あんまりカタいこと言うなよ?! 『ダブルD・アベンジャー』

画像 終映後、場内は微笑ましい笑顔に包まれる。
 本作は、物語も演技も、C級またはそれ以下ですが、最初からこういうもの(おバカな映画)であろうと予想して観にやってきて、まさに予想通りのものであったと思えば、自然とこうした笑みが生まれるのでしょうか。くだらないとわかっていながら、それでも観に来てしまった自分に対する自嘲的な意味合いもあるのでしょうが、否定的なニュアンスは全く感じられませんでしたね。
 こういう映画の楽しみ方を知っている人が、まさにこの映画が提供するものを十二分に楽しんだという感じですね。

 こういう映画に対しては、まじめに取り上げてどうこういうものでもないとは思いますが、同じ理由から、記録に残りにくいとも思うので、当ブログで記録しておきたいと思います。

 【物語】(記録を目的としているので結末部分まで触れています)
 バーを営んでいるチャスティティーは、かかりつけの医者デ・ラ・クロアに乳ガンを宣告される。
「タバコが原因だわ。タバコはやめてもいいけど、おっぱいはまだ揉まれたいのに!結婚もまだだし……。先生、なんとか助かる方法はないの?」
 デ・ラ・クロア先生は、南米にあるクロコジラという植物が乳ガンに効くらしいと教える。
 さっそく南米に向かうチャスティティー。ガイドのロナルドに案内してもらってタタ族の女酋長オルブスに会う。
 オルブスのお眼鏡にかなったチャスティティーは、クロコジラ(バナナ状の果実とその根元に嚢胞状のものが2つついたもの)を示し、しゃぶり、嘗め回すようにして、そのエキスの吸い取り方を教える。チャスティティーが教えられたようにすると、気分が悪くなったのか、彼女は気を失ってのびてしまう。「クロコジラのエキスが強かっただけよ。すぐ意識を取り戻すわ」とオルブス。
 戻ってきたチャスティティーは、胸のしこりが取れたことに気づく。副作用として(受話器を握り壊してしまうくらいの)強力なパワーも得る。デ・ラ・クロワ先生に診てもらうと、すっかりガンは完治しているし、副作用のパワーも持続的なものだと保証してくれる。先生自身もクロコジラのパワーに驚き、自分もあやかろうと南米に向かう準備をする。
 このパワーを何かに役に立てなければと考えたチャスティティーは、スーパーマンばりの衣裳をつけて、自らダブルD・アベンジャーと気取ってみる。

 チャスティティーの店が益々繁盛しているのに比べ、ライバル店アル・パープルウッドの店は冷え込むばかり。ハイドラ、パイレート、ウーガ・ブービースという3人娘に客の財布から金をくすねさせても、いっこうに売り上げは上がらない。
 ついにアルは3人娘にチャスティティーを殺してしまえと命令する。

 3人娘は、ブバとデート帰りのチャスティティーをセメントX銃とキャノンボール銃で襲うが、ブバを倒しただけにとどまる。
 ブバが死んでしまったことに悲嘆にくれるチャスティティー。だが、あの3人をどこかで見たことがあるのを思い出し、フリーの情報誌を調べると、アルの店で働いている女たちであることがわかる。
 チャスティティーはそれを保安官に教える。保安官はアルに会いに行くが、アルが3人はもう辞めたと言うのを聞くと、あっさり引き下がってしまう。

 保安官が役に立たないと知ったチャスティティーは、明日ランジェリー・ショップのセールがあるから、そこを見張っていれば、3人の誰かが現れるに違いないと踏んで、実行に移す。
 案の定、パイレートが現れたので、ダブルD・アベンジャーに変身して彼女を捕まえ、保安官に引き渡す。
 アルはパイレーツがつかまったことを聞いて怒る。「なんで下着のセールになんか行くんだ?合うサイズなんかないだろ?」アルは、パイレーツは口が軽いからすべて話してしまうのではないかと恐れて、保安官の目を盗んでパイレーツの口封じを行なう。

