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zoom RSS 青い夜の闇に浮かぶ白い怪鳥 『ハーピア』

<<   作成日時 : 2007/02/19 00:18   >>

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 ベルギー・アニメーションの父、ラウル・セルヴェの1979年の作品。
 幻想怪奇譚というか、久しぶりに観るとやっぱり怖いですねえ〜。



 【物語】
 夜中に男が独りで街を歩いていると、悲鳴が聞こえてくる。悲鳴の聞こえた方向に行くと、噴水のところで女性が暴漢に襲われている。男が暴漢を撃退した後、助けた女性はと見ると、それは頭は女、姿は鳥という姿を持つハーピアだった。
 男はハーピアを家に連れ帰るが、ハーピアは貪欲な食欲を見せる。
 男がハーピアの目を盗んで食べ物を口にしようとしても許されず、男は最後にはハーピアに下半身までも食われてしまう。
 男はそんな体になりながらも空腹に耐えかねて、ハーピアの目を盗んで外に出る。
 屋台で食べ物を買い、ようやく空腹が満たせると思ったその瞬間に、またハーピアが現われ、彼の夜食は奪われてしまう。
 さすがに怒った彼がハーピアを殺そうとすると、女性が暴漢に襲われていると思った通行人に彼は殴り倒されてしまう。

 この世には、因果応報とか勧善懲悪といった合理的な考えが通用しない状況や、全く理不尽としか思えない「逢う魔が時」といった瞬間があるということでしょうか。

 ハーピアとは、ギリシャ神話に出てくる女面体鳥の怪物で、ハルピュイア、またはハーピーとも呼ばれます。

 青い夜の闇に浮かぶ白い怪鳥ハーピアが恐ろしく、非人間的で冷たい感じのする石作りの町並みと夜の青が、そういう人を食らう魔物が潜んでいてもおかしくない雰囲気を醸し出してします。

 ネット上で見ると、画面が暗くて何がどうなってるのかよくわからなかったりもするんですが、この作品は、最初からかなり暗めで、背景としての闇も作品の一部として効果的に使われています(スクリーンで観るとさすがにもっとはっきりと見えますが)。

 この作品では、人物を紙人形のように使った「実写とアニメーションの合成」が、シュールな物語をよりシュールに見せていますが、これは最初から意図してこういう効果を狙ったものではなく、元々はプロデューサーがアニメーション嫌いの人物だったので、製作にゴー・サインをもらうためにセルヴェがこういう趣向を思いついたのだそうです(セルヴェ談)。

 一般的には『夜の蝶』がセルヴェの代表作ということになっているのかもしれませんが、私は、物語や表現の仕方が斬新でインパクトがあるので、『ハーピア』が一番好きですね。

 *ハーピアに関するWikipedia(日本語に変換できますが、日本語版の方が解説は短い):http://en.wikipedia.org/wiki/Harpy

 ◆作品データ
 1979年/ベルギー/8分32秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション
 1979年カンヌ国際映画祭短編部門パルムドール受賞
 「アニメーションの一世紀ベスト100」の14位。
 『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)で105位。

画像

 ◆監督について

 ラウル・セルヴェ
 セルヴェは、絵画や壁画も描くが、特に短編アニメーションの作り手として有名で、ベルギーではアニメーションの父として慕われています。

 1928年 ベルギーのオーステンデ生まれ。
 父親は中国服の商店主だったが、新し物好きで、パテの映写機を購入して、日曜の午後などにチャップリンやフェリックス・ザ・キャット等の短編映画の上映会を催したりしていた。
 12歳でドイツの攻撃で家が焼かれ、父が収監される。
 16歳の頃、第2次世界大戦で戦火が激しくなると、ドイツでの強制労働を逃れるためもあって、装飾のアシスタントに就く。
 戦後、そのまま仕事を続けることもできたが、セルヴェは本格的な勉強がしたくて、ゲント(ヘント)にある王立アカデミーRoyal Academy of Fine Artsに進み、装飾美術(Decorative Arts)を学ぶ。そこでAlbert Vermeirenからアニメーションを教わる。
 兵役の後、自らのアニメーション制作への道を切り開くために、イギリスのランク・スタジオやパリのジェモー・スタジオに赴くが、望みを果たせず、帰国。8mmでドキュメンタリー映画を撮影したりする。
 ルネ・マグリットとカジノの室内装飾の仕事をしたりした後、1957年、ゲントの王立アカデミーの装飾美術の教師となり、そこでアニメーションの制作に着手する。3年かけて16ミリで“Havenlichten”「港の灯」を完成させる。この作品は、アントワープ・ナショナル・フィルム・フェスティバルに出品されて、アニメーションとして初めての賞を受賞する。
 次に35mmで制作したアニメーション作品が“The False Note”で、2年の歳月をかけて1963年に完成(これに先立って1962年に“Omleiding november”という実写作品も制作している)。“The False Note”はアントワープ・ナショナル・フィルム・フェスティバルでグランプリを受賞。この作品で、セルヴェはアニメーションとしての技法を確立したとされる。
 同年(1963年)に、セルヴェによって王立アカデミーにアニメーション映画学部が設立される。これはヨーロッパで最初に設立されたアニメーション映画に関する学部・学科となる。

