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zoom RSS カンヌ国際映画祭2018 追加上映作品 +傾向&受賞予想

<<   作成日時 : 2018/04/26 22:20   >>

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 【コンペティション部門 追加作品】

 ・“Un Couteau Dans Le Cœur (Knife + Heart)”(仏・メキシコ) 監督:ヤン・ゴンザレス(Yann Gonzalez)
 出演:ヴァネッサ・パラディー、ケイト・モラン(Kate Moran)、ニコラ・モーリー(Nicolas Maury)、ジョナサン・ジュネ(Jonathan Genet)、ロマーヌ・ボーランジェ
 物語:悪魔のような70年代後半のパリ。アンヌは、ポルノ映画の製作でキャリアを築いていた。しかし、仲間の信頼を得ようとして、ロイスとともに、もっと野心的な映画を作ることに決める。それで新作の監督をArchibaldに任せる。ところが、謎めいたシリアル・キラーが出没して、彼女のプランを邪魔し、プロジェクトに関わった俳優たちも攻撃される。
 5年ぶりの第2監督長編。
 [3大映画祭との関わり]
 コンペティション部門参加は初めて。
 2006年 “By the Kiss”:カンヌ(監督週間/短編)
 2007年 “Entracte”:カンヌ(監督週間/短編)
 2008年 “Je vous hais petites filles”:カンヌ(監督週間/短編)
 2013年 『真夜中過ぎの出会い』“Les rencontres d'après minuit (You and The Night)”:カンヌ(国際批評家週間)
 2017年 “Les Îles (Islands)”:カンヌ(国際批評家週間 特別上映作品 短編部門)〜クィア・パルム短編賞

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 ・“Ayka(My Little One)”(ロシア・独・ポーランド) 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ
 出演:Andrey Pashnin、David Alaverdyan、Evgeniy Sushev、サマル・イェスリャーモワ(Samal Yeslyamova)、Vjacheslav Agashkin
 物語:若いキルギス娘のAykaは、モスクワに住み、不法労働をしている。彼女は、妊娠し、出産するが、赤ん坊を病院に置き去りにする。ところが、しばらくして、母心が湧いてきて、一度は棄てた赤ん坊を取り戻したくて必死に捜し始める。
 『トルパン』以来10年ぶりの第2監督長編。
 2011年くらいから既にタイトルが挙がっていた作品。
 製作国は、カザフスタンだったり、フランスだったり、資料により違いあり。
 [3大映画祭との関わり]
 コンペティション部門参加は初めて。
 2008年 『トルパン』:カンヌ(ある視点部門)〜グランプリ、The 27th Youth Prize

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 ・“Ahlat Agaci (The Wild Pear Tree) ”(トルコ・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
 出演:Serkan Keskin 、Hazar Ergüçlü、Murat Cemcir、Ahmet Rifat Sungar、Ercüment Balakoglu、
 物語:前途有望な作家がトルコの田舎の故郷に帰郷する。ところが、彼女は、父親の多額の借金を知って、打ちのめされてしまう。
 [3大映画祭との関わり]
 1995年 『繭』“Koza”(短編):カンヌ(短編部門)
 1998年 『カサバ−街』“Kasaba”:ベルリン(フォーラム部門)〜カリガリ賞
 2000年 『五月の雲』:ベルリン
 2003年 『冬の街』(“Uzak”):カンヌ〜グランプリ
 2006年 『うつろいの季節』:カンヌ〜国際批評家連盟賞
 2008年 『スリー・モンキーズ』:カンヌ〜監督賞
 2011年 『昔々、アナトリアで』“Bir Zamanlar Anadolu'da (Once Upon A Time In Anatolia)” :カンヌ〜グランプリ
 2014年 『雪の轍』:カンヌ〜パルムドール、国際批評家連盟賞

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 【アウト・オブ・コンペティション部門 追加作品】

 ・“The House That Jack Built”(デンマーク・仏・独・スウェーデン) 監督:ラース・フォン・トリアー
 出演:ライリー・キーオ、ユマ・サーマン、マット・ディロン、エドワード・スペリーアス
 物語:1970年代のアメリカ。高度な知能犯ジャックは、12年にわたって殺人を犯してきたシリアル・キラーだ。彼によれば、どの殺人もそれ自体がアートである。警察の捜査が迫ってくればくるほど、彼はより大きなリスクを冒し、究極のアートを目指す。グロテスクな詭弁や子どもじみた自己憐憫、精神病質な説明が繰り返される会話を通して、彼の個人的なコンディションや問題や考えが明らかにされる。

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 【ある視点部門 追加作品】

 ・“Donbass”(独・ウクライナ・仏・オランダ・ルーマニア) 監督:セルゲイ・ロズニタ(Sergei Loznitsa) [オープニング作品]
 物語:東ウクライナのDonbass地区では、ハイブリッドな戦争が行なわれている。それには、ギャングによって引き起こされた大規模な略奪を伴う受け入れに好意的な紛争も含まれている。Donbassでは、戦争は愛と呼ばれ、プロパガンダは真実と見なされ、憎むことは愛することと宣言される。一地域や一国、一政治システムの話ではない。ヒューマニティーや一般的な文明の話であり、それぞれについて、われわれのひとりひとりについての話である。

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 ・“Chuva É Cantoria Na Aldeia Dos Mortos (The Dead And The Others)”(ポルトガル・ブラジル) 監督:João Salaviza、Renée Nader Messora
 物語:Ihjãcは、Krahô族の15歳の少年で、死んだ父親の精霊に導かれて、シャーマンになるための第1段階へと歩み始める。
 フィルムメイカーたちが1年近く暮らしたKrahô族が住むブラジル北部の村Pedra Brancaで実際に経験した物語に基づく。

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 ・“Muere, Monstruo, Muere (Meurs, Monstre, Meurs)”(仏・チリ・アルゼンチン) 監督:アレハンドロ・ファデル(Alejandro Fadel)
 物語:恐れは、最初期の文明から構築され、神秘主義的な説明によって、世代から世代へと引き継がれる。人類は、いつも残虐行為の結果の罪をなすりつける新しいモンスターを探している。モンスターはいつも襲いかかってくる。

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 【特別上映作品 追加作品】

 ・“Another Day of Life”(ポーランド・西・独・ベルギー・ハンガリー) 監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ(Raul De La Fuente)、Damian Nenow [アニメーション]
 物語:カプシチンスキ(43)は、優れたベテランのジャーナリストで、理想主義者であり、失われた大義と革命の友人であった。ポーランド・プレス・エージェンシーで、彼は、独立前夜に血なまぐさい内戦が行なわれているアンゴラに派遣してくれと、上司を説得する。それは、まさに自殺行為であり、彼はそこでひどい戦争の現実を再確認し、今まで知らなかった無力という言葉の意味を突き付けられる。アンゴラは彼を永遠に変えた。ポーランドを発ったのは記者だったが、戻ってきたのは作家だった。
 ポーランドのジャーナリスト、リシャルト・カプシチンスキの著書の映画化。
 ラウル・デ・ラ・フエンテは、長編フィクション作品もアニメーションもこれが初めて。Damian Nenow は、長編作品はこれが初めてで、2010年に短編アニメーション“Paths of Hate”で注目された。

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 【ミッドナイト・スクリーニング部門 追加作品】

 ・“Whitney”(英) 監督:ケヴィン・マクドナルド
 ホイットニー・ヒューストンの人生と音楽を深く掘り下げるドキュメンタリー。
 2億枚以上のアルバムのワールド・セールスと、全米シングル・チャート7曲連続1位
という記録を持つ唯一のアーティストであるホイットニー・ヒューストンは、一世代の声である。尊敬されている歌手の家系出身で、ゴスペル・シンガーから見出されて、世界のステージを制した。マライヤ・キャリーからビヨンセまでのシンガーの世代に影響を与え、多くの黒人アーティストによって長らく退けられていた国歌を、忘れがたいパフォーマンスによって解放した。だが、これらすべての業績は、薬物中毒と自己破壊の物語の添え物になってしまった。オンステージの天使の声は、タブロイド紙や雑誌のコラムを埋め尽くした猥雑な物語によって、悪魔のオフステージで引き裂かれたのだ。

