完全版! ポン・ジュノ 

 『グエムル 漢江の怪物』の記事をアップした後で、ポン・ジュノ監督のフィルモグラフィーすらきちんとまとめたものがないということに気がつきました。『グエムル 漢江の怪物』の劇場パンフすら不十分でしたね。

 なので、ここで簡単に整理しておきたいと思います。

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 ポン・ジュノ(봉준호、Joon-ho Bong、奉俊昊)

 1969年9月14日生まれ。

 延世大学社会学科卒業

 ・“백색인(White Man)”(1994/韓)(短編)[監督]
 詳細不詳。

 ・『フレームの中の記憶』(1994/韓)(短編)[監督]
 詳細不詳。英語もしくは仏語のサイトではポン・ジュノの作品として“THE MEMORIES IN MY FRAME”が挙げられていて、バンクーバー国際映画祭、香港国際映画祭に出品されたと記載されているのですが、ポン・ジュノに関する韓国のデータベースには、このタイトルに当たる作品が見当たりません。ひょっとすると“THE MEMORIES IN MY FRAME”は、“White Man”もしくは『支離滅裂』のどちらかと同じ作品(の別称)なのではないか、という可能性も考えられますね。

 ・“2001 이매진”(2001 Imagine) (1994/韓/30分)[撮影](監督:チャン・ジュナン)
 『地球を守れ!』(2002)のチャン・ジュナン監督の韓国映画アカデミー卒業制作作品。チャン・ジュナンとポン・ジュノは韓国映画アカデミーの同期生。

 ・“모자”(帽子)(1994/韓/12分)[撮影](監督:허재영)

 ・“포도 씨앗의 사랑”(ぶどうの種子の愛)(1994/韓/29分)[照明](監督:손태웅、이수길、 허재영)

 1994年 韓国映画アカデミー卒業(第11期)

 ・『支離滅裂』(1995/韓/30分12秒)[監督・脚本・編集・出演]
 韓国映画アカデミー卒業制作作品。
バンクーバー国際映画祭、香港国際映画祭に招待される。
 シニョン青少年映画祭 奨励賞。

 [物語]
 性的妄想から逃れられない社会心理学の大学教授、ジョギング中に他人の家の牛乳をついつい盗み飲みしてしまう新聞記者、酔ってお腹をこわしたエリート弁護士。それぞれのエピソード+エピローグで語られるオムニバス・ストーリー。

 日本では、2003年、第25回ぴあ・フィルム・フェスティバル(http://www.pia.co.jp/pff/festival/25th/tokyo/firststep02.html)の“韓国人気監督のファーストステップ”というプログラムの中で上映された。
 2006年、第5回横濱学生映画祭(http://www.ysff.jp/)の中の“韓国フィルムアカデミー”というプログラムでも上映(2006年9月23日)。

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 ・“맥주가 애인보다 좋은 7가지 이유”(ビールが恋人よりいい7つの理由)(1996/韓/1時間40分)[脚本](監督:キム・ユジン、チャン・ヒョンス、チョン・ジヨン、パク・チョルス、パク・チョンウォン、チャン・ギルス、カン・ウソク)
 [物語] 音楽活動をするためにアメリカから韓国に帰ってきたチョ・ナダンは、ビールと音楽が大好き。そんなチョ・ナダンが出会ういろんなタイプの女性とのエピソードを7人の監督が7つのパートで描くセックス・コメディー。
 ポン・ジュノは3人の脚本家のうちの1人。

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 ・『モーテルカクタス』(1997/香港・韓/1時間31分)[助監督・脚本](監督・脚本:パク・キヨン) DVD
 出演:チン・ヒギョン、チョン・ウソン、キム・スンヒョン、パク・シニャン、ハン・ウンス、イ・ミヨン
 日本公開は1998年12月。

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 ・『ユリョン』(1999/韓/1時間43分)[脚本](監督:ミン・ビョンチョン) DVD
 出演:チェ・ミンス、チョン・ウソン、ソル・ギョング、ユン・ジュサン
 大鐘賞主演男優賞(チェ・ミンス)。
 公式HP:http://www.nifty.com/yuryong/
 日本公開は2001年3月3日。

