『掃除屋トム』 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

 『岸辺のふたり』で知られるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットの1992年の作品。

画像

 主人公がゴミ箱にゴミを片付ける度に、ほかの誰かによって散らかされてしまう、というコメディー・タッチの作品です。




 ゴミを棄てる人に対しての憤りもなく、それを片付ける主人公に対する嘲笑もなく、ゴミを片付けてもまた散らかされてしまう主人公のコミカルな行動を、ただただ、興味津々と、そして暖かく見守っているというのが、この作品のポイントでしょうか。
 主人公にフラストレーションがたまっていって、やがてそれが爆発するという物語もアリのはずなのですが、そういう展開にしないのは、きっと、物語の作者でもある監督が人と人が争うこととか黒い笑いには全く興味がないからでしょう。思わず笑ってしまうような行動をする幼児や子ども、動物などをニコニコしながら見つめるのと、同じような視線を感じる、といってもいいかもしれません。

 本作における“いたちごっこ”的な物語展開は、次の『お坊さんと魚』にも通じるものですが、『お坊さんと魚』の最後にお坊さんと魚が戦友のようになってしまうのは、 “いたちごっこ的な物語”の先に監督が見出した1つの答えなのかもしれません。

 『岸辺のふたり』を観てから、『お坊さんと魚』や本作を観ると、あまりに雰囲気が違うので、最初はとまどってしまいますが、作者(監督)のやさしいまなざしのようなものはどの作品にも共通して感じられます。物語的にも、作者が1つ1つ段階を踏んで、確実に次のステップに移っているらしいことも感じ取れます。
 私は、「この監督は、宮崎駿が好きかも」と思ったりもしました。まあ、宮崎駿は誰でも好きなんですが。

 ちなみに、この映画のプロダクションはRichard Purdum Productions というところですが、ここは「Mr.ビーン」のアニメ版も製作しているところだそうです。

 ◆監督について
 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
 1953年 オランダ生まれ。
  ジュネーブのthe Ecole Supérieure des Beaux Arts Genève 、イギリスのthe University College for the Creative Arts in Farnhamを経て、1978年、イギリスのウエストスーリ・カレッジ・オブ・アート卒業。卒業制作は“The Interview”。
 1992年 『掃除屋トム』
 1994年 『お坊さんと魚』
 2000年 『岸辺のふたり』
 2006年 “The Aroma of Tea”
 そのほかにアニメーターとして参加している作品がいくつかあり、『ファンタジア2000』もその1つ。絵本も出版していて、アニメーションについて後進の指導にも当たっている。

 ◇CM作品
 "Actifed Germ" The Welcome Foundation, Cough Medicine

 "Heinz Egg" Heinz Salad Cream

 "The Long Sleep" Mcallan Malt Whiskey

 "VW Sunrise" Volkswagen

 "Pink Foot" Owen's Corning Roof Insulation

 "Smart Illusions" Nestlé Smarties

 "Noah" The Irish Lottery

 "At&T" five TV commercials

 ◇絵本
 日本で出版されている絵本に『オスカーとフー』(評論社)、『オスカーとフーいつまでも』(同)があります。

 ◆データ
 1992年/仏/3分
 アニメーション
 台詞なし/字幕なし

 日本では『岸辺のふたり』の劇場公開時に併映作品として劇場公開された。

 日本ではまだDVD化されていないようです。
 
 *この作品を他の誰かにも教えてあげたいと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。

 *当ブログ関連記事
 ・『岸辺のふたり』
 ・『お坊さんと魚』
 ・マイケル・デゥドク・ドゥ・ヴィットについてもう少し
 ・“Aroma of tea”

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック