ジミー・チョウって常識!? 『イン・ハー・シューズ』

画像 映画『イン・ハー・シューズ』は、比較的大きな規模の公開作品であるわりには、日本語字幕に固有名詞がバンバン出るので、へえ~珍しいなと思いました。普通だと、日本人にあまりなじみのない固有名詞は普通名詞や他の言葉に置き換えられたりするのですが、ターゲットを考えるとそうする必要がないとみなされたか、あるいは、原作があるからその世界観を大切にしたいと考えられたのでしょうか。「ジミー・チュウの靴」なんて有名なのでしょうか?私は知りませんでしたが。

 そこで、この映画に出てきた固有名詞を中心に、気になったことをいろいろ調べてみました。本当は原作があるのでそちらを読めばもっといろんなことがわかるのでしょうが、さすがにそこまではしていられません。
 以下に、アット・ランダムに書き出してみます(私なりに解釈したものもあります)。

 ・“in a person’s shoes”で「人の立場に立って」の意。タイトル「イン・ハー・シューズ」は、マギーがローズの靴を履く(性格は正反対なのに、姉妹の足のサイズだけが同じ!)という意味もあるのでしょうが、姉妹がそれぞれ相手の立場に立って考える、相手のことを思いやる、という意味で使われているようです。

 ・姉妹の名前 マギーは、映画の中ではマギーとしてしか出てきませんが、おそらくマーガレットの愛称ですね。すると2人の両親は娘のどちらにも花の名前をつけたということになります。ちなみに、お母さんの名前はキャロライン(『エネミー・オブ・アメリカ』『バニラ・スカイ』『ラブ・アクチュアリー』『ペイチェック』などに出演しているイヴァナ・ミリチェヴィック)。

 ・シカゴは寒い シカゴは緯度が高いだけでなく、ミシガン湖からの強風が吹き込むため、冬が寒いことで有名。

 ・レッカー アメリカには、ウィークエンド深夜の駐車を禁止した道路標識があるそうです。例えば、TOW-AWAY 12MIDNIGHT-7AM SAT. AND 12MIDNIGHT-7AM SUN.とあって、レッカー車のイラストが描かれているもの。マギーが、土曜日の夜に駐車するとレッカーされることを知らずにいて、日曜日にレッカーされた車を取り戻しに行くシーンがありましたが、次の日(月曜)の朝見ると、またタイヤにストッパーがかけられています。これはたぶんウィークエンドの深夜が駐禁の地域なのだと思われます(それとも罰金を払わずに車に乗って帰ったので、係員が再び車をレッカーしにやってきたということでしょうか?)。

 ・難読症 他の能力には何ら問題はないのに、読書する時や、特定の文字を綴る時などに障害がおこる症状。トム・クルーズ、キアヌ・リーブス、オーランド・ブルームらが克服したことで知られています。韓国ドラマ『星を射る』は難読症でありながら、トップ俳優を目指す男性の物語。ロダンやレオナルド・ダ・ヴィンチ、アガサ・クリスティも難読症だったと言われています。

 ・エリザベス・ビショップ マギーが最初に読んでくれと「教授」に頼まれた本は日本で翻訳が出ています。『エリザベス・ビショップ詩集 』(原書名:THE COMPLETE POEMS 1927-1979〈Bishop, Elizabeth〉)小口未散訳 ISBN:4812012821 156p 19cm(B6)土曜美術社出版販売 (2001-02-08出版)。エリザベス・ビショップ(1911~79)は、20世紀アメリカで最も愛された詩人の一人で、欧州・南米の詩人にも人気がありました。4冊の詩集はすべてアメリカの主要な詩の賞を受賞し、アメリカ人として女性としてはじめてノイシュタット文学賞を受賞しています。

 ・シクサーズ サイモンがひいきのバスケット・チーム。NBA30チームのうち、東地区アトランティック・デヴィジョンに属する5チームのうちの1つ。本拠地はもちろんフィラデルフィア。

 ・ジミー・チュウの靴。マギーがヒールを折ってしまった靴のメーカーで、オーダー・メイド専門の一流ブランド。故ダイアナ妃やハリウッド・セレブがアカデミー賞の授賞式などで履いたりすることで知られています。参考サイト:スクリーン・セレブのファション・チェック(http://www.plala.or.jp/nadeshiko/entame/fashion/inhershose/)

 ・サイモンがスシ・バーでさっさと自分だけで注文を決めてしまったのは、自分がうまいものを知っているからということもあるのでしょうが、ユダヤ教の戒律があって、食べられないものがあり、そのことで食事の前に揉めたくないということがあったのかもしれません。

 ・Chihiro Kawamura ローズとサイモンが訪れるスシ・バーのスタッフを演じた女優さんの名前。どこかでこの方の顔を見たことのあるような気もして調べてみたのですが、『イン・ハー・シューズ』以外はわかりませんでした。

 ・ローズのいるフィラデルフィアの天気は悪く、エラのいるマイアミはポカポカ陽気。ともに東海岸でありながら、北と南では気候は随分違うようで、それぞれの登場人物の気分に合わせて、天候も設定されているようです。

 ・ファッジ コンデンス・ミルクとバターと砂糖で作るキャラメルのような、イギリスのお菓子。参考サイト:http://britannia.cool.ne.jp/recipe/fudge_j.html

