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zoom RSS えっ、『告白』なの? 米国アカデミー賞2011 外国語映画賞日本代表決定!

<<   作成日時 : 2010/09/09 00:28   >>

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 米国アカデミー賞2011 外国語映画賞日本代表作品に『告白』が選ばれたことが発表されました。

 『告白』には、拒絶反応を起こす人も多かったし、年輩の人が多いだろうと思われる選考委員が好む作品ではないのではないかと思ってもいたので、この選考結果はかなり意外でした。

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 まずは、数日前に書いた米国アカデミー賞外国語映画賞日本代表作品に関する記事を以下に再録しておきます。

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 【米国アカデミー賞外国語映画賞日本代表に関する傾向と対策】

 ◆日本代表に選ばれた監督
 ・5作品:黒澤明(5回中1回は名誉賞)
 ・4作品:山田洋次
 ・3作品:市川崑、熊井啓
 ・2作品:木下恵介、中村登、勅使河原宏、篠田正浩、小林正樹、五社英雄、今村昌平、小栗康平、平山秀幸
 ・1作品:衣笠貞之助(名誉賞)、稲垣浩(名誉賞)、成瀬巳喜男、小津安二郎、田坂具隆、深作欣二、吉田喜重、大島渚、村野鐵太郎、伊藤俊也、高畑勲、宮崎駿、降旗康男、小泉堯史、行定勲、是枝裕和、崔洋一、李相日、周防正行、滝田洋二郎、君塚良一

 ◆ノミネートまで進んだ作品(名誉賞を除く)
 ・1957年 『ビルマの竪琴』(監督:市川崑)
 ・1962年 『永遠の人』(監督:木下恵介)
 ・1964年 『古都』(監督:中村登)
 ・1965年 『砂の女』(監督:勅使河原宏)
 ・1966年 『怪談』(監督:小林正樹)
 ・1968年 『智恵子抄』(監督:中村登)
 ・1971年 『どですかでん』(監督:黒澤明)
 ・1976年 『サンダカン八番館 望郷』(監督:熊井啓)
 ・1981年 『影武者』(監督:黒澤明)
 ・1982年 『泥の河』(監督:小栗康平)
 ・2004年 『たそがれ清兵衛』(監督:山田洋次)
 ・2009年 『おくりびと』(監督:滝田洋二郎)

 このうち、2度ノミネートを受けたのは黒澤明と中村登のみ。受賞したのは『おくりびと』のみです。

 ◆近年の日本代表作品
 ・1999年 『愛を乞うひと』(東宝) 監督:平山秀幸
 海外の映画祭への出品歴:モントリオール世界映画祭(国際批評家連盟賞受賞)
 ・2000年 『鉄道員』(東映) 監督:降旗康男
 海外の映画祭への出品歴:モントリオール世界映画祭(男優賞受賞)
 ・2001年 『雨あがる』(アスミック・エース=東宝) 監督:小泉堯史
 海外の映画祭への出品歴:ベネチア国際映画祭
 ・2002年 『GO』(東映) 監督:行定勲
 海外の映画祭への出品歴:―
 ・2003年 『OUT』(20世紀フォックス映画) 監督:平山秀幸
 海外の映画祭への出品歴:―
 ・2004年 『たそがれ清兵衛』(松竹) 監督:山田洋次
 海外の映画祭への出品歴:(ベルリン国際映画祭、香港国際映画祭)
 ・2005年 『誰も知らない』(シネカノン) 監督:是枝裕和
 海外の映画祭への出品歴:カンヌ国際映画祭(男優賞受賞)、テルライド映画祭、トロント国際映画祭、バンクーバー国際映画祭
 ・2006年 『血と骨』(松竹=ザナドゥー) 監督:崔洋一
 海外の映画祭への出品歴:釜山国際映画祭
 ・2007年 『フラガール』(シネカノン) 監督:李相日
 海外の映画祭への出品歴:トロント国際映画祭
 ・2008年 『それでもボクはやってない』(東宝) 監督:周防正行
 海外の映画祭への出品歴:バンクーバー国際映画祭
 ・2009年 『おくりびと』(松竹) 監督:滝田洋二郎
 海外の映画祭への出品歴:モントリオール世界映画祭(グランプリ受賞)
 ・2010年 『誰も守ってくれない』(東宝) 監督:君塚良一
 海外の映画祭への出品歴:モントリオール世界映画祭(脚本賞受賞)

 これらから、米国アカデミー賞外国映画賞日本代表作品の傾向性を書き出してみると――

 ・大半が、松竹・東宝・東映の配給作品から選ばれている。流れとしては松竹作品と東宝作品が隔年に選ばれる感じで、同じ配給会社の作品が2年続けて選ばれることはない。

 ・この11年間は毎年違う監督の作品が選ばれている。

 ・『誰も知らない』『フラガール』『誰も守ってくれない』以外は原作ものの映画化作品。

 ・12本のうち、時代劇が2本、現代劇が10本、そのうち現在から過去を回想しているスタイルの作品(現代劇)が2本。

 ・11月以降日本公開の作品は翌年度にまわされるためか、2002年公開作品と2004年公開作品が2本ずつある。

 ・日本アカデミー賞最優秀作品賞と合致する作品は6つ(『愛を乞うひと』『鉄道員』『雨あがる』『たそがれ清兵衛』『フラガール』『おくりびと』)、キネ旬ベストワンと合致する作品は6つ(『GO』『たそがれ清兵衛』『誰も知らない』『フラガール』『それでもボクはやってない』『おくりびと』)、毎日映画コンクール大賞と合致する作品は6つ(『愛を乞うひと』『鉄道員』『たそがれ清兵衛』『血と骨』『それでもボクはやってない』『おくりびと』)、ブルーリボン賞作品賞と合致する作品は3つ(『たそがれ清兵衛』『誰も知らない』『フラガール』)。

 ・社会性の強い作品が選ばれる傾向が高い、というよりは、家族間の葛藤を描いた作品が多い。

 ・たぶん偶然ですが、3年連続で男性が主人公の作品が選ばれ、その後、女性が主人公の作品が選ばれる、というパターンになっています。(ということは、2010年は、女性が主人公の作品が選ばれる巡り合わせの年です。)

 ・開催時期と選考時期が近いこともあってか、モントリオール世界映画祭、トロント国際映画祭、バンクーバー国際映画祭の出品作が選ばれる可能性が高い。特にモントリオール世界映画祭の出品作が選ばれる可能性が高い。

 今年のモントリオール世界映画祭に出品された日本映画は―
 ・『BOX 袴田事件 命とは』(監督:高橋伴明)
 ・『必死剣 鳥刺し』(監督:平山秀幸)
 ・『悪人』(監督:李相日)
 ・『トロッコ』(監督:川口浩史)
 ・『武士の家計簿』(監督:森田芳光)
 ・『キャタピラー』(監督:若松孝二)
 ・『スイートリトルライズ』(監督:矢崎仁司)
 ・『失恋殺人』(監督:窪田将治)
 ・『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(監督:中田秀夫)
 ・『ダンシング・チャップリン』(監督:周防正行)
 ・『うまれる』(監督:豪田トモ)

 今年のトロント国際映画祭に出品された日本映画は―
 ・『ノルウェイの森』(監督:トラン・アン・ユン)
 ・『玄牝』(監督:河瀬直美)
 ・『ANPO』(監督:リンダ・ホーグラント)
 ・『十三人の刺客』(監督:三池崇史)
 ・『冷たい熱帯魚』(監督:園子温)
 ・『告白』(監督:中島哲也)

 10月までに劇場公開にならない作品もあるので、そういった作品を除くと、『BOX 袴田事件 命とは』『必死剣 鳥刺し』『悪人』『トロッコ』『キャタピラー』『スイートリトルライズ』『失恋殺人』『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』『十三人の刺客』『告白』、これに『おとうと』を加えた11本あたりが(単純には)候補作品と考えられるでしょうか。

 これらには、米国アカデミー賞外国映画賞日本代表に相応しくないと考えられそうな作品もまじっているわけで(もちろんこれら以外にも候補作はあるかもしれませんが)、そうすると、『BOX 袴田事件 命とは』『必死剣 鳥刺し』『悪人』『キャタピラー』『おとうと』あたりが有力作品と考えられることになります。(『告白』もユニークな作品ですが、バッシングが激しすぎるので、さすがにここで選ばれることはないだろうと思われます。)

