ディズニー・アニメの新しい流れ?! 『チキン・リトル』

画像 映画『チキン・リトル』をもっともっとよく楽しむためにいろいろ調べてみました。

 1.『チキン・リトル』は、もともとは民話“THE SKY IS FALLING”から発想された物語である。
 民話“THE SKY IS FALLING”は、葉っぱが1枚落ちてきたのを空が落ちてきたと勘違いしたチキン・リトルがそれを人に伝えることで大騒ぎになる物語で、最後は「誰か本当に空が落ちてきたのを見たのかい?誰か空が落ちてくるのを聞いたのかい?誰か空が落ちてくるのを感じたのかい?」と大人(キツネのフォクシー・ロキシー)に諭され、もっと慎重に行動しないと大変なことになってしまうよと教訓を与えるお話です。民話として面白さは、随所で韻を踏んだ台詞まわしと、伝言ゲームでどんどん大騒ぎになっていくところ、にあります。
 『チキン・リトル』でも発端は同じですが、物語の展開は逆で、実は本当に空から「あるもの」が落ちてきていたのに、誰も信用してくれず、その結果「大変なこと」が起こってしまいます。

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 2.今回の映画『チキン・リトル』は、実はリメイクである。
 そうなんです、実は今年のお正月映画にはリメイク映画が3本あったんですね(『キング・コング』と『ディック&ジェーン』と本作)。
 『チキン・リトル』のオリジナルは1943年に作られていて、監督はクライド・ジェロニモ。あの『シンデレラ』(50)や『ピーター・パン』(53)を作った凄く有名な監督です。
 1943年版のメイン・プロットが、今回のものと全く同じかどうかは、詳細が確かめられないのでわからないのですが、作られた時代が時代なので、元々は反・反米用映画としてプロパガンダ用に企画されたそうです。つまり「空が落ちてくる」というようなデマは安易に信用してはいけない、という教育的な意図があったわけです。しかし、ウォルト・ディズニーが、もしプロパガンダ色を前面に押し出した映画にしてしまうと戦争が終わった時に作品が古くなってしまうので、そうすることを拒んだそうです。この辺は、日本で「桃太郎」が戦争に使われたのをちょっと思い出してしまいますね。

 3.今回の『チキン・リトル』はアニメとしては珍しくもの凄く短期間で作られた映画である。
 映画の後半にこんなシーンがあります。
 「外で『宇宙戦争』やってるよ!」とアビーがチキン・リトルに知らせにやってくる。
 確かに外では、映画『宇宙戦争』に出ていたのと造形が似たエイリアンたちが街を襲っていて……。
 『チキン・リトル』のアメリカでの封切りが11月4日で、『宇宙戦争』の封切りが6月29日。夏休み映画公開の時点で日本でも確か『チキン・リトル』の宣伝は始まっていたはずなんですけど(『チキン・リトル』の‘うちわ’がチラシ代わりに劇場に置かれていた)、当初から『宇宙戦争』のパロディーを映画の中に入れるというのは決まっていたのでしょうか? アニメって製作に凄く時間がかかると思ってましたから、こんなに早く最新のネタを入れたアニメが登場することに驚いていまいました(特に『宇宙戦争』は公開前に内容が外に漏れないように厳戒態勢が敷かれていた映画だったはずですから)。

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 4.今回の『チキン・リトル』は、ドリームワークスへの対抗意識をむき出しにした作品である。
『チキン・リトル』のオープニングは大体こんな感じで始まります。
 ナレーション「さあ、どんなオープニングがいいかい? 昔々あるところに……。さんざん使い古されている始まり方だな」
 大地から大きな朝日が昇ってきて、『ライオン・キング』のテーマが流れてくる。
 ナレーション「パロディーはいかん」。という声とともに朝日も大地も引っ込む。
 1冊の本が置かれていて、表紙が開かれようとしている。
 ナレーション「ありきたりでつまらん!――不幸が始まったあの時に戻ろう」
 教会の鐘をたたいて緊急事態を知らせるチキン・リトル……。

 オープニングからして物語を語ることにかなり自覚的な映画であることがわかりますが、言いたいのはそこではなくて、3つ目の「絵本の表紙をめくるオープニング」のことです。
最近の映画で絵本の表紙をめくるオープニングと言って思い出すのはドリームワークス作品『シュレック』ですね。つまり『チキン・リトル』は、『シュレック』のオープニングはありきたりでつまらんと、ちょっと『シュレック』をおちょくってるんじゃないかということです。ともに民話(童話)をベースにした物語ですから当然対抗意識はあると考えていいと思います(ちなみに『宇宙戦争』もドリームワークス作品だったりします)。

