本年度BAFTA(英国アカデミー賞)グランプリ作品 “guy101”

 今年のBAFTA(英国アカデミー賞)でグランプリを受賞した作品“guy101”。
 全編英語のナレーションで進行しますが、ナレーション自体、非常にゆっくりとわかりやすく話してくれるし、特に難しい単語もなく、中学英語程度の英語力で、言っていることはだいだいわかると思います。
 下に、スクリプトも用意しましたので、それを参考して、じっくり観てみることもできますが、ドキドキ感が身上の映画なので、まずは予備知識なしで試すことをオススメします。

 


 【物語】 インターネットのチャットルームで1人の男性と知り合う。
 彼のハンドルネームは“guy101”。
 何度もやりとりするうち、段々と相手のことがわかってきた。
 オハイオ州に住む、42歳の、男性で、名前はキース。
 写真も見せてくれたが、なぜか上半身は裸。
 キャンプが好きなこと、クラシック・カーが好きなこと、ボーリングのアベレージ、などなど、彼についていろんなことがわかってくる。
 3階建ての家に1人で住み、パソコンは3階に置いている。
 なぜそんな大きな家に1人で住んでるのかと訊くと、8年前にパートナーが死んでしまったからだと彼。
 そのことに関係があるのかないのか、彼はヒッチハイカーのことを話し始める。
 ある時、1978年型の黒のマーキュリー・クーガーを運転してると、しわがよった格子柄のシャツにハンター帽をかぶった男性がヒットハイクしているのを見つけた。
 キースは彼を乗せてあげる。
 2人はしばらくは無言だったが、やがて彼の方から話しかけてくる。
 「俺はムラムラしてるんだ」
 「えっ?」
 「女を知ってるか?」
 「いや」
 「ストレートなのか?」
 「いや」
 「俺のをしゃぶれよ」
 「わかった」
 車はキースの家に近づいてくる。
 キースは彼を3階に上げ、ビールでもてなす。
 キースは服を脱ぎ、彼はズボンのベルトを外す。
 彼は、キースに暴行を加え、縛り、目隠しして、キースの車でどこかへ行ってしまった。
 3時間後、彼が戻ってくる。タバコとハンティング・ナイフと357マグナムを持って。
 彼は、キースを蹴飛ばし、タバコの火を押し付け、ナイフで切り付けてくる。
 そして、口にマグナムをつっこむと、「俺がファックしてる間、そいつをくわえていろ!」
 やがて彼はキースを解き、去った。
 キースの体には、17のあざと7つの切り傷、3つの捻挫、3度の火傷が5つ、残された。
 後悔してるのは、とキース。
 彼の連絡先を聞かなかったことだ。

 短編アニメとしては、そう凝ったものではありません。
 が、趣向に新しさがあるんですね。インターネット時代に、ワン・クリックごとに新しい世界が開けてくる、その未知の世界に触れる面白さ、そして、ひょっとしてヤバイことに首をつっこんでいるのかもしれないドキドキ感、がこの作品にはあります。

 ネットで知り合った相手のことを話しているだけですが、ネット上で知り合った相手が、好ましい人物とは限らないわけで、「うわぁ、そんな話を聞かされるとは思わなかった!」という衝撃というか、この物語の語り手が感じたと思われるのと、同じ緊張を、観る者もまた感じることになります。

 イギリスは、短編制作に熱心な国で、映画機関やBBCなどのテレビ局が短編制作に支援をし、上映や放映の機会を積極的に設けていることで知られています。ディズニーやピクサーなどのように、映画会社が総力を挙げて作るようなものとは違って、至って個人的で小さな作品ばかりですが、ユニークな作品が出てくることも多く、そこから長編制作へつなげる人もたくさんいるようです(リン・ラムジーとかピーター・ミュランとかショーナ・オーバックとか)。
 そういう環境で制作されて、BAFTAのグランプリを受賞した作品なわけですから、イヤが上にも期待してしまうわけですが、インターネット時代を象徴するような趣向の斬新さと明かされる物語に、審査員たちも衝撃を受けたということでしょう。

 こういう作品は1回限りのもので、そういう1回限りの作品にグランプリを上げていいのかなあと思ったりもしますが、この監督の他の作品(下記参照)を見てみると、水彩を使ったFlashや実験映画風の作品もあって、内容によって手法も様々に変えているようです。案外、器用で多才なのかもしれませんね。

 語り手とキース、キースと彼という2組の関係性も、対照的で、ちょっと面白いですね(対面性がないまま。お互いの細かいことをよく知っている関係と、一度逢っただけで互いのことを何も知らないまま強烈な体験を共有した関係)。

