『フォー・ザ・バーズ』 ラルフ・エグルストン

 ピクサーは、初めての長編『トイ・ストーリー』(1995)を完成させるまでに5年以上の歳月を費やしましたが、その後は長編アニメの制作が軌道に乗って1~2年で長編をリリースすることが可能になりました。しかし、『バグス・ライフ』(1998)や『トイ・ストーリー2』(1999)を制作していた頃はこれらの作品にかかりきりだったので、たくさんの短編アニメーションの企画が舞い込んだのにもかかわらず、新しい短編作品に着手することができませんでした。というわけで、『ゲーリーじいさんのチェス』(1997)の次の短編制作は、『バグス・ライフ』と『トイ・ストーリー2』が完成してからで、ようやくスタートした企画が『フォー・ザ・バーズ』(2000)でした。

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 『フォー・ザ・バーズ』は、1羽の小鳥に2800枚もの羽を描き込むという、手の込んだことにチャレンジしている作品なのですが、『バグズ・ライフ』に続くピクサーの次の長編が『モンスターズ・インク』(2001)であることを考えると、『フォー・ザ・バーズ』は、『モンスターズ・インク』の主人公たちマイクやサリーのようなルックス(いわゆる、全身を毛や羽根に包まれている生き物)をよりリアルに表現するデモンストレーション作品として、企画されたのではないか、と考えられます。
 “for the birds”とは、「くだらない」という意味の慣用句でもありますが、この作品自体、CGで鳥を描くために企画された“for the birds”な作品(鳥のための作品)と言えるかもしれません。




 【物語】
 電線に止まった小鳥たちは、1羽の大きな鳥(レオ)に声をかけられて、何か奇妙なことが起こったと言わんばかりに自分たちだけでひそひそと囁き合う。レオの声やルックスが自分たちと違うことで嘲笑っているようでもある。
 しかし、レオは、それにも気づかぬようで、小鳥たちが電線上を離れていくと、彼らと仲良くなるべく、その真ん中に割って入る。その結果、レオの重みで、電線が大きくたわんでしまう。小鳥たちは体を寄せ合う窮屈な体勢になってしまったので、迷惑がると、次の瞬間にバランスが崩れて、レオだけ電線をつかんだまま、ひっくり返ってしまう。
 小鳥たちは、このままヤツが電線を離して落っこちてしまえばいいのにと思い、レオが電線をつかんでいられないように、レオが電線をつかんでいる手をつっつく。しかし、1羽が、レオが手を離した瞬間に自分たちがどうなるかということを想像してゾッとし、つっつくのをやめさせようとする。しかし、悪い予感は次の瞬間に現実のものとなる。
 電線から手を離したレオはそのまま地面に着地するが、小鳥たちは反動で、跳ね飛ばされ、羽根が抜け落ちて、丸裸になって次々落ちてくるのだった……。

 ピクサー作品に、“悪者”や“いじわるをする人”が出てくる作品は稀なのですが、『フォー・ザ・バーズ』は、その例外的な作品になっています。ま、いじわると言っても些細なものですが。

 この作品には、台詞ありバージョンもあるのですが、これが公式に発表されたものかどうかはよくわかりません。

 

 ◆データ
 2000年/3分/台詞なし
 アニメーション
 2000年シッチェス国際映画祭の短編アニメーション部門で観客賞受賞、2001年アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。
 『モンスターズ・インク』(2001)劇場公開時に併映
 DVD『モンスターズ・インク』に併録

 ・レオの声は、監督のラルフ・エグルストンが担当。

 ・『カーズ』の冒頭のシーンに、この小鳥たちが映っている。

 ・ピクサーは、この作品で『ゲーリーじいさんのチェス』に続き、3度目のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞。

 ◆監督について
 ラルフ・エグルストン
 1965年 ルイジアナ生まれ
 the California Institute of the Arts出身。

 この作品の監督については、あまり詳しいことはわかっていません。
the California Institute of the Arts出身で、様々なアニメーション作品にいろんなパートで参加していて、美術監督として『トイ・ストーリー』に参加した後、その仕事が認められて、『フォー・ザ・バーズ』の監督に抜擢された、ということのようです。
『フォー・ザ・バーズ』で、アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞しても、その後の仕事がキャリア・アップしたりしないというのが、ちょっと不思議な気もします。アニメーション制作というのが、チーム・プレーであり、たまたま監督の名前を代表させてあるだけ、という感じなのでしょうか。

 1986年 “Hollywood Harry”[タイトル・デザイン]
 1989年 “The Making of Me”[アニメーター]
 1990年 “Computer Warriors” [キー・アニメーター]
 1989年 『ナショナル・ランプーン/クリスマス・バケーション』[タイトル・デザイン]
 1990年 ‘Krusty Gets Busted’(「シンプソンズ」)[絵コンテ]
 1992年 『不思議の森の妖精たち』 “FernGully: The Last Rainforest”[美術監督]
 1994年 『ビバリーヒルズ・コップ3』「キャラクター・デザイン」
 1995年 『トイ・ストーリー』[美術監督]
 2000年 『フォー・ザ・バーズ』[監督]
 2001年 『モンスターズ・インク』[visual development、story]
 2003年 『ファインディング・ニモ』[プロダクション・デザイナー]
 2004年 『Mr.インクレディブル』[美術監督]

 *参考サイト everything2:http://everything2.com/index.pl?node=For%20the%20Birds
 Behind the Scenes:http://redstudio.moma.org/interviews/behind/

 ピクサー公式サイト(米国):http://www.pixar.com/index.html
 ピクサー公式サイト(日本):http://www.pixar.com/jp/
 いずれのサイトでも冒頭1分余りをよりクリアな映像で鑑賞することができ、iTunesからダウンロードして購入すれば、全編を観ることができます。

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