ちょっとした拾いもの! 『アサルト13 要塞警察』

 こんな邦題だし、普通だったら観なかったかもしれない映画なのですが、たまたまちょうど時間がよかったので観ちゃいました『アサルト13 要塞警察』。観てみると、これが……ちょっとした拾いものだったんですね~。
 キャストには主役級と準主役級が揃っていますが、監督は無名だし、宣伝にもそんなに力が入っていたという印象はありません。あまり映画を観ないような人がたまに観る映画としてこの映画を選んだ場合、鑑賞後どういう感想を持つかはわかりませんが、B級アクションのB級さ加減の楽しさ(予算が潤沢にあるわけではない中で凄~く頑張っているその頑張りさ加減)を楽しむゆとりがある方が見れば十分楽しいですよ。いや、ホントに。

 物語は、ずばり籠城もので、ある事情によって警察署に立てこもることになった主人公たち数人(警官と囚人とカウンセラー)が外から襲ってくる“敵”に対して、警察署に籠城して守るべき仲間を守り抜く、というもの。守る側と攻める側の攻防(知恵比べ)と、誰が生き残ることができるか、というのが見どころになっています。

 ◆キャスト&サバイバル
 こうした映画の場合、配役の知名度やキャリアによって、物語の展開をある程度“先読み”することができます(この人がこのまま死ぬわけがないとか、この人はストーリー上何か重要な鍵を握っているんじゃないかとか)。本作は、サバイバル・バトルなので、予め誰が生き残るかを予想して、楽しむこともできます。

 ①イーサン・ホーク(ジェイク・ローニック役:麻薬取引で囮捜査を行なっていたが、囮捜査がばれて、仲間2人を殉職させてしまう。それがトラウマになり、仕事も内勤に異動。今もカウンセラーの世話になっていて、“燃えつき症候群”と見なされている)。イーサン・ホークの最近の出演作は『ロード・オブ・ウォー』『テイキング・ライブズ』『ビフォア・サンセット』など。ちょっと悪の要素が入っている役も多く、何だか気難そうで、善玉であっても感情移入がしづらいことが多い。これだけ名前が知られているのに「代表作」と言える作品もなかなか思いつかない。

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 ②ドレア・ド・マッテオ(警察秘書アイリス)。『デュースワイルド』『ソードフィッシュ』などに出演。

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 ③ローレンス・フィッシュバーン(マリオン・ビショップ役:長年組織犯罪班のターゲットになっていて、白昼堂々、囮捜査官レイ・ポートノウを殺し、つかまってしまう)。『マトリックス』のモーフィアス役が有名。強面だが、全くの悪役はない。囮捜査ものである『アンダー・カバー』の主役、『オセロ』のオセロ役など、演技には定評がある。『RAY/レイ』の主役を狙っていたのではないかと私は想像するのですが。

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 ④ガブリエル・バーン(マーカス・デュヴァル役:組織犯罪捜査班のボス)。『ミラーズ・クロッシング』『ユージュアル・サスペクツ』など、ギャングや犯罪者であっても知性を感じさせる役が多い。

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 ⑤ブライアン・デネヒー(老警官ジャスパー:この署とともに引退しようと考えている)。『ランボー』『シルバラード』など悪役と言っていい役もあれば、頼れるベテランといった役もある。

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 ⑥マリア・ベロ(カウンセラー・アレックス)。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の演技が高く評価された女優。その他の出演作として『ペイバック』『コヨーテ・アグリー』など。

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 ⑦アイーシャ・ハインズ(女ギャングのアンナ:濡れ衣だと主張している)。

 ⑧ジョン・レグイザモ(デリ強盗のベック:ビショップに組んでやらないかと持ちかけている)。他の出演作は『ランド・オブ・ザ・デッド』など。“ワル”の匂いをプンプンさせている。