 ・ミセズ・フィールズ 日本にも1号店がオープンしたアメリカン・ソフト・クッキーのお店。http://www.mrsfields.co.jp/index02.html

 ・ソニー&シェール ローズが自分たち姉妹になぞらえたデュオ。ソニー・ボノとシェールが組んだ夫婦デュオですが、64年に結婚し、75年に離婚。シェールはソロ・シンガーとして活躍し、その後、女優に転進。『月の輝く夜に』でアカデミー賞主演女優賞受賞。

 ・映画の中で、トニ・コレットがプリンストンのロゴが入ったトレーナーを着ているシーンがありました(けっこう長いシーン)。プリンストン大学出身という設定なのかなと思ったら、原作者ジェニファー・ウェイナーの出身大学(しかも首席で卒業)なのでした。ちなみに、原作者は弁護士ではなくて、フィラデルフィアで記者をしていたとのこと。ご主人が弁護士なのだそうです。

 ・ハヴァ・ナギラ ローズが、ハミングされると怒るという曲。イスラエルで最も有名な伝統曲の曲名。ローズが嫌っている理由は、たぶん継母のシデルがユダヤ教徒で、彼女の鼻歌が「ハヴァ・ナギラ」だったからだと想像されます。

 ・SOMETHING FOUR 花嫁が結婚式に身に着けると幸せになるとされる4つのもの。SOMETHING BLUE(何か青いもの)、SOMETHING NEW(何か新しいもの)、SOMETHING OLD(何か古いもの)、SOMETHIG BORROW(何か借りたもの)の4つのこと。ローズの結婚式にエラは自分の靴を貸しますが、それは「古いもの」であり、「借りたもの」であり、青い花の絵がちりばめられた「青いもの」でもあります。「新しいもの」はいろいろあるでしょうが、マギーが用意してくれたはずのウェディング・ドレスは、たぶん新しいもののはずです。

 ・花婿がグラスを踏み壊す。ユダヤ教の結婚式の儀式のうち最後に行われるもの。ガラスを壊すことは、ユダヤ教の神殿を壊すことを意味し、大事なことをずっと忘れないために行われます。
 ユダヤ人は、厳格にはユダヤ人どうししか結婚してはいけないことになっています。どうしても結婚したい場合には相手が改宗する必要がありますが、その手続きも気軽にできるものではありません。そこで外国で結婚式を挙げるケースも多いようです。ローズとサイモンの結婚式がジャマイカン・レストランで行われたのもたぶんそういう理由からだと思われます。ユダヤ教のカルトに入ったシデルにとって、食べられるものがなかなか見つけられなかったのは、たぶんジャマイカ料理の中にはほとんど食べられるものがなかったからですね(これはローズによるシデルへの嫌がらせでしょうか?)。

 ・E.E.カミングス マギーがローズの結婚式に姉に捧げた詩。E.E.カミングス(1894-1962)は、らせん状の図形の上に詩の文字列を書き並べるなど、詩を視覚的に見せる工夫を凝らしたりもしたアメリカの詩人。“Anyone Lived in a Pretty (How) Town”(1967)は、ジョージ・ルーカスが、E.E.カミングスの詩を元に作った実験映画。

 ・原作者ジェニファー・ウェイナーが、ローズとエイミーがでかけるイタリアン・マーケットのシーンで’smiling woman in the Italian Market’としてカメオ出演しています。

 ・原作者の妹とお祖母ちゃんも実はこの映画のどこかに写っているようです。妹はMollyという名で、ローズの秘書役(ノン・クレジット)。

 ・監督のカーティス・ハンソンは、ローズ役のトニ・コレットにもっと太って欲しいと頼み、彼女は撮影前に25ポンド(約11kg)太ったそうです。そして撮影(物語の進行)に合わせて、すなわち、ローズが自分らしい生き方を見出すに従って、体重を元に戻していったそうです。

 ・Yu+Co ローズとマギーのそれぞれの夜を断片的に交互につないでいくオープニング・シークエンスをデザインしたデザイン・チーム。参考記事はこちら

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  イン・ハー・シューズ

この記事へのコメント

2005年12月05日 11:29
はじめまして。
TBありがとうございました。
こちらからもTBさせていただきました。
私もジミー・チュウの靴、知りませんでしたよ。作品の中には本当に素敵なデザインの靴がたくさん出てきてため息ものでしたね。
すっかり影響されて靴が欲しくてたまらなくなってしまいました。
2005年12月11日 01:16
はじめまして。
TBありがとうございました!
イン・ハー・シューズは、
心温まるステキな映画でしたね。

ジミーチュウの靴ですが、
雑誌などで、たまに見かけます。
マギーがヒールを折ってしまったシーンでは、
心の中で叫んでしまいました!
しかもチューインガムでつけてるし!
2006年06月15日 00:21
こんにちは。こちらにもTBさせていただきました。よろしくお願いします。
プリンストンのTシャツ、私もすごく印象に残りました。詩の文化のあるお国っていいな・・と思いますね。
ではでは。
umikarahajimaru
2006年06月15日 03:11
真紅さま
コメントありがとうございました。
私の記事は、映画館で映画を観たあと、映画を反芻しつつ書いたものなので、一回限りのものだし、DVDで細かくチェックされるとどうなのかなあと思ったりもしますね。何かしらの参考になったでしょうか?

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