 8年前にキースがパートナーと死別したままで独り暮らししているという話とヒッチハイカーの話がどうつながるのか。キースがずっと独りで暮らしているのは、“彼”が戻ってくるのを待っているからということなのか、それとも……。
 私は、“彼”が一軒家の住人を殺して、入れ替わったんじゃないかとも考えてしまったんですが、それは考えすぎでしょうか。そういう人と偶然ネットでつながって、話をしてるかもしれないと思うと、またまた怖くなるのですが……。

 ひょっとすると、この話は、この監督が本当にネット上で聞き知った話なのではないかという可能性もありますが、どうでしょうか。

 ◆作品データ
 2005年/米/8分30秒
 英語台詞あり/字幕なし
 アニメーション
 BAFTA2007グランプリほか、受賞歴多数あり。

画像

 ◆監督について
 イアン・W・グールドストーン(Ian W. Gouldstone)
 1981年生まれ(推定)。
 1997-2001年 ハーバード大学で数学を専攻。
 2003-2005年 ロンドンのRoyal College of Artでアニメーションを専攻し、本作を制作。

 ひょっとすると、飛び級でハーバードに入った秀才クンなのかもしれません。“guy101”も理知的な作りの映画ですもんね。

 ・2000年 “All Very Well And Good”
 ・2001年 “Timber”
 ・2004年 “Corollary”
 ・2005年 “guy101”

 *公式サイト:http://www.iwgouldstone.com/port_film.html
 これまでの各作品を観ることができるほか、プレスキット(監督のバイオグラフィーや受賞歴、スクリプト等を含む)をダウンロードすることができます。

 *BAFTA2007のノミネーションと受賞結果はこちら:http://www.bafta.org/site/page287.html

 ◆スクリプト
I met this guy.

On the internet.

In a chat room.

His screen name was….

“Guy101”.

And his profile was pretty empty.
Just
“42. Male. Ohio.”

There was a small picture of him

with a large handlebar moustache.

And no shirt.

His name was Keith.

And over time,
we talked about all sorts of stuff:
cars, sports, politics, whatever.

I learned factoids like: “Keith bowls an average of 185 and wears a size 10 ½ shoe.” “He enjoys camping.” “Collects classic cars.” “Volunteers at a battered women’s shelter.” And alphabetizes his spice rack. Labels front.”

Anyways, he lives in Akron, Ohio
in this 3-story house
on a street called Twain Road.
It’s about two blocks from this big lake
that has lots of different fish in it. Dace, grouper, and Sunfish...

It’s all about 5 miles from the Goodyear Blimp airdock.

From what Keith tells me,
the first 2 floors of his house are … fetching. Antique furniture, original fittings, rescued trinkets. Everything in place.

Everything with a story.

But his computer is up on the third floor,
what Keith calls his junk space.
And when he sends me pictures.
You can’t see anything.
Not really.

And Keith lives alone in this big house, so I ask him, “Why you live alone in that big house?” and he tells me, “My partner died 8 years ago…”

Anyways. Once, he told me about the time
he picked up a hitchhiker
on Interstate 76.

The road was empty.
Keith was driving his 1978 black Mercury Cougar with 37,000 miles on it. Cruising at 55, he sees this guy on the side of the road in a wrinkled plaid shirt and a hunter’s cap.

The man’s holding out his thumb.
Keith stops… and picks him up.

They drive off… and they’re both pretty quiet… then the hitchhiker, he does this thing:

He says, “I’m horny.”
And Keith says, “O!”
Then he asks, “Do you know any women?”
And Keith says “No.”
Then he asks “Are you straight?”
And Keith says, “No.”
So he goes, “Suck my dick.”
And Keith says, “Yes.”

So they drive back towards Keith’s house,
passing the Goodyear Blimp Airdock and the lake.

Inside…
Keith offers the man a drink.
He wants a beer.
And then Keith asks, “Anything else?”

They’re now up on that 3rd floor.

And they get real close to each other.
Keith takes off his clothes.
The man takes off his belt.
He runs his hand up Keith’s back…
Right up his spine…
Past his neck…
And grabs him by the skull. Knees him in the gut. Throws him to the floor. Ties him up. Blindfolds him. And steals his car.

Three hours later
the man comes back. With a cigar. A hunting knife. And a 357 magnum.
He kicks Keith in the gut. Burns him with the cigar. Cuts him. Pushes the gun in Keith’s mouth and tells him to suck it while he fucks him.

And then
he unties him.
And leaves.

Keith ends up with 17 bruises, 7 cuts, 3 sprains, and 5 3rd degree burns all over his head, torso and limbs.

And the thing he tells me he really regrets?
And the thing he tells me he regrets?
Not getting the guy’s phone number…

 *この作品を他の誰かにも教えてあげたいと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック