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zoom RSS カンヌ国際映画祭2018 受賞結果関する考察など

<<   作成日時 : 2018/05/23 08:51  

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 【フランスのメディアによる星取表との関係】

画像

 *カンヌ国際映画祭2018 コンペティション部門 星取表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201805/article_9.html

 ◆平均点
 ・“Leto (L’été/The Summer)”(ロシア) 監督:キリル・セレブレニコフ(Kirill Serebrennikov) 平均:2.93
 ・『万引き家族』“Shoplifters”(日) 監督:是枝裕和 平均:2.85 パルムドール
 ・“En Guerre (At War)”(仏) 監督:ステファーヌ・ブリゼ 平均:2.8
 ・“Ahlat Agaci (The Wild Pear Tree) ”(トルコ・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 平均:2.64
 ・“Dogman”(伊・仏) 監督:マッテオ・ガローネ 平均:2.43 男優賞
 ・“Zimna Wojna (Cold War)”(ポーランド・仏・英) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ 平均:2.4 監督賞
 ・“3 Faces”(イラン) 監督:ジャファール・パナヒ 平均:2.38 審査員賞
 ・“Ash Is Purest White(江湖児女)”(中・仏・日) 監督:ジャ・ジャンクー 平均:2.27
 ・“Plaire Aimer Et Courir Vite (Sorry Angel)”(仏) 監督:クリストフ・オノレ 平均:2.26
 ・“Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー 平均:2.2 審査員賞
 ・“Blackkklansman”(米) 監督:スパイク・リー 平均:2.2 グランプリ
 ・“Buh-Ning (Burning)”(韓) 監督:イ・チャンドン 平均:2.21
 ・『寝ても覚めても』“Netemo Sametemo (Asako I & II)”(日) 監督:濱口竜介 平均:2.08
 ・“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル 平均:2.0 脚本賞
 ・“Under The Silver Lake”(米) 監督:デイヴィッド・ロバート・ミッチェル 平均:1.69
 ・“Yomeddine”(エジプト・米・オーストリア) 監督:A.B Shawky 平均:1.64
 ・“Everybody Knows(Todos lo saben)”(西・仏・伊) 監督:アスガー・ファルハディ 平均:1.6
 ・“Le Livre D’image(The Image Book)”(仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール 平均:1.36 パルムドール特別賞
 ・“Ayka(My Little One)”(ロシア・独・ポーランド) 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ 平均:1.33 女優賞
 ・“Un Couteau Dans Le Cœur (Knife + Heart)”(仏・メキシコ) 監督:ヤン・ゴンザレス(Yann Gonzalez) 平均:1.29
 ・“Les Filles Du Soleil (Girls of The Sun)”(仏・ベルギー・ジョージア・スイス) 監督:エヴァ・ユッソン(Eva Husson) 平均:0.57

 ◆ ★★★★獲得作品
 6媒体:“En Guerre (At War)”(仏) 監督:ステファーヌ・ブリゼ
 6媒体:“Leto (L’été/The Summer)”(ロシア) 監督:キリル・セレブレニコフ(Kirill Serebrennikov)
 4媒体:『万引き家族』“Shoplifters”(日) 監督:是枝裕和 パルムドール
 4媒体:“Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー 審査員賞
 4媒体:“Ahlat Agaci (The Wild Pear Tree) ”(トルコ・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
 3媒体:“Buh-Ning (Burning)”(韓) 監督:イ・チャンドン
 2媒体:“Le Livre D’image(The Image Book)”(仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール パルムドール特別賞
 2媒体:“Zimna Wojna (Cold War)”(ポーランド・仏・英) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ 監督賞
 2媒体:“Ash Is Purest White(江湖児女)”(中・仏・日) 監督:ジャ・ジャンクー
 1媒体:“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル 脚本賞
 1媒体:“Dogman”(伊・仏) 監督:マッテオ・ガローネ 男優賞
 1媒体:“Blackkklansman”(米) 監督:スパイク・リー グランプリ
 1媒体:“Plaire Aimer Et Courir Vite (Sorry Angel)”(仏) 監督:クリストフ・オノレ
 1媒体:“Un Couteau Dans Le Cœur (Knife + Heart)”(仏・メキシコ) 監督:ヤン・ゴンザレス(Yann Gonzalez)
 1媒体:『寝ても覚めても』“Netemo Sametemo (Asako I & II)”(日) 監督:濱口竜介
 1媒体:“Under The Silver Lake”(米) 監督:デイヴィッド・ロバート・ミッチェル
 1媒体:“Yomeddine”(エジプト・米・オーストリア) 監督:A.B Shawky