 パイレーツが死んだので、アルは新しい女の子のオーディションを行なう。アドルフィーナというドイツ娘がやってくるが、ギャラの安さを知って、怒って帰ってしまう。
 その後で、男装したチャスティティーが、アルの店にやってくる。「この店にはいい女はいないのか?金ならたんまりあるぞ」。その言葉を聞いたアルは隠しておいたはずのハイドラとウーガ・ブービースを呼ぶ。
 チャスティティーは、その場でくるくる回って、ダブルD・アベンジャーに変身。
 アルは、2人にやってしまえ(Faster, Pussycat! Kill! Kill!)とけしかける。
 ハイドラが、偶然、カップに入ったレモネードをダブルDにかけると、ダブルDは伸びてしまう。「ミルクにレモンを入れると凝固するだろう?だからだ」とアルは自分と2人を無理やり納得させて、逃げる。
 意識を取り戻したダブルDは、ミルクを飲んでパワーを取り戻し、3人を追う。
 車からウンコ(?)を流して、ダブルDの追跡を食い止めようとするアル。
 一方、ダブルDは腕立て伏せをして、大地震を起こす。
 最後はおっぱいビンタ攻撃などでダブルDが勝利し、保安官に3人を引き渡す。

 チャスティティーは、店で働くいとこのビリーにこれからの自分の夢を語る。
 「欠点もわかったし、もうこれで大丈夫。南米に行ってクロコブラを手に入れてくるわ。乳ガンも減るし、みんなでダブルD・アベンジャーズを結成するのよ!」

 *以上、大雑把にストーリーを書いて見ましたが、この映画の見どころはもちろんストーリーではなくて、スクリーンを賑わすグラマラスな(?)彼女たち自身ですよね~。

 【キャスト】
 チャスティティー・ノット(ダブルD・アベンジャー) Chastity Knott (The Double-D Avenger):キ ティン・ナティヴィダッドKitten Natividad
 ハイドラ・ヘファーHydra Heffer:ハジHaji
 デ・ラ・クロア医師Dr. De La Croix:レイヴン・デ・ラ・クロアRaven De La Croix
 蝋人形館支配人アッカーマンMuseum Caretaker:フォレスト・J・アッカーマンForrest J Ackerman
 いとこのビリーCousin Billy (as Bill Winckler):ウィリアム・ウィンクラー(監督本人) William Winckler
 パイレート・ジャグズPirate Juggs:ミンマ・マリウッチMimma Mariucci
 ウーガ・ブービースOoga Boobies:シェリ・ドーン・トーマスSheri Dawn Thomas
 アル・パープルウッドAl PurplewoodGary:G・ラリー・バトラーG. Larry Butler
 ブバBubba:カナヴェロCanavello
 オルブスTa Ta Leader Orbs:ルンデン・デレロンLunden De'Leon
 アドルフィーナ・ヒットブレイクスAdolfina Hitbrakes:アンドレア・アナ・パースンAndrea Ana Persun
 ロナルドRonaldo the Guide:レイ・ヴェドゥズコRay Verduzco
 保安官:ボブ・マッケイBob Mackey

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 キティン・ナティヴィダッド ラス・メイヤー監督の『UP! メガ・ヴィクセン』(1976)、『ウルトラ・ヴィクセン』(1979)に出演。『パンドラ・ピークス』(2001)ではナレーションを務める。その他の出演作品に『センチュリアン』(1972)、『フライングハイ』(1980)、『48時間PART2帰って来たふたり』(1990)、『ユナイテッド・トラッシュ』(1995)、『愛のトリートメント』(1997)など。プライベートでもラス・メイヤーと長い間パートナーだった。
Kitten Klubサイト(http://www.kittenklub.com/)。ファンと撮影した写真のいくつかを見ることができて、それがとても微笑ましい。

 ハジ 『モーター・サイコ』(1965)、『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』(1966)、『グッドモーニング・グッドバイ』(1967)、『スーパーヴィクセン』(1975)等のラス・メイヤー作品に出演。その他の出演作に『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(1976)など。

