行間を楽しむ 『バニー』 クリス・ウェッジ

 のちに『アイス・エイジ』や『ロボッツ』を作って、アメリカの長編アニメ市場に参入していくことになるブルー・スカイ・スタジオの最初の成果がこの作品で、見事アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞しています。

 

 【物語】 台所でパンケーキを作ろうしているバニー。
 しかし、灯りに蛾が飛んできて目障りでならない。
 台所には、バニーの結婚式の写真が飾ってあり、妻に先立たれているらしいということがわかる。バニーも年老いていて、歩行器を使わないと歩けないほど脚を悪くしている。
 いいかげん蛾にうんざりしたバニーは、蛾をはたき落とすとパンケーキの生地ごとオーブンで焼いてしまう。
 やがてオーブンの中から不思議な青い光がもれてくる。
 オーブンを開けると、バニーは青い光に包まれる。バニーは光に誘われるまま、オーブンの中へと入っていく。そして光の差す方へ……。
 バニーはたくさんの蛾とともに光に向かって高く高く上っていく。
 結婚式の写真の中のバニーと妻は、互いを見詰め合って、やさしく寄り添ったように見える。

 最初にこの作品を観た時は、あれっ、もう終わっちゃうの? どういうことなの?って印象を持ってしまいましたが、その瞬間から、頭の中でフィードバックが始まって、ああ、そういうことだったのかと思い至るのにそんなに時間はかかりませんでした。
 簡単に言ってしまうと、バニーは孤独な独り暮らしから解放されて、ようやく天に召され、天国で愛しい奥さんと再会しましたとさ、ということなんですが、行間からにじみ出てくるものがあり、ここで直接描かれていないこともいろいろ想像させてくれるので、なかなか味わい深いんですね。バニーの結婚生活から、奥さんを失ってからの傷心の日々、そこから立ち直って独りで何でもするようになった日常……。

 難を言えば、バニーがどうみてもウサギに見えないことで、最初、バニーというからウサギかと思って観ていくと、ルックスからするとネズミで、そう思いながらしばらく観ていくと、やっぱりウサギらしいことがわかって、あれ?あれ?あれ?って思ってしまうんですね。
 これって、『アイス・エイジ』のスクラットがどうみてもリスに見えないのと同じですが、ステレオタイプのルックスをしたウサギやリスにする方が簡単なはずなのに、そうしなかったのはきっと意図があってのことで、おそらく自分の作品の主人公に、ユニークでオリジナルなルックスを与えたかったからだ、と思われます。

 一見、パペット・アニメーションかとも思ってしまいますが、やっぱりCGで、こうした技術的な側面も評価されてアカデミー賞に選ばれたのだと思います。

 この作品は、ブルー・スカイ・スタジオにとって、ピクサーにおける『ルクサーJr.』のような存在であるのか、今でも公式サイトが残されていて、そこではこの動画も観られるようになっています。

 *『バニー』公式サイト:http://bunny.blueskystudios.com/

 蛾も一緒にオーブンで焼いてしまってもいいのかとも思ってしまいますが、まあウサギだからいいのでしょう(笑)。

 蛾の象徴するものは何かということも気になりますが、それはちょっと曖昧にぼかされているようです。天国の使者? それとも、これから天に召される魂? まさか奥さんの化身ということはないですよね?(笑)。

画像

 ◆作品データ
 1998年/米/7分6秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション
 1999年 米国アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。その他、受賞歴あり。

 *この作品は、DVD『アイス・エイジ 特別編』に収録されています。

 ◆監督について
 クリス・ウェッジ

 c1958年生まれ。ニューヨーク、クイーンズ育ち。
 オハイオ州立大学のAdvanced Computing Center for the Arts and Design (ACCAD)で、コンピューター・グラフィックスと芸術教育の修士号を取得。
 1981年 SUNY Purchase film department卒業。

 ・1982年 『トロン』“magi/synthavision scene programmer”
 ・1985年 “Tuber’s Two Step”[監督]
 ・1987年 “Balloon Guy” [監督、アニメーター]
 ・1990年 “The Mind’s Eye”[プロデューサー]
 ・1996年 『ジョーズ・アパートメント』[アニメーション・ディレクター]
 ・1997年 『エイリアン4』[クリエイティブ・スーパーバイザー]
 ・1998年 『バニー』[監督、脚本]
 ・2002年 『アイス・エイジ』[監督、声]
 ・2002年 “Gone Nutty”[エグゼクティブ・プロデューサー、声]
 ・2005年 『ロボッツ』[監督、声]
 ・2006年 『アイス・エイジ2』[エグゼクティブ・プロデューサー、声]
 ・2006年 『熱血どんぐりハンター』[エグゼクティブ・プロデューサー、声]
 ・2008年 “Horton Hears a Who” [エグゼクティブ・プロデューサー]

 *クリス・ウェッジは、『アイス・エイジ』シリーズで、スクラットの声(鳴き声)も担当しています。

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