 ◆ ×獲得作品
 7媒体:“Les Filles Du Soleil (Girls of The Sun)”(仏・ベルギー・ジョージア・スイス) 監督:エヴァ・ユッソン(Eva Husson)
 5媒体:“Le Livre D’image(The Image Book)”(仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール パルムドール特別賞
 5媒体:“Un Couteau Dans Le Cœur (Knife + Heart)”(仏・メキシコ) 監督:ヤン・ゴンザレス(Yann Gonzalez)
 2媒体:“Everybody Knows(Todos lo saben)”(西・仏・伊) 監督:アスガー・ファルハディ
 2媒体:“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル 脚本賞
 1媒体:“Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー 審査員賞
 1媒体:“Dogman”(伊・仏) 監督:マッテオ・ガローネ 男優賞
 1媒体:“Ayka(My Little One)”(ロシア・独・ポーランド) 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ 女優賞
 1媒体:“Ahlat Agaci (The Wild Pear Tree) ”(トルコ・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
 1媒体:“Under The Silver Lake”(米) 監督:デイヴィッド・ロバート・ミッチェル
 1媒体:“Yomeddine”(エジプト・米・オーストリア) 監督:A.B Shawky

 本年度は、絶賛(★★★★)もあれば、全否定(×)もあるという作品が多かったように思います。
 もっとほかの作品が受賞する可能性もなくはなかったものの、ほぼメディアの評価に準ずる受賞結果になっています。
 そんな中で、最も評価が分かれたのが、ゴダール作品だったみたいで、だからこそ従来の枠に収まらない作品として特別な賞(Palme d’Or Speciale)が贈られたのだろうと思われます。
 イ・チャンドン作品が国際批評家連盟賞どまりだったことに対しては、2年前の『ありがとう、トニ・エルドマン』を引き合いに出す人もいます。

 ※是枝裕和監督のこれまでの作品の星取表
 ・『万引き家族』“Shoplifters”(2018) 監督:是枝裕和 平均:2.85 パルムドール
 ・『海街diary』“Umimachi Diary(Our Little Sister)”(2015) 監督:是枝裕和 平均:1.58
 ・『そして父になる』“Soshite Chich Ni Naru (Like Father, Like Son) ”(2013) 監督:是枝裕和 平均:2.2 審査員賞エキュメニカル審査員賞特別表彰

 【メディアによる直前の受賞予想】

 *AwardsDaily(5月18日付):http://www.awardsdaily.com/2018/05/18/cannes-dispatch-will-win-should-win/

 ◆パルムドール
 Will win:“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル → 脚本賞
 Should win:“Buh-Ning (Burning)”(韓) 監督:イ・チャンドン

 候補
 “Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル → 脚本賞
 “Buh-Ning (Burning)”(韓) 監督:イ・チャンドン
 “Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー → 審査員賞
 『万引き家族』“Shoplifters”(日) 監督:是枝裕和 = パルムドール
 “Zimna Wojna (Cold War)”(ポーランド・仏・英) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ → 監督賞

 ◆グランプリ
 Will win:“Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー → 審査員賞
 Should win:“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独) 監督:アリーチェ・ロルヴァケル → 脚本賞

