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help リーダーに追加 RSS 自分らしく生きようとする人への賛歌 映画『TABOO』

<<   作成日時 : 2006/01/09 06:00   >>

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画像 ボーイ・ジョージの半生をミュージカル化した同名の舞台をライブ収録した作品。予備知識として知っていたのは、それだけだったのですが、観てみたらちょっと違っていました。

 物語は、ショービズの世界で成功を夢見るカメラマン志望の青年ビリーの視点で描かれていて、夢を叶えるために彼が家を飛び出すところから始まります。彼は、ロンドンでメジャーとなる前のボーイ・ジョージら、たくさんの風変わりな連中(ドラァグクイーンら)と出会うのですが、最初こそ戸惑っていた彼も次第に彼らの世界に惹かれ、仲間の一員になっていきます。そんな中で、ボーイ・ジョージだけがカルチャー・クラブとして社会にセンセーションを起こし、ヒットを飛ばして有名になり、仲間の中で突出してしまうと、それまでの友情にも亀裂が生じ、状況は大きく変わってしまいます。そして忍び寄るエイズの影……。

 ビリーは、父親に反発するようにして家を飛び出したのですが、夫と息子のために自分の夢を諦めたビリーの母親だけはビリーの味方で、彼のことを陰ながら気づかい、(彼を介さずに)彼の仲間と電話でやり取りするようになったりします。80年代ロンドンのクラブ・カルチャーとともに、母と息子の絆を描いたドラマなんだなあと思って観ていると、やがて彼女自身も夫の元を飛び出し、第二の人生を始めるべくロンドンにやってきてしまいます。

画像 「本当は弱くて臆病。特別じゃないから夢に向かって頑張ってる」。
 途中でこのような歌詞のある歌が挿入されますが、本作は、この歌にあるように「どんなに世間から後ろ指を指されようとも夢に向かって頑張る人を応援する物語」であり、「自分らしく生きようとしている人への賛歌」だったんですね。
 まずこうしたテーマありきで、ボーイ・ジョージ自身はむしろ狂言回し的な役どころなで、決して(単独の)主役でもなければ、作品自体、ボーイ・ジョージの半生は大きく関わってくるものの、間違っても「彼の半生をドラマ化したもの」なんかじゃありませんでした。

 肝心のエンディングだけは、「え〜、物語の着地点はそこなの?」と、ちょっとそこだけはどうなのかなあと思うのですが、全体としてはなかなか面白かったですね。感動的だったと言ってもいいと思います。
 映画のキャッチ・コピーには、『ロッキー・ホラー・ショー』と『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』が引き合いに出されていましたが、「家族」や「かけがいのない仲間との絆」が重要なモチーフとなっているという意味で、むしろ私には『トーチソング・トリロジー』や『プリシラ』の方が近いんじゃないかという気がしました。

 ボーイ・ジョージが自身の役を演じるのかと思っていたら、彼はエイズで死んだかつての仲間で、エキセントリックなアーチストであったリー・バウリー役を演じ、ボーイ・ジョージ役は本作でデビューしたユアン・モートンが演じています。これが本人とウリふたつなんですね〜。

画像 本作は、デジタル・ビデオで撮られていて、いずれ日本でもビデオで観られるようになるのでしょうが、映画館のスクリーンにうまくマッチして、まさにこの作品が今ここで上演されている感じというか、ライブ感が出てとてもよかったですね(これはビデオ鑑賞では味わえないものでしょう)。
曲ごとの客の拍手や咳、笑い声が入ったり、席を移動する客の姿がカメラに映り込んだりもしますが、生な感じが出て、かえっていいくらい。非常口を知らせる緑色の明かりがやたら映りこんでしまうのだけは非常に無粋な感じがしますが。

 途中アドリブで客席をいじるシーンがあるのですが、この舞台を楽しんでいるらしいお客さんたちが映し出されて興味深かったし、その中に80歳だというおばあちゃんまでいて、微笑ましかったですね。こういう年配の方までがこうした作品を劇場に観に来るというのは、やはり文化の違い、でしょうか?

 この映画で、若干難があるとすれば、やっぱり日本語字幕でしょうか? たくさんの固有名詞が矢継ぎ早に出される中で、それをできるだけ生かすべくかなり工夫されていたようですが、それでも、映画の中のお客さんが笑っているところで、どこがおかしいのかちっともわからない部分が何箇所かあったんですね。石田泰子さんが訳してこうなのだから、誰がやってもこれ以上どうにもならなかったのでしょうが、ちょっと残念といえば、残念でした。多少台詞が聞き取れる部分でもそうでしたから、字幕のせいというより文化の違い、なのかもしれませんが。

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 劇場パンフ(広げると大きなポスターになる。プラス、石川三千花のイラストと宮本亜門のコメントが書かれた別紙込みで500円)には、キャストが5人しか紹介されていませんでした。お母さん役の人もよかったのになあ、この人のことも紹介してよ〜と思ったんですが、ぼやいていても仕方がないので、自分で調べてみました。

 【キャスト】
 ビリー役:ルーク・エヴァンス
 ボーイ・ジョージ役:ユアン・モートン
 リー・バウリー役:ボーイ・ジョージ、ジュリアン・クラリー
 キム役:ダイアン・ピルキントン
 ジョジー(ビリーの母)役:ジェマ・クレイヴン
 フィリップ・サロンン役:ポール・ベイカー
 スティーブ・ストレンジ役:ドリュー・ジェイムソン
 マリリン役:ジョン・パートリッジ

