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2003年の加藤久仁生作品より『FANTASY』。 【物語】 ・STORY1「ちいさな魂」 “THE LITTLE SPRIT” 少女が屋根の上で本を読んでいると、本の中から2羽の蝶が現れて、空に飛び立っていく。 STORY2「Gypsy」 木の葉が舞いながら、紅葉していく。 少女が、木の下に立って、舞い散る木の葉を体いっぱいに受け止めている。 STORY3「FANTASY」 森の中で少女が木の切り株に体を持たせかけていると、少女のまわりに花が咲き始める。 やがて、少女のまわりの森は消えて、風景は少女の部屋に変わる。 木の切り株は、テーブルに変わり、テーブルの上には花びんがあり、1本の花が差されている。 STORY4「Melody」 魚が泳いでいる。 下からたくさんの小さなあぶくが浮かんでくる。 それを見つめる少女。 光が満ちてくる。 大きな満月に向かって、泳ぐ魚、見つめる少女。 STORY5「Shiny Shoe」 雨が降っていて、少女が建物の入り口に佇んでいる。 少女の足には真っ赤な靴。 やがて雨が止み、陽も差して、少女は外に駆け出していく。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この作品は、My Little Loverのアルバム『Fantasy』(2004年1月)に提供したwebアニメーションとして作られたもので、各編が『Fantasy』に収録されている楽曲10曲のうちの5曲と同じタイトルになっています。 「My Little Loverのアルバム『Fantasy』に提供した」というのがどういうことだったのかは、今調べてみてもよくわからないのですが、それぞれのアニメーションはいわゆるPV(ミュージック・ビデオ)になっているわけではなくて、各楽曲の歌詞をベースにしつつも、そこから自由にイメージを膨らませて、作った作品であるようです。 アルバム『Fantasy』収録作品は以下の通り。 1.FANTASY 2.サテライト 3.Melody 4.Shiny Shoe 5.Period 6.悲しみよ今日わ 7.Sweet Home 8.Gypsy 9.ちいさな魂 10.光速を超えて 楽曲のイメージとアニメーションが割とが近いものとしては、「FANTASY」がありますが、その歌詞は次のようになっています。 例えていうなら 私は 偶然なら 信じられるけど それ以外は 絆とか約束は 重くてやりきれない そう考えたら 少し楽になれる 月の向こう側では 何もかもが許される きらきらと光るもの 光をまた写すもの それはまるで ルールを持たないオーケストラのよう 私はねじれた 心をもとに戻そう 巻かれすぎたので 無心に戻るように ピエロの泣き顔 突然の歓声 月の向こう側では 夢の続きが見られる 私があなたになって 心の岸辺に立って そして独りに戻っていたら また目覚めている 私が暗闇で膝を抱えていると 私の仮面をつけ ピエロがこう言った 「不安が 不安で 不安になる 不安はまた生まれる そしてそれも愛の仕業さ」 月の向こう側では 何もかもが許される クルクルと廻るもの 飲み込まれてしまうもの 真面目なコメディー ふざけたトラジディー リアルな幻 それはファンタジー アニメーションが、この歌詞の映像化はないことは明らかですが、全く無関係でもないようで、やはり、「楽曲から想を得て自由に創作したアニメーション」というのが近い、ということになるでしょうか。 楽曲が悩める大人の女性の恋心を描いたものが多いのに対して、アニメーションの方は、まだ恋を知らぬ女子中学生的な空想や夢想の世界を描いた、いわゆる加藤久仁生らしい作品世界を構成していて、加藤久仁生作品におなじみのモチーフも数多く見られます。 このアニメーションがレコード会社からプロモーション企画の1つとして発注されたのだとしたら、出来上がってきたものはレコード会社の期待したものとは違っていたんじゃないか、ということは十分に考えられることで、だから、これらのアニメーションはアルバムの特典にも収録されていないのではないか、と考えるのは穿った見方でしょうか。 また、楽曲の作品世界に近い大人の女性の恋心をアニメーションで描けたなら、加藤久仁生の作品世界としてももう少し幅が広がったと思うのですが(それはやりたくなかったのか、やれなかったのかわかりませんが)、少なくともこの時点ではそちらの方向へ進むことはなかったようです。 アニメーションとして独立した作品として見た場合、「ここではないもうひとつ別の世界を夢見ている少女像」が浮かんできますが、ただ単に5つのイメージ・アニメーションが並べているのではなく、最初は「別の世界」として夢見るだけだった世界が、次第に現実のものとして考えられるようになり、最後には、勇気を出して、そこに足を踏み出す、というストーリー仕立てにもなっていることがわかります。