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 ・“Fahrenheit 451”(米) 監督:ラミン・バーラニ
 出演:ソフィア・ブテラ(Sofia Boutella)、マイケル・B・ジョーダン、マイケル・シャノン、キア・デュリア(Keir Dullea)、マーティン・ドノヴァン、リリー・シン(Lilly Singh)、グレース・リン・カン(Grace Lynn Kung)
 レイ・ブラッドベリの『華氏451度』の2度目の映画化。

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 【クロージング作品】
 ※閉会式の後に上映。フランスでは同日に公開。

 ・“The Man Who Killed Don Quixote”(西・英・仏・ポルトガル) 監督:テリー・ギリアム
 出演:アダム・ドライヴァー、オルガ・キュルレンコ、ステラン・スカルスガルド、ジョナサン・プライス
 物語:広告業のエグゼクティヴが、21世紀のロンドンと17世紀のラマンチャを行ったり来たりする。ラマンチャで、彼は、ドン・キホーテにサンチョ・パンサと間違えられてしまう。

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 [コンペティション部門選出作品の傾向性]

 【選出された国や地域】

 イギリス、アイルランド、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、チェコ、バルカン諸国、北欧、イスラエル、南アジア、東南アジア、台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、中・南米、エジプト以外のアフリカ諸国、からの選出はありませんでした。

 前回、選出されたイギリス、ドイツ、ハンガリーからは選出されませんでした。
 ロシア、韓国、日本からは2年連続で選出されています。

 今年のベルリン国際映画祭のコンペ部門に選出されたドイツ、ルーマニア、スウェーデン、ノルウェー、フィリピン、メキシコ、パラグアイからは選出されませんでした。
 ポーランド、ロシア、イランからは、ベルリン国際映画祭に続いて選出されています。

 ベネチア国際映画祭2017のコンペ部門で選出されたイギリス、イスラエル、オーストラリアからは選出されませんでした。

 全21作品のうち、フランス資本の入った作品が12本あります。(前回は11本、前々回は13本)

 全21本のうち、アメリカ資本の入った作品は3本しかありません。(前回は8本、前々回は5本)

 全21作品のうち、英語作品は、2本のみです。(前回は8本、前々回は7本。)今回は、英語圏の俳優を起用した非英語圏の作品はありませんでした。(アスガー・ファルハディ作品は英語+スペイン語)

 【監督の受賞歴・出品歴】

 初監督作品:A.B Shawky
 ※初監督長編の作品がコンペ部門に選出されるのは、ネメシュ・ラースロー以来3年ぶり。

 3大映画祭初参加:エヴァ・ユッソン、濱口竜介

 3大映画祭コンペティション部門初参加:パヴェウ・パヴリコフスキ、ナディーン・ラバキー、デイヴィッド・ロバート・ミッチェル、ヤン・ゴンザレス、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ

 パルムドール受賞:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

 グランプリ受賞:マッテオ・ガローネ×2、アリーチェ・ロルヴァケル、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン×2

 審査員賞受賞:ジャン=リュック・ゴダール、是枝裕和

 監督賞受賞:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

 脚本賞受賞:アスガー・ファルハディ、ジャ・ジャンクー、イ・チャンドン

 金熊賞受賞:アスガー・ファルハディ、ジャン=リュック・ゴダール、ジャファール・パナヒ

 金獅子賞受賞:ジャン=リュック・ゴダール、ジャファール・パナヒ、ジャ・ジャンクー

 ※ジャン=リュック・ゴダールかジャファール・パナヒがパルムドールを受賞すれば、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ミケランジェロ・アントニオーニ、ロバート・アルトマンに続いて、4人目の3冠(ベルリン・カンヌ・ベネチアの最高賞受賞)達成。

