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help RSS 買っちゃった! DVD 『GEIDAI ANIMATION』!

<<   作成日時 : 2010/06/16 08:15   >>

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 世界の映画祭を席捲している東京藝大アニメーション科専攻第一期生の作品を集めたDVD『GEIDAI ANIMATION 1st Graduate Works 2010 / 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第一期生修了作品集2010』を買ってしまいました。

 これまでにいつかの上映会で上映され、これからも上映会は予定されていますが、1回観ただけでは見落としてしまうところもあると思ったので、それならばと思い、買っちゃったわけです。

 11編収録されて、全部で78分あります。32ページの小冊子がついて、税込み2625円となっています。


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 ◆『四ツ谷いろは』“Yotsuya Alpha beta”(6分32秒) 監督:安西奈々
 ドローイング・オン・ペーパー(水彩画アニメーション)?
 台詞あり

 物語:いろいろ言い訳をしては、家に閉じ困っている「お嬢さん」を、街である「四ツ谷」が手を引いて、外へと引っ張り出す。「お嬢さん」は、いろは歌の名調子(神田山陽と安西奈々のかけあい)に導かれて、変幻自在にメタモルフォーゼを繰り返していく「四ツ谷」各所を巡り、一日かけて「アリス」的な冒険を体験していく。


 紹介される「四ツ谷」は、四谷見付あたりから始まって、一丁目、二丁目、三丁目、四丁目と新宿通り沿いに進み、そこから北側に入って、舟町、荒木町、坂町、三栄町と四谷見附に戻る方向へ東に向かい、唐突に四丁目に接する大京町に戻って、迎賓館脇の鮫ケ橋、さらにもう一度逆方向に飛んで大木戸に至るコースをたどるようです。
 お嬢さん宅は、信濃町あたりにあるらしく、冒頭に窓から見える風景では、正面から画面奥へと外苑東通りが伸び、その真ん中に右から左へと新宿通りが交わっています。(必ずしも実際の風景を地図通りに再現しているわけではないようですが)
 三丁目で夕方が訪れ、四丁目で陽が暮れ、それから後は、ずっと夜です。

 展開としては、いろはことばの流れと言葉遊びを優先させていて、物語性自体は強くないようですが、「お嬢さん」が、少年を追いかけて、街中に入り込み、朝から昼、そして夜になって、色街に流れ着くといった、おぼろげな流れはあるようです。

 冒頭とエンディングはループしています。

 ネットで調べると「はまっ子ラッキー」という大道芸人がこの作品の吹き込みをやった旨が書かれていたりしますが(http://ratuki-.seesaa.net/article/136547112.html)、クレジットされていないところをみると、神田山陽でもう一度やり直したということなのでしょうか。

 ナレーションに神田山陽を起用したことで、どうしても指導教官である山村浩二『頭山』を思い出させることになる。

 安西奈々:1985年、神奈川生まれ。2008年、多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。

 ・安西奈々 on Twitter:http://twitter.com/nananna7
 ・セプテーニ・ホールディングス:http://www.septeni-holdings.co.jp/news/pr/2008/12005258.html

 ◆『賢者の贈り物』“The Gift of the Magi”(12分48秒) 監督:石井寿和
 人形アニメーション
 台詞あり

 物語:売れないマジシャンとその妻。クリスマスの日、マジシャンは、唯一の金目のものである懐中時計を売って、妻へのクリスマス・プレゼントとして櫛を買い、妻は、自慢の髪を売って、夫の懐中時計につけるための鎖を買う。


 オー・ヘンリーの同名短編の映画化。
 本コレクションの中で唯一の原作ものであり、唯一の人形アニメーション。

 原作では、特に主人公の職業は明記されていないようですが、ここでは原題の“Magi”(東方の三博士)の意味をわざとずらして、マジシャンにしたようです。

 石井寿和:1984年、千葉生まれ。2007年、早稲田大学卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。

