『木を植えた男』 フレデリック・バック

 フレデリック・バックの作品の中では、この作品が最も世評が高いということになるのでしょうか。米国アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞し、『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)でも4位になっています。

 この作品には、フランスの文学者ジャン・ジオノ(1895-1970)による同名の原作が1953年に書かれていますが、映画化のあとで刊行されたフレデリック・バックの絵による同名の絵本の方が、この絵本の元になった映画よりも有名かもしれません。

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 【物語】 南仏プロヴァンス地方の荒野を旅していた青年は、1人暮らしの老人の小屋に一晩泊めてもらうことにする。老人の名は、エルゼアール・ブッフィエ。ブッフィエに興味を持った青年は、翌日ブッフィエと行動をともにすることにするが、ブッフィエが誰のものとも知れない土地にドングリの実を埋めて、樫の木の林を作ろうとしているのを知って驚くのだった。やがて、第一次世界大戦が過ぎ、第二次世界大戦が過ぎる頃、荒野だったはずのプロヴァンス地方は、樫の木に覆われる緑豊かな土地となり、それが1人の老人の手によるものだとは誰も想像できないまでになっていたのだった……。



 この作品には、台詞(ナレーション)があって、フランス語版のナレーションはフィリップ・ノワレ、英語版のナレーションはクリストファー・プラマー、日本語版のナレーションは三國連太郎が担当しています。上にアップしたのは、仏語版のもので、日本語字幕はありません。

 日本語のナレーションが入ったDVDは、2000年に『イリュージョン』から『大いなる河の流れ』までのフレデリック・バックの6作品を収めた「フレデリック・バック作品集」としてパイオニアLDCから出ました(税込み7140円)。また、その後、初DVD化作品を含む9作品を収めた「フレデリック・バック作品コレクション」がジェネオン エンタテインメントから発売されています(税込み12800円。新たに収録された作品は『アブラカダブラ』『神様イノンと火の物語』『鳥の誕生』)。

 ナレーションがわからなくても理解できないこともないのですが、物語を知らないで観ると、人々がいがみ合っている部分や戦争の部分など、若干わからない部分が出てくるかもしれません。

 個人的には、物語にかなりインパクトがあって、作品として特に物語が前面に出てしまいがちなので、この作品がアニメーションとしてどうなのかということに関してはちょっと判断がつきかねる部分もあります。観ている間、これを実写で観てみたいという衝動にかられた、ということもありました。まあ、この物語を広く世界中に知らしめたのは、この映画とその後の絵本化のおかげということにはなるので、この映画に人を動かすかなり大きな力があるのだと思うのですが……。

 この物語は、広く反響を呼んでいるようで、下記に示すような運動も巻き起こしています。

 ・新井満 『木を植えた男』と出会って

 ・「木を植えた人」を聴くプロジェクト

 ◆監督について
 フレデリック・バック
 1924年 ドイツのザールブリュッケン(当時はフランス領)生まれ。父親は音楽家。
 1938-1939 年 パリのEcole Estienneで学ぶ。
 1939-1945年 レンヌの美術学校で画家マテラン・メウに学ぶ。
 1948年 文通で知り合ったカナダ人女性に会うために、カナダに向かう。
 1949年 結婚。以後、モントリオールを活動拠点とする。
 1952年 カナダ国営放送(Radio Canada)にグラフィック・アーティストとして参加し、教育番組や科学番組の作画や視覚効果を担当する。
 1967年 モントリオールのPlace-des-Arts Metro station にL'histoire de la musique à Montréal ("history of music in Montreal") という題のステンドグラスを制作。
 1968年 Hubert Tisonによって開設されたアニメ部門に移る。最初はタイトル・ロゴなどを担当していたが、70年以降、子ども番組を制作するようになる。
 1989年 ケベック州からナイトの称号を受ける(National Order of Quebec)。
 2004年 Planet in Focus film festivalでEco-Hero Media Award を受賞。
 色鉛筆とフェルペンによる作画で、1作品1作品、時間をかけて制作。作品の中に、ケベック州の美しい自然を描き、人と自然環境をテーマに作品を作り続けている、と評される。

 1970年 『アブラカダブラ』“Abracadabra”
 1971年 『神様イノンと火の物語』“Inon Ou LaConquet De Feu”
 1973年 『鳥の誕生』“The miracle of spring”
 1974年 『イリュージョン』
 1977年 『タラタタ』
 1978年 『トゥ・リエン』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 1981年 『クラック!』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1987年 『木を植えた男』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1993年 『大いなる河の流れ』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート

 公式HP:http://www.fredericback.com/

 参考サイト:http://www.animationarchive.org/bio/2005/12/back-frederic.html

 ◆データ
 1987年/カナダ/30分
 アニメーション
 仏語台詞あり/字幕なし
 制作期間:5年半
 音楽監督:ノーマン・ロジェ

 1987年 アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞、1988年 オタワ国際アニメーションフェスティバル グランプリ&観客賞受賞、アカデミー賞短編アニメーション賞受賞、国際アニメーション映画祭広島大会グランプリ受賞、など受賞歴多数。

 『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)で4位。

 ☆絵本『木を植えた男』(作:ジャン・ジオノ 絵:フレデリック・バック)(あすなろ書房)

 なお、原作者であるジャン・ジオノは、『木を植えた男』でしか知られないような無名の小説家などでは決してなく、むしろ多数の著作があって、フランスでは知らない人がないくらいに著名な文学者のようです。それはちょっと検索してみれば、すぐにわかることで、例えば―
 ・http://www.eu-alps.com/h-site/jean-giono/jean-giono.htm
 ・http://www.kawade.co.jp/np/author/30027
 ・http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-FAUTH=%83W%83%83%83%93%81E%83W%83I%83m&RECNO=1&HITCNT=010

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 *当ブログ関連記事
 ・フレデリック・バック 『クラック!』

 ・フレデリック・バック 『タラタタ』

 ・アカデミー賞短編アニメーション賞 リスト!

 ・短編アニメーション ベスト100!

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ リスト!

この記事へのコメント

2007年01月16日 15:06
あんがとぉございましたぁ。動画、思った以上にいかったちゃ。クリストファー・プラマーさんの声もええねぇ~~。この人、サウンドオブミュージックのぉ、トラップ大佐さんながやねぇ~~。フランス版のぉ、フィリップ・ノワレさんやぁ、日本版の三國連太郎さんのもぉ、聴いてみたいな~~、と思ったちゃ。もっかいあんがとぉ~~。
umikarahajimaru
2007年01月16日 20:14
富山弁さま
コメントありがとうございました。
しかし、クリストファー・プラマーと聞いて『サウンド・オブ・ミュージック』が出てくるところは凄いですね。
私としては『サウンド・オブ・ミュージック』に関してはそういえばそうだったかもしれないという程度で、『インサイド・マン』『イルマーレ』『シリアナ』『ニュー・ワールソ』など近作のイメージが強いですね~。

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