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zoom RSS ちょっと悪趣味かも? ルネ・ラルー『死んだ時間』

<<   作成日時 : 2008/04/16 07:34   >>

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 『ファンタスティック・プラネット』『時空の支配者』などで知られるルネ・ラルーの原点が、この『死んだ時間』(1964)です。フランス語のナレーションで日本語字幕なし、ですが、とりたてて物語があるというわけでもなく、一連のイメージをつないで一本にまとめたものなので、「これがルネ・ラルーの原点なのか!」ということは見てとることができると思います。



 【物語】
 宇宙空間に浮かぶ地球。
 日本の子どもたちがおもちゃのピストルで遊んでいる(戦後すぐくらいのものと思われる)モノクロ映像。
 戦争のニューズ・リール映像。
 イラストで――積み上げられた遺体。遺体に抱きつく人。裸の女性のトルソに這い寄る赤ん坊。首を吊った男。バラバラにされた下半身の山。頭の上半分がない男女のキス。
 (ここから一部アニメーション)穴の開いた両手が地面から突き出し、横たわった胴体の側面がくりぬかれて、そこにロウソクの灯が揺れる。
 豚の上にくくりつけられた箱の上にたくさんのしゃれこうべがあり、さらにその上に背中から人を突き刺した兵士がいる、という銅像。そこに僧侶を先頭にして、人々の一団がやってくる。僧侶が祈り、豚の尻に開いた穴にコインが入れられる。頭に包帯を巻き、松葉杖をついた男がやってきて、彼らの行為に抗議するように松葉杖を振り上げる。
 (ここから実写)水中での魚獲り。ハトを的にした射撃。闘牛。
 殺人を描いたいくつもの絵。
 (ここからアニメーション)蒸気機関車でやってきた死の天使(?)。傍らには四角いカバンがあり、鉄格子から人が顔を覗かせている。
 同様のカバンがいくつも積まれる。
 暖炉の火をみつめる死の天使。暖炉の上には男が入ったカバンがある。
 馬跳びをする女(死の天使)。その最後に男がいて、彼は女を抱き上げる。
 暖炉の火の中からはたくさんの手や足が覗いている。
 立ち上る煙、積み上げられたカバン。遠くに見える古城。
 (ここから写真)ギロチンの模型。
 処刑を写したいくつもの写真。
 FIN

画像

 ◆解説
 オルレアンのクール・シュヴェルニー医院で、患者との共同作業の中から『猿の歯』という作品を作ったルネ・ラルーが、画家であるローラン・トポールと出会って作った、最初のコラボレーション作品がこの『死んだ時間』ということになります。

 この作品のテーマは、ズバリ「人という生き物はどうしてこんなに殺し合いが好きなのだろう」ということですが、ルネ・ラルーは、より大局的な話として「宇宙空間に浮かぶ地球」から物語を始め、「地球に住む、この人間というやつは……」という視点から語り始めています。

 クレジットによれば、この作品にはテキスト(元にした作品)があったようで、日本でもわずかに紹介されている詩人でSF&幻想小説系作家であるジャック・ステルンベール(Jacques Sternberg)の作品を原案としているようです。

 ※ジャック・ステルンベール(1923〜2006):日本で最もよく知られている作品はサンリオSF文庫から発売されていた『五月革命’86』でしょうか。
 ローラン・トポールの画集『マゾヒストたち トポール傑作選』(澁澤龍彦編/薔薇十字社刊)では、巻頭言を書き、トポールのことを<これまで見たことがないほどの狂気の画家である>と紹介しているようです(あとがきは澁澤龍彦)。
 映画『ベトナムから遠く離れて』(1967)のアラン・レネのパート“Claude Ridder”の脚本も担当しているようです。

 この作品を通して、ルネ・ラルー(とローラン・トポール)は、「個人的な理由から、あるいは戦争において殺人行為に及び、子ども時代はピストルごっこに興じ、大人になれば娯楽として狩猟やハンティングを行なう人間」に疑問を呈しているということになるのでしょうが、それは表向きのポーズであって、本当のところは、やはり、彼らの方が「死」や「殺人」に魅せられているということなのでしょう。提示される映像を観ていると、どうしても作り手側のそうした意識や感情が伝わってきてしまうんですね。(ちなみに、この年、ルネ・ラルーは35歳、ローラン・トポールは26歳で、ローラン・トポールがこれ以前に活動の舞台としていた雑誌の名前は“Harakiri”(ハラキリ)です)

