造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル展 ~幻想の古都プラハから 

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 行ってきました、シュヴァンクマイエル展
 9月10日から既に開催されていたんですが、その場所が、神奈川県立近代美術館葉山館なので、東京からだと片道だけで2時間半かかり、1日つぶす覚悟がないと行けなかったんですね。
 何故葉山なのか? それについては一切説明がなされていませんでしたが、おそらくやりたいと熱望した学芸員の方がいて、それにシュヴァンクマイエルも応じたということでしょう。
 そこのミュージアム・ショップに行ったところ、チェコ・アニメの先達である「イジー・トゥルンカ展」の図録も販売されていましたから、それを引き継いだ形で、シュヴァンクマイエル展が開催になった、ということのかもしれません(といっても、「イジー・トゥルンカ展」は刈谷市美術館、福井市美術館、栃尾市美術館という3館による開催で、今回の展覧会とは直接の関係はありません。地方の美術館の企画展が面白くなっているんだなあとは感じさせられましたが)。

 さて、今回の企画展は、日本で初めての「シュヴァンクマイエル展」なので、彼のコラージュ作品や造形作品を直に観られるという、それだけで必見モノなのでしたが、彼には『シュヴァンクマイエルの博物館』という造形作品の図版集(2001年刊)がありますから、それに載っていない作品がどれだけ観られるか、というのが、行く前に気になっていたことでした。チラシによると、来年公開予定の映画『ルナシー(狂気)』(仮題)関係の展示物もあるということで、まずこれが楽しみの1つ。
 それともう1つポイントなのは、今回の企画展は実は「シュヴァンクマイエル展」であって、「ヤン・シュヴァンクマイエル展」ではないということ。それがどういうことかというと、ヤン・シュヴァンクマイエル作品だけではなく、同じく芸術家である奥さん(エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーさん)の作品も展示されているということです。

 既にこの展覧会に行った人のコメントなどを読むと映画『悦楽共犯者』「自慰マシーン」の実物が見られたのがよかった、と書かれたものがいくつかありましたが、「自慰マシーン」自体は結構ちゃっちいもので、私個人は、それよりはヤンのコラージュ作品や、よりサイズの小さな造形作品(映画に使われた、赤ん坊の「オテサーネク」とか)、そして奥さんのドローイングが面白かったですね。

 ヤンの作品は期待通りでした。例えば、「動物学」や「植物学」「昆虫学」といった『シュヴァンク=マイヤー百科事典』のシリーズ『博物誌シリーズ』、それからアルチンボルトへのオマージュ作品等々。そして、映画『ルナシー』に使われているという“すごろく”とそのアイテムらしいカードも展示されていましたが、それがどのように映画に使われるのか非常に楽しみになりました。
 が、期待以上に面白かったのが、エヴァのドローイングです。絵本版『オテサーネク』の原画を思い出してもらえればわかると思いますが、ああいうタッチで、しかも幻想的な内容。決して夫の七光りなどではなく、確固たるスタイルと世界観を持っていて、それがユニークで魅力的なんですね(イメージできるような例を挙げると、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」のパロディーである「ヴェノウシュの誕生」といった作品もありました)。ヤンの作品ももちろん素晴らしかったのですが、エヴァの作品を観られただけでもわざわざあそこまで行った価値があった、と言っていいと思います。エヴァの作品はヤンよりも早い時期、60年代から既にアート作品として「売れる」完成度や個性を持っているというのが、見てとれました。エヴァの作品にヤンが嫉妬したり、焦りを感じたということはなかったのでしょうか?

 実はこの会期中に、エヴァさんがお亡くなりになられたという報せがあって、この展覧会が追悼みたいな形にもなり、彼女の作品を見ることの意味が変わってしまったということもあります。オープニングにはヤンが来日したのですが、奥さんは同行されなかったそうです。既に病床にあったということでしょうか。

 展覧会の構成は、Ⅰ.博物誌、Ⅱ.形成、Ⅲ.触覚主義、Ⅳ.夢/物語/エロチシズム Ⅴ.ドローイング/アニメーション、Ⅵ.人形/映画、というもので、2箇所で白い壁に大きくビデオ・プロジェクターでヤンの短編作品が上映されていたほか、随所でビデオでも作品が上映されていました。土日には講堂で5プログラムに分けて、映像作品の上映も行なわれています。

 入場料金は大人1000円。
 図録は2625円。
 ポストカードは8種類販売されていて、各110円。
 葉山での会期は11月6日までですが、11月12日から1月15日には新潟の新津美術館でも開催されるそうです。

 今、Amazonで検索したら、展覧会の図録がAmazonで購入できる(↓)ことがわかりました。

 *当ブログ関連記事
 ・ 日本語でよめるはじめてのチェコ総合情報誌「CUKR[ツックル]」
 ・チェコアニメ映画祭2006、またはエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー
 ・ヤン・シュヴァンクマイエル 2007年 夏!

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