韓国初 アカデミー賞ノミネート作品『バースデー・ボーイ』

 2005年に韓国人で初めて米国アカデミー賞にノミネートされたのが、短編アニメーション『バースデー・ボーイ』のパク・セジョンです。



 【物語】
 1951年の韓国。
 マヌク少年は、墜落機の中でみつけたネジ釘を列車に轢かせて磁石にしたり、独りで戦争ごっこをしたりして遊んでいる。
 今日はマヌクの誕生日で、家に帰ってきた彼は家に箱が置かれているのをみつける。自分への誕生日プレゼントだと思った彼が箱を開けると、中には自分と父が写っている写真や軍の認識票、軍靴などが入っている。それは戦場での父の死を告げるもの、すなわち、父の遺品なのだが、マヌクにはそれらが何を意味するかがまだわからないのだった……。

 まず、細部まで丁寧に描かれていること、日本のアニメにも欧米のアニメにもない独特の色使いや質感があることが見て取れます。
 それだけでもユニークな作品なのですが、最初に少年が遊んでいるのが民家に落ちた墜落機の中であること、ネジ釘をつぶす列車には戦車が積まれていること、などディテールも細かく描かれていて、繰り返し観ることで発見のある作品にもなっています。
 生活空間の端々に戦争が影を落としていて、それは少年の運命をも大きく変えることになるが、彼はまだそのことに気がついていない……。
 多くの言葉を費やすことなく、戦争の悲劇性を表現するという手際も素晴らしいですね。

 ただ、なるほど、よくできた作品だとは思うのですが、個人的には心を動かされるというまでには至りませんでした。それがどうしてなのかと考えてみたのですが、原因は「すべてが理に落ちてしまっている」と感じ取れるからでしょうか。
 作品を観ている間、主人公の少年に感情移入するということもありませんでしたし、彼に暖かいまなざしを向けるという心情にも至りませんでした(韓国人が観ると違うのかもしれませんが)。何かクールな感じがするんですよね。戦争を実体験として知らない若い作り手が、自分で肌であの時代を感じ取れるまで待たずに、観念であの戦争やあの時代を描いてしまったんじゃないか、と言うと、決め付けが過ぎるでしょうか。

 今日が少年の誕生日であることもタイトルからしかわからず、彼が家に置かれている箱を自分への誕生日プレゼントだと勘違いして開けてしまうというのも、説明されないとわからないと言えるかもしれません。

 とはいうものの、これまで日本に紹介されてきた韓国アニメの中にはこれというものはなかったわけで、そうした中ではこの作品は出色と言えるかもしれません。
 今の韓国映画界が持っている活力がアニメーションにも投入されれば、世界を驚かすようなアニメ作品がすぐにも作られるかもしれないわけで、後から考えたら『バースデー・ボーイ』がその第一歩だったということになるかもしれません。

 ◆作品データ
 2004年/韓・豪/7分51秒
 韓国語台詞あり(わずか)/英語字幕あり
 アニメーション
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2004でJean-Luc Xiberas 特別賞受賞。
 SIGGRAPHコンピュータアニメーションフェスティバルで最優秀短編アニメーション賞受賞。
 2004年第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞。
 2005年米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート。

 この作品で、パク・セジョンは韓国人として米国アカデミーに初ノミネートとなりました。

 この作品は、東京国際アニメフェア2005(https://www.tokyoanime.jp/taf2006/taf2005/event/theater_a.html)で上映されました。

画像

 ◆監督について
 パク・セジョン
 1966年(?) 釜山生まれ。4歳の頃から自分で絵本を作ったりしていた。
 1994年に語学留学で来豪。韓国の美術大学を卒業。
 2-Dアニメーションとイラストの仕事で、韓国とオーストラリアを股にかけて活躍するようになる。1998年にオーストラリアに移住、シドニーを活動拠点とする。
 2003年にオーストラリア・フィルム・テレビ・ラジオ・スクール(AFTRS)に入学。翌年卒業し、デジタル・メディアの修士号を取得。
 『バースデー・ボーイ』はパク・セジョン初めての3-Dアニメーション。

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この記事へのコメント

hune
2007年02月06日 10:56
こんにちわ!
>原因は「すべてが理に落ちてしまっている」と感じ取れるからでしょうか
そうかもしれないけど。でも、場面場面の子どもの顔が良かったなー。しぐさもね。すっきりした絵コンテのせいか画面が綺麗でした。ちょっぴり見て得した感じのアニメでしたよ。
umikarahajimaru
2007年02月06日 19:23
huneさま
コメントありがとうございました。
この作品に関しては、すごくよくできてるんだけど、何か違和感があって、自分の中でしっくりこなかったんですが、それがどういうことかわからなくて、自分なりに考えて書いてみた結果が上のような記事になりました。
といっても全くダメだと思ったらそもそも取り上げていないわけで、よかったという感想をいただけてうれしかったですね。
これからも、huneさんに喜んでいただけるような短編を探してどんどん当ブログにアップしますね。

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