ドキドキ感を楽しむ フランソワ・オゾン『アクション、ヴェリテ』

 映画『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』でも見られた“Truth or Dare”ゲーム。
 グループ内で順番に、命令する側とされる側を交代して、「挑戦」(アクション)か「告白」(ヴェリテ)かを繰り返していくゲームで、命令される側は「挑戦」か「告白」かどちらかを選ぶことができますが、いったんどちらかを選んだら命令する人物の指示には絶対に従わなくてはいけない、というものです。
 できるかできないか、ギリギリのところを命令して、そのドキドキ感を楽しむゲームで、ゲームが進行していくごとに、その命令の内容がエスカレートしていくところも面白く、欧米ではかなりポピュラーなゲームのようです。




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 全編フランス語で、しかも会話によって進行していく物語なので、以下に台詞のやりとりを書き出してみました。

 ローズ(ポールに):挑戦?それとも告白?
 ポール:挑戦、いや、告白にする。
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 ローズ:デートの経験は?
 ポール:ある。
 エレーヌ:ウソつき!
 ポール(レミーに):挑戦?それとも告白?
 レミー:挑戦!
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 ポール:ローズにキスしろ!
 レミー:ひどいなあ。
 ポール:舌は入れるなよ。
 レミー:入れちゃったよ。
 レミー(エレーヌに):告白?
 エレーヌ:挑戦よ!
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 レミー:じゃあ、5秒キスしろ。いや、10秒、相手はポールだ。
 レミー:舌を使えよ!
 エレーヌ(ローズに):挑戦?それとも告白?
 ローズ:挑戦よ!
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 エレーヌ:じゃあ、私の足を舐めて!
 ローズ:サイテー!
 ローズ(エレーヌに):お返しよ。挑戦?それとも告白?
 エレーヌ:告白よ。
 ローズ:男の子と寝たことある?
 エレーヌ:あるわ。
 ローズ:ウソよ。
 エレーヌ:わかるの?
 ローズ:相手は誰よ?
 レミー:やめろよ!
 エレーヌ:ローズ、あなたの番よ。
 ローズ:告白する。
 エレーヌ:レミーに隠れてデートしたことある?
 ローズ:………
 エレーヌ:答えなさいよ。
 ローズ:してない。
 エレーヌ:告白のはずよ。
 ローズ:見たわけ?
 ローズ(レミーに):エレーヌとやれる?
 レミー:イヤだね。
 レミー(エレーヌに):挑戦?それとも告白?
 エレーヌ:挑戦よ。
 レミー:ポールのペニスをなでろ!
 レミー(エレーヌに):デカい?
 ポール:うるさい!
 エレーヌ(レミーに):挑戦?それとも告白?
 レミー:挑戦!
 エレーヌ:ポールの舌を5秒舐めて!
 エレーヌとローズ:1、2、3、4、41/4、41/2、5!
 (ペッペッとするレミーに)ポール:エイズじゃないぞ!
 レミー:ローズ、挑戦?それとも告白?
 ローズ:挑戦!
 レミー:エレーヌの股間に触って、匂いを教えろ!
 ローズ:最悪! 仕返しってわけ?
 ポール:くだらねえ! きっとおしっこの匂いがするぞ。
 ローズの手についた血を見て、みんなギョッとし、静まり返ってしまう。

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 『アクション、ヴェリテ』では、15~16歳の男女2人ずつがこのゲームにチャレンジしています。レミーとローズはつきあっていて、最初は2人にキスさせて面白がっていても、やがてそれでは面白くなくなるわけで、この2人の組み合わせでない「挑戦」命令が増えていきます。
 それぞれに秘密と隠れた関係がありそうですが、それは匂わされるだけで、暴露にまでは至っていません。

 命令を整理すると―
 ①ローズ→ポール 「デートの経験は?」
 ②ポール→レミー 「ローズにキスして!」
 ③レミー→エレーヌ 「ポールにキスしろ!」
 ④エレーヌ→ローズ 「私の足を舐めて!」
 ⑤ローズ→エレーヌ 「男の子と寝た経験ある?」
 ⑥エレーヌ→ローズ 「レミー以外の男の子とデートした?」
 ⑦ローズ→レミー 「エレーヌとやれる?」
 ⑧レミー→エレーヌ 「ポールのペニスをなでろ!」
 ⑨エレーヌ→レミー 「ポールの舌を舐めろ!」
 ⑩レミー→ローズ 「エレーヌの股間に触って、匂いを教えろ!」

 命令された人が次に命令される側にまわるルールのようですが、⑥の質問にあせったローズは、レミーに挑戦か告白か聞くことなしに⑦で質問してしまっています。

 この映画を混乱させるのが、ポール役を女の子であるアドリアン・パストールが演じていることで、これに何か意味があるのかと思うと、ストーリー上では男の子でしかなく、混乱を感じさせるだけで終わってしまっています。それとも、アドリアン・パストールは、ああいうルックスで、こんな名前ですが、実は男性だったりするのでしょうか。男だと思っていた相手が実は女で、しかも生理だったことが明らかになったとしたら、衝撃も倍増だったのですが。

