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<<   作成日時 : 2006/02/01 19:00   >>

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画像 昨年末より、シブヤ・シネマ・ソサエティから名前が変わったシネマ・アンジェリカに行ってきました。
 映画館の名前が変わるのは、経営体制が変わる際がほとんどなので、調べてみたら、貸スタジオ運営や映像制作などを手掛ける五拾というところが運営することになったようです。HPはhttp://www.gojyu.com/index.html
 シブヤ・シネマ・ソサエティは、場所が、繁華街からちょっとはずれた、便の悪いところにあることもあってか、いつ行っても閑散としていて、心配だったのですが、やっぱりつぶれちゃったんですね。残念です。最大のヒットは『奇人たちの晩餐会』でしょうか。レイトショーとか、手を変え、品を変え、いろいろ頑張ってたんですがねえ。
 横浜・黄金町のシネマ・ジャック&ベティも、確か姉妹館だったはずですが、ここも名前こそ変わっていませんが、プログラム内容がすっかり変わってしまっています。ジャックが500円で観られるネットシネマ映画館に、ベティが林海象監督セレクションの映画館になったようです(ジャックにネットシネマを提供する会社はブロードバンドピクチャーズというライブドア系の会社だったはずですが、ああいうことがあってからライブドアという名前は(表面上は)すっかり影をひそめてしまったようです)。HPはhttp://www.jackandbetty.net/index.html

 シネマ・アンジェリカでの、新作上映の第1弾が1月21日から開催中の<ドイツ・アニメーションシネマ>というプログラムです(2月10日まで上映)。平日の最終回に観たんですが、観客は私を含めて2人しかいませんでした。劇場スタッフが、受付と映写技師合わせて3人はいたはずなので、お客さんよりスタッフの方が多いという悲惨なことになっていました(涙)。平日の最終回がこれだから、昼間の上映回の客入りは推して知るべしというところでしょう。
 宣伝予算がないのかもしれませんが、とりたてて宣伝もしていないようでもありますし、これでは、ミニシアター激戦区の度合いを増した渋谷で生き残るのは難しいですよね。アニメ・ファンやドイツ関係(大学のドイツ語学科やドイツ文学科の在学生および卒業生)にPRすれば、それだけでももっと動員が増えるはずだと思うのですが……。

 本上映に関しては、劇場パンフも製作されておらず、本国ドイツで製作された英語版(ビジュアル面が充実しているので、これはこれで素晴らしい。1500円)が販売されているくらいで、あとは作品に関する短い紹介記事が載ったチラシがあるだけ(しかもこれが作品を観ずに書かれたものらしく、残念ながら間違いだらけなんですねえ〜)。せっかくの上映作品について、観客として鑑賞した作品の余韻を楽しみたいとか、もっと作品や監督について知りたいと思うのは当然だし、作品としてももっとちゃんと記録に残しておいた方がいいと思うのですが……。

 前置きが長くなりましたが、ここからが本題。仕方がないので、私がここで、それにチャレンジしてみることにしました。なお、作品として記録に残すことを優先したので、ストーリーは結末部分まで触れてあるものがあります。すべて短編のアート・アニメーションであるということもあり、物語だけがその作品の魅力なのではないのだからいいでしょうと思ったりするんですが、これからご覧になる方は参考にとどめる程度にして、読んだ後は、いったん忘れてしまってください(笑)。

