」というのは、もちろん「当局からの攻撃を、本で得た知識で対抗する」ということのメタファーです。

画像

 ◆作品データ
 1996年/チェコ・カナダ/6分
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

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 ◆監督について
 パヴェル・コウツキー
 鉛筆画に彩色という独特のスタイルが特徴で、シニカルな内容の作品を得意とする。
 好きなアニメ作家は、バルタ、シュヴァンクマイエル、ポヤルだと発言していて、シュヴァンクマイエルの諸作品の影響が見られる作品も多い。

 1957年 プラハ生まれ、2006年4月15日没。
 プラハ工芸美術大学で学ぶ。
 1984年 クラートキー・フィルムで活動を始める。

 日本では<チェコアニメ映画祭2006>のAプロ&Bプロで『バイオリン・コンサート』『カタストロフィー』『ジレンマ』『履歴書』『ひとめぼれ』『ネズミ、万歳!』『カフェ』『メディア』が上映されたんですが、この会期中にコウツキーは亡くなってしまいました。
 彼は、チェコアニメ新世代の牽引者と見なされていたのですが、48歳という早すぎる死でした。

 ・1970年 『ホンザがどうやって世界に行ったか』
 ・1981年 『バイオリン・コンサート』 Houslový Koncert
 ・1981年 『3つのフォーラム』 Trojfórum
 ・1983年 『プラハにようこそ』 Navštivte Prahu
 ・1984年 『カタストロフィー』Katastrofy
 ・1985年 『ラテルナ・ムジカ』Laterna musica
 ・1986年 『履歴書』 “Curriculum vitae”
 *1987年ベルリン国際映画祭短編部門金熊賞受賞
 ・1987年 『視覚の外』“Láska na první pohled(Love at First Sight)”
 ・1987年 『ヤン・ナープラヴーニクの静かな世界』 Tichý svĕt Jana Nápravníka
 ・1987年 『一歩から進歩へ』 Od krouku k pokroku
 ・1987年 『ひとめぼれ』 Láska na první pohled
 *1988年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1988年 『ポートレート(セルフポートレート)』 “Portrét”
 *この作品は、アニメ作家David Ehrlichが、1988年に、5カ国(チェコスロヴァキア、エストニア、日本、アメリカ、ユーゴスラヴィア)のアニメーターに自分をモチーフにして作品を作るよう依頼した短編の1つで、他のアニメーターは――
 イジー・バルタ、サリー・クルックシャンク、ボリヴォイ・ドヴニコヴィチ、David Ehrlich、川本喜八郎、木下蓮三、Candy Kugel、マッティ・キュット、ニコラ・マイダック、Josko Marusic、手塚治虫、プリート・パルン、ビル・プリンプトン、Maureen Selwood、ヤン・シュヴァンクマイエル、リホ・ウントゥ、ハルディ・ヴォルメル、Dusan Vokoti。
 *1990年 カンヌ国際映画祭短編部門出品
 ・1990年 『マルクス・レーニン主義の最後の100年』“Posledních 100 let Marx-Leninismu v Cechách(Last 100 Years of Marx-Leninismus in Bohemia)”
 *1991年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1993年 『ネズミ、万歳!』 “At zije mys!( Long Live the Mouse!)”
 *1993年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1993-95年 『ハラリ』 テレビ・シリーズ7話
 ・1994-95年 『ノーコメント』 テレビ・シリーズ90話
 ・1996年 『決闘』 “Duel”
 ・1997年 『コマーシャル』 Reklama
 ・1998年 『わが祖国』 Mà vlast
 ・1998年 『2000年の世界』 Svét2000
 ・1998年 『カフェ』 “Kavárna(Coffee-House)”
 *チェコ批評家賞受賞
 ・2000年 『メディア』 “Média”
 *2000年アヌシー国際アニメーションフェスティバル 国際批評家連盟賞受賞、2000年ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞&エキュメニカル審査員特別賞受賞
 ・2001年 『ピグマリオン』 Pygmalion
 ・2001年 『ド・ポルキー』 テレビ・シリーズ
 ・2003年 『マイ・ビューティフル・ボヘミア』 cechy krasne,cechy me
 ・2003年 『4つの愛』 “Ctyri lásky(Four Loves)”
 ・2005年 “Letters from Czech Repubric”  *愛・地球博で上映されました(ミハエラ・パヴラートヴァー、イジー・バルタ、アウレル・クリムトとの共同作品)。
 ・2006年 『フィムファールム』 Fimfarum Ⅱ

 *<チェコアニメ映画祭2006>で上映された8作品は、DVD『Fantastic! Czech Animation 80’s~90’s 2D傑作アニメーション』に収録されています。

 *当ブログ関連記事 「チェコアニメ映画祭2006、または、エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー」:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200605/article_7.html

 *関連書籍
 ・『メッセージ・フロム・チェコアート』(アーティストハウス)
 日本で上映された作品の紹介と監督へのインタビューが掲載されています。

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