 ◆『収集家の散歩』“Gathering”(6分13秒) 監督:大見明子
 実写+クレイ・アニメーション
 台詞なし

 物語:キッチンから玄関に出て、靴を履いて外へ。(すべて実写)
 散歩していく人物の主観映像が映し出され、その周辺は黒でマスクされる。
 散歩中の断面的なイメージと連想が、輪郭だけ残り、黒のマスク部分を侵食し、主観映像部分に二重写しになったり、主観映像の輪郭になったりしていく。
 散歩者は、公園に出て、遊んでいる子供たちや大人たちのそばを通り抜け、公園の端の崖から眼下の町を眺めやる。
 イメージや連想は、粘土で形作られた造形で、主観映像に重ねられていく。
 イメージの粘土は、やがてひと塊になって黒の中に消える。


 アニマ・ムンディ(ブラジル)2010 Galery - Non Competitive出品。

 大見明子:1977年、奈良生まれ。2004年、ウィンブルドン芸術大学セットデザイン学科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。

 ◆『服を着るまで』“Getting dressed”(9分17秒) 監督:北村愛子
 ドローイング・アニメーション(鉛筆+水彩)?
 台詞あり

 物語:キューブ型の箱の中にダイブする裸の女性。
 ベッドとシンクとクローゼットと1脚の椅子と棚と1羽の鳥が入った鳥かご。それら以外はなにもない、窓が1つあるだけのガランとした部屋の中に、1人の女性が裸で暮らしている。
 食事は、コーンフレークと牛乳で済ましていて、棚の上には空の牛乳ビンがたまっていく。
 数日前、四日前、三日前。とうとう食べるものがなくなって、外へ出なければならないことに思い至り、裸で人々の中に立っている自分の姿を想像する。
 クローゼットが勝手に開いて、中から服がこぼれ出してくるという幻想を抱く。
 クローゼットからはみだしていた袖に無理やり体を通そうとする。闇の中から光の差す方へとくぐって出る。
 前日。もう鳥のエサもない。
 自我が肥大化し、部屋を破り、建物を破り、外へ外へと巨大化していく。
 妄想が鳥かごを押しつぶしたところで現実に引き戻されるが、現実の鳥かごの中の鳥はいなくなっている。ふと、窓のカーテンを開けると、鳥が外から中へと入ってこようとしているが、窓ガラスにぶつかって落ちる。
 地面に落ちた鳥も、部屋の中の牛乳ビンも、通りを歩く人も、すべてが自分になっていく。
 たくさんの裸の自分がひざを抱えて重なりあっている。その上から服にボタンがかけられ、“私”は通りを歩いていく。


 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 学生作品コンペティション出品。
 広島国際アニメーションフェスティバル2010 コンペティション部門出品。

 ナレーションは、『指を盗んだ女』監督の銀木沙織。

 オリジナルのドローイングの上に、傷をつけた透明のセルか何かを重ねているようで、わざと粗い画調に見えるようにしています。

 かごの中の“太った鳥”は、主人公の象徴なのでしょう。

 『四ツ谷いろは』と同様に、主人公の女性が「引きこもり」(とも太目で、ベッドでうだうだしている)なのが気になります。『四ツ谷いろは』では、「街」が主人公を誘い出しますが、ここでは、生命の危機により主人公は仕方なく外に出る、という展開になっています。

 北村愛子:1985年、京都生まれ。京都精華大学ビジュアルデザイン科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。

 ・公式HP「Aico Studio」:http://aico-studio.com/
 ・公式ブログ「AICO MEMO」:http://aico-studio.sblo.jp/
 ・北村愛子 on Twitter:http://twitter.com/Aico_kitamura

