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zoom RSS 僕の大事なメルキアデス、バイバイ&グッドラック!

<<   作成日時 : 2006/04/27 19:34   >>

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 「俳優が監督している映画」を鑑賞する際のポイント(見どころ)について考えてみました。

 @オリジナル性・作家性

 a.普通の監督では実現しがたいような難しいテーマに挑んでいるのかどうか

 b.俳優として同等(あるいはそれ以上)に個性的な作品に仕上がっているかどうか

 c.俳優として余技以上の出来で、監督としての才能を示すような作品に仕上がっているかどうか

 d.普段その俳優がイメージされているような俳優像を超えた作品に仕上がっているかどうか

 他の人よりも映画を監督するという立場に近づきやすいはずの俳優が、自分の知名度を利用して、わざわざ映画を作るわけですから、その監督作品は以上のうちのどれかに該当していて欲しいものです。でも、俳優に専念していればいいのに、なんでわざわざこんな作品を作ってしまったのかなあ(自己満足?)という作品があることも確かで、その俳優自体に失望してしまうこともあります。

 A自分が出演しているかどうか

 出資者を募る時に、その監督本人が出ている映画なのかどうかというのは、大きなポイントになります。出資者からしてみれば、その人が出ている映画であれば「観客も呼べるから出資してもよい」ということになるかもしれませんが、監督が監督もして出演もすることがその映画にとってプラスになるかどうかは別問題です。最初に自分が演じてみたい役があって、監督もしてみたい(監督もせざるを得なくなった)というのなら話は別ですが、初監督で出演もしなければならないというのは、どうみても負担が大きそうです。

 ジョディ・フォスターが監督デビュー作には出演していて、第2作には出ていない、
 メル・ギブソンが第1作、第2作で主演し、第3作(『パッション』)には出演もしていない、
 ティム・ロビンスが第1作で主演し、第2作には出演もしていない(第3作には出演している)、
 というのは監督としての技量が認められ、監督に専念することが認められた結果だと考えてよさそうです。その点、ショーン・ペンは、第1作からずっと監督作は監督オンリーで、最初から「監督」として認められていたというわけですね 。

 アンジェリカ・ヒューストン、ゲイリー・オールドマン、ティム・ロス、ジョアン・チェンらも初監督監督作品で監督業に専念しています。前回前々回の記事で私が★印をつけた映画も、実はこういう映画が多いんですね〜。

 とは言っても、「監督が出てなければいい作品、出ていれば程度の低い作品」ということもなくて、自分が出演するしないに拘わらず、良質の作品を作る監督がいっぱいいることも確かです(クリント・イーストウッドとか、ウディ・アレンとか)。
 
 ちなみに――
 監督が主演〜『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
 監督が助演〜『グッドナイト&グッドラック』
 監督がちょっとだけ出演〜『バイバイ、ママ』
 監督は出演していない〜『僕の大事なコレクション』

 Bキャスティング

 「俳優が監督している映画」では、監督がキャスティングに自分の交友関係を利用している場合も多い。観る側にとっては、それはそれで楽しかったり、得した気分になったりもしますが、果たしてベストのキャスティングであったかどうかということも考えてみたくなります。

 ジョージ・クルーニーは、初監督作品では自分の交友関係を十分有効利用していたようでした(ブラッド・ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツ等)が、『グッドナイト&グッドラック』では派手さを控えてよりベストなキャスティングを目指したと考えてよさそうです。

 ケヴィン・ベーコンの『バイバイ、ママ』は、やはり初監督ということもあってか、自分の交友関係を生かしたように見えます(主演女優であるキラ・セジウィックはケヴィン・ベーコンの奥さんであり、そのほかのキャストでも友人であるマット・ディロン、サンドラ・ブロック、マリサ・トメイらを起用しています)。

 C監督がいっぱい

 類は友を呼ぶというか、監督は監督を呼ぶというか、「俳優出身の監督の映画」に出演していた俳優が次に監督デビューしたり、「俳優出身の監督」が「既に監督経験のある俳優」(同志?)を好んで使ったりすることも多いようです。例えば――
 エドワード・ノートン『僕たちのアナ・バナナ』〜ベン・スティラー
 ティム・ロビンス『デッドマン・ウォーキング』〜ショーン・ペン
 ティム・ロビンス『クレイドル・ウィル・ロック』〜ジョン・タトゥーロ
 ショーン・ペン『プレッジ』〜ジャック・ニコルソン
など。