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 上映作品は、全部で15本です。

 【ラインナップ】
 1. 「ルビコン川」 “RUBICON” (1997年/7分) 監督=ギル・アルカベッツ GIL ALKABETZ [セル・アニメ]
 2. 「放浪者」 “HOBO” (2000年/7分48秒) 監督=ヨッヘン・エーマン JOCHEN EHMANN [ドローイング・アニメ]
 3. 「パッチワーク・クイーン」 “DIE FLICKENKÖNIGIN”(“THE PATCHWORK QUEEN”) (2001年/2分30秒)  監督=ラース・ヘンケル LARS HENKEL [デジタル] 字幕あり
 4. 「囚われの女王」 “CHERCHEZ LA FEMME”(2002年/12分18秒) 監督=ダニエル・ヘフナー DANIEL HÖPFNER [人形(puppet)アニメ]
 5. 「案内人」 “HARARA”(1999年/9分25秒) 監督=アンディ・カイザー ANDY KAISER [人形(figure)アニメ]
 6. 「ゴースト・トレイン」 “GEISTERBAHN”(“GHOST TRAIN”)(2000年/15分) 監督=ティーネ・クート TINE KUTH [人形(puppet)アニメ] 字幕あり
 7. 「メッセージ」 “THE MESSAGE”2000年/6分) 監督=ライムント・クルメ RAIMUND KRUMME [ドローイング・アニメ]
 8. 「RECENTLY 2」 “NEULICH 2”(“RECENTLY 2”)(2000年/8分30秒) 監督=ヨッヒェン・クーン JOCHEN KUHN [ドローイング・アニメ(painting&collage)] 字幕あり
 9. 「サイクロプス」 “DER MODERNE ZYKLOP”(“THE MODERN CYCLOPS”)(2001年/11分) 監督=ダニエル・ノッケ DANIEL NOCKE [人形(plasticine)アニメ] 字幕あり
 10. 「カラス」 “DER RABE”(“THE RAVEN”)(1999年/8分10秒) 監督=ハネス・ラール HANNES RALL [ドローイング・アニメ(版画?)] 字幕あり
 11.「岩のつぶやき」“DAS RAD”(“THE ROCKS”)(2001年/8分30秒) 監督=クリス・シュテナー CHRIS STENNER、ハイディ・ヴィットリンガー HEIDI WITTLINGER [人形(puppet)アニメ&3-Dアニメ]
 12. 「楽園行き」 “ENDSTATION : PARADIES”(“TERMINAL : PARADISE”)(2000年/7分) 監督=ヤン・チューリンク JAN THÜRING [人形(puppet)アニメ]
 13.「モーメント〜瞬間〜」“THE MOMENT”(1999 4年/20分)監督=トーマス・ヴォイト TOHMAS VOIGHT
 14. 「ヘシー・ジェイムス」 “HESSI JAMES”(2000年/6分) 監督=ヨハネス・ヴァイラント JOHANNES WEILAND [ドローイング・アニメ(油絵)] 字幕あり
 15. 「ESCAPE」 “ESCAPE”(2001年/7分13秒) 監督=キルステン・ヴィンナー KIRSTEN WINNER [3-Dコンピューター・アニメ]

 【解説】
 1. 「ルビコン川」
画像 大きな川の向こう岸に渡りたい、人と狼と羊とキャベツ。ボートはあるが、全員が乗ることはできない。ボートでの移動中に一方が他方に食べられてしまうことなく、全員が渡りきるにはどうすればいいか?
 という有名なクイズのアニメ化なんですが、画面の右から左へ、左から右へとボートが移動する度に、だんだんこんがらがってきて、しまいには「いっこく堂」みたいになってしまう。
(この作品に関しては)九里洋二さんにタッチが似ています。
 監督のギル・アルカベッツは1957年生まれで、1979年〜83年にイエルサレムのBezaelel Academy for Art and Designでアートを学ぶ。アニメーション作家としてのスタートもイエルサレムからで、その後、シュトゥッツガルトやテルアビブなどでアニメーションを教えている。作品としては“Bitzbutz”(1984)ほか。
 映画『ラン・ローラ・ラン』に挿入されるアニメーションを作った人だと言えば、ピンとくる人も多いかもしれない。
 受賞歴多数あり。
 アニメーション作家・山村浩二さんのブログ「知られざるアニメーション」に関連情報多数あり(http://yamamuraanimation.blog13.fc2.com/blog-date-200506.html)。「ルビコン川」(http://yamamuraanimation.blog13.fc2.com/blog-entry-111.html)。
 アニメーション作家の米正万也さんも好きなアニメーション作家の1人に挙げています(http://www.jaa.gr.jp/j/database.html)。『世界と日本のアニメーションベスト150』(FUSION PRODUCT)では、アニメーション作家の辻村マヤさんが16位に挙げています(p137)。

