心優しき兵士vs水車小屋に住みついた魔物! 『悪魔の水車小屋』 イジー・トルンカ

 トルンカ作品には、実に様々な題材が選ばれていますが、魔法や妖精をはじめ、不思議なもの、マジカルなもの、視覚的な驚きのあるものを取り入れた作品が多いようです(本作では、魔物のいたずらシーン)。トルンカ作品の中でSFの領域にまで踏み込んだものは『電子頭脳おばあさん』くらいしかありませんが、ファンタジックな要素がそこここに見られる作品は多く、これはトルンカ作品の1つの特徴と言えそうです。




 【物語】 兵士が手巻き式のオルガンを持って、旅をしている。しかし、その音色は虫も逃げ出すほどにひどい代物。
 兵士は、心優しい人物で、やっと子どもにもらったパンも、困った人をみつけるとあげてしまう。
 ある夜、兵士は水車小屋に泊まることにする。実は、その水車小屋は魔物が出ることで有名だったのだが、もちろん兵士はそんなことは知らない。
 兵士が眠っていると、魔物がいたずらを仕掛けてくる。布団が勝手に部屋を出て行ったり、ベッドが動いたり、部屋中の物が宙を舞ったり……。
 兵士は、魔物が現れても怖がることなく、むしろ相手がそんな“芸”を見せるならと、自分の手巻き式オルガンを奏でてみせる。すると、さすがの魔物も耐え切れずに降参して逃げ出してしまう。
 翌朝、のどかな朝がやってきて、何事もなかったように、水車がリズミカルに粉を引くのだった。

 画面が暗いので、残念ながら、何が起こっているのか、よくわからない部分があります。スクリーンだともっとはっきり見えるのですが、ネットでは限界があるようです。DVDではどうでしょうか。

 ◆作品データ
 1949年チェコスロバキア/20分33秒
 台詞あり/日本語字幕あり
 人形アニメーション

 この作品は、1989年の<イジィ・トルンカ アニメーション・フェアー>@川崎市市民ミュージアムで日本初公開されました。

 *
DVD『イジー・トルンカの世界2 「電子頭脳おばあさん」その他の短篇』に収録されています。

画像


 追記:この動画は視聴不可になりました。

 ◆監督について
 イジー・トルンカ
 1912年 チェコのピルゼン(プルゼニュ)で鉛管工の父と婦人服の仕立てを行なう母の間に生まれる。
 1923年 中学時代に人形作家であるヨゼフ・スクーパに出会い、人形劇に興味を持つようになる。
 1929-35年 プラハ美術工芸学校(現UMPRUM)応用グラフィック学科で学ぶ。
 1936-37年 スクーパの助手をしながら、人形劇団「木の劇場」を立ち上げ、プラハのロココ劇場で芝居を打つが、挫折。新聞にマンガや挿絵、児童文学を書くようになる。
 1939年 プラハの国民劇場で舞台美術を担当。大手出版社メラントリフにイラストレーターとして勤務。
 1945年 戦後、AFIT(アトリエ・フィルム・トリク)の仕事を任されたことをきっかけとして、映画に関わるようになる。AFITは国営化(クラートキー・フィルム・プラハ)され、トリック・ブラザーズ・スタジオとなる。トリック・ブラザーズ・スタジオは、セル・アニメを中心に制作するスタジオとなり、トルンカを中心とした人形アニメーションを制作するスタジオは別に設けられる(トルンカ・スタジオ)。
 最初は、お手本にする作品がディズニーくらいしかなく、見よう見まねでセル・アニメからスタートしたが、のちに自分の好みや才能と合った人形アニメと出会い(1947年『チェコの四季』)、以後、人形アニメを中心に続々と作品を発表。
 幼児向けの作品や民話、正直すぎる兵士が活躍するコメディー「善良な兵士シュベイク」シリーズ、『駅馬車』のパロディーである『草原の歌』、アンデルセンを原作とする『皇帝の鶯』やチェーホフ原作の『コントラバス物語』、シェークスピア原作の『真夏の夜の夢』、ボッカチオ原作の『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』など、様々なタイプの作品を作って、チェコ・アニメに一時代を築き、今なおスタジオにその名を残す。
 1955年 芸術功労賞
1963年 人民芸術功労賞
1968年 プラハ工芸美術大学(現UMPRUM)教授となる。国際アンデルセン大賞画家賞受賞。
 1969年 プラハにて没
 2004年 日本で<チェコ・アニメの巨匠 イジー・トゥルンカ展 子どもの本に向けたまなざし>開催

 1946年に『動物と山賊たち』でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞、1950年に『バヤヤ』でロカルノ国際映画祭優秀賞受賞、1959年に『真夏の夜の夢』でカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。ほか受賞歴多数あり。

 ルネ・ラルーや川本喜八郎も弟子の1人。

 『ほたるの子ミオ』『わんぱくビーテック』『ふしぎな庭』『花むすめのうた』などの絵本に挿絵を描いていて、絵本作家としてアンデルセン大賞も受賞している。

 ・1945年 『おじいさんの砂糖大根』
 ・1946年 『動物たちと山賊』
 ・1946年 『贈り物』
 ・1946年 『バネ男とSS』
 ・1947年 『チェコの四季』
 ・1948年 『皇帝の鶯』
 ・1949年 『悪魔の水車小屋』
 ・1949年 『コントラバス物語』
 ・1949年 『草原の歌』
 ・1950年 『バヤヤ』
 ・1951年 『金の魚』
 ・1951年 『楽しいサーカス』
 ・1952年 『チェコの古代伝説』
 ・1953年 『おじいさんの物々交換』
 ・1954年 『二つの霜』
 ・1954年 『クティチャーセクとクティルカ』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~コニャックの巻』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~列車騒動の巻』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~堂々めぐりの巻』
 ・1955年 『フルヴィーネクのサーカス』
 ・1958年 『ユネスコの話』
 ・1959年 『真夏の夜の夢』
 ・1961年 『情熱』
 ・1962年 『電子頭脳おばあちゃん』
 ・1964年 『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』
 ・1965年 『手』

 *参考書籍
 ・「イジィ・トルンカ・アニメフェアー」パンフ(1989年川崎市市民ミュージアム発行)
 ・『夜想34 パペット・アニメーション』(ペヨトル工房)
 ・『夜想35 チェコの魔術的芸術』(ペヨトル工房)
 ・『チェコアニメの巨匠たち』(エスクァイア マガジン ジャパン)
 ・「チェコ・アニメの巨匠 イジー・トゥルンカ展 子どもの本に向けたまなざし」図録

 *参考サイト
 ・ユトレヒト:http://www.utrecht.jp/person/?p=248
 *トルンカの絵本について、とても詳しく書かれています。
 ・クリチカ:http://kulicka.ocnk.net/product/153
 *チェコの絵本やアート本を扱う古書専門のネットショップ。
 ・Ciatrogatos:http://www.cuatrogatos.org/galeriatrnka.html
 トルンカの絵のいくつかを見ることができます。

 (注) トルンカのプロフィールはいくつかの資料などを参考にしましたが、資料により、固有名詞やデータにかなり食い違いがあります。

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