 1976年には、the Centre Belge du Film d'Animation(アニメーション映画ベルギー・センター)をゲントに設立。

 1984〜94年には、ASIFA (international association of film animators).の会長を務める。

 ラウル・セルヴェ・ファウンデーションを作り、初等・中等教育でのアニメーション・コースの組織化にも尽力している。

 ・1960年 『港の灯』“Havenlichten”(“Harbour Lights”)
 ・1962年 “Omleiding november”(“November Diversion”)
 ・1963年 『調子外れの音』“De Valse noot”(“The False Note”)
 ・1965年 『クロノフォビア』 “Chromophobia”
 ・1968年 『人魚(シレーヌ)』 “Sirene”
 ・1969年 『ゴールドフレーム』“Goldframe”
 ・1970年 『語るべきか、あるいは語らざるべきか』“To Speak or Not to Speak”
 ・1971年 『オペレーションX-70』“Operation X-70”
 ・1973年 『ペガサス』“Pegasus”
 ・1976年 “Het Lied van Halewijn (Halewyn's Song)”
 ・1979年 『ハーピア』 “Harpya”
 ・1982年 “Die Schöne Gefangene”
 ・1994年 『タクサンドリア』“Taxandria”
 ・1998年 『夜の蝶』 “Papillons de nuit”
 ・2001年 “Atraksion”
 ・2003年 『冬の日』のうち「わが庵は鷺に宿貸すあたりにて 髪はやす間をしのぶ身のほど」(芭蕉)のパートを担当

 『クロモフォビア』『人魚』『語るべきか、あるいは語らざるべきか』『ハーピア』『夜の蝶』は、2000年に<夜の蝶 ラウル・セルヴェの世界>としてユーロスペースにてレイトショー公開。
“Goldframe” “Operation X-70” “Pegasus”は上記作品とともに、DVD「「夜の蝶」他 ラウル・セルヴェ作品集」に収録されています。

 ユーロスペースで上映した5作品は、吉本興業による配給作品で、これらは、これまで様々な形で映画に関わってきた吉本興業が初めて手がける外国映画となりました。
 吉本興業がこれらの作品を買い付けることになった発端は、吉本興業のスタッフ(当時)が広島国際アニメーションフェスティバルでセルヴェの作品を観て感激したことで、彼女が、吉本興業が経営していた劇場(当時)のレイトショー枠でならこれらの作品を上映することができるのではないかと考え、上司の許可を取って買い付けた、と聞いた記憶があります。

 *参考サイト:http://www.raoulservais.be/index.htm

 *参考書籍
 ・『アートアニメーションの素晴らしき世界』(エスクァイア マガジン ジャパン)p81
 ・『ユーロ・アニメーション』(フィルムアート社)p44〜49

 *関連DVD
 ・a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FHVV5Q%3ftag=kattenieigade-22%26link_code=xm2%26camp=2025%26dev-t=D31ZR0ROP0WVXQ" target="_blank">DVD「「夜の蝶」他 ラウル・セルヴェ作品集」
 ・『冬の日』

 *当ブログ関連記事
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ようやく
チェコで買ってきたポスターを額装しました。 (半年以上たつ・・・) 見たときに「これはラウル・セルヴェがアニメにした怪鳥ハーピアに違いない」と 一目で気に入ったんですが タイトル『Sirin』を調べてみたら ...続きを見る
メープルクラゲ
2008/01/09 19:18

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
私もセルヴェ作品ではこれが一番好きです!
ものすごいインパクトですよね(笑。
チェコで買ったポスターの記事に
ちょっと関係あって
トラックバックさせて頂きました。

もしよろしければ、ブログのリンクもさせて頂けたらなと思います。
よろしくお願い致します。
hane-maro
URL
2008/01/09 19:26
hana-maroさま
コメント&TBありがとうございました。
チェコを旅されて、しかもなかなか面白そうな絵も買って来られたようで、羨ましいですね。
ブログもこういった興味に沿ったブログなんでしょうか。これから覗かせてもらいますね。
umikarahajimaru
2008/01/09 19:49

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