 2. 「放浪者」
画像 [ストーリー] 生きることに疲れたらしい中年男性が線路際にやってきて、缶ビールをあおった後、線路に頭を乗せて列車を待つ。すると視線の先にハンカチを振る小人の姿が見える。驚いているその瞬間に列車が近づいてきていることに気がつく。どうしようかと思い始めるが、逆に体が動かなくなる。どんどん近づいてくる列車……。
 間一髪で体を知りぞけて一命を取り留めた男。フラフラと歩いていくと、何度も小人たちの“饗宴”に出くわす。あの小人たちは人生の最後に見た幻なのだろうか。

 監督のヨッヘン・エーマンは、1960年生まれ。1980年〜86年にStaatliche Academie der Bildenen Künste in Stuttgartでグラフィック・デザインとアニメーション映画について学ぶ。画家、グラフィック・アーティストでもあり、児童映画や短編のための物語も『手がける。ワークショップや後進の指導にも積極的。2004年からはスイスでアニメーションを教えている。
 2005年12月に来日もされています、関連情報はこちら(http://www.add-info.com/meal/archives/000939.php)。
 公式サイトはこちら(http://www.e-h-m-a-n-n.de/)。

 3. 「パッチワーク・クイーン」
画像 様々なパーツのコラージュで作られた登場人物たち。パッチワーク・クイーンは、やってくる者たちの“破れたハート”を縫い付けてくれる。1曲の間にストーリーが示されるPVのような作品。
 監督のラース・ヘンケルは1973年生まれ。1995年〜2000年にFachhochschule Aachenでグラフィク・デザインを学ぶ(1996年にはイギリスに留学)。2000年〜2003年にはケルンのKunsthochschule für Medienでメディア・デザイン、インターネット、アニメーションを学んでいる。本作は監督第2作。
 アヌシー国際アニメーション映画祭2004で最優秀学生作品賞を受賞した“Allerleirauh”(2004年)が 本作は、東京アニメ・フェア2005(http://www.taf.metro.tokyo.jp/taf2005/event/theater_a.html)で上映されています。

4. 「囚われの女王」
画像 荒れ果てた部屋の中で、ベッドに横たわる女性。小さな糸くず(ほこりの玉?)が舞い、彼女の妄想らしいイメージが展開する。ブラザーズ・クエイの作品世界やタッチに極めて近い。
 監督のダニエル・ヘフナーは1997年生まれ。1987年にスーパー8で実験映画を撮ったことはあるが、フリーランスでバンドに参加したり、ダンスや低予算映画などに音楽をつける仕事をしたのがキャリアの初め。1997年にポツダムにあるHochschule für Film und Fernsehenでアニメーションを学ぶ。1998年からは特殊効果の仕事をしている。本作は多数の映画祭で優秀賞を受賞している。

 5. 「案内人」
画像 2つの物語世界が交互に展開する。1つは、病院のベッドの上で干からびたような姿になっている老人。もう1つは探検家である男性がファラオの墓を探検していく様子。探検家は老人の若き日の姿のようでもあり、老人の妄想のようでもある。苦しみもだえる老人に注射されるのと(精神安定剤?安楽死のための薬剤?)、探検家が禁断の扉に触れてしまうのがオーバーラップし、そして……。
 人形の造形がけっこうグロテスク。物語も凝っていて一度では味わいつくせないかもしれない。
 監督のアンディ・カイザーは1969年生まれ。1994年〜2000年にLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergでアニメーション映画について学ぶ。ミュージック・ビデオやCM、テレビでの仕事も多い。
 公式HPはこちら(http://www.filmbilder.de/de/s/team/andy.htm)。