 ◆『指を盗んだ女』“Woman who stole fingers”(4分15秒) 監督:銀木沙織
 ペイント・オン・グラス
 台詞なし

 物語:部屋の中で少年が本を読んでいる。
 人の気配に気づいて、カーテンを開けると、外から女性が中を覗いている。
 この女性は、少年の母なのか、少年は、女性の手を引いて、外のフェンスのところまで歩いていく。
 いきなり密室のなり、少年は壁にぶつかって止まる。
 女性が少年の手をなでると、ポロポロと少年の指が落ちていく。
 同じく足の指も落ちていく。
 少年は立っていられなくなって、倒れる。
 女性は出て行き、少年は這いつくばって進もうとする。
 窓からその小屋の中に女性の影が落ちる。
 もう一度女性が戻ってきて、少年の腕をさすると、ボロボロと芋虫状のものが、床に落ちる。
 “それ”は、思いのほか大きく、大きな赤ん坊くらいの大きさがあり、芋虫のようなたくさんの小さな足をピクピクを動かしている。
 彼女は、それを抱きかかえてやさしくなでていく。


 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 学生卒業制作部門出品。
 広島国際アニメーションフェスティバル2010 コンペティション部門出品。

 この女性のことは、DVDに封入されていた小冊子では「母」と明記されています。

 『夜の灯』では、赤ん坊の顔にとまる蛾がモチーフでしたから、銀木監督は、「虫」に特にオブセッションを感じているのかもしれません。

 作風としては、東欧的幻想世界、ラウル・セルヴェの『夜の蝶』、キャロライン・リーフの『変身』、花輪和一、などを連想させます。

 銀木沙織:1984年、埼玉生まれ。2007年、多摩美術大学絵画学科油画卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『夜の灯』『The funeral』『MAGGOT』

 ・銀木沙織公式HP(トップページのみ):http://homepage.mac.com/studiojunk/saori_shiroki.html
 ・Saori Siroki Web(トップページのみ):http://www.saorishiroki.net/
 ・AURA de 天誅:http://twitter.com/shiropian
 ・銀木沙織に関するAnimation Wiki:http://animationscc.wiki.fc2.com/wiki/%E9%8A%80%E6%9C%A8%E6%B2%99%E7%B9%94
 ・「ヨコハマ・アートナビ」:http://www.yaf.or.jp/introduce/frontcover/frontcover_0907.htm

 ◆『つままれるコマ』“Bring me up”(6分40秒) 監督:田中美妃
 ドローイング・オン・ペーパー?
 台詞なし

 物語:コマとは双六のコマのことで、母親が人生ゲームという名の双六に自分の赤ん坊をコマとして参加させる。赤ん坊が、歩き出し、走れるようになり、女の子と遊ぶようになると、母親は、さっと息子を女の子から引き離す。やがて彼がこっそり煙草を吸うようになって、他の子が親のコントロール下から飛び出すようになっても、彼はまだ親から逃れられない。そんな彼もついに親から独立して、独り暮らしを始めるが、彼は見えない壁の存在を感じている。自由になった気でいたが、彼はまだしっかり親の監視下にあったのだった。


 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 学生作品コンペティション出品。スペシャル・メンション受賞。
 アニマ・ムンディ(ブラジル)2010 Animation of Course - Non Competitive出品。

 息子の成長と、母親の一日の仕事(朝食の後片付け、お買い物、掃除、洗濯物を干す、お茶の時間)が、対比的に描かれていく。
 どうやらコマを動かす原動力は父親らしく、父親がサイコロの中に入って、コマの目を進める。やがて息子も知らぬ間にサイコロの中に入っている。
 冒頭に現れた横線は、双六の目を区切る線であることがわかる。
 父親と息子の違いは、自分が双六のコマであるという自覚があるかどうか、そして積極的にコマとして自分の人生ゲームに参加しているかどうか。

 フタの開いた無地のハコの中に入るというイメージが、『服を着るまで』の冒頭部分と重なる。それぞれが象徴するものは違うけれども。

 田中美妃:1982年、東京生まれ。2004年、東京藝術大学デザイン科入学。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『日めくりアニメ』