 5.『チキン・リトル』には、パロディーが満載である。
 現実の事件がすぐ誇張して映画化される、というような現代社会をパロディー化した物語でもありますが、さまざまな映画についてのパロディー・シーンも随所に見られます。
 ①もちろん『宇宙戦争』。
 ②チキン・リトルが教会の鐘に向かって単身飛んでいくシーンは、『インデペンデンス・デイ』のクライマックスを思わせる(円盤の造形も)。
 ③フィッシュだけが宇宙語がわかるというのは、『銀河ヒッチハイク・ガイド』でバベル魚を耳に入れるとヴォゴン人の言葉がわかるようになるのと関係あるのかもしれない。
 ④宇宙人からフィッシュを介して『スター・ウォーズ』ネタも挿入されます。
 ⑤宇宙人が子どもを連れ戻しに地球にやってくるのは『E.T.』からの引用。
 ⑥ミステリー・サークルがどうして作られたのかという謎(『サイン』)も明かされます(笑)。

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 6.『チキン・リトル』は、ディズニー・アニメっぽくない、ディズニー・アニメである。
 そもそも映画本編の中にパロディーを入れるなんていうことはこれまでのディズニー・アニメには、ほとんど見られないことでした(そういうことは下品だと考えられたんじゃないかな。『Mr.インクレディブル』にはあったけど)。それから、ズボンが脱げてパンツ丸出しになってしまうところを描くなんていうのもこれまでのディズニー・アニメではタブーだったはずです。クイーンの「伝説のチャンピオン」やスパイス・ガールズの「ワナビー」、エルトン・ジョンの“Don’t Go Breaking My Heart”なんかを劇中で歌うなんていうのもディズニー・アニメでは珍しいですよね。
 こういうのはドリームワークスのアニメがやってきたことで、本家本元も今の観客を考えるとこれまで通りの路線を貫けず、ライバルに似てきちゃっているということでしょうか。

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 日本の公式ホームページでは、ボイス・キャストについてあまり紹介してないみたい(それに凄く読みにくい)なので、ここに書き出してみました。
 チキン・リトル:ザック・ブラフ(『マンハッタン殺人ミステリー』)
 バック・クルック(チキン・リトルの父):ゲイリー・マーシャル(『プリティ・ウーマン』『恋のためらい フランキーとジョニー』などで知られる監督)
 ターキー・ラーキー市長:ドン・ノッツ(70年に「ザ・ドン・ノッツ・ショー」という自分の名前を冠したショーのホストを務めたこともある俳優。最近はボイス・キャストの仕事が多い)
 ウォーレンズワース先生(羊語の先生):パトリック・スチュワート(『スター・トレック』シリーズ『X-メン』)
 フォクシー・ロクシー:アイミー・シダリス(『メイド・イン・マンハッタン』『スクール・オブ・ロック』)
 ラント:スティーヴ・ザーン(『ナショナル・セキュリティ』『ニュースの天才』『サハラ』)
 アビー(みにくいアヒルの子):ジョーン・キューザック(『クレイドル・ウィル・ロック』『ハイ・フィディリティ』『スクール・オブ・ロック』)
 フェチット校長:ウォレス・ショーン(『トイ・ストーリー』のレックスの声『ホーンテッド・マンション』)
 犬のアナウンサー:ハリー・シアラー(『ベスト・フレンズ・ウェディング』『エドtv』)
 メルヴィン(宇宙人のパパ):フレッド・ウィラード(『ウェディング・プランナー』『みんなのうた』)
 ティナ(宇宙人のママ):キャサリン・オハラ(『ホーム・アローン』『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』)
 フィッシュ:ダン・モリーナ(本業は音響・編集担当。本作でも音響・編集担当)

 日本語吹替版は、
 チキン・リトル:山本圭子
 バック・クルック:中村雅俊
 ターキー・ラーキー市長:野沢那智
 ウォーレンズワース先生:石塚運昇
 フォクシー・ロクシー:深見梨加
 ラント:朝倉栄介
 アビー:小島幸子
 フェチット校長:稲葉実
 犬のアナウンサー:大塚芳忠

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 ここ(http://movies.yahoo.com/shop?d=hv&id=1808610262&cf=trailer)では、英語ですが、各種予告編のほかにたくさんのビデオ・クリップ(本編からの抜粋映像)が観られます。本編自体81分しかないのに、観せ過ぎでしょう(笑)。
 ・Dogdeball (1.39)
 ・Finding The Discs (0.39)
 ・Soda Machine (0.35)
 ・Plan B (0.37)
 ・Closure (0.39)
 ・I Am The Champion (0.39)
 ・Nervous Eater (1.19)

 [キャッチ・コピーで選ぶ2006年お正月映画]

 [トリビア]

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この記事へのコメント

2005年12月29日 16:58
TBありがとうございます。私からもTBよろしくお願いします。チキン・リトルは楽しく見たのですが、ディズニー・アニメには期待しすぎてしまい、ついつい辛口になってしまいます。※ホントは大好きだったり^^します。
これからも関連記事のおりはよろしくお願いいたします。

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