お金持ちと働き者、風邪を引きやすいのはどっち? イジー・トルンカ 『二つの霜』

 木の枝から落ちた2つの霜は、ソリで通りかかった2人の人間にそれぞれ風邪を引かせようと競争を始める……。




 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、働き者で生活の知恵がある男性と金持ちで太っていてあまり体を動かさない男性という2通りの人間の対比になっています。ソリに乗っていても、寒くなると働き者は馬車を降りて歩くし、上着に霜がつくとちゃんと払う。しかし、金持ちはただじっとしていて風邪を引くのを待つばかり、という風に、2通りの人間の霜への対処の仕方が比較されています。
 勤勉な働き者を称えるための、子ども向けの教訓話のような物語ですが、主人公を擬人化した霜にするっていう発想が面白いですね。

 ◆作品データ
 1954年/チェコスロバキア/12分43秒
 台詞あり/日本語字幕あり
 セル・アニメ&人形アニメ

 *
DVD『イジー・トルンカの世界2 「電子頭脳おばあさん」その他の短篇』に収録されています。

画像

 ◆監督について
 イジー・トルンカ
 1912年 チェコのピルゼン(プルゼニュ)で鉛管工の父と婦人服の仕立てを行なう母の間に生まれる。
 1923年 中学時代に人形作家であるヨゼフ・スクーパに出会い、人形劇に興味を持つようになる。
 1929-35年 プラハ美術工芸学校(現UMPRUM)応用グラフィック学科で学ぶ。
 1936-37年 スクーパの助手をしながら、人形劇団「木の劇場」を立ち上げ、プラハのロココ劇場で芝居を打つが、挫折。新聞にマンガや挿絵、児童文学を書くようになる。
 1939年 プラハの国民劇場で舞台美術を担当。大手出版社メラントリフにイラストレーターとして勤務。
 1945年 戦後、AFIT(アトリエ・フィルム・トリク)の仕事を任されたことをきっかけとして、映画に関わるようになる。AFITは国営化(クラートキー・フィルム・プラハ)され、トリック・ブラザーズ・スタジオとなる。トリック・ブラザーズ・スタジオは、セル・アニメを中心に制作するスタジオとなり、トルンカを中心とした人形アニメーションを制作するスタジオは別に設けられる(トルンカ・スタジオ)。
 最初は、お手本にする作品がディズニーくらいしかなく、見よう見まねでセル・アニメからスタートしたが、のちに自分の好みや才能と合った人形アニメと出会い(1947年『チェコの四季』)、以後、人形アニメを中心に続々と作品を発表。
 幼児向けの作品や民話、正直すぎる兵士が活躍するコメディー「善良な兵士シュベイク」シリーズ、『駅馬車』のパロディーである『草原の歌』、アンデルセンを原作とする『皇帝の鶯』やチェーホフ原作の『コントラバス物語』、シェークスピア原作の『真夏の夜の夢』、ボッカチオ原作の『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』など、様々なタイプの作品を作って、チェコ・アニメに一時代を築き、今なおスタジオにその名を残す。
 1955年 芸術功労賞
1963年 人民芸術功労賞
1968年 プラハ工芸美術大学(現UMPRUM)教授となる。国際アンデルセン大賞画家賞受賞。
 1969年 プラハにて没
 2004年 日本で<チェコ・アニメの巨匠 イジー・トゥルンカ展 子どもの本に向けたまなざし>開催

 1946年に『動物と山賊たち』でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞、1950年に『バヤヤ』でロカルノ国際映画祭優秀賞受賞、1959年に『真夏の夜の夢』でカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。ほか受賞歴多数あり。

 ルネ・ラルーや川本喜八郎も弟子の1人。

 『ほたるの子ミオ』『わんぱくビーテック』『ふしぎな庭』『花むすめのうた』などの絵本に挿絵を描いていて、絵本作家としてアンデルセン大賞も受賞している。

 ・1945年 『おじいさんの砂糖大根』
 ・1946年 『動物たちと山賊』
 ・1946年 『贈り物』
 ・1946年 『バネ男とSS』
 ・1947年 『チェコの四季』
 ・1948年 『皇帝の鶯』
 ・1949年 『悪魔の水車小屋』
 ・1949年 『コントラバス物語』
 ・1949年 『草原の歌』
 ・1950年 『バヤヤ』
 ・1951年 『金の魚』
 ・1951年 『楽しいサーカス』
 ・1952年 『チェコの古代伝説』
 ・1953年 『おじいさんの物々交換』
 ・1954年 『二つの霜』
 ・1954年 『クティチャーセクとクティルカ』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~コニャックの巻』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~列車騒動の巻』
 ・1954年 『善良な兵士シュヴェイク~堂々めぐりの巻』
 ・1955年 『フルヴィーネクのサーカス』
 ・1958年 『ユネスコの話』
 ・1959年 『真夏の夜の夢』
 ・1961年 『情熱』
 ・1962年 『電子頭脳おばあちゃん』
 ・1964年 『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』
 ・1965年 『手』

 *参考書籍
 ・「イジィ・トルンカ・アニメフェアー」パンフ(1989年川崎市市民ミュージアム発行)
 ・『夜想34 パペット・アニメーション』(ペヨトル工房)
 ・『夜想35 チェコの魔術的芸術』(ペヨトル工房)
 ・『チェコアニメの巨匠たち』(エスクァイア マガジン ジャパン)
 ・「チェコ・アニメの巨匠 イジー・トゥルンカ展 子どもの本に向けたまなざし」図録

 *参考サイト
 ・ユトレヒト:http://www.utrecht.jp/person/?p=248
 *トルンカの絵本について、とても詳しく書かれています。
 ・クリチカ:http://kulicka.ocnk.net/product/153
 *チェコの絵本やアート本を扱う古書専門のネットショップ。
 ・Ciatrogatos:http://www.cuatrogatos.org/galeriatrnka.html
 トルンカの絵のいくつかを見ることができます。

 (注) トルンカのプロフィールはいくつかの資料などを参考にしましたが、資料により、固有名詞やデータにかなり食い違いがあります。

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