 TVや舞台中心に活躍しているか、もしくはこれが初お目見えに近いキャストも多いようです。

画像 この中では、お母さん役のジェマ・クレイヴンのうまさが際立っていたと思うのです(年齢的なものももちろんあります)が、このキャストの中ではもっともキャリアがあるようです。映画では『シンデレラ』(76年 主役)、「ワーグナー/偉大なる生涯」(83年 TVM)、『穴』(01)等。そのほか数多くの舞台に立ち、「美女と野獣」ではミセス・ポッツ役を演じています。

 ステージでのキャストでは、これまで何通りかのキャスト・チェンジがあったようで、ボーイ・ジョージが出ないタイプのものもごく普通にあるようです(参考:http://web.swedevice.com/sistergeorge/main/readarticle.asp?ID=6

 あと、もう1つ、この作品を観ていて非常に興味を持ったのが、ボーイ・ジョージがこの作品を通してオマージュを捧げてもいるパフォーマンス・アーチスト、リー・バウリーのこと。彼は、実際にはどんな「アート」を残したのか?
 Fergus Greerというフォトグラファーのサイトに、生前のリー・バウリーを写した写真がたくさんあります(http://www.fergusgreer.com/)。サイトを開いて、BOOKS AND EXIBITSから、LEIGH BOWERYのところを見てみてください。生前は、その過剰なメイクというかコスプレに拒否反応があって、ニューヨークですら受け入れられなかったということですが、今見るとなかなか面白いですね。
画像 この記事のトップに挙げた写真と右の写真は、映画『TABOO』のものではなく、リー・バウリーの写真です。

 この映画をライブ収録ではなく、劇映画でやれないのかなあとも思ったのですが、そのままの映画化ではこの舞台のキッチュ感が失われてしまう気もします。ビリーの視点ではなくて、リー・バウリーを中心に物語を構成し直したら、面白いんじゃないか。そうすれば、『ベルベット・ゴールドマイン』や『パーティー★モンスター』にまさるとも劣らぬキッチュな映画になると思うのですが。

 この映画を上映しているライズXは、シネマライズという社会現象ともなるような数々のヒット作を世に送り出した映画館の姉妹館ですが、座席が40しかありません。作品によってはすぐ満席になってしまうので、早い時期に受付を済ますなどして十分計算して臨まなければ、せっかく行っても無駄足になってしまう可能性があります。なんで天下のシネマライズがこんなせせこましいところにこういうサイズの映画館を作るのかなあ。コンセプトは何?と私は訝しく思っていたのですが、今回この作品を観ていて、ああ、そうなのかと思い至った部分がありました。
 ライズXって、かつてのレイトショーでかかったような、お客さんを選ぶような作品上映するための限定スペースだったんだ、と。
 レイトショーと言えば、夜9時以降に1回だけ上映される作品のことで、そういう時間であっても映画館に足を運ぶようなお客さんに向けて、カルトだったり、マニアックだったり、ごくごく特定の映画ファンにアピールするような作品を数多く上映していました。ところが、ミニシアターをめぐる状況やお客さん自体の変化もあって、いつのまにか、あまり集客が期待できない作品ばかりがかかる上映枠になってしまったんですね。ミニシアターが増えて、昔だったらレイトショー枠で上映されたはずの作品も、今や堂々と昼にロードショー公開されるようになった、ということも関係あるのかもしれません。
 かつてレイトショー枠で上映されたような作品に期待し、楽しんでもくれたお客さん(数は少なくても確実に存在するそういうお客さん)に向けて、シネマライズがあえて客席40限定で用意したスペース、それがライズXなのではないか。だったら座席数の少なさの意味も分かりますよね。もっとも150人くらい入る映画館でもお客さんが40人に満たないことなんてザラにありますが。
 『フリークス』『ジェリー』『バス174』『アラキメンタリ』『ジャッカス・ザ・ムービー』『雲の向こう 約束の場所』……。ジャンルは随分違いますが、昔だったらシネ・ヴィヴァン・六本木のレイトショーでかかってもおかしくない作品ばかり。今時、作品の方でお客さんを選ぶ映画館て、そうないですから、非常に価値がありますね。
 そっか〜、そうなんだ(と独りで納得)。私の中でまた「シネマライズの時代を読む目」に対する評価が上がりました。自分の好みに合うかどうかはともかく、今上映されている作品でもっともユニークな作品にどんなものがあるか探そうという時、まずライズXに注目せよ、ですね。

 [キャッチ・コピーで選ぶ2006年お正月映画]

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、初めまして。
記事を読ませていただきましたが、何でこんなにうまく書けんのかなぁ〜って思いました(笑)勉強になりました♪
私は、マリリン役の方が好きでした♪CDやら買ってみようかしら?と、思っています。
yuki
URL
2006/01/15 00:04
はじめまして。トラックバックありがとうございます。
私はこの映画、非常に楽しめたものの、感想がうまく書けなくて・・・。
その点、こちらのブログは凄いですね!なんてきちんと、書いていらっしゃるんだろう。と思いました。
私はキムが良かったです。歌声もいいし、可愛いし。なにより、少しばかり自分の境遇と重なる所がありまして(ほんっとに少しですが)。
ではまた!
白はたや
URL
2006/01/16 17:43

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