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zoom RSS 国宝級なり! アダム・エリオット プロフィール、フィルムグラフィー、作風・スタイル!

<<   作成日時 : 2011/05/06 01:17   >>

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 当ブログで短編動画の紹介をせっせとしていたのは今から4年くらい前になりますが、その頃、書きかけていて、ブログにアップしていないものがけっこうあります。

 アダム・エリオットに関する記事もそうしたもの1つで、『メアリー&マックス』の劇場公開記念として、改めて記事にしてみることにしました。

『メアリーとマックス』は東京国際映画祭で観たので、映画館には行っていないんですが、パンフが1000円もするというところを見ると、このくらいの内容は書かれているのでしょうか。DVDが出たら手に入れたいとは思っているし、もう1回くらいスクリーンで観てもいいなと思ってはいるんですが……。

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 ◆監督について

 アダム・エリオット(Adam Benjamin Elliot)
 メルボルンを拠点に活動するストップ・モーション・アニメーションの映画監督。

 【プロフィール】

 1972年1月2日、南オーストラリアのバーウィック(Berwick)で生まれる。
 エビの養殖場を営む両親の元に、サマンサとルークとジョシュアという3人の兄妹と、サニーとシェールという2羽のオウムとともに育つ(父親ノエルは元軽業師で、母親ヴァレリーはヘアドレッサー。養殖場はのちに倒産し、両親はメルボルンで金物店に転業する)。
 アダムは、幼い頃はシャイで、自分のベッドルームに鍵をかけて閉じこもり、絵を描いたり、卵のパッケージやトイレット・ペーパーの芯などを使っていろんなものを作ったりして遊んでいた。

 クレイ・アニメーションの第3作『兄』は、実の兄のエピソードを取り入れているところもあるが、本当のモデルはアダム・エリオット本人。

 パインウッド州立小学校(Pinewood Primary State School)から、私立の男子校ヘイリーベリー・カレッジ・キースボロー(Haileybury College Keysborough)に進む。
 獣医になりたかったが(ペットたちが死んでいくのを助けたいと思ったから)、美術、英文学、写真、絵画、彫刻等は得意でも、数学や科学や宗教が不得意で、医大に進むことはできなかった。
 この学校で地元でも有名なバグパイプ・バンドHighland Pipe Bandに入ってベース・ドラムを担当し、人見知りを克服する。最終学年には、シャーロック・ホームズものの舞台『トスカ枢機卿事件』でワトソン博士役を演じ、A.G. Greenwood Trophy賞を受賞。

 生まれながらに生理的振戦を抱えていたが(母親からの遺伝らしい)、そうしたハンディキャップを芸術の方に生かすようになった。彼の独特のでこぼこした描線は、今では“chunky-wonky”(ずんぐり-でこぼこ)スタイルと呼ばれている。(生理的振戦(physiological tremor)は、精神的な緊張などによって体が震える症状。正常な人にも見られるもので病気ではなく、病的振戦とは区別される)

 学校を出てから5年間は、地方の工房で、Tシャツのデザインなどをして過ごす。その時期にした仕事で最も有名なものは、'Murray the tap-dancing Dim-Sim’というピザの箱のデザインで、その箱に入ったピザは割高でもよく売れた。

 それにも飽きたアダムは、ヴィクトリア芸術大学(Victorian College of the Arts)映画テレビ学科アニメーション専攻科に進み、大学院修士課程を修得する。
 1996年に監督第1作のストップ・モーション・アニメーション『おじさん』を手がける。同大学を1997年に卒業した後、『いとこ』と『兄』を発表し、3部作を完成させる。
 2003年の『ハーヴィー・クランペット』で米国アカデミー賞短編アニメーション賞をはじめとする数々の賞を受賞。
 2009年に最初の長編『メアリー&マックス』を完成させた。

 1999年には「ヤング・ヴィクトリアン・オブ・ザ・イヤー」“Young Victrian of the Year”を受賞している。

 2006年にアヌシー国際アニメーションフェスティバルが選んだ短編アニメーション100の59位に『ハーヴィー・クランペット』が選ばれている。

 米国アカデミー賞(米国映画芸術科学アカデミー)会員。

 オーストラリアで唯一の障害者による、障害者のための、障害者についての映画祭“The Other Film Festival”の公式後援者。

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 彼の作品の提示する、人間どうしの違い、障害、孤独、普遍的価値などが高く評価されて、作品が学校の教材に使われることも多い。
 また、彼の作品の人気とデジタル・テレクノロジーの普及により、多くのオーストラリアの学校ではストップ・モーション・アニメーションの授業が始められるようになった。
 マウント・ウェイバリー小学校(The Mount Waverley Primary School)で制作されたアニメーションの最優秀作品には、「アダム・エリオット賞」という名の賞が与えられている。

 2009年、オーストラリアの“The Age”紙の映画批評家トム・ライアンは、アダム・エリオットのことを「オーストラリアの人間国宝」(Australia National Treasure)と呼んだ。

 2010年11月、最初の絵本“The A to Z of Unfortunate Dogs”(AからZまでの不幸な犬たち)をペンギン・オーストラリアから出版。クリスマス・シーズンにベストセラーになった。