 日本から2作品が選出されるのは、2013年以来5年ぶりです。(2013年は、『そして父になる』が審査員賞、エキュメニカル審査員賞 特別表彰受賞。)

 【監督どうしのめぐり合わせ】

 2015年のカンヌ
 ステファーヌ・ブリゼ(男優賞、エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション)、マッテオ・ガローネ、ジャ・ジャンクー、是枝裕和
 ※『キャロル』で映画祭入りしていたケイト・ブランシェットが今回の審査員長

 2014年のカンヌ(審査員:ジャ・ジャンクー)
 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン(パルムドール)、アリーチェ・ロルヴァケル(グランプリ)、ジャン=リュック・ゴダール(審査員賞)

 2013年のカンヌ
 アスガー・ファルハディ(女優賞、エキュメニカル審査員賞)、ジャ・ジャンクー(脚本賞)、是枝裕和(審査員賞、エキュメニカル審査員賞特別表彰)

 2009年のカンヌ(審査員:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、イ・チャンドン)

 2008年のカンヌ
 マッテオ・ガローネ(グランプリ)、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン(監督賞)、ジャ・ジャンンクー

 2007年のカンヌ
 クリストフ・オノレ、イ・チャンドン(女優賞)

 2001年のカンヌ
 ジャン=リュック・ゴダール、是枝裕和

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 [受賞結果の傾向性]

 ・審査員長の好みや意向が強く反映される年もあれば(2009年のカンヌ、2015年のカンヌなど)、レビューの評価の順にほぼ上から賞が与えられる年もある。

 ・その年の映画祭の意向や雰囲気に影響を受ける年もある(2011年のベルリン、2013年のベネチアなど)。

 ・審査員のメンバーの国籍が受賞結果に色濃く反映してしまうことも少なくない。

 ・同じ監督の作品が、2大会連続してオフィシャルの賞を受賞することはなかなか難しい(といって全然ないわけでもない)。

 ・賞を与えることの意味を吟味して、ベテラン監督の秀作よりは、若手監督の意欲作に賞を与えることもある。

 [パルムドール]

 ◆国籍(便宜的に分類してあるケースもあります)
 18回:アメリカ
 12回:イタリア
 11回:フランス
 10回:イギリス
 4回:デンマーク、日本
 3回:スウェーデン
 2回:ソ連、メキシコ、西独、ポーランド、ギリシャ、トルコ、ベルギー、オーストリア
 1回:チェコスロヴァキア、スイス、インド、ブラジル、アルジェリア、ユーゴスラヴィア、中国、ニュージーランド、セルビア・モンテネグロ、イラン、ルーマニア、タイ

 アメリカとヨーロッパが圧倒的。アメリカとイギリスの受賞の割合は減っているが、それでも10年に1回は必ず受賞している。
 アジアは、インド、日本、トルコ、中国、イラン、タイしか受賞国はない。
 欧米、アジア以外では、メキシコ、ブラジル、アルジェリア、ニュージーランドしかない。

 ◆2回受賞した監督は8組。アルフ・シェーベルイ(1946、1951)、フランシス・フォード・コッポラ(1976、1979)、今村昌平(1983、1997)、エミール・クストリッツァ(1985、1995)、ビレ・アウグスト(1988、1992)、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(1999、2005)、ミヒャエル・ハネケ(2009、2012)、ケン・ローチ(2006、2016)