 この作品は、日本でも何らかの形で紹介されているようですが、DVD『ルネ・ラルー コンプリートDVD-BOX』にも収録されていません。それは、この作品にその後のルネ・ラルー作品に見られるようなファンタスティックな要素が全く見られないからというのが1つの理由なのでしょうが、実際にこの映像を観て、日本のDVD企画担当者が「これはちょっと……」と考えたとしても不思議ではありません。

 ルネ・ラルーが、この後で作品の趣向を変えるのは、この作品に見られるような大げさなテーマをふりかざすよりは、幻想的なイマジネーションを提示する方に(もしくは、そういう手法を使って、婉曲的に伝えたいメッセージを作品の中に忍び込ませる方に)興味を持ったからなんだろうと思われます。

 ◆作品データ
 1964年/仏/9分43秒
 フランス語ナレーションあり/日本語字幕なし
 実写+アニメーション

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 ◆監督について
 ルネ・ラルー René Laloux
 1929年 パリ生まれ。2004年 死去。
 3つの長編アニメーションと約10本の短編アニメーションを残す。
 ローラン・トポールやメビウス、フィリップ・カザらと組み、イマジネーションあふれるSFタッチの作品を作る。3つの長編は、それぞれ、チェコスロバキア、ハンガリー、北朝鮮で制作した。

 1943年、13歳で学校を辞め、叔父の元で木彫を学ぶ。
 併行して、パリの市立学校の、夜学のデッサン教室に通うようになる。この頃、ラフカディオ・ハーンの『果心居士』を読んで、アニメーション映画を作りたいと思うようになる。
 1956-60年、27歳で、オルレアンのクール・シュヴェルニー医院で患者の芸術活動を指導するコーチとなる(同僚が、のちに思想家・精神分析学者として知られるようになるフェリックス・ガタリ)。ここで影絵やマリオネットを上演。
 1960年、患者との共同作業の中で生まれた作品を撮影して、短編作品として仕上げる。その中から『猿の歯』が生まれ、映画館のレイトショー枠で上映される
 『猿の歯』がきっかけとなって、画家ローラン・トポールと出会い、彼のデッサンを元に、『死んだ時間』(1964)、切り絵アニメーション『かたつむり』(1965)、『ファンタスティック・プラネット』(1973)を発表する。
 『ファンタスティック・プラネット』は、ステファン・ウルの『オム族がいっぱい』が原作で、チェコのトルンカ・スタジオで制作、ラルーの最初の長編となった。
 1987年には、ハンガリーのパンノイア・スタジオで最初のセル・アニメ『時空の支配者』を制作(原作=ステファン・ウルの『ペルディド星の孤児』、原画=メビウス)。
 1987年、北朝鮮で第3長編『ガンダーラ』を制作しながら、フランスのテレビ局のアニメーション・シリーズ『彼方より』のために、短編作品『ワン・フォはいかにして助けられたか』(原画=フィリップ・カザ)を制作。『彼方より』では、ラルーは製作にも関わっていて、そこで作られた若手作家の作品のいくつかはDVD『フランス・アート・アニメーション傑作選 VOL.2 ルネ・ラルー・フェイヴァリッツ』で観ることができます。
 1988年、『ガンダーラ』(原画=フィリップ・カザ)を発表。
 1996年、フランスの国立コミック映像センター デジタルイメージ研究所のディレクターに就任。CGの研究とアニメーター志望の後進の指導にあたる。

 ・1957年 “Tic-Tac(Tick-Tock)”
 ・1958年 “Achalunés”
 ・1960年 『猿の歯』 “Les Dents du singe”
 ・1964年 『死んだ時間』 “Les Temps morts”
 ・1965年 『かたつむり』 “Les Escargots” *クラクフ映画祭審査員特別賞受賞。
 ・1973年 『ファンタスティック・プラネット』 “La Planète sauvage(The Fantastic Planet/ The Savage Planet)” *カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、特別賞受賞。
 ・1975年 “Le Jeu(The Play)”
 ・1977年 “Les Hommes machines”(パイロット版)
 ・1982年 『時空の支配者』 “Les Maîtres du temps(Time Masters)”
 ・1984年 “La Maîtrise de la qualité(Quality Control)”
 ・1985年 “La Prisonnière(The Prisoner)”
 ・1987年 『ワン・フォはいかにして助けられたか』“Comment Wang-Fo fut sauvé”
 ・1988年 『ガンダーラ』 “Gandahar(Light Years)”

 *参考書籍
 『アートアニメーションの素晴らしき世界』(エスクァイア マガジン ジャパン)p136-142
 『ユーロ・アニメーション』(フィルムアート社) p50-55

 *参考サイト
 ・Wikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Rene_Laloux

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