 ◆審査員賞
 Will win:“Zimna Wojna (Cold War)”(ポーランド・仏・英) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ → 監督賞
 Should win:『万引き家族』“Shoplifters”(日) 監督:是枝裕和 → パルムドール

 ◆監督賞
 Will win:イ・チャンドン “Buh-Ning (Burning)”(韓)
 Should win:イ・チャンドン “Buh-Ning (Burning)”(韓)

 ◆男優賞
 Will win:Marcello Fonte “Dogman”(伊・仏) 監督:マッテオ・ガローネ = 男優賞
 Should win:Zain Alrafeea “Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏) 監督:ナディーン・ラバキー → 審査員賞

 ◆女優賞
 Will win:Samal Yeslyamova “Ayka(My Little One)”(ロシア・独・ポーランド) 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ =女優賞
ヨアンナ・クーリグ “Zimna Wojna (Cold War)”(ポーランド・仏・英) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ → 監督賞

 ◆脚本賞
 Will win:“Blackkklansman”(米) 監督:スパイク・リー → グランプリ
 Should win:『万引き家族』“Shoplifters”(日) 監督:是枝裕和 → パルムドール

 *受賞結果発表後の記事:http://www.awardsdaily.com/2018/05/19/cannes-dispatch-thats-a-wrap/

 Awards Dailyでは、『万引き家族』に関して、今回のコンペ作品の中で唯一泣かされた作品だ(It’s the only film this year that made me cry.)と書いています。

 ステファーヌ・ブリゼ、キリル・セレブレニコフ、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、ジャ・ジャンクーは、星取表の評価も高いのに、Awards Dailyの受賞予想にも挙がっておらず、実際に受賞もしていないということは、これまでの作品に比べて(あるいは他のコンペ作品に比べて)見劣りがする、または、引っかかる点があるということでしょうか。

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 【データ】

 ◆パルムドール
 日本作品の受賞は、『地獄門』(1954/監督:衣笠貞之助)、『影武者』(1980/監督:黒澤明)、『楢山節考』(1983/監督:今村昌平)、『うなぎ』(1997/監督:今村昌平)に続いて、21年ぶり5回目。(国別で単独5位に浮上。4位のイギリスは10回)

 是枝裕和作品のカンヌ出品は7回目、コンペティション部門出品は5回目。
 [3大映画祭との関わり]
 1995年 『幻の光』:ベネチア〜金のオゼッラ賞受賞
 2001年 『DISTANCE』:カンヌ
 2004年 『誰も知らない』:カンヌ〜主演男優賞受賞
 2009年 『空気人形』:カンヌ(ある視点部門)
 2013年 『そして父になる』:カンヌ〜審査員賞、エキュメニカル審査員賞 特別表彰受賞
 2015年 『海街diary』:カンヌ
 2016年 『海よりもまだ深く』:カンヌ(ある視点部門)
 2017年 『三度目の殺人』:ベネチア

 『万引き家族』は第14作。キャリア的にはやや遅め。
 ・2017:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン・デンマーク・米・仏) 監督:リューベン・オストルンド 第10作
 ・2016:『わたしは、ダニエル・ブレイク』(英・仏・ベルギー) 監督:ケン・ローチ 第24長編フィクション
 ・2015:『ディーパンの闘い』(仏) 監督:ジャック・オディアール 第8作
 ・2014:『雪の轍』(トルコ・独・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 第7作
 ・2013:『アデル、ブルーは熱い色』(仏) 監督:アブデラティフ・ケシシュ 第5作
 ・2012:『愛、アムール』(オーストリア・仏・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ 第11作
 ・2011:『ツリー・オブ・ライフ』(米) 監督:テレンス・マリック 第6作
 ・2010:『ブンミおじさんの森』(タイ) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン 第6作
 ・2009:『白いリボン』(オーストリア・独・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ 第10作
 ・2008:『パリ20区、僕たちのクラス』(仏) 監督:ローラン・カンテ 第8作
 ・2007:『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ 第2作
 ※本数は、数え方によって違いが出る場合があります。

 ◆グランプリ
 アメリカ作品のグランプリ受賞は、2013年の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』以来5年ぶり。その前は、2005年の『ブロークン・フラワーズ』、1985年の『バーディ』、1971年の『ジョニーは戦場へ行った』と『パパ/ずれてるゥ!』、1951年の『イヴの総て』。(1967-88年が「審査員特別グランプリ」、1989-1994年が「審査員グランプリ」。1995年以降が「グランプリ」。)

 ◆監督賞
 ポーランドからの監督賞受賞は初めて。

 ◆審査員賞
 レバノンからの受賞は、1991年の『無防備都市/ベイルートからの証言』以来、27年ぶり2回目。
 2000年以降、女性監督作品が受賞しやすい賞になっていて、アンドレア・アーノルド(2016年“American Honey”、2009年『フィッシュ・タンク』、2006年“Red Road”)、マイウェン(2011年『パリ警視庁:未成年保護部隊』)、マルジャン・サトラピ(2007年『ペルセポリス』)、サミラ・マフマルバフ(2003年『午後の五時』、2000年『ブラックボード 背負う人』)が受賞している。

 ◆男優賞
 イタリアからの受賞は、2010年のエリオ・ジェルマーノ(『我らの生活』)以来8年ぶり10回目。

 ◆女優賞
 カザフスタンからの受賞は初めて。(ロシアからはこれまで4回受賞(特別賞含む))

 ◆脚本賞
 イランからの受賞は、2016年の『セールスマン』以来2年ぶり2回目。
 イタリアからの受賞は、1980年の“La Terrazza”以来38年ぶり5回目。
 2作品の受賞は、1965年(アメリカとフランス)、1967年(イタリアとフランス)以来51年ぶり3回目。

 ◆カメラ・ドール
 ベルギーからの受賞は、1991年のジャコ・ヴァン・ドルマル(『トト・ザ・ヒーロー』)以来、27年ぶり2人目。

 ◆短編パルムドール
 オーストラリアからの受賞は、2003年の“Cracker Bag”(監督:グレンディン・イヴィン(Glendyn Ivin))、1987年の“Palisade”(監督:Laurie McInnes)以来、15年ぶり3回目。

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 【気になるポイントをいくつか】

 ◆カンヌの受賞歴
 ・2018:『万引き家族』(日) 監督:是枝裕和 パルムドールのみ
 ・2017:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン・デンマーク・米・仏) 監督:リューベン・オストルンド パルムドールのみ
 ・2016:『わたしは、ダニエル・ブレイク』(英・仏・ベルギー) 監督:ケン・ローチ パルムドール+エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション、パルム・ドッグ Dogumanitarian Award
 ・2015:『ディーパンの闘い』(仏) 監督:ジャック・オディアール パルムドールのみ
 ・2014:『雪の轍』(トルコ・独・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン パルムドール+国際批評家連盟賞
 ・2013:『アデル、ブルーは熱い色』(仏) 監督:アブデラティフ・ケシシュ パルムドール+国際批評家連盟賞
 ・2012:『愛、アムール』(オーストリア・仏・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ パルムドールのみ
 ・2011:『ツリー・オブ・ライフ』(米) 監督:テレンス・マリック パルムドールのみ
 ・2010:『ブンミおじさんの森』(タイ) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン パルムドールのみ
 ・2009:『白いリボン』(オーストリア・独・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ パルムドール+国際批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション
 ・2008:『パリ20区、僕たちのクラス』(仏) 監督:ローラン・カンテ パルムドールのみ
 ・2007:『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ パルムドール+国際批評家連盟賞、The French National Education Administration Prize

 カンヌ国際映画祭には、映画祭からのオフィシャルの賞と国際批評家連盟賞やエキュメニカル審査員賞など外部の団体による賞があって、評価の高い作品はオフィシャルの賞とともに複数の外部の賞を受賞したりするものですが、『万引き家族』はパルムドールのみの受賞だったので、圧倒的な評価を得ているわけでもないのかなと少々気になりました。