 ◆女性の受賞監督は、ジェーン・カンピオンしかいない。

 ◆監督のキャリア
 ・2017:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン・デンマーク・米・仏) 監督:リューベン・オストルンド 第10作 ←2014年:カンヌ ある視点部門=審査員賞
 ・2016:『わたしは、ダニエル・ブレイク』(英・仏・ベルギー) 監督:ケン・ローチ 第24長編フィクション ←2012年:カンヌ=審査員賞 ←2006年:カンヌ=パルムドール
 ・2015:『ディーパンの闘い』(仏) 監督:ジャック・オディアール 第8作 ←2009年:カンヌ=グランプリ
 ・2014:『雪の轍』(トルコ・独・仏) 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 第7作 ←2011年:カンヌ=グランプリ ←2008年:カンヌ=監督賞
 ・2013:『アデル、ブルーは熱い色』(仏) 監督:アブデラティフ・ケシシュ 第5作 ←2007年:ベネチア=審査員特別賞
 ・2012:『愛、アムール』(オーストリア・仏・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ 第11作 ←2009年:カンヌ=パルムドール ←2005年:カンヌ=監督賞
 ・2011:『ツリー・オブ・ライフ』(米) 監督:テレンス・マリック 第6作 ←1999年:ベルリン=金熊賞
 ・2010:『ブンミおじさんの森』(タイ) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン 第6作 ←2004年:カンヌ=審査員賞
 ・2009:『白いリボン』(オーストリア・独・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ 第10作 ←2005年:カンヌ=監督賞
 ・2008:『パリ20区、僕たちのクラス』(仏) 監督:ローラン・カンテ 第8作 ←2005年:ベネチア='CinemAvvenire' Award
 ・2007:『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ 第2作 ←2002年:カンヌ 監督週間

 ※本数は、数え方によって違いが出る場合があります。

 金熊賞や金獅子賞が第5作までに受賞することが多いのに対して、パルムドールは第6作以降の作品が受賞するケースがほとんど。初監督作品や若手監督が受賞する可能性はほとんどない。
 パルムドール受賞以前に、それに準じる賞を受賞している監督がほとんど。

 [監督賞]

 ・カンヌで監督賞を2回以上受賞しているのは、ルネ・クレマン、セルゲイ・ユトケーヴィッチ、ロベール・ブレッソン、ジョン・ブアマン、コーエン兄弟(3回受賞)の5組しかいない。90年代以降に初受賞して2回以上受賞しているのはコーエン兄弟しかいない。

 ・国際的に知られるようになるのが遅かった監督やコンペティション部門にエントリーされてこなかったような監督はともかく、早くから注目されていた監督は、比較的早い時期に監督賞を受賞している。2015年の侯孝賢や2002年のイム・グォンテクを例外とすれば、思い出したかのように監督賞を与えられることは稀。その一方で、新人監督に監督賞が与えられることも極めて稀(例外は1990年のパーヴェル・ルンギン)。
 近年の、監督賞受賞監督では―
 第3作で受賞:アマト・エスカレンテ、ジュリアン・シュナーベル
 第4作で受賞:クリスティアン・ムンジウ、ベネット・ミラー、マチュー・アマルリック、ポール・トーマス・アンダソン
 第5作で受賞:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
 第6作で受賞:カルロス・レイガダス、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
 第7作で受賞:エドワード・ヤン、ウォン・カーウァイ
 第8作で受賞:ブリランテ・メンドーサ、ミヒャエル・ハネケ
 第9作で受賞:ニコラス・ウィンディング・レフン、デイヴィッド・リンチ
 第10作で受賞:ガス・ヴァン・サント
 第13作で受賞:ペドロ・アルモドバル
 第15作で受賞:トニー・ガトリフ、オリヴィエ・アサイヤス

 とすると、カンヌの監督賞は、
 1.ある種の作家性が認められて数作目
 2.国際的に知られるようになって数作目(カルロス・レイガダス、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、ブリランテ・メンドーサ、ミヒャエル・ハネケ、ニコラス・ウィンディング・レフンなど)
 3.意欲作(ガス・ヴァン・サント、ロバート・アルトマンなど)
 4.功労賞的な受賞(侯孝賢、イム・グォンテクなど)
 で贈られる傾向性がある、ということになる。

 今回のエントリー作品では、一度監督賞を受賞しているヌリ・ビルゲ・ジェイランは受賞しにくく、これまで監督賞に縁がなかったジャン=リュック・ゴダールあたりは、監督賞受賞の可能性は低い、ということになる。