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 ・『ほえる犬は噛まない』(2000/韓/1時間50分)[監督・脚本] DVD
 出演:ペ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒ、キム・ホジョン、キム・ジング、ピョン・ヒボン、キム・レハ
 2001年香港国際映画祭 国際批評家連盟賞。
 公式HP:http://www.hoeruinu.com/
 日本公開は2003年10月18日。

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 ・“피도 눈물도 없이 ”(No blood No tear)(血も涙もなく)(2001/韓/1時間56分)[特別出演](監督:リュ・スンワン)
 『ARAHAN アラハン』(2004)、『クライング・フィスト』(2006)で知られるリュ・スンワン監督の『ARAHAN アラハン』の前作に当たる作品。ポン・ジュノは、取調刑事役で特別出演。

 ・『殺人の追憶』(2003/韓/2時間10分)[監督・脚本] DVD
 出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ、ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン、パク・ノシク、チョン・ミソン、イ・ジェウン
 サン・セバスチャン国際映画祭 シルバー・シェル最優秀監督賞、新人監督賞、国際批評家連盟賞。2003年第16回東京国際映画祭 アジア映画賞。
 大鐘賞 監督賞・最優秀作品賞・主演男優賞(ソン・ガンホ)。映評賞 監督賞・作品賞。春史芸術祭 監督賞・大賞。
 日本公開は2004年3月27日。

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 ・“싱크 & 라이즈(Silk and Rise)”(沈むか、浮くか)(2003/韓/6分11秒)[監督]
 韓国映画アカデミー20周年を記念して製作された20人の卒業生監督によるオムニバス『20のアイデンティティ/異共』(이공)の中の1篇。
 出演:ピョン・ヒボン、ユン・ジェムン、チョン・インソン
 [物語]買い物に来た父娘が、ゆで卵を買うかスナック菓子を買うかで言い争っている。ひょんなことから、ゆで卵が水に浮くかどうかという話になり、話を聞いていた売店主が「自分は20年間店をやっているが、そんな話は聞いたことがない」と言って、賭けに出る。
 他の19人の監督は、キム・ソヨン(『愛の黙示録』)、キム・ウィソク(『清風明月』)、オ・ビョンチョル、チャン・ヒョンス、ファン・ギドク、クォン・チリン、イ・ヨンジェ、パク・キヨン(『モーテルカクタス』)、チョン・ビョンガク、イ・ヒョンスン(『イルマーレ』)、キム・テギョン(『火山高』『オオカミの誘惑』『百万長者の初恋』)、パク・キョンヒ、チョ・ミノ、ユ・ヨンシク、ホ・ジノ(『8月のクリスマス』『春の日は過ぎ行く』『四月の雪』)、イ・スヨン(『4人の食卓』)、キム・テヨン(『少女たちの遺言』)、ミン・ギュドン(『少女たちの遺言』)、イ・ヨンベ。
 日本では2004年の第17回東京国際映画祭で上映された。

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 ・『インフルエンザ』(2004/韓/28分) [監督・脚本] (『デジタル三人三色2004』(1時間38分)の中の1編) DVD
 出演:ユン・チェムン、コ・スヒ、パク・ジンウ、オ・ドクスン、スン・ジュンスン、リ・ジュンオク
 公式HP:http://www.uplink.co.jp/three/01.html

 [物語](フェイク・ドキュメンタリー)
 「監視カメラの映像を拾い集めることによって、その中から1人の男の行動を追うことができた」という監督のコメントと、その作業に関わったスタッフへの感謝が語られる。
 テロップで、「チョウ・ヒョクレ 31歳」と出る。
 ①トイレの中で実演販売の練習をする。しかし失敗ばかり。
 ②地下鉄のホーム。大きな紙袋を持って、地下鉄に乗ろうとするが、係員に引きずり出されていく。ホームには紙袋だけが取り残される。
 ③ヒョクレは、キャッシュ・ディペンサーでお金を下ろしたばかりの人に近づいて、お金を奪って逃げる。盗られた人はヒョクレを追って飛び出す。後にはくしゃくしゃになった紙幣が何枚か残るが、後から入ってきた男がそれを見つけ、まわりを伺った後でこっそり自分のポケットにねじ込む。
 ④食堂。ヒョクレは、しわしわになったお札を伸ばしながら、麺をすする。
 ⑤ヒョクレは、キャシュ・ディペンサーでお金を下ろそうとしているおばあさんに近づいていって、暗礁番号を聞き、お金を下ろしてあげる。そして、お金を数えてあげると言って、奪い、おばあさんを足をかけて倒して逃げる。そのすぐ後で、相棒らしき女性がやってきて、「カードも盗らなきゃダメって言ったじゃない」と言いながら、おばあさんのカードを奪い、またまたおばあさんを足をかけて倒して逃げ去る。
 ⑥郵便局に強盗をするつもりで入っていくが、「おめでとうございます。××人目の入店者です」と言われて祝福され、記念品ももらう。
 ⑦地下駐車場。大きな家電を運んでいた人を2人で襲って、家電を奪って逃げる。
 ⑧ヒョクレは、キャッシュ・ディスペンサーでお金を下ろそうとしていた男性からお金を奪おうとして抵抗に遭う。思わず、持っていた刃物を相手目がけて振り下ろしてしまう。何度も何度も。そのキャッシュ・ディペンサーはガラス張りだったため、外からその様子を人に見られてしまう。警官もやってくるが、ヒョクレはドアを開けられまいとして激しく抵抗する。

