『ティン・トイ』 ジョン・ラセター

 『ルクソーJr.』『レッズ・ドリーム』に続いて、ジョン・ラセターが発表した作品。『ルクソーJr.』では逃したアカデミー賞短編アニメーション賞をこの作品で受賞しています。




 おもちゃの世界をおもちゃの視点で描いて、『トイ・ストーリー』の原点になったとも評される作品。
 ただし、『ルクソーJr.』が、卓上スタンドを映像的には全くデフォルメすることなしに擬人化していたのに対し、この作品では多少おもちゃにデフォルメを加えています。おそらく人間の赤ん坊と描き分ける必要があって、そうしたのだとは思うのですが、その結果、『ルクソーJr.』よりもマンガチックで、若干古い感じにもなってしまいました。このことについては制作サイドにも反省があったのか、『トイ・ストーリー』ではおもちゃのデフォルメはより抑えた形になっています。
 その一方で、人間の赤ん坊が、おもちゃとは別次元の生き物には見えないという欠点もあり(最初はおもちゃにも見えてしまう)、これ以降、こうした作品の中で人間を描くということがCGアニメにとって課題のようになりました(『トイ・ストーリー』以降、物語の主体をよりリアルに描き、人間の方をマンガチックに描くという方向で落ち着きつつあるようです)。

 人間の世界を人間でない視点から描くという手法は、『リトル・マーメイド』以降のディズニー・アニメでも久しくなかったことで(『ライオン・キング』を除く)、これが新鮮だったためか、アニメーションの新しい鉱脈を見つけたといわんばかりに、『ティン・トイ』以降のアニメーションはこれが主流になりました。

 ジョン・ラセターの作品としては、『ルクソーJr.』『レッズ・ドリーム』と少しずつ長さが長くなってきています。 

 ちなみに、『レッズ・ドリーム』は未見ですが、華麗な芸を披露するという夢を見る赤い一輪車の物語のようです。

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 ◆監督について

 ジョン・ラセター

 1957年 米国・カリフォルニア州ハリウッド生まれ。

 早くからアニメーションに魅せられていた彼は、高校時代に、ディズニーにアニメーションの仕事に就きたいと手紙を出す。ディズニーは人物描写やデザイン、色などを勉強するよう返事を送る。
 彼が高校を卒業するのに合わせたかのように、ディズニーはthe California Institute of the Artsに新たにアニメーション・プログラムを設け、彼はそこに入学(クラスメートにティム・バートン、ブラッド・バード、ジョン・マスカーがいる)。

 学生時代に“Lady and the Lamp”“Nitemare”を作り、ともに学生アカデミー賞(アニメーション部門)を受賞(http://www.oscars.org/saa/winners/winners.pdf)

 そのままディズニーに入社し、『キツネと猟犬』“The Fox and the Hound”(1981)、『ミッキーのクリスマス・キャロル』(1984)などに関わる。

 1982年の実写映画『トロン』で、彼は、CGに目覚め、アニメーターのグレン・キーンとともに、モーリス・センダックの『かいじゅうたちがいるところ』“Where the Wild Things Are”を映像化した30秒のテスト作品を制作。そこで、手書きのキャラクターをコンピューターとカメラで合成して制御する技術を開発。

 彼はコンピューターに興味を持って、ルーカスフィルムのILMを訪れるようになり、1984年にディズニーを辞めて、1ヶ月だけという予定でルーカスフィルムに加わる。1ヶ月の予定は半年に延びるが、この時に手がけた作品が『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』(1985)で、彼はステンドグラスから騎士が現れる部分のCGに関わる。

 ルーカスフィルムは、コンピューター・アニメーション部門を立ち上げ、それが1986年に独立して、ピクサー・アニメーション・スタジオとなるが、ラセターはその創立に関わり、ピクサーの監督に就任。彼は、数多くのCMの製作・監督を務めながら、1986年に『ルクソーJr.』を発表。アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート。