 レイヴン・デ・ラ・クロア ラス・メイヤーの『UP! メガ・ヴィクセン』に出演。その他の出演作に『ブルース・ブラザース』(1980)、『ヒート・アンド・サンライト』(1987)など。彼女のHP(http://www.rantingsofamadwoman.com/)

 キャストに関しては、公式HP(http://www.biotide-films.com/dd/pages/casts.htm)が断然詳しい。

 【監督】
 ウィリアム・ウィンクラー
 1964年カリフォルニア生まれ。父は、1930~40年代に子役として活躍したロバート・ウィンクラー(1927-1989)。
 UCLAでドン・リチャードソン(アン・バンクロフトやグレース・ケリー、ジョン・カサヴェテスを教えたこともある)に学び、1980年代半ばは、数々のTVドラマや映画に出演。
その後、2本のTVシリーズの監督・脚本を手がける(1本はタツノコプロの『宇宙の騎士テッカマン』の英語版(1984)(この作品にはボイス・キャストとして父も参加)、出演者は小人だけという“Short Ribbs”(1989) )。
 2001年に自身のプロダクションを設立し、製作したのが『ダブルD・アベンジャー』(2001)。低予算ながらカルト的なヒットを記録し、フランスなど海外でもリリースされた。
 妻はフィリピン・ダンサーのディズィラエ・アスカロン。
 1930~60年代の古典的なSF、ホラー、ファンタジーが好きで、当時のフィギュアやロボットの収集家としても知られている。
 本作では、いとこのビリーとしての出演ほか、ダブルD・アベンジャーのコスチュームを着てスタントもこなしている。
 アメリカの河崎実(『いかレスラー』(←実相寺昭雄監修)、『コアラ課長』など)っていう感じでしょうか。

 プロダクションのHPはここ(http://www.williamwincklerproductions.com/about_us.htm)。監督へのインタビューがいくつかリンクされています。

 【ラス・メイヤーとの関係】
 監督のウィリアム・ウィンクラーに関して、「ラス・メイヤーの熱狂的なファン」と公式HPにはあるけれど、これまでの作品や彼のプロフィールを見ると、どう見ても、それよりは特撮映画ファンの要素の方が強い。本作には、アルの店に男装してやってきたチャスティティーにハイドラが「イギリスの紳士なのね」と言う台詞がありますが、それも本家“Avengers”(1961-69、76-77にイギリスで放映されたスパイ・コメディ。1998年にレイフ・ファインズとユマ・サーマン主演で映画化(『アベンジャーズ』)もされた。様々の亜流作品・アニメ化作品も生んだ)を意識したものだと思われます。

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 ポルノチックであるわりには、バストのトップを写すことさえ潔しとしなかったところを見ても、ますますそう感じさせられます。
 とは言うものの、わざわざラス・メイヤー映画の出演者が3人も出演させ(しかも3人とも50代半ば)、しかも『ファスター・プシー・キャット キル!キル!』や『UP!メガ・ヴィクセン』の引用と思われるものもあるところを見ると、普通の男の子程度(あるいは、それよりはもう少し上くらい)にラス・メイヤーが好きだった、ということでしょう。
 この上映企画も「ラス・メイヤー監督没後一周年追悼企画」と銘打たれていますが、ラス・メイヤーが死んだのは2004年の9月だし、この映画が製作されたのもラス・メイヤーが存命中の2001年。まあ、カタいことは言いっこなしですが。
 ちなみに、去年の11月にLoft+1でもラス・メイヤーの追悼イベントがあり、そこでもこの作品(の一部?)が上映されたようです。

 【ちょっといい話】
 公式HPによると、主演のキティン・ナティヴィダッドは、実際にも乳ガンを患い、乳房を切除することになった(1999年)らしいのですが、手術費用はラス・メイヤーが負担したそうです。ちょっといい話ですよね。
 本作のアメリカ版DVDには、監督とキティン・ナティヴィダッドによるオーディオ・コメンタリーがついているようです。