 ・mikit_an_aka612 on Twitter:http://twitter.com/mikit_an_aka612
 ・ボングゥー:http://www.bon-gout.jp/bridal.html

 ◆『強迫的な秩序についてのカエル』“anti-chaos”(4分5秒) 監督:永迫志乃
 CGアニメーション?
 台詞なし

 物語:一列に並んだカエルたちを教官らしいカエルが見てまわっている。教官は、他とは違うポーズをしていたり、背の高さが違ったりするカエルを厳しくチェックする。壁から奇妙なものが出ているのを見つけて、教官が調べていると、後ろから教え子たち(?)に押されて、壁の穴の中に奇妙な生き物ともども封じ込められてしまう。教官がいなくなった後、カエルたちは自由を満喫するが、それはエスカレートして、死体の山が築かれていく。教官は、穴の中の奇妙な生き物を押し出して、穴の反対側に抜ける。教え子たちのところに戻ってきた教官は、彼らが全滅しているのを見つける。しばし考え込んだ教官は、カエルたちを棺おけの中に入れて、きれいに並べる。中に1つだけ、まだ生きているカエルがいて、ガタガタと棺おけを揺らして棺おけの位置をずらすので、教官はそのカエルを撲殺して、棺おけを整えるのだった。


 永迫監督は、『ネコの人とウマの人』や『日めくりアニメ』を見ると、佐藤雅彦的作品世界、すなわち、「ほんの思いつきに見えるけれど、シンプルで肩の力が抜けていて、くすっと笑える、ちょっとだけ知的でユーモラスな世界」を目指しているように見えます。

 目指すは、広告業界での成功、でしょうか。

 永迫志乃:1983年、広島生まれ。2007年、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『ネコの人とウマの人』(多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業制作/第2回キャラニメ工房優秀賞受賞)、『日めくりアニメ』

 ・永迫志乃公式HP「nekonohito.co」:http://www.nekonohito.com/index.html

 ◆『CLIMBER』(5分49秒) 監督:野中晶史
 ドローイング・オン・ペーパー?
 台詞なし

 物語:1人の人物が壁をよじ登っている。壁は、上へ上へと続く細長い柱を形成していて、彼は途中で滑落したりしながらも、上へ上へとよじ登っていく。やがて頂点に達するが、その上空には、さらに登るべき地が宙に浮かんでいる。彼は、後から登ってきた者と体を融合させて、さらなる地へと飛びつく。さらに下からよじ登ってきた者たちが、かたまりとなって、上へ上へと群がるようにして登っていく。ついに“水面”に達し、1人がそこから頭を出すと、その上には、さらに根っこのようなものが伸びているのが見える。彼は、さらなる上を目指して、体を伸ばしていく。


 アニマ・ムンディ(ブラジル)2010 短編コンペティション出品。

 この作品だけを見ると、異質で異色なアニメーションという感じがしますが、他の作品を見ると、ギャグ・アニメのような作品もあれば、アニメーションの実験をしているような作品もあります。それらから、あえて野中監督作品の特徴を挙げてみるとするなら、物語をどんどんエスカレートさせていく(ことで物語を展開させる)趣向の作品が多いということでしょうか。

 野中晶史:1985年、静岡生まれ。2008年、名古屋市立大学芸術工学部卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『フクワライ』『眠らせ先生!』『日めくりアニメ』

 ・野中晶史公式HP「NOA」:http://akkeynoa.web.fc2.com/
 ・NOA BLOG:http://akkeynoa.blog64.fc2.com/