 この4人のうち、レミー役のファビアン・ビレだけは、プロの役者になったようです(今も続けているかどうかは不明です)。

 ◆作品データ
 1994年/仏/4分
 フランス語の台詞あり/字幕なし
 実写映画
 1995年批評家協会賞受賞。国立映画センター(CNC)クオリティー賞受賞。

 日本では、『クリミナル・ラヴァーズ』公開時(2000年)に、<フランソワ・オゾン短編集>として、『小さな死』『ベッドタイム・ストーリーズ』とともにユーロスペースでレイトショー公開されました。
 DVD『クリミナル・ラヴァーズ』に収録されています。

 この作品は、オゾンがFidélité Productionsと組んで撮った最初の作品です。
オゾンが、マイナーな短編作家ではなく、フランスを代表する映画監督にまでなるのはFidélité Productionsの存在が大きかったはずで、そういう意味でFidélitéと組んだ第1弾の本作はオゾンにとってもエポック・メイキングな作品となったと思われます。

 撮影監督は、前年の“Thomas reconstitué”から一緒に仕事をすることになったヨリック・ルソー。オゾンとルソーはフェミスの仲間で、ルソー自身も“Thomas reconstitué”が撮影監督としてのデビュー作にあたり、オゾンと組むことで人気撮影監督になっていきました。
 オゾンは、他の撮影監督とも組んでいますが、『小さな死』『海を見る』『ホームドラマ』『スイミング・プール』『ふたりの5つの分かれ路』など、明るい光を感じさせる作品は大体ルソーが担当しています。特に、海を、あたたかく、きれいに撮ることができる撮影監督と言っていいかもしれません。

 ◆監督について
 フランソワ・オゾン
 1967年パリ生まれ。
 子役としてモデルをしていたこともあり、そのお金で映画館に通っていた。
 父親がスーパー8で家族を撮っているのを見て、自分でも撮るようになる。
 1989年にパリ第一大学映画コースで修士号を取得。1993年に国立の映画学校フェミスの監督コースを卒業。大学卒業後に発表し始めた短編は評判になり、OZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼ばれるようになる。
 1995年にはフランス大統領選をリオネル・ジョスパン(のちにフランス首相)の側から撮った『ジョスパンの光』というドキュメンタリーを発表(ジョスパンは友人の父親だった)。
 1998年『ホームドラマ』で長編監督デビュー。
 いつしかフランスの女優がこぞって出演を希望する監督となり、今やフランス映画界のエースと言っていい存在となっている。
 1999年の初来日時の言葉:「ぼくにとって映画づくりはカタルシス(浄化)であって、エクソシズム(悪魔払い)でもあるんだ。もし映画を撮っていなかったら、父親を殺して、母親と寝るような人間になっていたかもしれないな」

 ・1988年  “Photo de famille”「家族写真」
 ・1988年 “Les Doigts dans le ventre”「腹に指」 DVD『まぼろし』に収録
 ・1990年  “Mes parents un jour d'été”「ある夏の日の両親」  DVD『まぼろし』に収録
 ・1991年 “Une goutte de sang”「血の一滴」
 ・1991年 “Le Trou madame” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Peau contre peau” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Deux plus un”
 ・1992年 “Thomas reconstitué”
 ・1993年 “Victor”
 ・1994年 『僕らの間にあるバラ』 “Une rose entre nous”
 ・1994年 『アクション、ヴェリテ』 DVD『クリミナル・ラヴァーズ』に収録
 ・1995年 『小さな死』 DVD『ホームドラマ』に収録
 ・1995年 “Jospin s'éclaire”(ジョスパンの光)
 ・1996年 『サマードレス』 DVD『海をみる』に収録
 ・1997年 『海をみる』
 ・1997年 『ベッドタイム・ストーリーズ』 DVD『海をみる』に収録
 ・1998年 『X2000』 DVD『焼け石に水』に収録
 ・1998年 『ホームドラマ』
 ・1999年 『クリミナル・ラヴァーズ』
 ・2000年 『焼け石に水』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 テディ賞受賞
 ・2001年 『まぼろし』
 ・2002年 『8人の女たち』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 Reader Jury of the "Berliner Morgenpost"受賞
 ・2003年 『スイミング・プール』 カンヌ国際映画祭コンペ部門出品
 ・2004年 『ふたりの5つの分かれ路』 ベネチア国際映画祭コンペ部門出品
 ・2005年 『ぼくを葬る』
 ・2006年 “Un lever de rideau” *久々の短編
 ・2007年 “Angel”(The Real Life of Angel Deverell) ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 *現代ものではない初めての作品

 *このほか、1988年のソフィー・マルソー主演の『スチューデント』には学生役で出演もしています(ノン・クレジット)。

 *フランソワ・オゾンのことを「短編王」と呼ばれたと紹介してある記事がありますが、これは最初にオゾンの作品を配給したユーロスペースが紹介文の中に織り込んだもので、実際にはオゾンが「短編王」と呼ばれたことはありません(直接本人に確認しました)。上にも書いたように、フランスでは短編時代のオゾンをOZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼んでいたそうです。
 オゾン作品の配給が、ユーロスペースからギャガに変わるに及び、オゾンのプロフィール紹介文の中から「短編王」の称号は消えていきました。

 *参考サイト
 オゾンの公式サイト:http://www.francois-ozon.com/

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