 『必死剣 鳥刺し』が選ばれれば、平山秀幸監督は、日本代表選出3作品目となって、日本の映画監督としてトップ5に入ることになり、『おとうと』が選ばれれば、山田洋次監督は、日本代表選出5作品目となって、黒澤明の名誉賞を除けば、日本の映画監督としてトップになることになります。

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 基本的な考え方は間違っていなかったと思いますが、選考委員を見くびっていたというか、選考委員が賞を獲ることを目的に作品を選んだのではなかったらしい、ということが私の誤算だったでしょうか。

 米国アカデミー賞外国語映画賞の受賞パターンというか、傾向性、アカデミー会員が好む作品のタイプを考えれば、『告白』が、受賞はおろか、ノミネートまで進む可能性は極めて低いのは明らかですから。

 アカデミー会員が好む作品のタイプとは―
 ・戦争や貧困など過酷な状況の中で、生き方を問われる主人公の物語
 ・死を見つめた作品(『おくりびと』『みなさん、さようなら』『海を飛ぶ夢』)
 ・個性的な生き方を描いた人間賛歌(『オール・アバウト・マイ・マザー』『アントニア』など)
 ・特定の個人や家族のドラマチックな生き方を描いた作品(『ファニーとアレクサンデル』『バベットの晩餐会』『インドシナ』)
 ・映画愛を描いた作品(『映画に愛をこめて アメリカの夜』『ニュー・シネマ・パラダイス』)
 こんな傾向とは無関係に『グリーン・デスティニー』のような活劇が賞をさらっていくこともあります。

 ま、それはともかく、今回、『告白』が選出されたことで―

 ・2年連続で東宝作品が選出。ただし、東宝製作の作品としては、1999年の『愛を乞うひと』以来、12年ぶり。

 ・12年連続で異なる監督の作品が選出された。
 『BOX 袴田事件 命とは』『必死剣 鳥刺し』『悪人』『キャタピラー』『おとうと』、それに『告白』を加えた6作品が最終候補で、その中から、できるだけ違う監督にチャンスを与えたいと選考委員が考えたとすると、『BOX 袴田事件 命とは』か、『キャタピラー』か、『告白』に可能性があったことになります。

 ・今回も、ある意味で、家族間の葛藤が描かれた作品(3組の母子関係が描かれている)が選ばれている。

 ・3年連続で男性が主人公の作品が選ばれ、その次の年は、女性が主人公の作品が選ばれる、というパターンになっていて、今年は、女性が主人公の作品が選ばれる巡り合わせでした。

 ・開催時期と選考時期が近いこともあってか、モントリオール世界映画祭、トロント国際映画祭、バンクーバー国際映画祭の出品作が選ばれる可能性が高く、今年もトロント国際映画祭出品作から選ばれた。

 ・昨年、モントリオールで評価されながら『ヴィヨンの妻』では日本代表に選ばれなかった松たか子は、『告白』で捲土重来を期すことになった。(『おくりびと』→広末涼子→『ヴィヨンの妻』→松たか子→『告白』という流れ?)

 ・『告白』も『悪人』もともに東宝のプロデューサー、川村元気の作品だったので(クレジット的には『告白』は「企画」で、『悪人』は「プロデューサー」)、東宝的にはどちらでもよかったのかもしれない。

 ・こういう内容/ジャンルの作品が日本代表に選ばれることは稀なのですが、タイプ的には、2003年の『OUT』に似ているでしょうか。公序良俗的・倫理的には許されるはずのないことに関わることになった市井の人々を描きつつ、物語の中で彼らを裁くことをせず、そういう意味で内容ともども世間に大きな衝撃を与え、物語の背後にある社会性を含め、日本社会にいろんなことを問いかけた作品――と言う点で。
 もちろん、女性が主人公の物語で、原作者が女性という点でも同じですが、それはまた、原作ものが多い日本代表作品の中で、ともに数少ない女性原作者ものであった、ということにもなります。
 ちなみに、桐野夏生は『OUT』で日本推理作家協会賞を受賞し、『告白』の原作者・湊かなえは次の『贖罪』で日本推理作家協会賞にノミネートされています。