 ◆『PapA』(3分45秒) 監督:松井久美
 ドローイング・オン・ペーパー?
 台詞なし

 物語:裸足の若い娘が歩いていく。やがて歩くペースは上がり、駆け足になり、つまづく。ふわりと蛾が飛んでくる。娘は、蛾に誘われるようにして、来た道を引き返す。ふいに壁が現れる。そこを起点として歩き出したことを示すかのように、最初の足跡もそこにある。人影に気づいて振り返るが、それは蛾の群れが人型を作って影を落としていただけで、すぐに蛾の群れはバラバラになる。ショックを受けたかのようにうずくまる娘。雨が降り出して、再び娘が歩き出す。いつのまにか雨が上がり、また彼女を誘うように蛾が飛んでくる。彼女は左へ、地面に落としていた彼女の影は右側へと進む。


 Papで「子供だまし」の意、Aを加えて「パパ」。
 何の道しるべもないところを彼女が独りで歩いているのは、「人生」の比喩で、蛾は、彼女の心の支えであったが、今はもうこの世にはいない父親の化身のようなもの、と考えればいいでしょうか。

 足跡の中で身を休める蛾は、踏み潰されたのかと思い、一瞬ドキリとします。

 ラストシーンは、人生におけるいくつかの可能性を暗喩しているのでしょうか。

 画調は、完全にクリアにすることもできたはずですが、薄く細かい粒子の画像を二重うつしにして、作品のトーンが明るすぎるものにならないように抑えてあります。

 伴奏のピアノはサイレント映画に後づけでつけられた伴奏のようで、もっと別のものであれば(あるいは効果音との組み合わせにすれば)、作品の印象も変わったかもしれません。

 松井久美:1985年、東京生まれ。2008年東京工芸大学芸術学部アニメーション学科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『やまなし』(東京工芸大学芸術学部アニメーション学科卒業制作/2009年度メディア・コンテンツ大賞受賞)

 ・松井久美公式HP「Kumi Matsui Atelier」:http://kumimaru.com/
 ・松井久美公式ブログ「Kumi Matsui Atelier」:http://kumimaru.com/frame.html
 ・松井久美 on Twitter:http://twitter.com/kumimaru

 ◆『Googuri Googuri』(8分22秒) 監督:三角芳子
 ドローイング・オン・ペーパー(クレヨンによるスクラッチ)
 台詞なし

 物語:少女は、おじいちゃんが大好きで、外から帰ってきては、真っ先におじいちゃんの部屋に飛び込む。おじいちゃんといると、想像で海に潜ったり、鳥になって空を飛んだり、大きな木になったおじいちゃんに果実となってぶら下がったりすることもできる。おじいちゃんの部屋に入り込むのを、お母さんはあまり快く思っておらず、見つかるとすぐに引きずり出されるのだけれど、おじいちゃんがうまく守ってくれることもある。
 しかし、ある日、おじいちゃんは帰らぬ人となる。
 少女は、もう誰もいない部屋に入り、おじいちゃんのいなくなったベッドにうずくまると、おじいちゃんがいた頃のようにまた想像力を遊ばせていく。


 声の出演:通畠寿里、古川タク

 Googuri Googuri(グーグリィ グーグリィ)はおじいちゃんと少女の間だけで通じる秘密の言葉だそうです。

 クレヨンによるやわらかで明るい絵のタッチ、少女の想像力を自由に遊ばせたメルヘンタッチの作品世界(空や海)、現実の世界から想像の世界へ、そしてまた現実の世界へとメタモルフォーゼするやりかた、どれを取っても作者がフレデリック・バックが大好きで、フレデリック・バックみたいな作品を作りたいと思って作った作品であることは明らかです。

 映画祭人気はともかく、商品としてのクオリティーの高さは、今回のコレクションの中ではずば抜けているのではないでしょうか。

 三角芳子:1978年、福岡生まれ。東京藝術大学美術学部染織科卒業。2010年、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 切り絵アニメーション「王さまものがたり」シリーズ(NHK教育/文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品)

 ・misymiyoshiko -blog「三角芳子の制作と日常(固いタイトルだな、、)」:http://blog.goo.ne.jp/misumiyoshiko/1