 調べてみると、これまで12年で「パルムドールのみ」の受賞が7回ありました。オフィシャルの賞と外部の団体による賞が重ならない年の方がやや多いようですね。やや意外な作品にパルムドールが贈られた年は、「パルムドールのみ」になることが多い気がしますね。

 ◆ヨーロッパ映画賞
 ベネチア国際映画祭の前に、大きな国際映画祭としてカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭がありますが、ヨーロッパ映画賞のノミネート&受賞作品は、カンヌ閉幕までに出揃っていることが通例です。
 本年度は、ベルリンは不作だった印象があるし、カンヌでもヨーロッパ映画はあまり振るわなかったように見えます。
 大丈夫かなあ、今年のヨーロッパ映画賞。有力な候補があまりないような気がしますね。

 [ヨーロッパ映画賞作品賞の傾向]
 ・ヨーロッパ映画賞作品賞のノミネーションは、あまりなじみのない国からは選ばれない。

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞最多受賞国はイタリアとドイツの9回と10回(共同製作含む)。ドイツはすべて2000年以降。(製作国はカウントの仕方によって違ってくる場合があります。)
 イタリア:90、92、94、98、05、08、09、13、15
 ドイツ:00、03、04、05、06、09、10、11、12、16

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞最多ノミネート国はイギリスの44回(共同製作含む)。

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞のノミネーションは、(共同製作を除けば)同じ国から複数の作品が選ばれることは稀。

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞は、映画祭との関係で言えば、カンヌとの関連性(だけ)が強い。
 ベルリンやベネチアは、そもそも作品のチョイスからして、ヨーロッパ映画賞にノミネートされるような作品が少なく、受賞作がヨーロッパ映画賞にからんでくることも多くはない。
 カンヌ国際映画祭とヨーロッパ映画賞は、好みとする監督も似ている。

 ・これまでのヨーロッパ映画賞作品賞最多ノミネートは、6回で、ペドロ・アルモドバル(2回受賞)。5回だと、ミヒャエル・ハネケ(3回受賞)、ラース・フォン・トリアー(3回受賞)、ケン・ローチ(2回受賞)、アキ・カウリスマキ(受賞なし)の4人がいる。
 4回ノミネート:マイク・リー(受賞なし)
 3回ノミネート:ジャンニ・アメリオ(3回受賞)、ファティ・アキン(1回受賞)、ルーカス・ムーディソン(受賞なし)

 ・過去15年で、パルムドール受賞作品は、ほぼヨーロッパ映画賞作品賞にノミネートされている。(ノミネートされていないのは2015年のみ(作品賞にノミネートされていないどころか完全に無視された)。)

 ・過去15年で、パルムドール受賞作品が、ヨーロッパ作品であったことは11回あり、そのうちヨーロッパ映画賞作品賞にノミネートされたことは10回あり、ヨーロッパ映画賞作品賞受賞を果たしたことは4回ある(2007年、2009年、2012年、2017年)。

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞は、国際批評家連盟賞の年間グランプリとの関係性が強い。
 過去19年で、国際批評家連盟賞の年間グランプリがヨーロッパ映画だったことは12回あり、2003年と2004年はヨーロッパ映画賞作品賞にノミネートすらされなかったが(残りの10回はノミネートされている)、1999年、2007年、2009年、2010年、2012年、2016年は、国際批評家連盟賞の年間グランプリとヨーロッパ映画賞作品賞が一致している。

 ・ヨーロッパ映画賞作品賞ノミネーションは、米国アカデミー賞外国語映画賞ノミネーションと、1〜2作品で重なる傾向がある。『未来を生きる君たちへ』や『偽りなき者』のようにヨーロッパ映画賞作品賞ノミネーションの方が、1年後にズレ込むケースもあり、『スラムドッグ$ミリオネア』や『英国王のスピーチ』、『アーティスト』のように、米国アカデミー賞では、外国語映画賞ではなく、作品賞にノミネートされるケースもある。