 日本公開は2004年12月20日。

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 ・『南極日誌』(2005/韓/1時間55分)[脚本](監督:イム・ビルソン) DVD
 出演:ソン・ガンホ、ユ・ジテ、カン・ヘジョン、パク・ヒスン、 キム・ギョンイク、 ユン・ジェムン、チェ・ドクムン
 日本公開は2005年8月27日。

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 ・『グエムル 漢江の怪物』(2006/韓/2時間)[監督・脚本・原案]
 出演:ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ、コ・アソン、イ・ジェウン、イ・ドンホ、ヨン・ジェムン、キム・レハ、 パク・ノシク、イム・ピルソン
 公式HP:http://www.guemuru.com/
 日本公開は2006年9月2日。

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 参考サイト
 「MOVIST.COM」:http://www.movist.com/movies/movist.asp?id=2512
 「輝国山人の韓国映画」:http://www.hf.rim.or.jp/~t-sanjin/korea.html

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 こうして書き出してみると、ポン・ジュノがだんだんポン・ジュノらしくなっていく過程が見えてきます。

 この場合の“ポン・ジュノらしさ”というのは、ユニークなキャラクター作りとストーリーテリングの巧みさのことで、そういう方向へ、そういう方向へと自ら選び取っていっているようです。
 “WHITE MAN”と『フレームの中の記憶』は、どういう作品なのがわからないので判断がつきませんが、『支離滅裂』には確かにそういう方向に向かう萌芽が見てとれます。

 『ビールが恋人よりいい7つの理由』から『モーテルカクタス』へは、現代の若者の性を描くという意味で共通点があって、自然な流れと感じられますが、ポン・ジュノとしてはそこで一度方向転換して、よりキャラクターを深め、人間同士のぶつかり合いを描く方向へと向かいます(脚本を手がけた『ユリョン』や『南極物語』がその典型)。

 脚本作品に関しては、単にプロデューサーや監督の要望に従っただけという可能性もありますが、どの作品についても、登場人物たちは“極限状態”を体験するという点で共通点を見出せます。

 また、ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも、ポン・ジュノは「人間てなんて滑稽な生き物なんだろう」と考えているようで、それがポジティブに働けば作品は喜劇に、ネガティブに働けば作品は悲劇という方向に向かうことになります。
状況が悲劇を作り出すか、キャラクターそのものが悲劇を作り出すかは、物語の出発点によって違いますが、究極的状況でも、とぼけたキャラクターがイキイキとして、観客の笑いを誘うというのが、最近のポン・ジュノ作品のトレードマークのようになっていますね。

 ブラック・ユーモアがあるとか、毒があるとかは、ポン・ジュノ作品によく指摘されることですが、いずれの作品もちょっとほろ苦い結末を迎えているということは確かなようです。それが、ポン・ジュノの人生観なのか、好みなのかはわかりませんが。

 次回作はまだ発表されていないようですが、また、これまでにない作品、いい方に期待を裏切るような作品を作って欲しいですね。
 これまでとは全くタイプの違う作品をと考えると、時代劇や究極の恋愛映画、ある程度の長期期間に亘る物語、などという可能性もあります。というかそういう作品をポン・ジュノがどう料理するのか見てみたい気もします。案外、“原作もの”だったりするかもしれませんね~。でも、ひょっとすると、ハリウッドから声がかかって、渡米してしまうってことは……ない?

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