ただ栄光のためだけに 『ダスト・トゥ・グローリー』

 オフロード・レースに関するドキュメンタリー映画。
 チラシや予告編で伝わっているこの映画に関する情報はそんなところだったと思いますが、本作は単なるレースのドキュメンタリー以上のものでした。全然期待していなかったこともあってか、予想以上に面白かったですね。

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 取り上げられている題材は、毎年11月にカリフォルニア半島で開催されている「バハ1000」。ノン・ストップでカリフォルニア半島1000マイル(約1600km)を走る耐久レースで、プロトトラック、ワーゲン、バギー、二輪等が時間差で同日に同じコースを駆け抜けるというもの。だから、立ち往生しているマシンを押しのけて、後発の別のクラスのマシンがどんどん先へ進むということもごく普通にあって、いろんな種類のマシンが同じコース上を入り乱れて走ります。
 クラスごとに別の日に走れば混乱も少なくていいんじゃないかとも思うんですが、コースが長く、レース自体も長時間かかるということもあり、スタッフ・ワーク事情も鑑みて同日開催っていうことになってるんでしょう。何より、同日開催の方が「レーサーたちの祝祭」としてイベントとしても盛り上がるんだと思います。

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 レースだから速さを競うというのは、もちろんなんですが、「バハ1000」の魅力はどうもそれだけじゃなさそうで、このレースに参加し、完走すること自体に大きな意義があるようです。ちょっとルーズなところがあるのもこのレースの魅力らしく、途中公道に出たレーサーたちがスピード違反で警察の取り締まりを受け、パトカーに先導されてコースに戻るなんていうほのぼのしたシーンもあります。

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 映画としてのドラマもあって――
 ・チームをクビになったレーサーが別のチームで参加して以前の仲間と競ったり、
 ・何人もドライバーが乗り替わって、マシンを乗り継いでいくのが普通なのに、1人で全コース走破に挑むレーサーがいたり、
 ・いつもこのレースに参加する男たちを横目に見ていた妻たちが自分たちで女性チームを組んで参加したり、
 ・父子でマシンを乗り継いでいくチームがあったり、
……。
 でも、映画自体は、そうしたドラマをいくつも盛り込むことでドラマチックな盛り上がりを期待しているというよりは、バハ1000自体の魅力と、バハ1000に取りつかれたレーサーたちの姿を丸ごと映画に収めようとしているように見えます。
スクリーン全体に、このレースと、参加レーサーたちへのリスペクトが感じられ、それがまた観ていて気持ちいいんですね。

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 沿道の観客たちも年に一度のレーサーたちの祝祭に観客として参加することが実に楽しそうだし、画面に映し出されるカリフォルニア半島の自然もまたとても美しい。

 映画としての面白さは、F1的なスリルとスピードといった面白さというより、マラソンや駅伝の面白さに近く(マシンにつけた小型カメラによる映像は迫力があって、レースを体感させてくれたりするし、レースのダイナミズムももちろん凄いのですが)、記録や結果よりも、レースの過程やレーサーの心意気にこそ感動する、という感じでしょうか。付け加えるなら、『キャノンボール』的な面白さもなくはないですね。

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 というわけで、実際のバハ1000について少し調べてみました。

 ◆本作の公式HP(日本版):http://www.glassymovie.jp/d2g/index.html
 本作の内容とともに、バハ1000についても詳しい解説があります。

 公式HP(アメリカ版):http://www.d2gfilm.com/
 “RIDE THE BAJA”では、レーサーやマシンの詳細、2004年のコース・マップなどが紹介され、映画のシーンの一部も観ることができます。

 ◆2006年は11月15日~18日に開催されるようですが、8月末現在、詳細は未定のようです。
 公式サイト:http://www.score-international.com/baja1000/index.ihtml

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 ◆日本からバハ1000に参加しているチームもたくさんあるようで、その魅力を伝える記事もたくさんあります。どの記事からも熱気や意気込みや達成感がビシバシ伝わってきます。以下はほんの一例。

 ・GEOLANDARのサイト:http://www.allies.co.jp/event/baja/baja.htm

 ・BFGOODrichのサイト:http://www.bfgoodrichtires.co.jp/style/racing/score_glassymovie.html

