映画『宇宙戦争』の中に銃のエピソードが挿入されているわけ

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 チャート式映文法3

 「日常世界で、さりげなく見せられる銃は、のちに使われて、悲劇を起こす」

(銃は使われるの法則)

 典型的な例としては、『テルマ&ルイーズ』(91)あたりが妥当でしょうか?
 テルマ(ジーナ・デイビス)とルイーズ(スーザン・サランドン)は、退屈な日常を一時忘れるために、小旅行に出ます。
 テルマは、旅行の荷物をカバンに詰めている時、何気なく開けた引き出しに拳銃が入っているのを見つけ、特に深く考えることもなしに、拳銃をつまんで荷物の中に入れます。ルイーズが車で迎えにやってきた時に、ランタンや虫取り網まで持っていこうとするテルマの様子が映し出されますから、テルマは何かにつけて心配性で、それでたまたま荷物の中に拳銃を入れてしまったということなのでしょう。

 車を走らせ始めてすぐ、テルマはバッグから拳銃を取り出してルイーズに見せます。
 ルイーズ「この拳銃持っててよ(Will you take care of this gun?)」
 テルマ「なんでそんなもの持ってきたの?」
 ルイーズ「サイコ・キラーや熊や蛇が出るかもしれないでしょ。私は使い方知らないの」
 テルマ「あっちやってよ(Put it away.)。……じゃあ、私のカバンの中に入れとけば(
Here,put it in my purse.)。テルマったら、もう」

 これで拳銃があることが観客に示され、どこにあるかがテルマにもわかったわけです。ルイーズは、テルマに持たせておいては危ないと思って、自分が持つことにしたのでしょうが、「カバン」がbagではなく、purse(いつも持ち歩く小さなカバン)であることが後で効いてきます。

 その夜、2人はカントリー・バー(「銀の銃弾」という店名の)へ行き、ハメを外します。テルマは悪酔いして店で知り合った男と外へ出ますが、ルイーズが後から店の外に出ると、テルマは男にレイプされそうになっています。ルイーズは、拳銃を突きつけて男を引き離します。いったんはそれでケリがついたはずだったのですが、男が「早く突っ込んどけばよかった」と言うのを聞いて、ルイーズはカッとして発砲。胸から血を流している男をそのままにして、2人は車で逃走してしまいます。
 これで、2人の逃避行が始まり、お金がなくなったのもきっかけとなって2人スーパー強盗を始めて、ますます後に引けなくなってしまいます。

 こんな風にして、日常空間の中に、さりげなく銃の存在が示されると、その非日常性ゆえに観客の頭に残り、ちょっと緊張感も呼んで、後のシーンの伏線になっていきます。

 よくあるのは、銃が、引き出しの中や車のダッシュボードの中、カバンの中に入っているのをさりげなく見せるというケースですね。それで、何か突発的なことがあった場合に、登場人物の誰かがその銃を手にして、発砲し、悲劇が起こってしまう、というものです。
 ドラマツルギーの手法としては、逆に、後で起こるそうした悲劇的なシーンのために、前フリとして、さりげなく銃の存在を示しておくのだ、と考えられます。

 『宇宙戦争』(05)では、トム・クルーズが避難するのに、念のために持っていた拳銃が避難民の間で奪い合いになり、悲劇を呼び起こしてしまうというくだりがありました。それに関して、銃社会であるはずのアメリカで、たかだか一丁の銃が奪い合いになるっていうのはおかしい、という非難がありましたが、「銃から悲劇へ」という流れは、映画の文法としては合っているわけです。

 この法則は、銃を持っているのが当たり前のヤクザやギャングや警官が出てくるような映画では、かえって当てはまりません。その場合は、銃もヤクザやギャングや警官を示す記号でしかないからだと考えられます。

 また、銃の代わりに、「ナイフ」が同じような効果をもたらす(そのために使われる)場合があります。

 「日常世界で、さりげなく見せられる銃は、のちに使われて、悲劇を起こす」

 これが使われる映画は数限りなく、その適用率も、前記のケースを除けば、90%以上だと思われます。

 *ちなみに、『テルマ&ルイーズ』のエンディングには、劇場公開されたものと別バージョンがある、という噂が公開当時からありました(DVD登場の遥か以前のことです)が、DVDによってそれを確かめることができました。

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