 ・2000年以降では、アメリカが7回、メキシコが3回、フランス2回、台湾が1回受賞

 ・おそらく、グランプリや審査員賞と比べて、(近年は)パルムドールへのステップという位置づけが強い。
 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン:2008年監督賞→2014年パルムドール
 ミヒャエル・ハネケ:2005年監督賞→2009年・2012年パルムドール
 テレンス・マリック:1979年監督賞→2011年パルムドール
 ナンニ・モレッティ:1994年監督賞→2001年パルムドール
 デイヴィッド・リンチ:1990年パルムドール→2001年監督賞
 マイク・リー:1993年監督賞→1996年パルムドール
 エミール・クストリッツァ:1985年パルムドール→1989年監督賞→1995年パルムドール
 ヴィム・ヴェンダース:1984年パルムドール→1987年監督賞
 マーティン・スコセッシ:1976年パルムドール→1986年監督賞
 コスタ=ガヴラス:1975年監督賞→1982年パルムドール

 [グランプリ]

 ・グランプリは、カンヌでは、パルムドールに次ぐ2番目の賞で、パルムドールがパルムドールを与えることの意味を考えて、意欲的な若い監督や国際的にまだ知名度が高くない監督に贈られることも多いのに対して、グランプリは、のちにその監督の代表作となるような作品に贈られることも多い。(『サクリファイス』『ニュー・シネマ・パラダイス』『美しき諍い女』『奇跡の海』『スウィートヒア アフター』『ライフ・イズ・ビューティフル』『鬼が来た!』『オールド・ボーイ』『ゴモラ』など)

 ・グランプリは、監督のキャリアや受賞歴とは関係なく与えられ、『サウルの息子』のような新人監督作品に贈られることもあれば、ダルデンヌ兄弟やコーエン兄弟などベテラン監督に贈られることもあり、ブリュノ・デュモン、マッテオ・ガローネ、ヌリ・ビルゲ・ジェイランといった意外な監督が2回ずつ受賞していたりする。

 ・「グランプリ」という現在の名称になった1995年以降で、フランスが5回、イタリアが3回、トルコとアメリカとカナダが2回ずつ受賞している。(1967-88年が「審査員特別グランプリ」、1989-1994年が「審査員グランプリ」。)

 [審査員賞]

 ・結果的に、野心的な作品に贈られることが多い。(『ひかり』『殺人に関する短いフィルム』『ヨーロッパ』『マルメロの陽光』『王妃マルゴ』『クラッシュ』(クローネンバーグ)『セレブレーション』『散歩する惑星』『ブラックボード 背負う人』『D.I.』『午後の五時』『トロピカル・マラディ』『ペルセポリス』『静かな光』『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』『渇き』『そして父になる』『Mommy/マミー』『ロブスター』など)

 ・「グランプリ」と切り離された1969年以降で、審査員賞は、ケン・ローチが3回、サミラ・マフマルバフとアンドレア・アーノルドが2回ずつ受賞している。

 ・多くの部門賞が年ごとに国際的な広がりを見せているのに対して、審査員賞の受賞国は、ほぼカンヌの常連国ばかりである。

 [男優賞]

 ・1962年まではほぼアメリカが独占。
 以降、1987年まではイタリアとフランスの受賞が多くなる。
 1990年代以降は国際色が強くなる。

 ・例外はあるが、国際的に名の知られた男優が受賞するケースがほとんど。

 ・これまでに、2回受賞したのは、マストロヤンニとジャック・レモンとディーン・ストックウェルしかいない。

 ・今回の出演陣で受賞経験者は、ハビエル・バルデムとヴァンサン・ランドン。

 [女優賞]

 ・1989年までは、アメリカ、フランス、イタリアの受賞が多い。
 1990年代以降は国際色が強くなる。

 ・国際的に名の知られた女優が受賞するケースが多いが、さほど知られていない女優が受賞するケースもある。

 ・これまでに、2回受賞したのは、ヴァネッサ・レッドグレーヴとヘレン・ミレンとイザベル・ユペールのみ。

 ・今回の出演陣で受賞経験者は、エマニュエル・ベルコ。

 [脚本賞]

