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zoom RSS 影をなくすと人はどうなるのか 『影のない男』 ジョルジュ・シュヴィツゲベル

<<   作成日時 : 2007/04/29 11:54   >>

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 物語にちょっとしたひねりがあったりするので、一度観ただけではよくわからないかもしれませんが、二度、三度と観るうちに、この作品の趣向や仕掛けが見えてきて、実に面白い作品であることがわかってきます。
 多数の映画祭や映画賞での受賞やノミネーションも納得の1作です。



 【物語】 男がパーティーに出かけていく。
 男をパーティーに招待してくれた相手は、全身赤づくめの男で、彼は、自分にはどんなことも可能なのだと帽子から金銀財宝を出してみせたり、理想の女性を出してみせたりする。
 赤服の男が夢の実現と引き換えに要求してきたものは、“影”。影をくれれば、どんな夢でもかなえてくれると言うのだ。男は、どんなにお金持ちになっても、影を失うことで、人から疎まれることになるのは嫌だと言って、いったんは断る。が、世界を自由に旅することができる赤い靴と引き換えに影を手放してしまう。
 赤い靴を使って、世界中を旅する男。しかし、どこへ行っても、影がないことが男を苦しめる。ところが、ジャワ島で、影絵芝居を見た男は、自分だったら、自分の影をスクリーンに映すことなく、自由に影絵芝居を操ることができることを発見。自ら影絵芝居の人形使い師を志願し、影絵芝居に参加していくのだった。

 原作は、アーデルベル・フォン・シャミッソー(1781−1838)が1813年に書いた『影をなくした男』
 私は原作は読んでいないので、正確には知らないのですが、ネット上でいろいろ調べてみると、原作では、<影を売ってくれと言われた男は、お金への誘惑に目がくらんで、自分の影と「幸運の金袋」を交換しますが、結局は、影のないことで苦しむことになる>ということで終わっているようです。この映画の“世界を自由に旅することができる赤い靴”の部分はシュヴィツゲベルの創作なのでしょうか。もし自分の影を売ることができたら自分ならどうするだろうか、ということは、『影をなくした男』やこの物語に触れた人なら誰でも想像してみることだと思うのですが、シュヴィツゲベルもそうしてみて、自分だったら……という物語を付け加えてみた、ということなのかもしれません。

 アーデルベル・フォン・シャミッソーの『影をなくした男』自体は、友人の子どものために書いたメルヘンで、“影をなくす”とは、フランス革命でドイツに亡命したシャミッソーが、フランス人にも戻れず、かといってドイツ人にもなれない自分の苦悩を物語に反映させたもの(影=国籍)、という説明の仕方がされているようです。
 シャミッソーの人生については、Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%BD%E3%83%BC)に書かれていますが、確かに彼はフランスとドイツを何度も行き来して、フランスでもドイツでも自分の居場所を見つけられず、苦しんだらしい、ということがわかります。
 『影をなくした男』を書いたあと、シャミッソーは世界一周旅行に出ているのですが、そういうこともあって、シュヴィツゲベルは物語の主人公とシャミッソーを重ね合わせ、このような物語に作り変えた、ということも考えられます。

 影をどう処理するかということは、アニメーションを作るに当たってとても重要なことのようで、作品によって、影を厳格につけているものもあれば、ほとんど影をつけていないものもあります。

 影によって、モノがどう見えるかということが、この映画の冒頭で示されていますが、影のつき方1つで、立体がどちらを上にしているのかが違って見えてきて、とても面白いですね。じっと見つめていると、平衡感覚を失いかけて、ちょっとクラクラしたりもします。
 この部分だけで短編アニメーションとして十分成立するなあと思い始めたころ、タイトルが出ますが、このタイトルには1文字だけ影がありません。影がないということがどういうことなのか、気づくか気づかないか、違和感を感じるか感じないか、という意味で、ここは、観る者へのインビテーションであり、イントロダクションであり、かつ、物語の伏線にもなっているのだろうと思われます。

画像

 ◆作品データ
 2004年/カナダ・スイス/9分12秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *最新作『技』以外の全13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

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 ◆監督について
 ジョルジュ・シュヴィッツゲベル
 スイスを代表するアニメーション作家&グラフィック・デザイナー。キャリアは30年以上ですが、この10年間で特に評価が高まっているようです。
 1944年 スイスのベルン生まれ。1951年にジュネーブに移る。
 1961年 ジュネーブのArt School and College of Decorative Artsに入学(〜1965年)
 1966年 ジュネーブの広告代理店に入社(〜1970年)
 1970年 独立して、Claude Luyet 、Daniel Suter とともにGDS Studio を設立し、テレビ番組のタイトルやポスター、広告イラスト、短編アニメーション等を手がける。
 1983-1984年 中国語を学ぶために1年間、上海の復旦大学で学ぶ。
 1986年 スイスのビュルにあるGruyerien美術館で GDS Studioの展覧会開催。
 1987年 Nürenbergで回顧展開催。
 1992年 ジュネーブで舞台“Children's King”のためのセットを手がける。
 ジュネーブの Building-House のためにフレスコ画を手がける。
 1994年 シュツットガルトで展覧会&回顧展開催。
 1995年 東京と大阪とパリで回顧展開催。
 ジュネーブのギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。
 1996年 ジュネーブのJardin BotaniqueとギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。

 ・1971年“Patchwork ” *カンヌ国際映画祭 短編部門ノミネート
 ・1974年 『イカロスの飛翔』 “Le Vol d'lcare”
 ・1975年 『遠近法』 “Perspectives”
 ・1977年 『オフサイド』 “Hors-jeu”
 ・1982年 『フランケンシュタインの恍惚』 “Le Ravissement de Frank N. Stein” *ベルリン国際映画祭C.I.D.A.L.C. Award名誉賞受賞
 ・1985年 『78回転』 “78 Tours”
 ・1986年 『ナクーニン』 “Nakounine”
 ・1987年“Academy Leader Variations” *カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
 ・1989年 『絵画の主題』 “Le Sujet du tableau”
 ・1992年 『破滅への歩み』(『深遠への旅』) “La Course à l'abîme” *広島国際アニメーションフェスティバル 5分以内の作品部門2位
 ・1995年 『鹿の一年』 L' Année du daim(The Year of the Deer)” *ザグレブ国際アニメーションフェスティバルCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prize受賞
 ・1996年 『ジグザグ』 “Zig Zag”
 ・1998年 『フーガ』 “Fugue” *オタワ国際アニメーションフェスティバルBest Use of Colour Craft Prizes受賞、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞
 ・2001年 『少女と雲』 “La Jeune fille et les nuages(The Young Girl and the Clouds)” *スイス映画賞短編映画部門受賞、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞受賞
 ・2004年 『影のない男』 “L' Homme sans ombre(The Man with No Shadow)”
 *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞
 ・2006年 『技』 “Jeu” *スイス映画賞最優秀短編アニメーション賞ノミネート、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *1995年にイメージフォーラムの<Magical View!>というプログラムで、イギリスの映像作家トニー・ヒルの6作品とともに、8作品(『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』)が劇場公開されました。

 *第7回ラピュタアニメーションフェスティバル2006で『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『ナクーニン』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』『ジグザグ』『フーガ』『少女と雲』『影のない男』『技』という主だった14作品が<ジョルジュ・シュヴィッツゲベル作品集>として上映されました。
 これに先立って、『技』以外の13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

 *参考サイト:THE GALLARY:http://www.awn.com/gallery/schwizgebel/index.html

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