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 【米国アカデミー賞外国語映画賞日本代表の選考の方法】

 ここで、米国アカデミー賞外国語映画賞日本代表の選考のやり方についてまとめておくと、一般社団法人日本映画製作者連盟という団体があり、そこが米国映画芸術科学アカデミーから依頼を受けて、出品作の受付をし(申請制)、外部の選考委員に選考を依頼して、選考委員により日本代表作品を決定する、という仕組みになっています。

 日本映画製作者連盟というと、日本の映画監督やプロデューサーたちが所属する団体なのかと思ったりもしますが、会員は、東宝・松竹・東映・角川映画の4社です。

 選考委員が公表されているのかどうかは知りませんが、2010年は、委員長が映画評論家の品田雄吉で、そのほか、降旗康男監督、脚本家の石森史郎、撮影監督の高間賢治ら、7名で構成されていることが伝えられています。

 出品作の主な条件は、前年の10月1日から当年の9月30日までに7日間以上連続して商業公開された作品であることで、そのほか、視聴用素材を提供することと、選考費用2万円も求められています。

 ※一般社団法人日本映画製作者連盟:http://www.eiren.org/academy/exhibition.html

 今年の申請作品は、25作品だったようです。

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 選考委員は、内容の是非はともかく、『告白』の持つ衝撃性と、この作品が突きつけてくる、その現代性、社会性に、賭けてみた、あるいは、こうした作品にチャレンジするその意欲を買った、ということになるでしょうか。

 アカデミー会員が好む作品のタイプからすれば、『告白』が外国語映画賞に選ばれる可能性は極めて低い、というのは、先に書いた通りですが、今後の流れとしては――、

 10月1日:各国代表作品の締め切り
 10月半ば:規定に反していないか審査された後、全エントリー作品の発表
 10月〜2011年1月半:外国語映画賞委員会(initial committee)により全エントリー作品から9作品にまで絞り込まれる
 (2011年1月6日〜11日:パームスプリングス国際映画祭 この映画祭は、アカデミー賞と直接的な関係はありませんが、実は、ここは、アカデミー賞外国語映画賞の実質的な前哨戦になっていて、『おくりびと』もここで受賞を果たしています)
 2011年1月半ば:ノミネーション候補9作品(ショート・リスト)の発表 
 1月半ば:30人で構成された委員会(initial committee 10人+LA在住会員10人+NY在住会員10人)出席のもと、3日かけて9作品の上映を行ない、5作品にまでノミネーション作品を絞り込む
 1月25日:ノミネーション5作品の発表
 2月2日〜22日:VHSもしくはDVDで5本のノミネート作品すべてを鑑賞したアカデミー会員のみに投票権が与えられ、投票が行なわれる
 2月27日:授賞式で結果の発表

 ということになっています。

 とりあえずは、ショート・リスト入りが中間目標になります。

 それまで、約4ヶ月。
 2012年の米国アカデミー賞には、他にノミネートの可能性がある日本人や日本映画があるかどうかなどということも気にしつつ、わずかな可能性に賭けて、楽しみに待ちたいと思います。(『告白』に関しては、本当は、アカデミー賞というより、原作本が英語に翻訳されて、CWAかMWAにノミネートされたらと面白いと私は思うのですが。)

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 *当ブログ記事
 ・米国アカデミー賞2011 外国語映画賞各国代表、続々決定:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201009/article_2.html ←随時更新!
 ・米国アカデミー賞2011 外国語映画賞 韓国代表決定:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201009/article_11.html
 ・『告白』まずは1賞! 『銀魂』も! 『野ばら』も! プチョン国際ファンタスティック映画祭2010!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_23.html
 ・今年の新人女優賞は彼女で決まり! な〜んてね:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_18.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月〜2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

 追記:
 ・米国アカデミー賞2011 外国語映画賞エントリー65作品発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_22.html
 ・米国アカデミー賞2011 外国語映画賞候補9作品発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201101/article_39.html
 ・米国アカデミー賞2011 ノミネーション発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201101/article_40.html

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