 6. 「ゴースト・トレイン」
画像 [ストーリー] ビンセントは、行方不明になっていた恋人アンナと友人ラウルを探す旅に出ていた。”Wonerland“という名の遊園地に誘われるように入っていくと、案内人らしい男性に“鏡の部屋”や“奇妙なものコレクションの部屋”に案内される。全然興味を示さないビンセントを見た案内人は、それではこれはどうかと、6角形のガラス・ケースに入った“彼の恋人”を示す。それは紛れもなくアンナだった。
 ビンセントは、ラウルはどうなったのか、気になりつつも、案内人の隙をついてアンナを逃がす。一緒に列車に飛び乗ると、機械仕掛けのクモやドラキュラやギロチンが襲い来る。それらを難なく乗り越えた後に現れたのは大狼。ビンセントはそれがラウルの変わり果てた姿であることに気づく。
 ビンセントは、アンナと大狼を行かせた後、案内人につかまり、アンナが入れられていたガラス・ケースに閉じ込められてしまう。

 監督のティーネ・クートは、1973年生まれの女性。1994年〜95年にFreie Kunsthochschule Nürtingenで学ぶ。舞台装飾や衣裳の仕事をした後、1996年〜2002年にLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergでアニメーション映画について学ぶ。1996年の“Les Pintins”以降、多数の作品がる。

 7. 「メッセージ」
画像 “He is back”。この言葉が即物化して、人に襲い掛かったり、悩ませたりする。ノイズのように飛び交ったり、あふれて洪水のように押し寄せたり……。
 監督のライムント・クルメ(レイモンド・クルメ)は1950年生まれ。1970年〜75年にベルリンのHochschule der Künsteのビジュアル・コミュニケーション学部で学ぶ。自身の作品のプロデュース、後進の指導などで、国際的に活躍している。
 日本では、彼の絵本『なみだ』が講談社から発売されています(http://shop.kodansha.jp/bc/ehon/tokusyu/200209/reimondo.html)。

 8. 「RECENTLY 2」
画像 自分の健康に不安を持つ主人公は最新式の診察装置があるという病院に行く。しかし、最新装置としって示されたものはどうみてもそうは見えない。聴診器のようなものを当てるとディスプレイにセピア色の様々な映像が浮かんでくる。医者は何匹かの狼の存在を指摘するが、特に問題ではないと言う。私のも見たい?という医者は自分にもその機械を当てて、彼に結果を見せてくれる。彼はそもそもどうしてこんなところに来てしまったのだろうかという困惑と後悔の念をかかえて帰路につく。
 監督のヨッヒェン・クーンは、1954年生まれ。1975年〜80年にハンブルグでアートを学ぶ。80年代に2度にわたって、スカラシップを得、イタリアへ。1994年よりベルリン芸術アカデミー会員。

 9. 「サイクロプス」
画像 [ストーリー] 前衛的な舞台などを手がけるサイクロプス(一つ目男)が住んでいる孤島。そこに彼の作品鑑賞を含んだツァー客がやってくる。
 彼の舞台が終わった後、質疑応答の時間が設けられて、ピーターソンは、一つ目男の目を杭でつぶすイベントがあるはずだ、予定表にもあったじゃないかと騒ぎ始める。明日もあるから、本部と連絡を取って相談してみましょうとその場を収める主催者。
 その夜、ピーターソンは、ワインを飲ませて、サイクロプスに詩を読ませようとする。サイクロプスは詩を口にし始めるが、ピーターソンの目的はサイクロプスの隙を盗んで、彼の目に杭を打ち込むことであった……。
 翌朝、ピーターソンの姿がないと騒ぎが起こる。主催者は、サイクロプスを疑って口を開けろと迫る。サイクロプスの口の中から、ピーターソンの指輪が発見される。「さては食ったのか?」。
 主催者が、恐れ、戸惑っている間に、ピーターソン夫人がサイクロプスのところにやってくる。
 「ほかの人から聞かされる前に言っておきたいことがある。俺はあんたのご主人を食ってしまった」
 「いいの。気づいていたわ。それより私はあなたと一緒にいたいの」
 ツァー客が船で去り、ピーターソン夫人はサイクロプスと残る。夫人がサイクロプスに頼んで、岩を放らせると、その岩は船に当たって、船は沈んでしまう。

 監督ダニエル・ノッケは、1968年生まれ。1994年から99年にLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergで学ぶ。フリーのアニメーション作家で、実写作品の脚本も手がける。時には出演することもある。1999年より母校でアニメーションの脚本術について教えている。受賞歴多数。

 10. 「カラス」 ポーの詩「カラス」を映像化した作品。
画像 [ストーリー] 男は恋人であるレオノアに去られて半狂乱になっていた。そこへカラスがやってきて「彼女はもう戻って来ない」と口にする。訝る男に、カラスは同じ台詞を繰り返す。まるで男をからかうかのように。怒った男はカラスを殺すが、気がついた時、目の前に横たわっていたのは、血を流して死んでいるレオノアの姿だった。

 監督のハネス・ラールは1965年生まれ。1986年〜91年にStaatliche Academie der Bildenen Künste in Stuttgartでグラフィック・デザインを学ぶ。フリーランスのイラストレーター、アニメーター。本作で数多くの賞を受賞。
 公式HPはこちら(http://www.hannesrall.com/)。

 11.「岩のつぶやき」 [ストーリー] 太古から全くの景色が変わっていないと思われる丘陵地帯にいる2つ“岩”(というかケルン)のヒューとキュー。体にまとわりつく苔に対して、「菌類は嫌いだ。氷河時代が終わったと思ったら戻ってきやがって!」とぼやく。
 そこに人類が現れて少しずつ風景が変わり始める。荷車を通すために“道”を作っているのだと知って、なるほどねえと思ったりもするが、悠久の時間的観念しかない岩にとっては些細なことに過ぎない。
 が、たちまち道路が舗装され、車が激しく行き交うようになり、すぐ近くに超高層ビルが立ち並ぶようになる。
 その光景に唖然とする岩たち。しかし、そのビル群も一瞬のうちに消え去り、元の丘陵地帯が戻ってくる。
 「お前のお腹がコケだらけだぞ!」。また岩どうしでの他愛無いからかい合いが始まった。

画像 監督クリス・シュテナーは1971年生まれ。1991年〜94年にアイルランドでフリーの作家として活躍した後、1994年〜98年は、マインツのJohannes Gutenberg Universitätでアートを学びながら、プログラマー、グラフィック・アーティストとしても活躍。1998年〜2003年はLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergのアニメーション学部でアートを学ぶ。
 もう一方の監督ハイディ・ヴィットリンガーは1978年生まれ。グラフィックやカトゥーン・スタジオで経験を積んだ後、1998年〜2003年にはLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergのアニメーション学部でアートを学ぶ。
 実は製作当初は、アルヴィット・ウイベルも加えた3人によるプロジェクトだったが、作品の完成を見ずにウイベルは他界している。
 第75回米国アカデミー賞短編アニメーション部門にもノミネートされた話題作。日本から山村浩二監督の『頭山』も同賞にノミネートされた年で、受賞作品はソニー・ピクチャーズの『チャブチャブズ』。
 東京国際アニメ・フェア2003の「海外アニメーション劇場」というプログラムでも上映されています(http://www.taf.metro.tokyo.jp/TAF2004/2003/j/event/oversea.html)。
 『アート&アニメーション』(エスクァイア日本版2003年臨時増刊)にはこの作品に関する紹介記事があります。
 UPLINKから発売されているDVD本『プチシアター vol.1』に収録されているので、本作は比較的容易に観ることもできます(http://www.uplink.co.jp/webshop/log/000962.php)。
 作品のHP(http://www.dasrad.com/main.html)。
アニメーション作家・山村浩二さんのブログ「知られざるアニメーション」での関連記事はこちら(http://yamamuraanimation.blog13.fc2.com/blog-entry-156.html)。
 *当ブログ関連記事:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200704/article_1.html