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 ⑨ジェフリー・アトキンズ(偽ブランド品詐欺でつかまったスマイリー)。『ワイルド・スピード』『奪還 DAKKAN アルカトラズ』などに出演。

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 ⑩護送官2名。

 個人的には、ジャスパー役がブライアン・デネヒーであることに気づいた時、すごく久しぶりだとも思い、ただの「老いぼれ」の役だけど、今はそういう役をやるようになったのかなあと思ってしまいました。

 ◆オリジナル
 この映画は、ジョー・カーペンターのデビュー作『ジョー・カーペンターの要塞警察』(1976)のリメイク(原題は同じ)で、その『ジョー・カーペンターの要塞警察』もハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』(1959)を現代風に設定を変えてアレンジし直したものだそうです。つまり本作は『リオ・ブラボー』のリメイクのリメイクということになります。
 『ジョー・カーペンターの要塞警察』は日本では劇場公開はされず、テレビ放映とビデオ・リリースのみですが、そういう事情もあってか、隠れたファンを持つ作品となっているようです。
 公式ホームページ(http://www.herald.co.jp/official/assault/productionnote.shtml)によれば、本作の監督であるジャン・フランソワ=リシュの作品を見込んだプロデューサーが、彼に『要塞警察』のリメイクをやらせたら面白いだろうと思って、ジョン・カーペンターと連絡を取ったところ、カーペンターはアメリカを舞台にした英語作品ならいいとOKを出し、そこからこの映画のプロジェクトが始まったんだそうです。

 ◆脚本
 脚本は、同じく籠城を扱った『交渉人』で名を上げたジェームズ・デモナコによる。
 彼の次回作は、ライアン・オニール主演の『ザ・ドライバー』(1978)のリメイク(監督・出演者未定)など。

 ◆監督ジャン・フランソワ=リシェ
 監督デビュー作は“État des lieux”(1995/仏)。その他の作品としては、ヴィルジニ・ルドワイアン主演の“De l'amour”(2001/仏)、ヴァンサン・カッセル、アラン・ドロンら出演の“L'ennemi public n° 1”(2007/仏)など。

 ◆プロデューサー パスカル・コーシュトゥー
 本作には、プロデューサーが何名かいますが、プロデューサーとしてのキャリアが面白いのは、フィリップ・ガレルやアルノー・デプレシャンの諸作品を手がけ、本年度セザール賞を独占した『真夜中のピアニスト』もプロデュースしたパスカル・コーシュトゥーでしょうか。今フランス映画界で最もノッテるプロデューサーの1人です。
 1991年 『二十歳の死』(アルノー・デプレシャン監督) 製作
 1992年 『魂を救え!』(アルノー・デプレシャン監督) 製作
 1993年 『愛の誕生』(フィリップ・ガレル監督) 製作
 1994年 『ドゥーム・ジェネレーション』(グレッグ・アラキ監督) 製作総指揮
 1997年 『ノーウェア』(グレッグ・アラキ監督) 製作総指揮
 1998年 “Louis&Frank”(アレクサンダー・ロックウェル監督) 製作
 2000年 『エスター・カーン めざめの時』(アルノー・デプレシャン監督) 製作総指揮
 2000年 「マチューの災難」(グザヴィエ・ボーボワ監督) 製作
 2001年 “De l'amour”(ジャン・フランソワ=リシェ監督) 製作
 2001年 『白と黒の恋人たち』(フィリップ・ガレル監督) 製作
 2004年 “Rois et reine”(アルノー・デプレシャン監督) 製作
 2005年 『真夜中のピアニスト』(ジャック・オーディアール監督) 製作
 2005年 “Vers Mathilde”(クレール・ドゥニ監督) 製作
 など。