 ・1998年、1999年、2006年、2012年、2013年、2014年は、ヨーロッパ映画賞作品賞と米国アカデミー賞外国語映画賞が一致している。

 ヨーロッパ映画賞作品賞(過去15年)
 2017年:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』=カンヌ国際映画祭パルムドール
 2016年:『ありがとう、トニ・エルドマン』=カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞
 2015年:『グランドフィナーレ』=カンヌ国際映画祭 無冠
 2014年:『イーダ』=テルライド映画祭
 2013年:『グレート・ビューティー/追憶のローマ』=カンヌ国際映画祭 無冠
 2012年:『愛、アムール』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2011年:『メランコリア』=カンヌ国際映画祭 女優賞
 2010年:『ゴーストライター』=ベルリン国際映画祭 監督賞
 2009年:『白いリボン』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2008年:『ゴモラ』=カンヌ国際映画祭 グランプリ
 2007年:『4ヶ月、3週と2日』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2006年:『善き人のためのソナタ』=ベルリン国際映画祭
 2005年:『隠された記憶』=カンヌ国際映画祭 監督賞
 2004年:『愛より強く』=ベルリン国際映画祭 金熊賞
 2003年:『グッバイ、レーニン!』=ベルリン国際映画祭 Blue Angel

 国際批評家連盟賞年間グランプリ(全20回)
 2017年:『希望のかなた』=ベルリン国際映画祭 監督賞
 2016年:『ありがとう、トニ・エルドマン』=カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞
 2015年:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
 2014年:『6才のボクが、大人になるまで。』=ベルリン国際映画祭 監督賞
 2013年:『アデル、ブルーは熱い色』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2012年:『愛、アムール』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2011年:『ツリー・オブ・ライフ』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2010年:『ゴーストライター』=ベルリン国際映画祭 監督賞
 2009年:『白いリボン』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2008年:『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』=ファンタスティック・フェスト
 2007年:『4ヶ月、3週と2日』=カンヌ国際映画祭 パルムドール
 2006年:『ボルベール〈帰郷〉』=カンヌ国際映画祭 女優賞、脚本賞
 2005年:『うつせみ』=ベネチア国際映画祭 銀獅子賞(監督賞)
 2004年:『アワーミュージック』=カンヌ国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門
 2003年:『冬の街』=カンヌ国際映画祭 グランプリ
 2002年:『過去のない男』=カンヌ国際映画祭 グランプリ
 2001年:『チャドルと生きる』=ベネチア国際映画祭 金獅子賞
 2000年:『マグノリア』=ベルリン国際映画祭 金熊賞
 1999年:『オール・アバウト・マイ・マザー』=カンヌ国際映画祭 監督賞
 1973 年:『トゥキ・ブゥキ / ハイエナの旅』“Touki Bouki”(セネガル) 監督:ジブリル・ジオップ・マンベティ(Djibril Diop Mambéty)=モスクワ国際映画祭 国際批評家連盟賞

 ◆米国アカデミー賞 外国語映画賞 日本代表

 米国アカデミー賞 外国語映画賞 日本代表は、松竹・東宝・東映・KADOKAWA(角川映画)の映画製作配給大手4社が構成する業界団体である一般社団法人日本映画製作者連盟で、外部委員による選考会が行なわれ、決定する、ということになっています。

 選考会も選考過程(選考基準)も非公開ですが、過去の代表作品を見ると、
 ・「世界に出るチャンス」として、なるべく、これまで選ばれたことのない監督を選出する
 ・ベテラン監督の代表作となるような、完成度の高い作品を選んだりする一方で、勢いがある意欲的な若手の作品を積極的にチョイスする
 というようなことがあるように推測されます。

 [米国アカデミー賞 外国語映画賞 日本代表リスト]
 1952年:『羅生門』 監督:黒澤明 [名誉賞受賞]
 1955年:『地獄門』 監督:衣笠貞之助 [名誉賞受賞]
 1956年:『宮本武蔵』 監督:稲垣浩 [名誉賞受賞]
 1957年:『ビルマの竪琴』 監督:市川崑 [ノミネート]
 1958年:『あらくれ』 監督:成瀬巳喜男
 1959年:『楢山節考』 監督:木下惠介
 1960年:『野火』 監督:市川崑
 1961年:『秋日和』 監督:小津安二郎
 1962年:『永遠の人』 監督:木下惠介 [ノミネート]
 1963年:『私は二歳』 監督:市川崑
 1964年:『古都』 監督:中村登 [ノミネート]
 1965年:『砂の女』 監督:勅使河原宏 [ノミネート]
 1966年:『怪談』 監督:小林正樹 [ノミネート]
 1967年:『湖の琴』 監督:田坂具隆
 1968年:『智恵子抄』 監督:中村登 [ノミネート]
 1969年:『黒部の太陽』 監督:熊井啓
 1970年:『神々の深き欲望』 監督:今村昌平
 1971年:『無頼漢』 監督:篠田正浩
 1972年:『どですかでん』 監督:黒澤明 [ノミネート]
 1973年:『軍旗はためく下に』 監督:深作欣二
 1974年:『戒厳令』 監督:吉田喜重
 1975年:『化石』 監督:小林正樹
 1976年:『サンダカン八番娼館 望郷』 監督:熊井啓 [ノミネート]
 1977年:なし
 1978年:『八甲田山』 監督:森谷司郎
 1979年:『愛の亡霊』 監督:大島渚
 1980年:『月山』 監督:村野鐵太郎
 1981年:『影武者』 監督:黒澤明 [ノミネート]
 1982年:『泥の河』 監督:小栗康平 [ノミネート]
 1983年:『鬼龍院花子の生涯』 監督:五社英雄
 1984年:『南極物語』 監督:蔵原惟繕
 1985年:『瀬戸内少年:野球団』 監督:篠田正浩
 1986年:『花いちもんめ』 監督:伊藤俊也
 1987年:『キネマの天地』 監督:山田洋次
 1988年:『女衒』 監督:今村昌平
 1989年:『ダウンタウン・ヒーローズ』 監督:山田洋次
 1990年:『利休』 監督:勅使河原宏
 1991年:『死の棘』 監督:小栗康平
 1992年:『八月の狂詩曲』 監督:黒澤明
 1993年:『女殺油地獄』 監督:五社英雄
 1994年:『まあだだよ』 監督:黒澤明
 1995年:『平成狸合戦ぽんぽこ』 監督:高畑勲
 1996年:『深い河』 監督:熊井啓
 1997年:『学校II』 監督:山田洋次
 1998年:『もののけ姫』 監督:宮崎駿
 1999年:『愛を乞うひと』 監督:平山秀幸
 2000年:『鉄道員(ぽっぽや)』 監督:降旗康男
 2001年:『雨あがる』 監督:小泉堯史
 2002年:『GO』 監督:行定勲
 2003年:『OUT』 監督:平山秀幸
 2004年:『たそがれ清兵衛』 監督:山田洋次 [ノミネート]
 2005年:『誰も知らない』 監督:是枝裕和
 2006年:『血と骨』 監督:崔洋一
 2007年:『フラガール』 監督:李相日
 2008年:『それでもボクはやってない』 監督:周防正行
 2009年:『おくりびと』 監督:滝田洋二郎 [受賞]
 2010年:『誰も守ってくれない』 監督:君塚良一
 2011年:『告白』 監督:中島哲也 [ショートリスト]
 2012年:『一枚のハガキ』 監督:新藤兼人
 2013年:『かぞくのくに』 監督:ヤン・ヨンヒ
 2014年:『舟を編む』 監督:石井裕也
 2015年:『百円の恋』 監督:武正晴
 2016年:『母と暮らせば』 監督:山田洋次
 2017年:『湯を沸かすほどの熱い愛』 監督:中野量太

 [米国アカデミー賞外国語映画賞日本代表に選ばれた監督]

 ・5作品:黒澤明(5回中1回は名誉賞)、山田洋次
 ・3作品:市川崑、熊井啓
 ・2作品:木下恵介、中村登、勅使河原宏、篠田正浩、小林正樹、五社英雄、今村昌平、小栗康平、平山秀幸
 ・1作品:衣笠貞之助(名誉賞)、稲垣浩(名誉賞)、成瀬巳喜男、小津安二郎、田坂具隆、深作欣二、吉田喜重、大島渚、村野鐵太郎、伊藤俊也、高畑勲、宮崎駿、降旗康男、小泉堯史、行定勲、是枝裕和、崔洋一、李相日、周防正行、滝田洋二郎、君塚良一、中島哲也、新藤兼人、ヤン・ヨンヒ、石井裕也、武正晴、中野量太

 [ノミネートまで進んだ作品](名誉賞を除く)

 ・1957年:『ビルマの竪琴』(監督:市川崑)
 ・1962年:『永遠の人』(監督:木下恵介)
 ・1964年:『古都』(監督:中村登)
 ・1965年:『砂の女』(監督:勅使河原宏)
 ・1966年:『怪談』(監督:小林正樹)
 ・1968年:『智恵子抄』(監督:中村登)
 ・1971年:『どですかでん』(監督:黒澤明)
 ・1976年:『サンダカン八番館 望郷』(監督:熊井啓)
 ・1981年:『影武者』(監督:黒澤明)
 ・1982年:『泥の河』(監督:小栗康平)
 ・2004年:『たそがれ清兵衛』(監督:山田洋次)
 ・2009年:『おくりびと』(監督:滝田洋二郎)

 このうち、2度ノミネートを受けたのは黒澤明と中村登のみ。受賞したのは『おくりびと』のみです。

 是枝裕和は、2005年に『誰も知らない』で一度選出されていますが、その後は選出に値する高評価の作品があったのにも拘わらず、選ばれてはいません。
 さすがに今回『万引き家族』は日本代表に選ばれるんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

 ちなみに、近年のパルムドール受賞作品はー
 ・2017:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン・デンマーク・米・仏) 監督:リューベン・オストルンド 外国語映画賞ノミネート(外国語映画賞スウェーデン代表)
 ・2016:『わたしは、ダニエル・ブレイク』(英・仏・ベルギー) 監督:ケン・ローチ 英語作品なので外国語映画賞対象外
 ・2015:『ディーパンの闘い』(仏) 監督:ジャック・オディアール 選外
 ・2014:『雪の轍』(トルコ・独・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 外国語映画賞トルコ代表
 ・2013:『アデル、ブルーは熱い色』(仏) 監督:アブデラティフ・ケシシュ 選外
 ・2012:『愛、アムール』(オーストリア・仏・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ 外国語映画賞受賞(外国語映画賞オーストリア代表)
 ・2011:『ツリー・オブ・ライフ』(米) 監督:テレンス・マリック 英語作品なので外国語映画賞対象外
 ・2010:『ブンミおじさんの森』(タイ) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン外国語映画賞タイ代表
 ・2009:『白いリボン』(オーストリア・独・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ 外国語映画賞ノミネート(外国語映画賞ドイツ代表)
 ・2008:『パリ20区、僕たちのクラス』(仏) 監督:ローラン・カンテ 外国語映画賞ノミネート(外国語映画賞フランス代表)
 ・2007:『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ 外国語映画賞ルーマニア代表

 過去11年で外国語映画賞各国代表に選ばれているのが7回、ノミネートまで進んだのが3回、受賞が1回でした。案外(?)多くはなかったですね。

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