 12. 「楽園行き」
画像 [ストーリー] ネズミたちの住処に一枚の絵ハガキが舞い込んでくる。青空の下に美しいお花畑が写っている絵ハガキを見て、ネズミたちはその風景に恋焦がれてしまう。空を飛ぶ鳥はこの絵ハガキに写っているのと同じみたいだから、鳥を追っていけば、この“楽園”にたどり着ける。そう考えたネズミたち6匹は旅に出発する。
 目の前に車道が現れる。1匹目が渡ろうとして車にはねられ、2匹目も同じく、3匹目も……。そして5匹目。やってくる車を次々かわしていく……。
 そして、5匹目のネズミは運良く車道を渡りきることに成功!着いた先は夢にまで見たお花畑。
楽園に着いたことを喜んだネズミは大喜びで、お花畑の中をかけていく。が、目の前にまた車道が現れる。楽園だと思ったお花畑は、単なる中央分離帯なのだった……。
 監督ヤン・チューリンクは、1971年生まれ。1995年〜97年にKrefeldのFachhochschule Niederrheinでビジュアル・コミュニケーションを学び、1998年〜2003年にはLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergのアニメーション学部でアートを学ぶ。本作で33もの賞を受賞している。
 公式HPはこちら(http://www.janthuering.com/)。

 13.「モーメント〜瞬間〜」
画像 草原の中、野生動物を人間が追い、槍を放つ。草原の中を逃げる、追う、というイメージが交錯する中で、追うものと追われるもののイメージも錯綜する……。強烈な画面いっぱいの赤がインパクトを与え、狩るもの狩られるものといった神話的な世界に観るものを取り込む。
 監督トーマス・ヴォイトは1959年生まれ。1980年から93年までは、広告デザイナー、イラストレーター、ライアウターなどで活躍。1993年〜99年にポツダムにあるHochschule für Film und Fernsehenに入ってアートを勉強し直す。2000年以降フリーランスのアニメーション映画監督。
 公式HPはこちら(http://www.thomasvoigt.de/)。

 14. 「ヘシー・ジェイムス」
画像 [ストーリー] 西部。カウボーイのカミキリムジ(?)ジョン・G・G・タッカーがハエのやっているガス・スタンドでくつろいでいると、そこに給油しに1台の車がやってくる。
 車の男(コオロギ)を見た店主はタッカーにあいつには関わらない方がいい。あいつは噂のヘシー・ジェイムスだと忠告する。タッカーは店主の忠告も聞かず、やってきたヘシーに絡み始める。「お前がヘシー・ジェイムスなのかい?」 ヘシーは、タッカーが聞いているかいないのかおかまいなしに、“マシンガン”・トークを始める。強烈なヘシーのトークに、タッカーはノックアウトされてしまう。
 ヘシーが話し相手を求めて、店主の方に向かうと、店主は恐れおののいて、店を放り出して逃げ出してしまう。

 監督のヨハネス・ヴァイラントは、1977年生まれ。1997年にStädtische Bühnen Freiburgでステージ・デザインと演出を学んだ後、1998年~2003年にLudwigsburgのFilmakademie Baden-Württembergのアニメーション学部でアートを学ぶ。本作で多数の受賞歴あり。
 本作は、地元のコメディアンのネタを映像化したものだとか。
 本作は「デジタルスタジアム 第130回春休みスペシャル!〜世界の新世代アニメーション特集〜」(NHK BS)で放映されたことがあります(http://www.nhk.or.jp/digista/onair/2003/130_0329.html)。

 15. 「ESCAPE」
画像 チューブからしぼり出される青や緑の絵の具のアップ映像。そして様々なイメージが連鎖的に重ねられていく……。どこか、ヤン・シュヴァンクマイエルやピーター・グリーナウェイの作品世界に近いものも感じさせます。
 監督のクリスティン・ヴィナーは、1962年生まれ。1981年〜87年にBraunschweigにあるHochschule für Bildende Künsteでアートを学ぶ。ハノーバーで、低予算映画のためのグラフィック・デザインやカメラ・ワーク、CMなどを手がける。ワークショップなども数多く手がける。

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 そもそも、この「ドイツ・アニメーションシネマ」が何なのか。公式カタログ(英語版)には“ANIMATED FILMS FROM GERMANY 2004”とあって、ますますわからなくなるのですが、ネットで調べていてわかりました。