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 2010年、samesame organizationの選ぶ、オーストラリアで最も影響力のあるゲイ、トップ25の1人に選ばれた。

 『メアリー&マックス』のフェイスブックは、フレンドが22000人を超え、なお増え続けている。

 舞台版『メアリー&マックス』がブラジルで製作中で、2012年にリオ・デ・ジャネイロで上演予定になっている。

 趣味は、アンティークのショッピング、菜食の料理、絵を描くこと、伝記を読むこと、パートナーのダニエルと一緒に2匹のパグ犬バリーとケヴィンを散歩させること。

 日本では、2005年に『おじさん』『いとこ』『兄』『ハーヴィー・クランペット』を収録したDVD『ハーヴィー・クランペット』がレントラックジャパンから発売され(初期3部作のタイトル表記は『アンクル(叔父さん)』『カズン(いとこ)』『ブラザー(兄さん)』)、同4作品がオーストラリア映画祭2006で上映された(映画祭での上映タイトルは『ハーヴィ・クランペット』)。
 『メアリー&マックス』が日本で劇場公開された初めてのアダム・エリオット作品。

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 【作風・スタイル1】

 ストップ・モーション・アニメーションによるクレイ・アニメーション。
 完全な粘土のみのアニメーションは第1作『おじさん』のみで、その後は、粘土のほかに様々な素材を活用している。

 小道具もセットもキャラクターもすべて手作りのミニチュアで、多くのアニメーターやモデルメーカーを使い、何年もかけて作品を完成させる。
 キャラクターの造形は、目・鼻・口・耳が大きく飛び出た、デフォルメしたもの。特に印象的なのはピンポン玉のような目玉。
 イメージを作るためにコンピューターを使ったり、デジタル加工を使ったりはしない。
 フレーム・キャプチャーのために、『ハーヴィー・クランペット』で初めてデジタル・ソフトを採用した。

 自分のまわりの人物をモデルにしたクレイ・アニメーションで、自らは、クレヨグラフィー(Clayogaphies)と呼んでいる。

 なんらかのハンディキャップを負った人物を主人公とすることが多く、それを悲劇的にも、英雄としても描かず、淡々と「普通」の人として描く。
 基本的にナレーション・ベースで物語が進められる。ナレーションの情報量はかなり多い。
 これまでのクレイ・アニメーション5作品に関してはすべて主人公の人生をたどるスタイルで物語が展開する。

 主人公はなんらかの強迫観念を負っている。
 登場人物は、悲劇的な運命にももがいたり嘆いたりすることなく、淡々と受け入れる。
 主人公は出会い頭で結婚し、知人や家族の何人かは唐突に死を迎える。
 主人公は変わった職業に就くことが多く、よく転職する。
 ペットが主人公の心の友になることが多い。
 物語のアクセントとして動物を登場させることが多い。
 場面の変わり目に、主人公が暮らしている明りのついた建物を、インサートすることが多い。
 エンディングは必ずしもハッピー・エンドではない。

 初期の2作品は、デイヴィッド・リンチ的な世界、すなわち、自分の身近にいる奇人や奇癖を持った人物をモチーフにしようとしたのではないかと思われる。

 アダム・エリオットの作品世界は、ビル・プリンプトンやティム・バートン、シェーン・アッカーに近しいものを感じさせるが、悲劇的であってもビル・プリンプトンのようにブラックな笑いで笑い飛ばすことはせず、ペーソスを感じさせてもティム・バートンのように感傷的にはならず、痛々しくあってもシェーン・アッカーのようなグロテスクさは感じさせない。
 悲劇と喜劇、ユーモアとペーソスの絶妙なバランスの上に物語を構築する。

 【作風・スタイル2】

 アダム・エリオットは、『おじさん』から最新作『メアリーとマックス』まで、1作ごとに飛躍的に作品を発展させていきている。

 それは、単純に製作費の違いでもあって、『おじさん』が4000AUD(オーストラリア・ドル)だったのに対し、『いとこ』が42000AUD(10.5倍)、『兄』が52000AUD(前作の12倍)、『ハーヴィー・クランペット』が38000AUD(さらに7倍)、『メアリー&マックス』が8300000AUD(さらに22倍)、となっている。

 [キャラクター] 初期の3部作は、奇人やクセのある人物、奇癖の持ち主を描いた作品だったが、『ハーヴィー・クランペット』以降、そういうキャラクターは、脇にまわるようになり、引きこもり、コミュニケーションが苦手なキャラ、不器用な生き方しかできない登場人物(言ってみれば、社会によって、正常・異常という基準を押し付けられたことによって、社会不適応者の烙印を押されてしまっている)という風に、より受け入れられやすいものに変わってきている。

 [視点] 初期2作は、対象の「観察と描写」という色合いが濃く、『兄』でやや主人公の視線や心情に寄り添うようになり、『ハーヴィー・クランペット』で決定的にその方向に向かい、主人公の「ささやかな幸せ」を描く、というように変わっている。