 『レッズ・ドリーム』、『ティン・トイ』(アカデミー賞短編アニメーション賞受賞)、『Knick Knack ニック・ナック』を経て、1995年にセル画を全く使用しないフルCG 3-Dアニメーション『トイ・ストーリー』を完成させる(アカデミー賞特別賞受賞)。

 ディズニーを辞めても、ラセターはオリジナル・ストーリーやキャラクター担当の作家としてディズニーとの関係は続いていて、それが、『トイ・ストーリー』でディズニーとピクサーが組むきっかけになる。(ここまでYahoo!Movies参照:http://movies.yahoo.com/movie/contributor/1800019798/bio)

 その後の活躍はご承知の通り。現在は、ピクサーの副社長(Vice President)。
各映画賞に、長編アニメーション部門が設置されたのは最近なので(アカデミー賞は2002年(2001年度)から、ゴールデン・グローブ賞は2007年(2006年度)から)、これまでは『トイ・ストーリー』でアカデミー賞特別賞、『トイ・ストーリー2』でゴールデン・グローブ賞ミュージカル/コメディ部門の作品賞にとどまっていた。

 『カーズ』は、ゴールデン・グローブ賞にアニメーション部門が設けられて初めての受賞作品となったわけで、これまではアニメーション賞のノミネートの機会すらなかったアカデミー賞で、CGアニメの第一人者であるジョン・ラセターがアニメーション賞を受賞するかどうかが注目されている。

 【監督作品】
 1979年 “Lady and the Lamp”[短編]
 1980年 “Nitemare” [短編]
 1986年 『ルクソーJr.』[短編]
 1987年 『レッズ・ドリーム』[短編]
 1988年 『ティン・トイ』[短編]
 1989年 『Knick Knack ニック・ナック』[短編]
 1995年 『トイ・ストーリー』[長編]
 1998年 『バグズ・ライフ』[長編]
 1999年 『トイ・ストーリー2』[長編]
 2006年 『カーズ』[長編]
 2006年 『メーターと恐怖の火の玉』[短編]
 2008年 『トイ・ストーリー3』[長編]

 【その他】
 1984年 「アンドレとウォーリーBの冒険」[モデルの1人として]
 1985年 『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』[コンピューター・アニメーション]
 1997年 『ゲーリーじいさんのチェス』[製作総指揮]
 1998年 “It’s Tough to Be a Bug” [製作総指揮]
 2000年 『フォー・ザ・バーズ』[製作総指揮]
 2000年 『バッグス・バニーは永遠に! ~チャック・ジョーンズの贈り物~』[出演]
 2001年 『千と千尋の神隠し』[製作総指揮]
 2001年 『モンスターズ・インク』[製作総指揮]
 2002年 『マイクとサリーの新車でGO!』[製作総指揮]
 2003年 『バウンディン』[製作総指揮]
 2003年 『ラセターさん、ありがとう』[出演]
 2003年 “Exproring the Reef”[製作総指揮]
 2003年 『ファインディング・ニモ』[製作総指揮]
 2004年 『ハウルの動く城』[製作総指揮]
 2004年 『Mr.インクレディブル』[製作総指揮]
 2005年 『ジャック・ジャック・アタック』[製作総指揮]
 2005年 『ワン マン バンド』[製作総指揮]
 2007年 『レミーのおいしいレストラン』[製作総指揮]

 ◆データ
 1988年/5分/台詞なし
 1988年度アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 DVD『トイ・ストーリー』に併録
 『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)で308位。

 【物語】
 鼓笛隊のおもちゃは、何をするとも知れない人間の赤ん坊に怯える。しかし、赤ん坊が転んだりして泣き出せば、気になったりもするのだった……。

 *権利元の要請次第では、いつ観られなくなるとも知れません。その点はご容赦ください。
 リンク元の動画が削除されてので、新たに動画を探して、再リンクしました(2007年2月3日)。

 ピクサー公式サイト(米国):http://www.pixar.com/index.html
 ピクサー公式サイト(日本):http://www.pixar.com/jp/
 いずれのサイトでも冒頭1分余りを鑑賞することができ、iTunesからダウンロードして購入すれば、全編を観ることができます。

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