 これらの作品が日本ではじめて上映されたのは、2005年11月に開催された、第12回大阪ヨーロッパ映画祭の中の関連プログラム「ドイツ・アニメーションフィルム展」だったんですね(http://www.oeff.jp/common/documents/Press_Release_OEFF_2005.pdf)。
 11月5日〜28日まで、梅田スカイビル 展望フロアで15作品を2プログラムに分けて上映しています。
 展望フロアに入るのに700円かかるけれど、作品鑑賞自体は無料でした。
 それに先立って、10月6日〜25日までは京都精華大学ギャラリーで、「ドイツのアニメーション・フィルム展」と題して、これらの作品に使われた原画やパペット、装置などの展示も行われたようです(http://www.kyoto-seika.ac.jp/fleur/2005/germany/index.html)。

 全く同じプログラムが、「ドイツのアニメーション・フィルム展」と題して、2005年12月9日〜18日に、東京・世田谷文化生活情報センター 生活工房でも上映されていました(http://www.setagaya-ac.or.jp/ldc/2005/germany.html)。これも入場無料だったようです。
 シネマ・アンジェリカでちゃんとお金を払って観た私としては、なんだかなあって感じですが、作品自体の価値が下がるものではありませんし、映画を観るために作られたスペースでちゃんと観れたので、まあ、それはそれでよかったと思います(思うことにします)。

 すべて「日本におけるドイツ年」参加事業で、ドイツ・サイドが日本に向けてこうしたプログラムを組み、英語版のカタログを作ったということのようです。
 普通だったら、たとえ2004年までの作品しかなくともカタログ・タイトルを“ANIMATED FILMS FROM GERMANY 2005〜2006”しそうなところですが、“ANIMATED FILMS FROM GERMANY 2004”としてしまうのが、ドイツらしさなのかもしれません。

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 ドイツのアニメと言って思い浮かぶのは2005年秋に東京でも特集上映されたロッテ・ライニガーくらいしかありません。『世界と日本のアニメーションベスト150』(FUSION PRODUCT)にもドイツ・アニメはあまり載っていなくて、ロッテ・ライニガー『アクメット王子の冒険』(1926年)で245位。あとは、
 ・オスカー・フィッシンガー『スタディ』(1929年〜32年/122位)
 ・C&Wラウエンシュタイン『バランス』(?/200位)
 ・アンドレヤス・ヒヤカーデ『草原に暮らしていた頃』(1996年/308位)
 ・クルト・ワイラー(東独)『紀元前XX年・アニメ人間経済史』(?/338位)
 ・ベアデル・ノイバウワー『スペシャル・オファー』(?/361位)
 ・ティロン・モンゴメリー 『クエスト』(1996年/380位)
 ・オスカー・フィッシンガー『アレグレット』(1936年/463位)
 ・カーチャ・ゲオルギー他(東独)『エンゲルスという青年』(1971年/463位)
 ・オスカー・フィッシンガー『オプティカル・ポエム』(1937年/463位)
 ・シュテフン・シャフラー『鬘職人の日記』(1999年/463位)
 ・フェルディナンド・ディール『七羽のカラス』(1937年/463位)
 ・ベアデル・ノイバウワー『ファイヤーハウス』(1998年/463位)
 ・オスカー・フィッシンガー『酔っぱらいの幻想』(1927年/463位)
 ・トム・ティクヴァ(ギル・アッカベッツ)『ラン・ローラ・ラン』(1998年/463位)
 ・ハンス・リヒター『リズム21』(1921年/463位)
 ・ギル・アッカベッツ『ルビコン川』(1997年/862位)
 ・ミカエル・シーバー『かごの鳥』(2002年/897位)

 やはり、どれもこれもなかなか観る機会のない作品ばかりですが、マイ・フェイバリット・アニメを挙げろと言われて、これらの作品を挙げる人がいるというのも凄いですね。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございます!!!!
めちゃくちゃ詳しくてビックリしました。
全然情報薄でパンフもなかったのですごく
知らない事だらけで、楽しかったです。
また見にきま〜す(^-^)
haru
2006/02/02 22:04

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