このアニメーションが、アルバムと順序や構成が違う理由はそこらへんにありそうです。 これまでの加藤久仁生作品との関連で見ると、STORY5「Shiny Shoe」が『或る旅人の日記』の「憂鬱な雨」とほぼ同じ世界を描いている(「Shiny Shoe」が「憂鬱な雨」から借景している)のは明白ですが、これは作り手が「憂鬱な雨」で創造した世界がとても気に入っていて、あれだけで終わらせるのが惜しいと思ったから、でしょうか。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆作品データ 2003年/日/3分32秒 台詞なし/字幕なし アニメーション *この作品は、DVD『或る旅人の日記』に収録されています。 *この記事がなかなかよかった!と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓ ↓ ![]() ↑ ↑ ↑ ↑ クリックしてね! ※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ ・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX ・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39! −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆監督について 加藤久仁生 1977年、鹿児島生まれ。 多摩美術大学在学グラフィックデザイン科卒。 同校3年生の時のアニメーションの授業でアニメーションに興味を持ち、アニメーションを作り始める。卒業制作は『The Apple Incident』。 2001年に(株)ROBOTに入社。キャラクター・アニメーション部アニメーションスタジオケージ(http://www.robot.co.jp/charanim/index.html)に所属し、webアニメーション、CM、ミュージック・ビデオなど様々なアニメーションを手がけている。 オリジナル・アニメーション作品『つみきのいえ』(2008)は、ROBOT制作の短編アニメーションで、ROBOT所属の脚本家 平田研也のシナリオをアニメーション化したもので、『つみきのいえ』は、アヌシー国際アニメーションフェスティバル短編部門グランプリ、米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネートとなり、ともに日本人2人目となる快挙を達成した(1人目はどちらも山村浩二『頭山』)。 そのほかの仕事として、「或る旅人の日記 少年と旅人」「或るアシナガブタの日記」などオリジナル・ストーリーの創作・挿画、「インターカレッジ アニメーションフェスティバル 2003」などのポスター、「グルメぴあ essence 秋号、冬号」(2003)の挿絵・イラストなどもある。2008年秋には絵本『つみきのいえ』も発売された。 日常生活の中のちょっとした瞬間(たとえば、コーヒーを飲もうとしている時など)に心に浮かんだとりとめのない、しかしメルヘンチックな空想をとらえて、短編アニメーションの形に取り出して見せた、と思われる作品が多い。風変わりな出来事が起こったりするものの、それがそれ以上の展開を見せることはなく、その原因や理由が探求されたり説明されることもない。淡い緑のトーン、やわらかなタッチが特徴で、多くの作品でパートナーを組む近藤研二のメロディーも作品を印象づけている。よく使われるモチーフとしては、旅人、少女、りんご、うさぎ、月、しとしと降る雨、宙を泳ぐ魚、のっぽの建物、上の方に枝葉をこんもりとつけた木、空へと舞い上がる白くて小さくて柔らかいもの(綿ぼうしやシャボン等)、窓辺、などがある。 ◆フィルモグラフィー 2000年 ・『ROBOTTING』(共同監督:栗原崇) 2001年 ・『The Apple Incident』 第2回ラピュタアニメーションフェスティバル 最優秀賞受賞 ・『ヘンリエッタの幸福と悲劇』 ・『NHK 英語であそぼ おどれタイポ LALALA』(共同監督:栗原崇) ・『NHK 英語であそぼ おどれタイポ M M M』(共同監督:栗原崇) 2003年 ・『或る旅人の日記』“The Diary of Tortov Roddle” エピソード1「光の都」 “The City of Light” エピソード2「真夜中の珈琲屋」 “Midnight Cafe” エピソード3「小さな街の映画会」 “The Little Town’s Movie Gathering” エピソード4「月夜の旅人」 “Moonlight Travelers” エピソード5「憂鬱な雨」 “The Melancholy Rain” エピソード6「花と女」 “The Flower and The Lady” おまけ “Paysages de Tortaria” 第4回ラピュタアニメーションフェスティバル 