 [キャラクターの表現] 『ハーヴィー・クランペット』までは、まばたきしたり、目をきょろきょろさせたり、手を動かすことでキャラクターの感情を表現し、頭の動きで感情の方向を示させている。
 『メアリー&マックス』では、キャラクターの感情表現が、顔の表情も、身振り手振りも、格段に豊かなものになっている。

 [場面の表現] 『ハーヴィー・クランペット』までは、「死」を表現するために「墓」を映して見せたり、「入院」や「治療」を示すために、「手術室」や「病室」の扉がバタバタするのを見せたり、なんらかの「看板」を見せることで場面転換を示したり、という手法を多用している。

 [全体の動き] 『メアリー&マックス』では、画面の中、全体が自然な動きを見せるが、『ハーヴィー・クランペット』までは、動くのは、画面の中のごく一部分のみ、たとえば、登場人物の手や目玉だけ、だったりする。ただし、それが、作品のタッチとなり、独特のリズムを生み出していた。

 [アングル・カット割り] 『ハーヴィー・クランペット』までは、登場人物をほぼ正面から一定の距離をおいてとらえたカットしかなく、サイズも2段階(通常サイズとやや引いたサイズ)しかない。
 『メアリー&マックス』では、それが遙かに自由になり、様々なアングル、カット割り、サイズが使えるようになった。

 [ナレーション] アダム・エリオット自身が、『ハーヴィー・クランペット』までは、「アニメーションよりも語り(ナレーション)が重要」と語っていたが、確かに、『ハーヴィー・クランペット』までは、物語がかなりナレーションに依存していて、ナレーション抜きでは物語が理解できないほどになっている。
 『メアリー&マックス』では、依然としてナレーション(+モノローグ)は重要なものの、アニメーション(画面の中の登場人物などの動き)の重要度がアップして、それだけでもかなり展開が理解できるようになってきている。

 [音楽] 『ハーヴィー・クランペット』で初めてBGMを使う。

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 【フィルモグラフィー】

 ・1995年 “Human Behavioural Case Studies, Part one”
 子供たちのイラストに監督自らナレーションをかぶせた作品。

 ・1996年 『おじさん』“Uncle”
 AFI(オーストラリア映画協会)1997 最優秀短編アニメーション賞受賞

 ・1998年 『いとこ』“Cousin”
 AFI1999 最優秀短編アニメーション賞受賞

 ・1999年 『兄』“Brother”
 AFI2000 最優秀短編アニメーション賞・脚本賞受賞

 ・2003年 『ハーヴィー・クランペット』“Harvie Krumpet”
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2003観客賞・国際批評家連盟賞・審査員特別賞受賞、AFI2003最優秀短編アニメーション賞・脚本賞受賞、サンダンス フィルム フェスティバル2004 Short Filmmaking Award - Honorable Mention受賞、米国アカデミー賞2004短編アニメーション賞受賞。

 ・2009年 『メアリー&マックス』“Mary & Max”
 ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門14plus スペシャル・メンション受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 グランプリ受賞、オタワ国際アニメーションフェスティバル2009 グランプリ受賞。アジア太平洋映画賞2009 長編アニメーション賞受賞。IF賞2009 美術賞受賞。AFI2009作品賞・脚本賞ノミネート。

 ・2010年 “One Doggie Day” 絵本“The A to Z of Unfortunate Dogs”のプロモーションための、1分36秒の実写作品。

 【参考サイト】

 ・アダム・エリオット公式サイト:http://www.adamelliot.com.au/

 ・アダム・エリオットのプレスキット:http://www.adamelliot.com.au/Menu_files/Press%20Kit.pdf

 ・アダム・エリオットの公式You Tubeサイト:http://www.youtube.com/user/adamelliotpictures

 ・アダム・エリオットに関するWikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Adam_Elliot

 ・“The A to Z of Unfortunate Dogs”のHP(ペンギン・ブックス):http://www.penguin.com.au/products/9781926428291/z-unfortunate-dogs

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 当初の予定では、上記と一緒に、『ハーヴィー・クランペット』を紹介しようと思っていたんですが、監督の紹介記事だけで、けっこう長くなってしまったので、それはまた別に改めて書くことにします。→http://umikarahajimaru.at.webry.info/201105/article_3.html

 ここでは、アダム・エリオットの作品と言っていいのかどうかわかりませんが、“One Doggie Day”の動画を貼り付けておきたいと思います。

 これは、2010年11月に発売されたアダム・エリオット初の絵本“The A to Z of Unfortunate Dogs”のプロモーションのために作られたクリップのようなもので、<天気はいいけれど、気持ちの晴れないアダム・エリオットが、愛犬のパグ犬、バリーとケヴィンを連れて散歩していて、絵本“The A to Z of Unfortunate Dogs”を見つけ、これを2匹と一緒に読んでいるうちに、気持ちも晴れ上がってくる>、という内容の作品です。



 ◆作品データ
 2010年/オーストラリア/1分36秒
 英語台詞あり/日本語字幕なし
 実写作品

画像

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 *当ブログ記事
 ・アダム・エリオット 『ハーヴィー・クランペット』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201105/article_3.html

 ※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39!
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバルが選ぶ短編アニメーション ベスト100:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200701/article_27.html

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