 ・プロテックススポーツがサポートしたレースに関する参加者レポート:http://www.protechsp.com/report.html

 ・BAJABROTHERS.COM:http://www.bajabrothers.com/bb/modules/news/
 2004年の参加記事は以下のアドレス記事の前後にあります。http://www.bajabrothers.com/bb/modules/news/article.php?storyid=49

 ◆レースやレーサーやマシンを写した写真がたくさん:http://baja1000.textamerica.com/?qs=xdefault&page=0

 ◆Michael FloersによるBaja Racingの模様を伝えるビデオ映像(画質はよくありませんが、雰囲気はよく伝わります):http://www.youtube.com/watch?v=7U9H4FrGoUs&NR

 ◆参考書籍 内田正洋著『BAJA 1000 FOR JAPANESE DESERT RIDER』(CBSソニー出版 1989)
 現在はシー・カヤッカーとして知られる内田正洋さんが、バイクで4回参加したバハ1000について綴った書。

 ◆参考ビデオ 『BAJA1000 ENSENADA to LAPAZ(BE-001)』
 1989年に内田正洋さん、広瀬達也さんが参加したバハ1000の模様を収めたビデオ。85分。税込み4800円。

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 本作は、車好きやレース・ファンだけに観せておくにはもったいない映画で、『ディープ・ブルー』とか『皇帝ペンギン』などのように、本来そちらの方面に興味がない方が観ても面白いドキュメンタリーの1本なんですが、残念ながらこの映画の魅力はさほど浸透していないようで、私が観に行った回もガラ空きで、おかげでゆったりと観ることができました(苦笑)。リピーターを期待して、スタンプ・ラリーなんかもやってるんですがねえ~。

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 ちなみに、モーニング・ショーで上映している『栄光のライダー』(1971)は、全米で日曜日ごとに開催されているバイクレースとそれらに参加しているレーサーたちにスポットを当てたドキュメンタリー映画で、監督は『ダスト・トゥ・グローリー』のダイナ・ブラウンの父ブルース・ブラウン。危険もあるけれど、いろんな楽しみ方のあるオートバイの魅力を伝えたいという、プロモーション的な映画でした。35年も前の映画であって、ほのぼのしてしまっていますが、まあ、これはこれで……。「主演」ということになっているスティーブ・マックイーンはちらっと出ているという程度。
 こちらの配給は、『さすらいのカウボーイ』とか一連のヴィスコンティ作品とか、旧作のリバイバルに熱心なクレスト・インターナショナル。

 『ダスト・トゥ・グローリー』を配給しているのは、グラッシィという映画会社(http://www.glassymovie.jp/index2.html)で、サーフィン映画の配給で知られるところ。提供元のレイドバックコーポレーション(http://www.laidback.co.jp/top.html)も、いくつかのサーフィン映画を配給している会社です。
この2社が本作の提供・配給を行なったというのは、『ステップ・イントゥ・リキッド』のデイナ・ブラウン監督が手がけた映画だからということもあるんでしょうが、それだけではなくて、サーフィンとカー・レースではどこか通じ合うところがあるのかもしれません。ともにスリルがあって、大量のアドレナリンを放出させるスポーツというか。デイナ・ブラウンの父親であるブルース・ブラウンもサーフィン映画とレース映画を手がけていますし。

 本作は、Adobe HDワークフローで制作されたようで、そっち方面からの解説はこちら(http://www.adobe.com/jp/products/premiere/dusttoglory/)にあります。

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この記事へのコメント

pitts_driver
2006年08月26日 20:51
訪問&トラックバック有難う御座いました。映画について詳しく書かれているのを見て嬉しくなりました。実は私もこの映画にはバッチリ映っているんですよ。関係者じゃないと分かりませんが(笑)。日本でもこの映画が人気が出るといいですね。
umikarahajimaru
2006年08月27日 00:41
pitts driverさま
コメントありがとうございました。
そうですか。出演されてるんですね。
今のところこの映画は熱心なファン以上の広がりがなくて、なんとももったいないんですが、pitts driverさんを探すためだけでも観に行く方が増えればいいですよね(笑)。私もそんな願いをこめてこの記事を書いたんですけど。

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