最優秀賞受賞、飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 第2回メルヘンアニメ・コンテスト 最優秀作品賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル 入選 ・『FANTASY』 STORY1「ちいさな魂」 “THE LITTLE SPRIT” STORY2「Gypsy」 STORY3「FANTASY」 STORY4「Melody」 STORY5「Shiny Shoe」 オタワ国際アニメーションフェスティバル2004 入選、ソウル国際アニメーションフェスティバル(SICAF)2004 入選 2004年 ・『花の音』 ・『或る旅人の日記「赤い実」』“The Diary of Tortov Roddle:The Red Berry” ・『NHK 英語であそぼ おどれタイポ e 』 2005年 ・『セルの恋』 ・『Team Greenlabel』 ・『お は よ う』 2006年 ・『R』 オタワ国際アニメーションフェスティバル2006 入選、第10回文化庁芸術祭 短編アニメーション部門審査委員会推薦 ・『アカツキの詩』[ミュージック・ビデオ](監督:稲葉卓也、キャラクター・デザイン:加藤久仁生) ・『ベネッセ おやこえいごほっぷ All around the kitchen』 2008年 ・『リトル・パティシエ』 ・『つみきのいえ』“The House of Toy Building Blocks/House of Small Cubes/La Maison en Petits Cubes” アヌシー国際アニメーションフェスティバル 短編部門グランプリ&ヤング審査員賞受賞、第12回広島国際アニメーションフェスティバル ヒロシマ賞&観客賞受賞、第8回飛騨国際メルヘンアニメ映像祭(第7回メルヘンアニメコンテスト)最優秀作品賞&子どもメルヘン賞 受賞、第12回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 大賞 受賞、第81回米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート その他受賞歴多数 *参考サイト ・Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E4%B9%85%E4%BB%81%E7%94%9F ・加藤久仁生公式サイト:http://kiteretsu.robot.co.jp/kunio/index.html NEWS、PROFILE、WORKS、SKETCHなどのコンテンツあり。 ・『つみきのいえ』プレスリリース(PDF):http://www.robot.co.jp/download/090123.pdf ・『つみきのいえ』(ROBOT):http://www.robot.co.jp/tsumiki/ 『つみきのいえ』に関する詳しい受賞リストの掲載あり。 ・ROBOT:http://www.robot.co.jp/ ・ひめじ国際短編映画祭公式サイト:http://harima-film.com/fes06.html ・ブログ「Ecran de Harima 〜ひめじ国際短編映画祭〜」:http://ecransdeharima.tenkomori.tv/e58004.html ひめじ国際短編映画祭2008で上映された加藤久仁生特集上映作品の紹介。 ・YOMIURI ONLINE:http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/topics/20081010et0a.htm ・インタビュー 「紀伊國屋書店 Forest plus」(2008年10月):http://forest.kinokuniya.co.jp/interview/055/ ・インタビュー 「asahi.comマイタウン岐阜」(2008年12月):http://mytown.asahi.com/gifu/news.php?k_id=22000250812180001 第8回飛騨国際メルヘンアニメ映像祭時のもの。 ・ブログ「BEMOD」:http://www.bemod.net/blog/2005.11/23_2339.html 「アニメーション*スリー」についての紹介記事。 ・ブログ「Iwa ni Hana」(英語):http://www.iwanihana.info/kato_kunio/ ・Ian Lumsdenさんのブログ「Animation Blog」:http://www.animationblog.org/2008/07/kunio-kato-apple-incident.html 『The Apple Incident』についてのレビュー(英語) |
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