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zoom RSS スウィーニー・トッドよりも怖い?(笑) 『猿の歯』 ルネ・ラルー

<<   作成日時 : 2008/04/17 03:33   >>

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 ルネ・ラルーが、ローラン・トポールと出会う前、働いていたクリニックで患者との共同作業の中で作り、結果的に劇場公開までされることになったというのが、1960年の『猿の歯』という短編です。冒頭にフランス語のナレーションがありますが、冒頭のみなので、無視しても全く支障はありません。



 【物語】
 紙に書きつつある文章が、ナレーションで読み上げられる(フランス語なので意味不詳)。
 M型に並んだビル群。カメラが1つのビルをクローズアップしていく。
 ビルの下で自転車に空気を入れている猿(?)。
 家から男が出て、街を歩いていると、「歯医者」の看板がある。男は誘われるように中へ入っていく。
 歯医者は、男に麻酔をかけると、なぜかすべての歯を抜いていく。
 男はぼんやりした意識の中で、テーブルを囲んだ家族が1人ずつ引き抜かれていき、1人ぼっちになるという夢を見る。
 気を失った男の口には、歯が1本しか残されていない。
 歯医者は男をかつぐと建物を出て、街の外れに男を棄てる。歯医者は、自転車で猿がやってくるのを見て、ギョッとして逃げ去る。
 (猿が鳴らす自転車のベルの音で)意識を取り戻した男は、医者の後を追うが、犯罪を犯して逃げていた男と間違えられて、追われる身となってしまう。
 医者は、逃げていた男がカフェに入っていく人を見かける。
 医者はその店が気になり、じっと見ていると、カフェだったはずの店は肉屋に看板を変えてしまう。
 医者がその肉屋に入った後、間違えられて追われる身になった1本歯の男が店の前を通り過ぎていく。
 男は、ある塀の向こうへ逃げ込む。その時、自転車の猿がベルを鳴らして通り過ぎる。
 追手たちもまた塀の中に入る。塀の中は学校で、追手たちは子どもの姿に変身する。
 男は、人体模型のある教室にいる。
 子どもに化けた男たちが中に入ってくる。
 「解剖学教室」
 男は、人体模型に隠れている。
 子どもに化けた男たちは、追っていた男(と思い込んでいる相手)が人体模型に化けているのに気づいて、授業を放棄して、本性を現そうとするが、先生に睨まれて、子どものフリを続ける。
 人体模型に隠れた男はその隙にこっそりと教室から逃げ出す。
 家に帰ってきた男は、鏡を見て、涙を流す。そしてベッドにうずくまる。
 自転車のベルの音。
 医院に戻ろうとする歯医者。その様子をビルの陰から猿が窺う。
 猿は、医院の中で歯医者を襲って椅子に押さえつけ、麻酔なしで彼の歯を抜いてしまう。
 猿のおかげで(?)、歯を取り戻した男は自転車に乗って、うれしそうにベルを鳴らす。
 彼を見送った猿は、またビル街へと消えていく。

画像

 ◆解説
 この物語が、どうやって生み出されたかははっきりとはわからないのですが、ルネ・ラルー自身が脚本を書いてそれに従って作ったのではないということだけは確かで、伝えられている情報によると、彼が、クリニック(オルレアンのクール・シュヴェルニー医院)の患者とのセッションの中で作っていった物語だ、ということです。

 画はヘタクソだし、物語として洗練されてもいないし、アニメーションとしても素人の域を出ていませんが、プリミティブでシュールな面白さがあります。この作品が劇場公開されたのも、きっとそういう点での面白さを買ってのものでしょう。

 物語の骨格だけ取り出してみれば、「権力者」にいじめられた「弱者」が、「ヒーロー」によって助けられて、平安を取り戻すというものですが、クリニックに収容されているはずの患者の考える悪役が「(歯)医者」であり、ヒーローが「猿」(あれは本当に猿なのか?)というのが、なかなかユニークです。

 アニメーションの技法としては、切り紙アニメーション(紙で作った人間やパーツを背景画の前で動かしてコマ撮りして撮影していく)で、この段階ではまだまだ拙いものですが、これが『死んだ時間』『かたつむり』を経て、『ファンタスティック・プラネット』で1つの到達点(切り紙アニメーションとしては最長の作品)に結実することになります。

