実は2人とも短編映画の名手です!

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 佐藤雅彦さん『ねっとのおやつ』(マカジンハウス刊)が文庫化され、『四国はどこまで入れ換え可能か』(新潮文庫)という新しいタイトルで発売されました。
 佐藤雅彦さんは、「ポリンキー」や「バザールでござーる」といったCM、「だんご三兄弟」の作詞で知られるCMクリエーターで、とかはもう常識なので書きませんけど(と言いつつ書いてますけど(笑))、ある時、書店に設けられていた佐藤雅彦コーナーで何気なく『ねっとのおやつ』を手に取って以来、私も佐藤雅彦ワールドにはまってしまったんですね。

 『ねっとのおやつ』はショートショートのマンガだと思ってもらって間違いないんですが、例えば、こんな感じです。「賞味期限-ヨーグルト編-」
 冷蔵庫の中に4つのヨーグルトが並んでいて、その中の1つが自分のパッケージに印刷されている数字のことを仲間に質問します。
 仲間はそれが賞味期限であるということを教えますが、質問したヨーグルトの日付は昨日のもので、あとは順に今日、明日、明後日。
 「じゃあ、ボクは捨てられてしまうの?」と心配する昨日日付のヨーグルトに、仲間は「それはその家の奥さんの性格によって違うから必ずしも捨てられるとは限らないよ」と慰めます。
 冷蔵庫のドアが開けられると、ヨーグルトたちは誰が選ばれるか、ドキドキしながら待ちます。するとその家の奥さんが手に取ったのは-。

 こんな感じのショート・コミックが113 個続いています。誰も傷つけないし、悪意もない、でも妙におかしくて、まさに「だんご三兄弟」の作者ならではの世界。

 『ねっとのおやつ』はもともとはSo-netで半年間毎日1つずつ配信されていたアニメーションで、書籍版はそれをコマ割りにしてコミック化したものです。すべてのアニメーションがコミック化に適していたわけではないので、書籍にはその中の11作品が省かれていますが。
 配信された方のアニメーションは、同じく『ねっとのおやつ』というタイトルで、全124本を収めたCD-ROM版として発売されています(マガジンハウス刊 2800円(税別))。

 私が佐藤雅彦さんのことを意識し始めたのはCMではなく、レイトショーで劇場公開された佐藤雅彦監督による短編集『kino』を観てからです。
 『kino』は6つの短編+オープニングで構成されている作品なのですが、その中の1つ「オセロ」はこんな感じです。
 バス停に2人の人物が左を向いて並んでいます。もう1人が右からやってきて、最初に待っていた2人の右側に並ぶと、2人に背中を向けて右を向いて立ちます。さらにもう1人が今度は左からやってきて、最初に立っていた2人の左側に右を向いて立ちます。すると右を向いて立っている2人に挟まれた左向きの2人は、あれっ間違ってたのかなと思ったのか、くるっと向きを変えて、右を向いて立ちます。

 目のつけどころが面白いし、素朴だけれど、ユーモラスで、こんなことが短編になるのか、いや確かに短編として成立してるという驚きがありました。
 佐藤雅彦作品の面白さについてはいろいろ語られていますが、『kino』では爆笑問題の太田光さんが「私自身、自分の事を相当肩の力の抜けた人間だと思っているが、佐藤さんにはかなわない。コレを観て、そう思った」とコメントしています。そうですよね、この肩の抜け方は尋常ではありません。天才的と言っていいと思います。
 『kino』はマドラ出版から、テキストブック付きビデオとして発売されています。佐藤雅彦コーナーがあるような書店の佐藤雅彦コーナー(CM・広告関係の書棚)に並んでいます。税別で5500円。ちょっと高いですが、他の手段で観ることはできないので、このくらいは、まあしょうがないですよね。

 『kino』は全編ルーマニアで現地の人を使って撮影された作品(アニメーションである「ポイント」を除く)で、撮影監督は、ピエール・ストゥーベルという人が務めています。日本で公開された作品でいうと、ストゥーベルは、フランソワ・オゾン監督『クリミナル・ラヴァーズ』でも撮影監督を務めた方です。
 日本に映画『ホームドラマ』で初来日した時にオゾンに彼について聞いてみたところ、<それまでは昔から知っているヨリック・ルソーとばかり組んでいたんだけど、初めて組んだストゥーベルとは、彼の作り出す光が自分のイメージとは違うので最初は衝突してばかりだった>と答えていました。その後、オゾンは再びヨリック・ルソーと組むようになったので、やはりストゥーベルとはウマが合わなかったということでしょうか。
 オゾンは『kino』のことは知りませんでしたが、その時通訳をしていたのが、ヨーロッパ映画の最新情報をレポートしてくれるシネマ・ジャーナリストのYさんで、「あれっ、これ(『kino』)のコーディネートしたの私だったかもしれない」などとおっしゃっておられました。

 なお、『ねっとのおやつ』(『四国はどこまで入れ換え可能か』)ですが、「賞味期限」には「賞味期限-納豆編-」という姉妹編もあります。

 :*『ねっとのおやつ』については、ネットで検索すれば、何故こういうプロジェクトを始めたのかとか、書籍版のあとがきとかいろいろ出てきます。コピー不可、リンク不可だったりしたので、ここで示すことはできませんでしたが。

 *『四国はどこまで入れ換え可能か』は、『ねっとのおやつ』に多少加筆してあるそうです。

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ねっとのおやつ CD-ROM版

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