 作品によっては監督経験者がいっぱい出ているものもあって、演出について自分なりの考えを持っている俳優を使うのは使いづらかったりもするんじゃないかと余計な心配をしてしまうこともありますが、俳優たちによるその監督へのリスペクトが感じられることも多いですね。
 例えば――スティーヴン・スピルバーグの『ミュンヘン』には、マチュー・カソヴィッツ、イヴァン・アタル、マチュー・アマルリック、ヴェレリア・ブルーニ・テデスキなど、監督経験者が4人も出演しています。

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 各作品についてのコメントを少しだけ。

 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

 「何故これまで監督をやらなかったのですか」と記者に訊かれたトミー・リー・ジョーンズの答えは「依頼がなかったんだよ(笑)」だとか。
 テキサスとメキシコのボーダーをテーマにした映画、自分の生まれ育った場所の物語を映画にしてみたかったというのが、トミー・リー・ジョーンズがこの映画を作ろうとしたきっかけだそうで、「自分の生まれ育った場所の物語を作りたかった」というのがまさに初監督作品らしいところです。

 この作品は複雑な構成を持っている―主人公とメルキアデスが知り合っていく過程、事件が生起し、それが処理されていく過程、事件後主人公がそれに対処していく過程、という3つの時間を交錯させて描いていく―のが特徴ですが、それが、観客の興味をひきつけ、主人公のモチベーションがどこにあるのかを示すために非常に効果的なものになっていました(すなわち、こういう構成法を取ることによって、何が、どのようにして起こったのか、それはどのようにしてケリをつけられるのか、主人公は何をしようとしているのか、それは主人公とメルキアデスのどういう関係性から来ているのか、等を観客は徐々に知っていくことができます)。これを時系列的にやっていたら、内容は同じでもけっこう安直な印象の作品、あるいは、単純な復讐譚、になっていたかもしれません。

 構成の面白さで見せる作品もいろいろありますが(『パルプ・フィクション』とか『メメント』とか『クラッシュ』とか『運命じゃない人』とか)、これもそうした作品に優るとも劣らない作品の1つですね。脚本賞をあげたいくらいです。

 米国・メキシコ国境付近で展開される物語を、米国側とメキシコ側の双方から描いて、それが“その地域の今”を切り取っているらしいのも面白いし、それが米国側からメキシコ(メキシコ人)を見下したようには描かれていないのもいいですね。きっと、それが、トミー・リー・ジョーンズのバランス感覚というか、心情に近いのだと思います。中高年男性の切ないロマンティシズムを描いた作品としてもとてもいいですね〜。

 でも、この作品は、海外での評価が高かったわりには、日本(東京)ではあまり客足が伸びなかったようで、それがちょっと残念です。

画像

 『バイバイ、ママ』

 ストーリーは、子離れできないシングル・マザーの物語(原作あり)ということなんですが、かなりエキセントリックなところもあるケヴィン・ベーコンの初監督作品にしてはちょっとエキセントリックさが足りない気もします(期待するものが間違っている?)。悪い話じゃないんですが、初監督作品に何故これを選んだの?ということはどうしても考えてしまいます。ひょっとして奥さんに主演作をプレゼントしてあげたかったのでしょうか?(ジャン=ユーグ・アングラード(『裸足のトンカ』)のように?) あるいは、原作にケヴィン・ベーコンの少年時代と重なる部分があったりして、それで自分で映画化したいと思ったのでしょうか?(ケヴィン・ベーコンのお父さんは社会的にけっこう有名な方らしく、こんな映画でお父さんの姿を見ることもできるんですが、それから考えると、この原作とケヴィン・ベーコンの少年時代が重なっているという可能性は少なそうです。)

 ただ、初監督作品として、手始めに、子どもの物語(子どもが主演の物語、もしくは、子どもが共演者となる物語)を選ぶという手もあって、ジョディ・フォスターやメル・ギブソンなどに前例があります。

 ちなみに、本作とは関係ありませんが、「ケヴィン・ベーコン・ゲーム」というのが、一時期アメリカのweb上で流行ったそうです。簡単に言うと、まず俳優名を1つ挙げて、次にその俳優の出演作、その出演俳優、その出演作、その出演俳優、その出演作、そして最後にケヴィン・ベーコンにたどり着かなければならないというしりとり遊びです(ケヴィン・ベーコンを含めて俳優名4つ、作品名3つで完成!)。その日本版がここ(http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6305/contents.html)にあって、ジョン・トラボルタ、イーサン・ホーク、メラニー・グリフィス、ブルース・ウィリス、ユアン・マクレガーなどから始めるパターンが紹介されています。

