アレクサンドル・ペトロフがアート・ディレクターを務めた作品 “Welcome”

 『春のめざめ』『マーメイド』のアレクサンドル・ペトロフ監督がアート・ディレクターを務めた1986年の作品。



 【物語】 ムースの前に虫が現れる。「その大きな角の上に乗せてくれないかな」
 ムースは喜んで虫を角の上に乗せてあげる。
 ムースがどんどん歩いていくと目の前に蜘蛛の巣が現れる。
 蜘蛛は角の上に乗っかって、楽チンそうな虫を見て、羨ましがる。虫は、ムースはやさしいから蜘蛛さんも乗せてくれるよと言い、蜘蛛はムースの返事も待たずに、巣を撤収して、ムースの角の上に乗る。そして、角の上でハンモックを広げる。
 次にムースの前にキツツキが現れる。キツツキは、ムースの角に穴を開けて、その中にちゃっかりもぐりこんでしまう。
 今度は、木の上にいたリスたちがムースの角を見て、勝手に飛び移ってきてしまう。
 ムースが切り株から生えていたキノコを食べようとすると、角を上からそれを見つけたリスたちが根こそぎさらっていってしまう。
 さらにムースが進んでいくとクマが道をふさぐ。「その角はどうしたんだい?」
 「いや、あの、ボクのお客さんなんだよ」
 「お客さん? 何か大事なことを忘れてないかい?」
 「う~ん……」
 「ボクも仲間に入れることだよ」と言って、クマもちゃっかりムースの角の上に乗ってしまう。
 ムースが歩いていって、岸辺に達する。ムースが水の中に入って行こうとすると、角の上にいる者たちが反対する。
 「この角は誰のものだと思ってるんだ?」
 「ボクのだけど……」
 「ボクのものでもある」「私たちのものだ」
 「よし、じゃあ、渡っていいかどうか、投票しよう。反対のものは?」
 「反対!」「反対!」「反対!!!」
 「じゃあ、反対多数で渡らないことに決定!」
 その時、近くで銃声が聞こえる。
 ムースは一目散に逃げ、なんとかハンターから逃れることに成功する。
 角の上にいた者たちはムースに感謝し、「君のことは忘れないよ」と口々に言う。
 彼らは「バイバイ」というので、これで別れて、どこかへ行くのかと思うと、またまた居心地のいいムースの角の上に戻ってしまう。
 その時、大きな衝撃があって、角の上にいた者たちが放り出される。
 見ると、ムースの大きな角が無くなっている。
 「そうだ。今日は角が生え変わる日だった……」とムース。
 ムースは、角から放り出されてまだ呆然として者たちを置いて歩み去っていく。「慣れないと、まだ、なんだかちょっとぎこちないなあ」などと言いながら。

 アレクサンドル・ペトロフが関わった作品として観始めた作品だったんですが、そんなことは忘れて、物語に入り込んでしまいます。なんだか寓意性があってとても面白いお話ですね。

 日本には「庇を貸して母屋を取られる」ということわざがありますが、ロシアにもそういうたぐいのお話があるのでしょうか。人の親切ややさしさに付け込んではいけないというか。

 アニメーションにおける「アート・ディレクター」の役割はよくわからないのですが、この作品も、ペトロフの『マーメイド』などと同じく油絵が動くアニメーションですから、ペトロフは、この作品の1枚1枚の油絵を描くアニメーターのチーフのような役割を果たしているのかもしれません。

 『ユーロ・アニメーション』(フィルムアート社)によると、ロシアでは、70年代から80年代にかけて、内省的な文芸作品に大きな収穫があったということなので、これもそうした作品の1つということなのかもしれません。他にはどんなものがあるのか、もっと観たくなりますね。

 ◆作品データ
 1986年/ソ連/9分52秒
 ロシア語台詞あり/英語字幕あり
 アニメーション
 オタワ国際アニメーションフェスティバル 児童アニメーションOIAFアワード受賞

画像

 ◆監督について
 アレクセイ・カラエフ
 プロフィール等は一切わかりませんが、本作と“Inmates of the Old House”で、ともに オタワ国際アニメーションフェスティバル 児童アニメーションOIAFアワードを受賞しています。
“Shakespeare: The Animated Tales”は、ロシア・英・米・日の共同プロジェクトによる英語のTVアニメシリーズで、カラエフは、このうち『お気に召すまま』を手がけたようです。

 ・1986年 “Dobro pozhalovat ”(Welcome)
 ・1990年 “Inmates of the Old House”
 ・1994年 『お気に召すまま』(TV“Shakespeare: The Animated Tales”)

 *当ブログ関連記事
 ・アレクサンドル・ペトロフがアニメーターを務めた作品 『マラソン』
 ・アレクサンドル・ペトロフ 『雌牛』
 ・アレクサンドル・ペトロフ 『おかしな男の夢』
 ・アレクサンドル・ペトロフ 『マーメイド』
 ・アレクサンドル・ペトロフ 『老人と海』
 ・アレクサンドル・ペトロフ 『春のめざめ』
 ・「見直してみたら、凄かった! 『春のめざめ』」
 ・2006年 ニューファンドランド・ラブラドール州 プロモーション用アニメーション “Pitch Plant”
 ・2007年? “Pacific Life”

 *この作品を他の誰かにも教えてあげたいと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック