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zoom RSS 82人の女性映画人による声明 in カンヌ国際映画祭2018

<<   作成日時 : 2018/05/18 02:09   >>

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 開催中の第71回カンヌ国際映画祭で82人の女性たちによるフィルムメイカー・ウォークが行なわれました。(5月11日、エヴァ・ユッソン監督の“Les Filles Du Soleil (Girls of The Sun)”の上映前に開催)

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 このイベントの正確な名称はよくわかりませんが、‘Filmmakers walk the red carpet in protest of the lack of female filmmakers honored throughout the history of the festival’とか‘82 Women Protest for Equality on the Red Carpet: ‘Let’s Climb!’’とか、‘a women’s march (organized by Time’s Up and the new French movement known as 5020×2020)’とか、いろんな呼称で記事になっています。

 女性によるイベントが開催されることは事前に発表されていましたが、昨年から続く反セクハラに関わる何らかの意思表示なのかと思っていたら違っていて、女性のフィルムメイカーの作品がカンヌでピックアップされないことに対する「静かなるプロテスト」であったようです。(反セクハラ的な含みも根底にはあるようですが。)

 82人には、今回のコンペティション部門の審査員であるケイト・ブランシェット、エヴァ・デュヴァルネ、クリステン・スチュワート、レア・セドゥ、Khadja Nin(ブルンジの作曲家、シンガー)のほか、パティー・ジェンキンス、マリオン・コティヤール、アリーチェ・ロルヴァケル、アニエス・ヴァルダ、ハイファ・アル=マンスール、サルマ・ハエックらが含まれています。

 82という数字には意味があって、これまでカンヌでは71年の歴史の中で、1688本の男性監督の作品がコンペティション部門で上映されているのに対し女性監督の作品は82本しかなく、たったこれだけしかないというのを参加している女性映画人の頭数で示している、ということです。(この数値に関しては、記事によって「71年の歴史の中で」としているものと、「1966年以降」としているものがあります。)

 また、これまでコンペティション部門で審査員長を務めた女性は12人だけ、パルムドールを受賞したのは、男性が71人なのに対して、女性はたった2人(1993年のジェーン・カンピオン(『ピアノ・レッスン』)と2015年のアニエス・ヴァルダの名誉パルムドール)、これまで監督賞か脚本賞を受賞したのは4人だけという数字も挙げられています。(具体的な名前は挙げられていません。もっと条件をつけないと4人だけということにはならないはずですが(「これまで監督賞か脚本賞を受賞した女性監督は4人だけ」?)、2017年の監督賞のソフィア・コッポラ(『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』)、2017年の脚本賞のリン・ラムジー(『ビューティフル・デイ』)以外は、2004年の脚本賞のアニエス・ジャウィ(『みんな誰かの愛しい人』)とあともうひとりということでしょうか)

 フィルムメイカー・ウォークでは、ケイト・ブランシェットとアニエス・ヴァルダが書いたという声明(statement)が発表されています。(ケイト・ブランシェットが英語で読み、アニエス・ヴァルダが仏語で読んでいます。)

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 Women are not a minority in the world, yet the current state of our industry says otherwise. As women, we all face our own unique challenges, but we stand together on these steps today as a symbol of our determination and our commitment to progress. We are writers, we are producers, we are directors, actresses, cinematographers, talent agents, editors, distributors, sales agents, and all of us are involved in the cinematic arts. And we stand today in solidarity with women of all industries.
 We expect our institutions to actively provide parity and transparency in their executive bodies and provide safe environments in which to work.We expect our governments to make sure that the laws of equal pay for equal work are upheld. We demand that our workplaces are diverse and equitable so that they can best reflect the world in which we actually live. A world that allows all of us in front and behind the camera, all of us, to thrive shoulder to shoulder with our male colleagues.
 The stairs of our industry must be accessible to all. "Let's climb."

 女性は、世界でマイノリティーではない。けれども、私たちの業界の現況は、違っていると言わざるを得ない。女性として、私たちはみんな自分たちでもユニークなチャレンジに立ち会っているのだが、今日、私たちの決断と進歩へのコミットメントのシンボルとして、この階段にともに立っている。私たちは、脚本家であり、プロデューサーであり、監督であり、女優、撮影監督、タレント・エージェント、編集技師、配給者、セールス・エージェントであって、私たちのすべてが、映画芸術に関わっている。そして私たちは、すべての産業の女性たちと連帯している。
 私たちは、私たちの機関に対して、執行部における同等性と透明性の実際的な提供と、働くに当たっての安全な環境の提供を期待している。私たちは、私たちの政府に、同等な仕事に対して同等の賃金を保証する法律を定めるよう期待している。私たちは、私たちの職場が、私たちが実際に暮らしている世界をできるかぎり反映すべく、多様で公平であるよう要求する。世界は、カメラの前でも後ろでも、私たち皆が、男性の仲間たちと協力しあって繁栄していくことを望んでいる。
 私たちの産業の階段は、みんなに開かれていなければならない。「さあ、上りましょう。」

 この声明は、もちろん世界の映画業界全体に向けられているのでしょうが、具体的には、カンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモーと、監督週間と批評家週間の芸術監督に問いかけられることになっています。

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 Vanity Fair(https://www.vanityfair.com/hollywood/2018/05/cannes-red-carpet-women)には、‘The full list of women who plan to stand Saturday night follows below’として101人の名前が挙がっています。82人ではないし、ケイト・ブランシェットの名前もエヴァ・ユッソンの名前もありませんが、事前にこのプランに賛同した人ということでしょうか。

 Agathe Valentin, international sales
 Agnès Varda, director
 Agnieszka Smoczyńska, director
 Alba Rohrwacher, director
 Alexandra Henochsberg, distributor; producer
 Alice Rohrwacher, director
 Andréa Bescond, director
 Anja Kofmel, director
 Anna Mouglalis, actress
 Anna Ciennik, production manager
 Anne Lai, producer
 Anne Berest, screenwriter
 Annemarie Jacir, director
 Ariane Ascaride, actress
 Ava DuVernay, director
 Beatriz Seigner, director
 Bénédicte Couvreur, producer
 Bérénice Vincent, sales agent
 Carole Scotta, producer; distributor
 Caroline Benjo, producer; distributor
 Caroline Bonmarchand, producer
 Cécile Cassel, actress
 Cécile Aubert, assistant producer
 Céline Sallette, actress
 Céline Sciamma, director; screenwriter
 Claudia Cardinale, actress
 Clémence Poésy, actress
 Clotilde Courau, actress
 Cristina Gallego, director
 Daniela Elstner, sales agent
 Déborah François, actress
 Delphyne Besse, sales agent
 Diana Elbaum, producer
 Dina Emam, producer
 Elisabeth Tanner, talent agent
 Elisabeth Perez, producer
 Eva Sangiorgi, programmer
 Géraldine Pailhas, actress
 Ginevra Elkann, producer
 Haifaa Al Mansour, director
 Houda Benyamina, director
 Hylda Queally, talent agent
 Iris Brey, journalist
 Isabel Mercier, producer
 Jane Fonda, actress
 Jasmine Trinca, actress
 Jeanne Lapoirie, cinematographer
 Judith Nora, producer
 Julie Huntsinger, film-festival programmer; producer
 Julie Gayet, producer, actress
 Julie Billy, producer
 Julie Bertuccelli, director
 Keleigh Thomas Morgan, talent agent
 Khadja Nin, musician; singer
 Kim Longinotto, director; cinematographer
 Kiska Higgs, producer
 Kristen Stewart, actress
 Laure Parleani, sales agent
 Laurence Lascary, producer
 Léa Seydoux, actress
 Leïla Bekhti, actress
 Lisa Azuelos, director; screenwriter; producer
 Lolita Chammah, actress
 Maha Dakhil, talent agent
 Mariana Ximenes, actress
 Marianne Slot, producer
 Marie Masmonteil, producer
 Marie Monge, director; screenwriter
 Marie Amachoukeli, director; screenwriter
 Marie-Ange Luciani, producer
 Marie-Pierre Macia, producer
 Marion Cotillard, actress
 Marion Tharaud, distributor
 Marleyda Soto, actress
 Melissa Silverstein, journalist
 Mélita Toscan du Plantier, producer
 Meryem Benm'Barek, director
 Michèle Halberstadt, producer; distributor
 Nandita Das, director
 Naomi Denamur, acquisition manager
 Patty Jenkins, director
 Pauline Gygax, producer
 Priscilla Bertin, producer
 Rasika Dugal, actress
 Rebecca Zlotowski, director; screenwriter
 Rohena Gera, director
 Rosalie Varda, costume designer; producer
 Salma Hayek, actress; producer
 Sandrine Brauer, producer
 Sofia Boutella, actress
 Sophie Reine, editor
 Sophie Mas, producer
 Stacy Martin, actress
 Tonie Marshall, director
 Ursula Meier, director
 Valentina Novati, producer; distributor
 Valérie Donzelli, director; producer; actress
 Vanessa Filho, director
 Virginie Ledoyen, actress
 Wanuri Kahiu, director
 Zabou Breitman, director; actress

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 昨年の反セクハラ騒動、アニエス・ヴァルダの米国アカデミー名誉賞受賞、グレタ・ガーウィグの女性監督として5人目の米国アカデミー賞監督賞ノミネート、女性の撮影監督として初めてとなるレイチェル・モリソンの米国アカデミー賞撮影賞ノミネートなどあったから、こういう声明を出すには、絶好のタイミングなのかもしれません。

 実際にこれがどういう影響を与えるかは、来年以降(今年のベネチア国際映画祭以降)確かめられるはずですが、プログラミングの際には、どうしたって意識せざるを得ないわけで、少しずつ影響は出てくるでしょうか。(といっても、企画・制作段階はともかく、映画祭のセレクションで女性作品だから落とすっていうことはあまりないような気はしますが。セレクションに関しては性的不公平より、もっとほかにいろいろと偏りがあるように思うし。)

 とりあえず、今回の注目は、この声明を受けて、女性監督作品が、上位入賞するかどうかでしょうか。声明の後に上映されたエヴァ・ユッソン監督の“Les Filles Du Soleil (Girls of The Sun)”(仏・ベルギー・ジョージア・スイス)は、かなり残念な評価だったので、受賞しそうにはありませんが、だとすれば、アリーチェ・ロルヴァケル監督の“Lazzaro Felice(My Bitter Land)”(伊・スイス・仏・独)か、ナディーン・ラバキー監督の“Capharnaüm (Capernaum)”(レバノン・仏)のどちらか、あるいは両方かな。

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 ちなみに、『ピアノ・レッスン』がパルムドールを受賞した1993年の審査員は、審査員長がルイ・マルで、あとはアッバス・キアロスタミ、エミール・クストリッツァ、ゲイリー・オールドマン、ジュディー・デイヴィス、クラウディア・カルディナーレ、インナ・チュリコワ(ロシアの女優)、トム・ラディ(アメリカのプロデューサー)、ウィリアム・ルプチャンスキー、アウグスト・M・シーブラ(ポルトガルの批評家)という顔ぶれで、『ピアノ・レッスン』は『さらば、わが愛/覇王別姫』との同時受賞で、『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』が審査員グランプリ、『戯夢人生』と『レイニング・ストーンズ』が審査員賞、マイク・リーが『ネイキッド』で監督賞というなかなか豊作な年で、受賞しなかった作品にも『フィオリーレ/花月の伝説』、『私の好きな季節』、『ジェリコー・マゼッパ伝説』、『から騒ぎ』、『フォーリング・ダウン』、『わが街 セントルイス』、『ボディ・スナッチャーズ』、『保険屋に気をつけろ!』などがありました。

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 *参考
 ・How Kristen Stewart, Jane Fonda, and 80 Other Women Will Protest Cannes’s Astonishing Gender Gap(5月12日):https://www.vanityfair.com/hollywood/2018/05/cannes-red-carpet-women
 ・Cannes 2018: 82 Women Protest for Equality on the Red Carpet: ‘Let’s Climb!’(5月12日): http://www.indiewire.com/2018/05/women-protest-cannes-lets-climb-1201963626/
 ・Watch Cate Blanchett’s Impassioned Speech for Gender Equality at Cannes Women’s March(5月12日):variety.com/2018/film/news/cate-blanchett-speech-cannes-womens-march-1202808440/
 ・82 Women Walk the Red Carpet in Cannes Film Fest Protest(5月12日):https://www.nytimes.com/aponline/2018/05/12/world/europe/ap-eu-france-cannes-red-carpet-protest.html
 ・At Cannes, Women Claim the Headlines(5月14日):https://www.vogue.com/article/cannes-2018-5050x2020-times-up-women-in-the-news
 ・Tackling gender stereotype in ads: 5 steps you should be taking right now(5月16日):www.marketing-interactive.com/tackling-gender-stereotype-in-ads-5-steps-you-should-be-taking-right-now/

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 *当ブログ記事

 ・米国アカデミー賞における、女性のノミネーションに関するデータ 2007-2016:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201611/article_32.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2018年3月〜9月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_33.html

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