 ◆『わからないブタ』“In a pig’s eye”(10分) 監督:和田淳
 ドローイング・オン・ペーパー
 台詞なし

 物語:家の前に大きなブタがいて、玄関口をふさいでいる。子供1は玄関から外に出ようとしても出られない。子供2は、ブタの鼻息で吹き上げられて宙を上下している。子供3は木の上に上って足にひもをくくりつけて、唇に口紅を塗る。そこになぜか子ブタが抱きついてくる。お父さんは闇の中でこっそりハムを切っている。子供3は木の上からダイブして、逆さづりのままブタの上を振り子運動する。階段を登ろうとするおじいちゃんをお母さんが行かせないように押し止める。お母さんはポケットの中から何かをつかみ出して、口の中に入れる。柵の中の犬は、転がっている口紅が気になって仕方がない。子供2は吹き上げられた勢いで屋根に登るが、屋根の上には子供4がいて、釣りをしていて、釣り糸の先には振り子運動をしている子供3の足首がつながっている。子供2が子供4の釣りを邪魔したせいで、子供3は地面に落ちる。
 長いあくびをする子供3。屋根の上で争っている子供2と子供4。犬は柵の中を行ったり来たりし、お父さんは闇の中でこっそりハムを切る。おじいちゃんは階段を登ろうとし、おかあさんはおじいちゃんの腰にひもをつけて行かせまいとしている。
 サイレンが鳴る。ブタのまわりを6人の子供と父と母とおじいちゃんで囲んで、お祈りのような、体操のような一連の動きをする。すると、ブタの肛門からおばあちゃんが押し出されてくる。
 夜中。おかあさんが家の中を何かを探しまわって、外に出、玄関口にブタがいないことに気づく。後から出てきたおとうさんは全身にハムでパックをしている。おとうさんは1枚のハムをはがしておかあさんに手渡すが、おかあさんは全部のハムをはがして、それらを一度におとうさんのお腹に投げつける。おかあさんがドアを閉めると、屋根からひもを手にした子供4が落ちてくる。ひもの反対側をたぐり寄せると、子ブタを抱いた子供3の足首に縛りつけられている。おかあさんは、子ブタを抱きしめる。それを見て、なぜか首を振る6人の子供たちとおとうさんと犬。犬が地面から拾い上げた口紅をおかあさんがつまみ上げ、自分の唇に塗る。その唇をおとうさんがハムでふさぐ。


 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 学生作品コンペティション出品。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 学生卒業制作部門出品。
 広島国際アニメーションフェスティバル2010 コンペティション部門出品。

 玄関から出られない子供。ブタの鼻息で宙を上下する子供。屋根の上で別の子供にくくりつけたひもを棒の先からたらしている子供。そのひもの反対側に足首を縛り付けて振り子運動をしている子供。2階に行こうとして、止められているおじいさん。柵の中でぐるぐる回り続けている犬。闇の中でハムを切っているおとうさんと、おじいさんを行かせまいとしているおかあさん以外は、ちゃんとした目的があるのかどうかはわかりませんが、どこにも達することのない行動をずっと続けています。それぞれの関連性はほとんどなく、バラバラに継起しているだけです。

 カフカ的な不条理劇、ヤン・シュヴァンクマイエル的なシュールレアリズムを目指した作品であるらしいことはぼんやりと感じ取れます。(『鼻の日』では、鼻(身体の突起物)に対するオブセッションや、リズムの刻み方などに、明らかに初期シュヴァンクマイエル作品に通じるものを感じさせましたから、本人が公言しているかどうかはともかく、ヤン・シュヴァンクマイエル作品またはヤン・シュヴァンクマイエル的なものに直接的間接的に和田監督が影響を受けていることは確かだろうと思われます。)

 意味不明であったり、何の目標にも達しないような行動の連鎖、同じ姿かたちの人間が何人も出てくること、単純な運動の繰り返しとその頓挫、落下、何かのまわりを取り囲むこと、動物と戯れること、等に関して、『鼻の日』と通じ合うものが見受けられます。