 なお、IMDbによれば、この作品の脚本の1人に、当時、同クリニックのスタッフであったフェリックス・ガタリがクレジットされています。

 ◆作品データ
 1960年/仏/11分7秒
 フランス語台詞あり(冒頭のナレーションのみ)/日本語字幕なし
 アニメーション

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 ◆監督について
 ルネ・ラルー René Laloux
 1929年 パリ生まれ。2004年 死去。
 3つの長編アニメーションと約10本の短編アニメーションを残す。
 ローラン・トポールやメビウス、フィリップ・カザらと組み、イマジネーションあふれるSFタッチの作品を作る。3つの長編は、それぞれ、チェコスロバキア、ハンガリー、北朝鮮で制作した。

 1943年、13歳で学校を辞め、叔父の元で木彫を学ぶ。
 併行して、パリの市立学校の、夜学のデッサン教室に通うようになる。この頃、ラフカディオ・ハーンの『果心居士』を読んで、アニメーション映画を作りたいと思うようになる。
 1956-60年、27歳で、オルレアンのクール・シュヴェルニー医院で患者の芸術活動を指導するコーチとなる(同僚が、のちに思想家・精神分析学者として知られるようになるフェリックス・ガタリ)。ここで影絵やマリオネットを上演。
 1960年、患者との共同作業の中で生まれた作品を撮影して、短編作品として仕上げる。その中から『猿の歯』が生まれ、映画館のレイトショー枠で上映される
 『猿の歯』がきっかけとなって、画家ローラン・トポールと出会い、彼のデッサンを元に、『死んだ時間』(1964)、切り絵アニメーション『かたつむり』(1965)、『ファンタスティック・プラネット』(1973)を発表する。
 『ファンタスティック・プラネット』は、ステファン・ウルの『オム族がいっぱい』が原作で、チェコのトルンカ・スタジオで制作、ラルーの最初の長編となった。
 1987年には、ハンガリーのパンノイア・スタジオで最初のセル・アニメ『時空の支配者』を制作(原作=ステファン・ウルの『ペルディド星の孤児』、原画=メビウス)。
 1987年、北朝鮮で第3長編『ガンダーラ』を制作しながら、フランスのテレビ局のアニメーション・シリーズ『彼方より』のために、短編作品『ワン・フォはいかにして助けられたか』(原画=フィリップ・カザ)を制作。『彼方より』では、ラルーは製作にも関わっていて、そこで作られた若手作家の作品のいくつかはDVD『フランス・アート・アニメーション傑作選 VOL.2 ルネ・ラルー・フェイヴァリッツ』で観ることができます。
 1988年、『ガンダーラ』(原画=フィリップ・カザ)を発表。
 1996年、フランスの国立コミック映像センター デジタルイメージ研究所のディレクターに就任。CGの研究とアニメーター志望の後進の指導にあたる。

 ・1957年 “Tic-Tac(Tick-Tock)”
 ・1958年 “Achalunés”
 ・1960年 『猿の歯』 “Les Dents du singe”
 ・1964年 『死んだ時間』 “Les Temps morts”
 ・1965年 『かたつむり』 “Les Escargots” *クラクフ映画祭審査員特別賞受賞。
 ・1973年 『ファンタスティック・プラネット』 “La Planète sauvage(The Fantastic Planet/ The Savage Planet)” *カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、特別賞受賞。
 ・1975年 “Le Jeu(The Play)”
 ・1977年 “Les Hommes machines”(パイロット版)
 ・1982年 『時空の支配者』 “Les Maîtres du temps(Time Masters)”
 ・1984年 “La Maîtrise de la qualité(Quality Control)”
 ・1985年 “La Prisonnière(The Prisoner)”
 ・1987年 『ワン・フォはいかにして助けられたか』“Comment Wang-Fo fut sauvé”
 ・1988年 『ガンダーラ』 “Gandahar(Light Years)”

 *参考書籍
 『アートアニメーションの素晴らしき世界』(エスクァイア マガジン ジャパン)p136-142
 『ユーロ・アニメーション』(フィルムアート社) p50-55

 *参考サイト
 ・Wikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Rene_Laloux

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