 【字幕】
 本作の字幕は仙野陽子さん(『アブノーマル・ビューティ』もこの方の字幕)ですが、字幕監修としてみうらじゅんがクレジットされています。
 実は、この字幕が一番問題かもしれないんですが、劇場公開作品としてはこれまで見たことがないほど、オリジナルの台詞からかけ離れたもの(悪ふざけ、もしくは創作)になっています。
 例えば――
 ・南米のシーンで、「(ちっとも南米に見えない)」と監修者自身が台詞とは関係がないツッコミを入れる。
 ・「ペニス じゃない テニスしよう」(ブバの台詞)と、言ってもいない言い直しをする。
 ・「たまんねえな フォー」と勝手な台詞(「フォー」)を加える。
 ・アルがアドルフィーナに答える時給は何故か「円」。そのほかの部分で出てくるお金の単位は「ドル」なのに。
 ・一番気になるのは、「ダブルD・アベンジャー」と言っているのにも拘らず、字幕ではすべて「メガパイレンジャー」になっていること。
 ・そのほか、台詞と異なった内容と思われる字幕が多々ありました。

 かつて『クィーン・コング』が吹替版で劇場公開された時も同種のことがありましたが、あの作品はかなり創作されている部分があるらしいとはわかったものの吹替版だったし……。
 仙野さんはいいの?アメリカのプロダクションはOKしてるの?って感じですが、まあ、こういう作品だから別にいいんでしょうか。
 「字幕監修 みうらじゅん」とチラシにもポスターにも大きく謳ってあったから予告はしてあるということなのでしょうが、せめて「超訳 みうらじゅん」くらいの表記をしておいてくれたら、そういう心づもりで観たのに、と思わないでもなかったですね~。
 これも、カタいことは言いっこなし、でしょうか。
 ちなみに、2002年にリバイバルされた『ケンタッキー・フライド・ムービー』も「みうらじゅん監修」でしたが、字幕で笑いを取ろうとはしていませんでした。

 【おまけ】
 『ファスター・プシー・キャット キル!キル!』関連のスペシャル映像(http://www.blairmag.com/blair2/pussycat/gogo.mov)

 なお、ラス・メイヤー作品は(おっぱい映画であるにも拘らず、スタイリッシュであったり、女性がカッコいい映画だったりするので)けっこう女性ファンも多いのですが、本作も、私が観た回は、20人ほどの観客のうち約半数が女性でした。「スマステ」で稲垣吾郎がこの作品について何か言ったらしいのですが、そのことも関係しているのでしょうか。

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この記事へのコメント

2006年03月02日 20:05
TBありがとうございました。
こちらからも返させていただきます。

お客さん、
20人“も”いたんですね。
自分のときはたったの5人で、
しかも全員ピンでした。
こういう映画を見せられると、
アメリカもまんざら
悪い国じゃないなぁと感じます(笑)。

みうらじゅんは
さすがの仕事ぶり(?)でした。
2006年03月05日 19:32
TBありがとうございました。
「あんまりカタいこと言うなよ」、その一言につきますね(笑
しかし、かつてはスタイリッシュ&グラマラスなラス・メイヤー作品に出演されてた女優さんたちもこんな作品に出ちゃって・・・ちょっと哀愁感じちゃいましたが・・・、まぁいっか!?
2006年03月10日 02:35
TBありがとうございました。
MJ字幕監修は「(バカだなこいつら)」とか突っ込み部分が楽しめました。
『ケンタッキー・フライド・ムービー』ではそういうのはなかったですよね。
確かに突っ込みたくなる映画ですが(笑)
映画自体のゆるさ加減も大好きです。
ライフセーバーがバ○ブだし(爆)
デ・ラ・クロワ先生は鼻鳴っちゃってるし! 最高です。
ちなみに私は見ていませんが「スマステ」での稲垣メンバーの評価は「最悪」というものだったそうです。
人種が違うので別にかまいませんが(笑)

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