 ◆籠城もの
 本作を観はじめて早々、「おっ、久々の籠城もの!面白そうじゃない?」と思ったのですが、いろいろ過去の記憶を巡らせてみると、必ずしも久々でもありませんでした(笑)。パッと思い浮かんだのは『わらの犬』(1971)や『殺意のサン・マルコ駅』(1990)、『ドラゴン・イン』(1992)、『血斗!竜門の宿』(1967)など。
 『わらの犬』はこのジャンルの古典で、『ジョン・カーペンターの要塞警察』や『ホーム・アローン』『レザボア・ドッグス』『パニック・ルーム』にも影響を与えているようです。
 『リオ・ブラボー』や『わらの犬』からの流れ、『血斗!竜門の宿』の流れ(ツァイ・ミンリャン監督の『さらば、龍門客桟』(2003)はこの映画へのオマージュ?)、あるいは『ダイ・ハード』などを考えてみても、籠城ものは、限定された空間と時間と登場人物、攻防戦、心理戦、知恵比べ、登場人物の過去の経緯、裏切り者、内通者、闖入者、……といった要素があって、映画的な面白さに満ち、それゆえ、繰り返し映画のモチーフとして取り上げられ、リメイクされるのだ、と言っていいのだと思います。アクション映画やクライム・サスペンスを得意とするフィルムメイカーであれば、一度はやってみたいモチーフですね。
 日本映画では、“籠城もの”は、あまり思い浮かびません(『天国と地獄』とか?)が、最近の作品で言うと、SABU監督の『MONDAY』(2000)辺りがこれに近いと言えば近いでしょうか。

 以下に、最近の“籠城もの映画”をリストアップしてみました(思いつくまま)。
 ・『交渉人』(1998/米)
 ・『パップス』(1999/米)
 ・『ソードフィッシュ』(2001/米)
 ・『パニック・ルーム』(2002/米)
 ・『ジョンQ 最後の決断』(2002/米)
 ・『スズメバチ』(2002/仏)
 ・『ブルー・レクイエム』(2004/仏)
 ・『ブレイキング・ニュース』(2004/香港)
 ・『ホステージ』(2005/米)

 ◆ゲーム
 オリジナルの公式サイト(http://www.ap13movie.com/home.php)には、ゲーム(警察署の中から、襲い来る敵を銃で迎え撃つ。2レベルあり)があります。

 [トリビア]

 [キャッチ・コピーで選ぶアメリカ映画 2006年1月~3月]

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この記事へのコメント

2006年03月01日 18:14
トラックバックありがとうございます。こういう拾い物って最近少ないので嬉しかったですね。
ブログでないHPの方もよろしければ、見てください。
ルーピーQ
2006年03月02日 01:19
TB有難うございます。^^
こういう篭城、脱出ものが好きなので、なかなか楽しめた作品です♪
ローレンス・フィッシュバーンが影の主役って感じで存在感たっぷりでしたね。
2006年03月02日 16:17
こんにちは♪
TBできましたよ~嬉しい!
さて、私も全く期待せずに観たら、思いもがけず面白かった作品です。
内通者が予想できたり、敵さんが弱すぎたり、いろいろとB級的な部分もありますが、それでも楽しめました。
2006年03月02日 16:52
私も楽しめましたよ!意外とB級好きなんだと分かりました(笑)
いつもながら詳しい記事に頭が下がります!
またTBできない…めげずに頑張ります~
2006年03月02日 23:11
 TBありがとうございますm(_ _)m

 オリジナルもチェックしたいと思いながら
未だレンタルで見つからず…。リメイク作品
であってもこれだけ面白いのであればと…

 あの~カウンセリングの先生が、一番カ
ッコイイ生き様でした。「100人よ」と
言い切りましたからね。
hasselhoff
2006年03月03日 13:31
どうもTBありがとうございます。これを機に、オリジナルのDVDをまともな画質で出して欲しいですな。
2006年03月04日 00:33
トラバありがとうございます♪
ほんと「拾い物」でしたね、この映画。
あまり期待のしていなかった映画が、以外に面白かったときはとてもうれしいものです。

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