 ・原作ものに、脚本賞が与えられることは稀(1997年の『アイス・ストーム』以降、原作ものは脚本賞を受賞していない)。

 ・監督が脚本に参加していない作品より、監督が脚本に参加している作品の方が脚本賞を受賞することが多い(前者は、1949、1951、1952、1958、1965、1997、1999、2000、2002、2005、2009と少なく、しかも年度的に偏っている)。

 ・脚本賞は、1980年までは、イギリス、アメリカ、フランス、イタリアにしか与えられていない。過去10年で、2回受賞しているのは中国のみ。過去20年で2回以上受賞しているのは、アメリカ、フランス、メキシコ、中国のみ。

 ・これまでカンヌで脚本賞を2回受賞している者はいない。今回のエントリー作品で、過去に受賞しているのは、イ・チャンドン、ジャ・ジャンクー、アスガー・ファルハディ。

 ・ある程度、作品の評価が伴わないと、脚本賞には選ばれない。

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 以上を踏まえて、大雑把に受賞予想をしておくことにします。

 審査員:ケイト・ブランシェット(審査員長)、チャン・チェン、エヴァ・デュヴァルネ、ロベール・ゲディギャン、Khadja Nin(ブルンジの作曲家、シンガー)、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、アンドレイ・ズビャギンツェフ

 審査員の顔ぶれからすると、社会派のドラマが評価されるような気はしますが、ゴダールの扱いをどうするか、キリル・セレブレニコフやジャファール・パナヒ作品をどうするか、悩みどころは多いですね。

 予告を観る限りでは“Dogman”に張らんでいる狂気めいたものにそそられますが、カンヌの審査員にプッシュされるようなものでもないかもしれないと思ったりします。

 パルムドール
 ・“3 Faces”
 ・“Ash Is Purest White(江湖児女)”

 グランプリ
 ・“Zimna Wojna (Cold War)”
 ・“Capharnaüm (Capernaum)”
 ・“Ash Is Purest White(江湖児女)”
 ・“Ahlat Agaci (The Wild Pear Tree) ”

 監督賞
 ・マッテオ・ガローネ
 ・キリル・セレブレンニコフ
 ・ナディーン・ラバキー
 ・イ・チャンドン
 ・是枝裕和
 ・スパイク・リー
 ・A.B Shawky

 男優賞
 ・ヴァンサン・ランドン “En Guerre (At War)”
 ・アダモ・ディオニージ “Dogman”
 ・テオ・ヨー “Leto (L’été/The Summer)”
 ・ジョン・デイヴィッド・ワシントン “Blackkklansman”

 女優賞
 ・ペネロペ・クルス “Everybody Knows(Todos lo saben)”
 ・ゴルシフテ・ファラハニ “Les Filles Du Soleil (Girls of The Sun)”
 ・ヨアンナ・クーリグ “Zimna Wojna (Cold War)”
 ・“3 Faces”
 ・チャオ・タオ “Ash Is Purest White(江湖児女)”
 ・サマル・イェスリャーモワ “Ayka(My Little One)”

 脚本賞
 ・“Dogman”
 ・“Lazzaro Felice(My Bitter Land/Happy as Lazzaro)”
 ・『万引き家族』

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 ・カンヌ国際映画祭2018 コンペティション部門:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201804/article_14.html

 ・カンヌ国際映画祭2018 ラインナップ コンペティション部門以外:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201804/article_16.html

 ・カンヌ国際映画祭2018 短編部門&シネフォンダシオン部門 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201804/article_12.html

 ・カンヌ国際映画祭2018 国際批評家週間 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201804/article_17.html

 ・カンヌ国際映画祭2018 監督週間 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201804/article_18.html

 ・Awards Dailyが選ぶ、2018年期待の258作品!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_26.html
 ・カンヌ国際映画祭2018 コンペティション部門予想リスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_16.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2018年3月〜9月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_33.html

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