画像

 『僕の大事なコレクション』

 リーヴ・シュライバーと言えば、『スクリ−ム』などで知られていて、そのルックスからか、ちょっと悪役寄りのキャスティングがされることが多い俳優ですが、この作品を見ると彼の本質(映画の中でやりたいこととか、自分が興味のある内容とか)はもうちょっと違うところにあるらしいというのがわかります。

 物語は、ユダヤ系移民である自分のルーツを探って、主人公(イライジャ・ウッド)が祖父の故郷であるウクライナを訪ねるというもので、たまたま読んだ原作が自分が書きたいと思っていたものと全く同じ(か、それ以上によく書けていた作品)だったので、こちらの映画化に名乗り出たということのようです。

 映画としては、イライジャ・ウッドの視点で見せなければならないはずの現代ウクライナの風景(マクドナルドがあったりとか、若者たちがスケボーに興じていたりとか)を“通訳”の視点で見せてしまっていたりしているなんていう"ミス”もありますが、“珍道中”の中に、さりげなく「ロシア(ウクライナ)の現在」や「欧米のユダヤ人にまつわる近現代史」を取り込んで、「あ〜面白かった」で終わらない作品にしていて、なかなかうまいですね。ハリウッド・メジャー(ワーナー・ブラザース映画)がこの映画を配給するのは単なる義理や酔狂じゃないようです。

 9.11でいったんは冷え込んでしまった映画人の全世界的交流(人材的・金銭的交流や物語の全世界的な広がり)がこういう形で復活し、新たな展開を見せつつあるというのも感慨深いところだと思います。

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 『グッドナイト&グッドラック』

 アカデミー賞ノミネート作品ということもあり、どんなに凄い作品かと大いに期待する向きもあると思いますが、前評判となっている主人公エド・マローとジョセフ・マッカーシー上院議員の“劇的な対決”を期待するとちょっと肩すかしを味わってしまうかもしれません。演技も演出も物語の展開も過度に誇張的に(ハリウッド的に?)なるのを控えた、なかなか渋〜い作品なんです。

 かつてエド・マローというヒーローがいたということを描こうとしたのではなくて、現代アメリカが切り捨ててきたものに対する心の痛みのようなものに支えられて作られた作品のようです。

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 「監督デビューする俳優たち 海外篇 前編
 「監督デビューする俳優たち 海外篇 後編


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内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。僭越ながら、人気ランキングで上昇するには、まめに更新した上で、他人の関連ブログを見て、それにコメント、TBしたりするほかありません。僕は年末年始、ヒマだったので、それをやって部門1位になりました。いまは、それほどの余裕はないので、10位前後ですが。
京野菜
URL
2006/05/29 17:44
京野菜さま
TBのやりとりは何度かさせていただいていると思うのですが、コメントをいただくのははじめて、だったでしょうか。
そちらの記事はよく読ませていただいています。映画に対する評価は、正直なところ全く同じというわけではありませんが、人に伝えるということを第一義に書かれている方の記事はやはり違うなあとよく反省させられます。私なんかは書くことに精一杯でそこまで余裕がありませんから。
人気ランキングに関しては、カウンターが回っている割には……と時々虚しくなるくらいで、順位自体はそんなに気にしないようにしています。
ただ、映画と同じで、届くべき人に届くべき情報が届いているかな、いや、まだまだ届いてはいないよな、と思うだけなんです。ランキングが高ければ多少注目度が上がるかなと思う程度で。(以下、次のコメントに続きます)
umikarahajimaru
2006/05/29 20:19
京野菜さまへのコメントの続き
このブログをスタートさせた時からブログの方向性は大分変わってきましたが、当初からやりたいと思っていたことがある程度形にすることができたら、このブログが何を目的として書かれているのかがはっきりして、求める読者に求める情報を与えられるようになる(ここに来ればその情報がある)とわかるようになると思います。それができるまでの辛抱ですね。
それまで気力が続くかどうかという心配はありますが。
ともかくも貴重なご意見ありがとうございました。拙いものですが、私の書いた記事で何か参考になるものがあれば幸いです。
umikarahajimaru
2006/05/29 20:21

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