 和田淳:1980年、兵庫県生まれ。2004年大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コース卒業。2005年イメージフォーラム付属映像研究所卒業。2010年東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻(一期生)卒業。
 [その他の作品] 『鼻の日』『そういう眼鏡』『係』

 ・「こどものなかのこども」HP:http://codocodo.com/wada/

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 最初に、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルやアヌシー国際アニメーションフェスティバルの出品作を知ってしまい、最初は、そういう「選ばれた作品」を念頭において、観てしまったのですが、その時は、何か他とは違うもの、特異な作品、変わったところのある作品が海外の映画祭では選ばれやすいのかな、というそういう印象を受けました。

 作家性、技術の習熟度、斬新さ、プロとしての可能性、お金を払っても観たいと思うか……。作品に対する判断基準はいろいろあり、映画祭に選ばれるかどうかという基準も万人が観て納得できるものとは限らないようにも思います。映画祭に選ばれなかった人の方が今後アニメーション作家として名をなしていくかもしれませんし、その逆もあるかもしれません。

 私個人が最初に観て、一番好きだなと思ったのは、三角芳子監督の『Googuri Googuri』で、この作品は「フレデリック・バックのまねじゃないか」という風な言われ方をしてしまうのかもしれません(それが作品の評価を得られない原因になっているのかもしれません)が、私は好きですね。(映画祭に選出されなかったからと言って挫けずに、自分を信じて頑張っていって欲しいものだと思います。)

 上にも書きましたが、学生の経歴は、実にさまざまで、大学を卒業して、タイミングが合ってすぐにこちらに入学した人もいれば、社会人として既に活躍していた人もいて、年齢の幅は、10歳近くあります。

 どういう講義や指導がなされているのかはわかりませんが、指導教授としては、以下の方の名前が挙がっています。
 立体アニメーション領域教授:伊藤有壱
 企画構成領域教授:岡本美津子
 物語構成領域教授:出口丈人
 平面アニメーション領域教授:山村浩二

 語りたいことと語るための表現方法、そしてそれをするための技術という3つがうまく噛み合っていないんじゃないかなという作品があったり、「これで終わりなの?」という作品もないではありませんでしたが、まあ、世界的に見て、ピックアップするに足る作品が揃ったということであり、そういう意味で、ここの指導は(全世界的に見ても)優れたものだったということになるでしょうか。
 第二期生の作品で既に海外の映画祭に選出されているものもあり、ここの卒業生、および、彼らの今後は大いに注目!、ですね。
 監督どうしが、別の作品に協力し合ったりもしているようで、FEMIS的な効果も期待されます。

 なお、作品の配列は、DVDの収録順ですが、これは『わからないブタ』が一番人気のある作品だからトリに置かれているのではなく、単に監督名を五十音順に並べてあるようです。

 *関連サイト
 ・東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第一期生修了制作展ゼロイチプラス:http://animation.geidai.ac.jp/01plus/
 ・GEIDAI-CINEMA #4@ユーロスペース:http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=278
 ・作品集のデザインをされた森元紀子さんのブログ:http://mnplus.exblog.jp/12262503/
 ・Amazon:http://www.amazon.co.jp/s?ie=UTF8&keywords=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%97%9D%E8%A1%93%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E6%98%A0%E5%83%8F%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%A7%91%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E5%B0%82%E6%94%BB%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%9C%9F%E7%94%9F%E4%BF%AE%E4%BA%86%E4%BD%9C&index=blended

 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_18.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_24.html

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 追記:
 ・DVDのオモテのデザインは、ヘリオシネグラフになっています。
 ・DVDについている小冊子の右端はパラパラ漫画になっています。
 ・上では、技術的なことは憶測で書いていますが、小冊子のどこかに付記してくれてもよかったのではないかと思ったりもします。





東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第一期生修了作 (2010)
東京藝術大学出版会

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